健康・栄養科学シリーズ
栄養教育論改訂第4版
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
監修 | : 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 |
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編集 | : 丸山千寿子/足達淑子/武見ゆかり |
ISBN | : 978-4-524-25966-3 |
発行年月 | : 2016年9月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 326 |
在庫
定価3,520円(本体3,200円 + 税)
正誤表
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2018年08月02日
第1刷・第2刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
管理栄養士の栄養教育活動の理論的基盤・マネジメントを体系的に学べるテキスト。(1)行動科学理論とその食行動への応用、(2)栄養教育の方法論、(3)栄養教育の事例と発展(管理栄養士の活動の実際)の3部門で構成。行政・社会の最新動向、刷新された事例を盛り込み、2015年に改定された管理栄養士国家試験出題基準に準拠した改訂版。
第1章 栄養教育の概念
A.栄養教育の目的・目標
1 栄養教育の定義
2 栄養教育と健康教育・ヘルスプロモーション
3 栄養教育と生活の質(QOL)
4 栄養教育と他の生活習慣(身体活動,喫煙,飲酒,休養,睡眠)
5 栄養教育の目的
B.栄養教育の対象と機会
1 ライフステージ・ライフスタイルからみた対象と機会
2 健康状態からみた対象と機会
3 個人・組織・地域社会のレベル別にみた対象と機会
C.栄養指導・栄養教育の歴史
1 栄養素の発見と低栄養の克服
2 戦争による食糧不足と栄養失調
3 経済復興と低栄養からの回復そして疾病構造の変化
4 社会・経済構造の変化と食・健康問題の多様化
5 健康教育へのヘルスプロモーション概念の導入
第2章 行動科学理論と栄養教育
A.栄養教育と行動科学
1 栄養教育に行動科学が必要とされる理由
2 食行動変容に必要な栄養教育のスキル
B.行動科学
1 行動の種類(レスポンデント行動とオペラント行動)
2 学習(条件づけ)理論とそのしくみ
C.行動療法
1 行動療法の定義
2 行動療法が対象とする問題
3 行動療法の特徴と利点
D.行動療法における問題解決のしかた
1 行動のとらえ方
2 問題行動の扱いかた
3 問題解決の構造
E.行動療法からみた食行動の特性
1 基本的な生命活動としての食行動
2 人の嗜好と飢えへの適応
3 自発的な食事制限や減食の影響
4 食の行動モデル
5 運動の行動モデル
F.教育に必要な行動の系統的アセスメント
1 身体面,行動面,心理社会面からの系統的なアセスメント
2 身体面のアセスメント
3 行動面のアセスメント
4 心理社会面のアセスメント
G.食行動のとらえかたとアセスメント
1 食事(食行動)の記録
2 食習慣についての質問票
3 栄養教育における食行動のアセスメントの意義
H.健康増進や生活習慣病のコントロールに共通した行動技法
1 目標行動の設定
2 セルフモニタリング
3 オペラント強化法(随伴性の管理)
4 刺激統制法
5 反応妨害(習慣拮抗)法
6 社会技術(自己主張)訓練
7 認知再構成法
8 再発予防訓練
9 ソーシャルサポート(社会的サポート)
0 ストレス管理
I.行動に影響する心理社会的要因
1 行動的教育モデル
2 健康信念モデル(ヘルスビリーフモデル)
3 コントロールの座(ローカスオブコントロール)
4 セルフエフィカシー(自己効力感)
5 行動の意図
6 ソーシャルサポート(社会的サポート)
7 行動変容に対する準備性(行動変容ステージモデル)
