看護学テキストNiCE
看護教育学
看護を学ぶ自分と向き合う
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : グレッグ美鈴/池西悦子 |
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ISBN | : 978-4-524-25049-3 |
発行年月 | : 2009年12月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 286 |
在庫
定価2,530円(本体2,300円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
わが国の看護教育制度、カリキュラムや教育評価など、看護学教育に関する内容に富んだテキスト。「看護を学ぶ自分と向き合い、看護師として、一社会人として、自ら生涯にわたって成長できる素地を培う」を編集方針に据え、クリティカルシンキング、リフレクションといった看護実践に欠かせない思考方法や、学生が将来のことや臨地実習などで悩んだときに示唆を与える題材を多く収載。また、米国などの海外の看護教育制度も紹介。
はじめに
第I章 看護教育学とは何か
1.看護教育学とは何か
A.関連する用語の理解
B.看護教育、看護学教育、看護教育学の違い
1●さまざまな定義
2●定義における論点の整理
3●本書における定義
C.看護教育学における教育・研究
1●看護教育学における教育の実態
2●看護教育学における研究
D.エビデンスに基づく看護学教育
◇コーヒーブレイク 頑張るために、『杉森塾』
第II章 専門職としての看護
1.専門職とは何か
A.専門職の特質・基準
1●専門職とは
2●看護学以外の学問分野における専門職の特質
3●看護学における専門職の基準
B.専門職の特徴からみた日本の看護
C.スペシャリストとジェネラリスト
◇コーヒーブレイク 冷蔵庫看護師
2.実践の学問としての看護学
A.看護学と看護実践の関連
B.看護専門職としての実践
1●事実と情報の意味を問う
2●実践の意味を問い看護を開発する
3●専門性を探求する
4●保健師の専門性の確立−役割・機能の充実を目指す
C.実践の学問としての看護学−機能看護学の構築
1●看護専門職としての実践・成長を方向づけるもの
2●実践から機能看護学の構築へ
第III章 看護教育制度
1.看護教育制度の歴史的変遷
A.看護制度の原点、その成立過程
1●産婆教育制度
2●看護婦教育制度
3●保健婦教育制度
B.保健婦助産婦看護婦法の成立
1●看護教育制度の混迷期−規則の改悪
2●戦後の制度改革
C.保助看法を基盤とした看護教育制度の発展ー現在にいたる変遷
1●看護基礎教育の校教育化
2●社会の変化・ニーズに対応した看護教育制度へ
3●看護系大学の急増
4●専門分化と統合、看護実践力強化へ
D.今日の課題とこれからの看護教育制度
1●看護基礎教育の変化と看護学実習の変化
2●法改正にみる今後の看護教育制度の展望
3●各教育機関に求められる独自性
2.看護教育制度の現状
A.わが国の看護教育制度
1●看護教育制度
2●教育課程
3●教育課程別養成所数の推移
B.看護基礎教育の現状における課題
1●他職種にかんがみる看護職者養成制度の複雑さ
2●教育課程による教育内容の違い
3●看護基礎教育は「看護学」教育となりうるか
◇コラム 大学と養成所の設置基準
C.看護制度と看護教育制度の歴史的関係
1●看護教育制度の始まり
2●第二次世界大戦後の看護教育制度の改革
3●准看護師制度を取り巻く教育制度の成立
4●国家試験受験資格にみる看護教育制度
D.看護基礎教育の教育内容の変遷
1●包括的看護の概念の導入で飛躍的に発展した教育
2●近年のカリキュラムの特徴
E.わが国の看護継続教育
1●看護師等の人材確保の促進に関する法律
2●卒後教育制度
◇トピックス 看護系の大学が増えているのはなぜ?
