はじめて学ぶやさしい疫学改訂第3版
日本疫学会標準テキスト
監修 | : 日本疫学会 |
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総編集 | : 磯博康/祖父江友孝 |
ISBN | : 978-4-524-24399-0 |
発行年月 | : 2018年9月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 194 |
在庫
定価2,200円(本体2,000円 + 税)
正誤表
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2020年01月23日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
医療・保健従事者にとって必須の基礎科学でありながら、理解するのが難しいといわれている疫学について、初学者を対象にわかりやすく解説した好評テキスト。簡潔な文章とともに図表、イラストによって視覚的な理解をたすけ、必要かつ十分な知識が学べるよう工夫した。改訂第3版では、章立ての再構成、新しい概念・定義の追加、「システマティックレビュー」「バイアスと交絡」などの新設を行い、一層の内容充実を図った。
【主要目次】
1章 疫学とは何か
A 定義
B 疫学的な考え方と疫学が取り扱う分野
C 歴史上の疫学の業績に学ぶ
2章 疾病の発生原因解明の追究までの流れとその関連事項
A 疫学的アプローチに関する基本的事項
B 臨床疫学
C 治験
3章 疫学で用いられる指標
A 頻度の測定
B 頻度の比較
4章 疫学研究を始める前に
A 調査対象の選択に関する基本的条件
B 分母の選定方法
C 標本の抽出方法と問題点
D 分子の把握方法
E 信頼性と妥当性
F 疫学研究方法の種類
G 疾病の発生原因追究のための手順
5章 記述疫学
A 定義
B 主な記述要因とその目的
C 記述的研究の例
D 仮説の設定方法
6章 分析疫学
A 定義
B 種類と特徴
6-1 生態学的研究と横断研究
A 生態学的研究
B 横断研究
6-2 症例対照研究
A 概要
B 定義
C 症例対照研究の分析
D 症例の選定
E 対照の選定
F 情報の収集
G 症例対照研究で生じやすいバイアス
H 症例対照研究の長所と短所
6-3 コホート研究
A 概要
B 研究の進め方
C 研究遂行上考慮すべき条件
D 解釈における注意点
E コホート研究の例
7章 介入研究
A 定義と特徴
B 研究参加者に関する留意事項
C 無作為割り付けとブラインド法(盲検法)
D 非ランダム化比較試験
E 効果判定
F 介入研究の例
8章 システマティックレビュー
A 定義
B メタアナリシス
C 手法
9章 バイアスと交絡
A 選択バイアス
B 情報バイアス
C 交絡因子
D 交絡因子の制御方法
10章 因果関係
A 関連の種類
B 因果関係の判定
11章 スクリーニング
A 定義・目的
B スクリーニング実施上の原則
C スクリーニングの妥当性の検討
12章 情報収集方法
A 種類
B 調査票などによる調査法
C 調査票の作成
13章 情報処理
A 情報処理の基礎
B 情報セキュリティ
C 文献検索
14章 疫学で用いられる統計学的方法とその解釈
A 疫学データの整理
B 推定と検定
C 2種類のデータの関連
D 欠損値の処理方法
E 図の種類と使い分け
F 高度な分析方法
15章 生命表・平均寿命
A 平均寿命の計算の考え方
B 生命表関数
C 健康寿命
16章 保健統計調査
A 人口静態統計
B 人口動態統計
C 国民健康・栄養調査
D 患者調査
E 国民生活基礎調査
F 疾病及び関連保健問題の国際統計分類(国際疾病分類)
G 政府統計の総合窓口
17章 診療関連データベース
A 二次利用可能な診療関連データ
B 診療関連データベースの注意点
18章 疫学研究と倫理
A 研究者が守るべき基本原則
B 個人情報保護
C インフォームド・コンセント