J.習慣変容に必要な条件
1 習慣とは何か
2 習慣が変わりやすくなる状況
3 意欲とは選択と決断
4 実生活に即した,役に立つ知識
5 心理的方策としての技術
K.食行動変容と心理
1 うつ病,食行動異常の有無
2 感情面
3 行動レパートリー(スキル)
4 認知的側面
5 心理的側面の把握
L.大規模集団や地域レベルの変化についての行動科学理論
1 イノベーション普及理論
2 コミュニケーション理論
3 コミュニティ・オーガニゼーション
第3章 カウンセリングの基本と栄養カウンセリング
A.カウンセリングとは
B.カウンセリングにおける方法論(問題解決のプロセス)
C.治療者(カウンセラー)-患者(クライアント)関係
1 ラポールの形成
2 カウンセリングの姿勢
3 役割による治療者.患者モデル
D.行動変容面接の実際
1 面接の準備(環境を整える)
2 カウンセリングへの導入
3 大切な情報を聞き取る
4 実行できそうな具体策を一緒に考える
5 記録を具体的に残す
E.対人コミュニケーション
1 コミュニケーションは信頼関係に基づく共同作業
2 コミュニケーションの要素
3 カウンセリング全体を通じたコミュニケーションの留意点
F.栄養カウンセリングのポイント
第4章 組織づくり・地域づくりへの展開と食環境づくり
A.学習段階の発展
1 人間関係・家族関係づくり
2 ネットワークづくり
3 自助集団の形成
4 個人・組織・地域エンパワメント
5 組織づくりと連携
B.食環境づくりと栄養教育
1 食環境の概念
2 食環境づくりの必要性
3 食物へのアクセスと栄養教育
4 情報へのアクセスと栄養教育
5 食環境にかかわる組織・集団への栄養教育
6 食環境整備に関連した法律・制度・施策
第5章 栄養教育マネジメント
A.栄養教育マネジメントとは
1 アセスメント(assessment)
2 栄養教育計画の立案(plan)
3 栄養教育の実施(do)
4 栄養教育の評価(check)
5 評価のフィードバックと新たな問題点の把握:改善(action)・
B.栄養教育の特性
C.栄養教育の対象
第6章 栄養教育のためのアセスメント
A.栄養教育におけるアセスメントの意義と目的
1 栄養アセスメントとは何か
2 栄養アセスメントの目的
B.情報収集の方法
C.アセスメントの種類と方法
1 身体的栄養状態の指標
2 健康・食物摂取に影響を及ぼす要因のアセスメント
D.判定
第7章 栄養教育計画
A.プログラム
1 栄養教育プログラムの基本理論
2 個々のニーズに適応する栄養教育プログラムの立案
B.目標設定
1 目標設定の意義と方法
2 実施目標
3 学習目標(知識・態度・スキル)
4 行動目標
5 環境目標
6 結果(アウトカム)目標
C.栄養教育方法の選択
D.学習形態選択と組み合わせ
1 学習形態の種類と方法
2 学習形態・方法の選択と組み合わせ
E.教材
1 教材とは
2 教材利用の目的
3 教材の提示方法
4 栄養教育教材の種類
F.プログラムの作成
1 学習者の決定
2 全体計画・プログラム案の作成
3 期間・時期・回数・時間の設定
4 場所の選択と設定
5 指導案の作成
6 実施者の決定とトレーニング
第8章 栄養教育の実施
A.栄養教育実施者の技術
1 トレーニング
2 プレゼンテーション技術
3 コミュニケーション技術
B.実施に向けての準備作業
1 予算の確保
2 マンパワー(人的資源)の確保
3 学習者の募集,周知
4 場の設定,設営
C.栄養教育の実施
1 実施状況のモニタリング
2 実施記録・報告
第9章 栄養教育の評価
A.評価の意義
B.評価の種類
1 企画評価
2 経過(プロセス)評価
3 形成的評価
4 影響評価
5 結果(アウトカム)評価
6 総括評価
7 経済評価
8 総合評価
C.評価の手順
D.評価の質を高める
1 評価デザインの選択
2 測定評価項目や手法の信頼性と妥当性
3 評価の妥当性
4 内的妥当性と外的妥当性
E.評価結果のフィードバック