3●そのほかの継続教育
F.看護教育制度における今後の課題と展望
3.准看護師制度問題
A.准看護師制度の概要
B.准看護師制度の成立過程
1●2種類の看護職資格−「甲・乙」から「看・准」へ
2●准看護師の急増と看護教育制度の複線化
C.准看護師制度問題とはなにか
1●法と実態の矛盾
2●教育課程の不十分さ
D.准看護師制度廃止運動
1●准看護師制度廃止運動のはじまり
2●1990年代以降の准看護師制度問題
E.おわりに−差別と偏見を超えて−
第IV章 看護学教育の基盤
1.アイデンティティ
A.アイデンティティ
B.アイデンティティの測定
1●同一性地位とは
2●同一性地位面接
3●看護学生の同一性地位についての研究
C.職業的アイデンティティ
1●職業的アイデンティティとは
2●看護師としての職業的アイデンティティの研究
◇コーヒーブレイク 私の職業的アイデンティティの確立
2.クリティカルシンキング
A.クリティカルシンキングとは
1●クリティカルシンキングの定義
2●看護にみるルーベンフェルドの思考の過程
B.クリティカルシンカーに必要な資質
C.クリティカルシンカーになるための方法
1●クリティカルシンキングの育成方法
2●学習能力を高める方法
◇コーヒーブレイク 心の持ち方
3.リフレクション
A.リフレクション
1●リフレクションとは
◇キーワード リフレクション
2●専門職にとってのリフレクションの意義
◇コラム 技術的実践家から反省的実践家へ
3●リフレクションに必要なスキル
B.リフレクションの方法
1●リフレクティブ・プロセス
2●日誌や対話によるリフレクション
C.リフレクションの評価基準
1●バウドの4つの評価基準
2●グッドマンの3つのレベル
4.キャリアマネジメント
A.キャリア
1●キャリアとは
2●キャリア発達とは
B.キャリアマネジメント
1●キャリアマネジメントとは
2●日本社会でキャリアマネジメントが必要となった背景
3●看護職におけるキャリアマネジメントの必要性
4●組織と個人がともに成長するための条件
◇コーヒーブレイク 組織コミットメントからキャリアマネジメントへ
C.キャリアマネジメントの実際
1●個人のキャリアマネジメント
◇コーヒーブレイク 何によって覚えられたいか
2●組織のキャリアマネジメント
第V章 カリキュラム
1.カリキュラム開発
A.カリキュラム開発
1●カリキュラムとは
2●カリキュラム開発の意味
B.看護学教育のカリキュラム開発
1●設置者の意図・機関の使命
2●教育・学習および学生のとらえ方
◇コラム 専門性に立つ教養人の育成へ
3●看護学における教育の考え方
2.カリキュラムデザイン
A.カリキュラムデザインとは
B.科目の構成
C.科目間の関連づけ
1●科目間の関連づけのための枠組み
2●「教養」の位置づけにみる専門職者像の違い
3●知の構造、学習体験の構造
D.教授・学習過程の進め方と学習の支援
E.単位の設定
3.カリキュラム評価
A.カリキュラム評価とは
B.教授・学習活動の評価とカリキュラム評価
1●学生に焦点化した教授・学習活動の評価
2●教員に焦点化した教授・学習活動の評価
C.カリキュラムデザインとカリキュラム評価
D.カリキュラム開発とカリキュラム評価
E.法的規制とカリキュラム評価
第VI章 学習理論と学習方法
1.学習理論
A.学びの本質
1●「学ぶ存在」としての人間
2●「学習とは何か」という追求
◇コラム 「無智の知」と「産婆術」
B.学習理論
1●行動主義における学習理論
2●認知主義における学習理論
3●状況主義における学習理論
C.学習意欲
2.学習方法
A.期待される学習
B.学習方法
1●知(識)へのアプローチの方法
2●主体的かかわり
3●共同学習=コラボレーション
◇キーワード PBL(problem based learning)
第VII章 臨地実習における教育と学習
1.教育的ケアリングモデル・経験型実習教育
A.看護教育の新しいパラダイムとしての教育的ケアリングモデル
B.経験型実習教育とは
C.経験型実習教育の基礎となる理論
D.経験型実習教育の実践
1●経験型実習教育で求められる教師の能力
2●経験型実習教育で学生に必要なもの
3●経験型実習教育における授業過程の展開
4●経験型実習教育を行う教師像
2.看護学生が直面しやすい問題:臨地実習を通して
A.看護学教育における臨地実習の位置づけ
B.臨地実習で直面しやすい問題の検討
◇キーワード アサーション
◇キーワード リフレーミング
第VIII章 教育評価
1.教育評価とは何か
A.教育評価の定義
B.教育評価の目的の分類
2.教育評価の考え方
A.授業の過程で展開される評価
B.教育目標と教育評価
C.さまざまな観点による評価の違い
1●評価基準による違い
2●評価主体による違い
3●評価対象による違い
◇コラム 絶対評価をめぐるとらえ方
3.看護学教育での評価の実際
A.授業設計と教育評価
B.授業形態による評価の違い
1●講義における評価
2●演習における評価
3●実習における評価
◇コーヒーブレイク 米国の看護師資格試験
第IX章 外国における看護学教育
1.米国における看護学教育
A.米国における看護教育制度
1●現在の米国における看護学教育の概略
2●登録看護師になる道筋
3●看護に対する規制と免許交付
B.米国における看護学の大学院教育
1●大学院教育の概要
◇コラム ナースプラクティショナー −看護師は良質のプライマリケアを行うことができるか?