D 介入研究
E 利益相反
F 臨床研究法
G 研究結果の発表
H 研究計画書
I 倫理審査委員会
J 研究の実例
19章 領域別の測定方法・分析方法
19-1 栄養疫学
A 定義
B 食事アセスメント(食事調査)
C 栄養疫学におけるバイアス
19-2 運動疫学
A 身体活動,運動,生活活動
B 推奨される身体活動量
C 身体活動測定法
19-3 分子疫学
A 概要
B 分子疫学研究で用いられる研究デザイン,分子マーカー
C 倫理的配慮
D 研究の大規模化
E 分子疫学研究の例
19-4 感染症疫学
A 感染症の予防
B 疫学指標
19-5 社会疫学
A 定義
B 社会経済的地位の測定
C ライフコースアプローチ
19-6 睡眠休養
A 客観的方法(脳波,アクチグラフなど)
B 標準化された心理測定学的方法(自記式質問票など)
19-7 メンタルヘルス
A 測定方法
B 質問紙を用いたメンタルヘルス測定検査法共通の長所・短所
19-8 嗜癖・依存
19-9 生活・人生
A 生活機能を評価する指標
B 生活の質を評価する指標
索引
改訂第3版の序
疫学は、人の集団において、健康事象の多寡を観察し、その発生要因、促進・抑制要因を分析し、健康問題の解決を図る方法論を提供し、実践に結びつける学問です。集団科学(ポピュレーション・サイエンス)とも呼ばれます。疫学の歴史は、19世紀半ばイギリスのジョン・スノウ医師がコレラ菌発見より30年も前に、コレラの流行の地理的・時間的観察から、井戸水がその要因と推察し、井戸の閉鎖によりコレラの流行をくい止めた実践活動に遡ります。その後、疫学研究は感染症のみならず、非感染疾患、その他多くの病気、健康事象にも適用され、同時にその研究方法も多様化し発展してきました。さらに最近では、実世界(リアルワールド)における大量のデータを活用し、集団の社会経済心理要因、地理情報といった社会・環境要因から、個人のゲノム情報、生体情報、社会経済心理要因といった種々の要因に至るまで、人生のライフステージ(ライフコース)に沿って解析を行う手法が提唱され、実践されつつあります。世界が少子化・超高齢化に進む現在、人々の健康を包括的にかつ長期的な時間経過にわたって解析し、健康問題の解決にあたる疫学の重要性は、予防医学、臨床医学、歯科学、看護学、保健学、栄養学、薬学にとどまらず、工学、心理学、経済学、政策学等の社会科学分野にも広がりをみせています。そのため、疫学の知識、技能、経験を有する研究者、実務家の社会的需要は今後益々大きくなることが予想されます。
本書は、2002年初版、2010年第2版を経て、今回第3版となりますが、一貫して、疫学をはじめて学ぼうとする学生、大学院生、研究者、実務家、一般人を対象とし、初心者でもわかりやすい表現で図や表を多用し、必要かつ十分な知識と技能を学べるように工夫をしてあります。疫学を学ぶ際には、生物統計学、倫理の基本的知識が必要なため、それらの項目もカバーしています。今回の改訂では、新しい基本概念・定義の追加、レポート課題、最新のトピックス欄(コーヒーブレイク)の追加、そして、付録を割愛し、「8章システマティックレビュー」「12章情報収集方法」「13章情報処理」「19章領域別の測定方法・分析方法」等の新設を行いました。また、疫学の知識、技能、経験をある程度有する人に対しても、疫学を体系的に整理し直せるよう編集しました。
本書の内容には、医師、歯科医師、看護師、保健師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士等、多くの保健医療福祉の専門職を対象とした大学のコアカリキュラムや国家試験出題基準に沿った必須項目が網羅されています。そして、日本疫学会の専門家認定試験のための標準テキストとして使用することを想定しています。
多くの方々が疫学を学び、使い、知識・技能のブラッシュアップをするために、本書を役立てていただければと存じます。
2018年8月吉日
第8・9代 日本疫学会理事長 磯博康
第10代 日本疫学会理事長 祖父江友孝