第10章 栄養教育マネジメントで用いる理論やモデル
A.プリシード・プロシードモデル
B.ソーシャルマーケティング
C.生態学的モデル
第11章 ライフステージ・ライフスタイル,健康状態と栄養教育
A.妊娠・授乳期
1 妊娠・授乳期の特徴と栄養教育
2 妊娠期の栄養教育
3 授乳期の栄養教育
B.乳・幼児期
1 乳・幼児期の成長・発達を重視した栄養教育の特徴と課題
2 乳幼児期の食生活の現状と栄養教育のためのアセスメント
3 乳幼児期の栄養教育の目標
4 乳幼児期の栄養教育の内容
5 市町村母子保健事業における栄養教育
6 保育所・幼稚園を拠点とした食育
C.学童期
1 学童の食育の特徴
2 学校を拠点とした食育
D.思春期
1 思春期の特徴
2 思春期にみられる疾患・症状
3 思春期における生活習慣の問題点
4 思春期の栄養教育
5 栄養教育の実際
E.成人期
1 成人期の栄養教育の特徴と留意事項
2 労働と栄養教育
3 地域における栄養教育
4 外食と栄養教育
5 単身生活と栄養教育
6 在日外国人に対する栄養教育・
7 成人を対象とした栄養教育における連携
F.高齢期
1 高齢期の栄養教育の特徴と留意事項
2 高齢期のライフイベント(退職,死別,病気,介護など)と栄養教育
3 介護予防・介護と栄養教育
G.障害者
1 障害者とは
2 障害者に対する栄養教育の特徴と留意事項
3 障害者の共生と栄養教育
H.傷病者
1 傷病者に対する栄養教育の目的
2 栄養教育が適用される疾患
3 傷病者における栄養教育の特徴と留意点
4 医療機関(病院)における栄養教育の実際
5 医療と保健・福祉の連携による栄養教育
付録 栄養指導(栄養教育)と法律
参考図書
索引
改訂第4版の序
わが国では第二次世界大戦後に戦争や紛争のない平和な社会が維持されてきたため、食生活をはじめとする生活習慣が疾病構造に極めて重大な影響を及ぼしている。終戦後の食糧不足による低栄養状態からおよそ20年で脱却し、健康的な食生活のゆえに世界一の長寿国と讃えられた時を経て、急速に過栄養や偏食に伴う栄養不足を原因とする生活習慣病の罹患率が高まった。これまで長い間、生活習慣病の予防と早期治療の重要性が唱えられ、様々な対応が行われてきたにもかかわらず、残念ながら改善の兆しはみえず、すでに医療経済の破綻が懸念されている。一方で、超高齢社会となり、単に老化に起因するものだけではなく、治療予後不良のために健康長寿を維持できない高齢者が急増している。このため、虚弱や低栄養状態への対応が喫緊の課題とされて久しい。さらに、近年は地球温暖化や地殻変動の影響を受けて自然環境が著しく変化し、自然災害が多発して人々が日常生活を維持できなくなり、想定外の健康問題を抱えることも多い。
人は、食物を摂取して命を育み永らえるのであるから、人々が毎日の食生活を望ましい内容で営むことができれば、健康問題の多くを防ぎ、病態の悪化や重症化も阻止できるはずではないだろうか。
本書を用いて学ぶ管理栄養士を目指す学生には、何故それができなかったのか、何故できていないのかを考えていただきたい。そして、人々が自らの健康を維持し生活の質を高めるために、あなたは、誰に対して、いつ、どこで、何を、誰とともに、どのように関わればよいのか、を本書から学び、積極的に行動していただきたい。今、管理栄養士には栄養教育を通じて人々の健康と生活の質および人生の質の向上に貢献することが期待され、責任を果たし得る能力が求められている。
今回の本書の改訂では、2015(平成27)年の管理栄養士国家試験出題基準の改定内容を考慮したうえで、栄養教育に関連した諸科学において学問的な成熟が確認されている事項を整理した。本書で学んだ管理栄養士が、栄養教育計画を立案できるようになること、プログラムをマネジメントできるようになること、こころを通わせて人々と関わることができるようになること、そして国内に留まらず、食と栄養の専門家として世界で力を尽くすことを願ってやまない。
2016年8月
編集者を代表して
丸山千寿子