2●大学院における看護学教育の変化の動向
C.米国における継続教育−専門能力開発
◇最新の研究 全米卒後看護師研修プログラム
2.英国における看護学教育
A.英国における看護制度の変遷
a.看護師登録法案の成立過程
◇コーヒーブレイク 看護師の登録とナイチンゲール
b.ナショナルヘルスサービス(NHS)
c.看護制度、看護学教育の改革
d.英国の看護師の行動規範
B.英国の看護教育制度
C.英国の看護継続教育
1●登録の更新制度
2●看護の継続教育
◇コラム ボローニャプロセスと看護教育
3.中国における看護学教育
A.中国における保健医療の概要
B.中国における看護教育制度の概要
1●看護学教育の変遷
2●看護教育制度の概要
3●看護大学本科における教育カリキュラム
4●臨地実習の体制
5●看護教員の資質
6●継続看護学教育活動制度
C.中国における「護士」の免許制度と昇進制度
1●免許制度
2●昇進制度(技術職掌と行政職掌)
◇コラム 高学歴と高い臨床能力を持つ「護士」の育成
D.外国籍看護師来華執業管理
E.中国と日本の看護の相違点
付録
付録 資料1 日本の看護制度・看護基礎教育の変遷
付録 資料2 日本の看護基礎教育カリキュラムの変遷
付録 資料3 日本の看護継続教育の変遷
索引
「テキスト」というと、「知識を得るもの」というイメージがあるのではないかと思う、しかし、『看護教育学‐看護を学ぶ自分と向き合う』というタイトルの本書が大切にしたいと考えたのは、サブタイトルの「看護を学ぶ自分と向き合う」ことである。では、そのために必要なことは何だろうか。
私は大学院生の頃、教授と学習の過程は、「教授・学習過程」ではなく、あるいは「教授‐学習過程」でもなく、「教授=学習過程」であると学んだ。つまり教師と学生は、「私教える人、あなた学ぶ人」という関係ではなく、教師は、学生の教育を担当することで学びを得て、教育能力を開発していく。そして学生にとっては、知的な学びだけではなく、教師との相互作用のなかで、自分をみつけ自分について学んで行くプロセスとなる。自分自身と向き合うためには、このような「教授=学習過程」のなかで学ぶことがまず必要になる。
また「看護を学ぶ自分と向き合う」ためには、今、学んでいる看護とは何なのか、その教育はどのような歴史を辿っているのか、学習にはどのような理論・方法、評価があるのかなど、基礎的な知識を身につけることが大切である。そのために本書では、看護を学ぶ学生が知識レベルで知っておくべきことを整理している。そして看護基礎教育で大きな役割を果たす臨地実習については、教師が何を考え、何を大切にして教育をしているのかを知り、また学生自身が臨地実習で直面しやすい問題をどう乗り越え、それを学びに変えていけるかを考えてもらうことを意図している。
さらに本書では、教育実践や研究から生まれた看護教育学の基盤となる概念を取り上げた。看護学生がどのような発達課題をもち、何を大切にすべきなのかというアイデンティティのこと、看護学生としての問題解決や看護職としての成長を目指すクリティカルシンキング、リフレクション、キャリアマネジメントを学ぶ。これらの学びから、看護職として成長することは、人として成長することであり、発達課題を含めて今の自分に向き合い、自分自身について考えることの重要性をわかってほしいと願っている。
本書は、看護教育学のテキストとして活用できるだけではなく、看護学生が自分の進路に悩むとき、看護学生として学ぶ過程で問題解決を図ろうとするときに活用できるテキストを目指した。
第I章では、看護教育、看護学教育、看護教育学の用語のさまざまな使い方をみながら、「看護教育学とは何か」を検討する。またエビデンスに基づく看護学教育とは何かを示す。
第II章の「専門職としての看護」では、専門職の基準と日本の看護職はどの程度、専門職の基準を満たしているかを検討する。さらに看護学が実践経験から構築されることを理解するために、看護職として50年の経験を持つ著者が、どのように「機能看護学」を構築したかを具体的な事例を用いて明らかにする。
第III章の「看護教育制度」では、歴史的な変遷と現在の看護教育制度の現状と課題、さらに准看護師制度問題の理解を目的としている。
第IV章における「看護教育学の基盤」では、「アイデンティティ」「クリティカルシンキング」「リフレクション」「キャリアマネジメント」といった概念を学ぶことによって、学習と実践の深化を目指している。
第V章では、「カリキュラム」の開発・デザイン・評価について学習する。
第VI章の「学習理論と学習方法」では、学習とは何か、どのような学習理論・学習方法があるかを理解することで、学びを深めることを目指している。
第VII章の「臨地実習における教育と学習」では、教育的ケアリングモデル・経験型実習教育とは何か、そのなかで学生と教師はどのような努力が必要になるかを明らかにする。また臨地実習で看護学生が直面しやすい問題とその対処について具体例で示す。
第VIII章の「教育評価」では、その日的・意義・考え方、および看護学教育において実際にどのような評価が行われているかを理解することを目的とする。
第IX章では「外国における看護学教育」として、米国、英国、中国の看護学教育を取り上げる。これらを学ぶことによって国際的な視点から、日本の看護学教育の課題を考えることを目指している。
2009年12月
グレッグ美鈴