教科書

はじめて学ぶやさしい疫学改訂第4版

日本疫学会標準テキスト

監修 : 日本疫学会
編集 : 福島若葉/関根道和/尾島俊之
ISBN : 978-4-524-20448-9
発行年月 : 2024年3月
判型 : B5判
ページ数 : 232

在庫あり

定価2,750円(本体2,500円 + 税)

  • 新刊
  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

疫学はすべての医療・保健医療従事者にとって重要性を増している.本書は初学者からを対象とし難解といわれる疫学をわかりやすく解説したテキストである.第4版では,各領域の国家試験出題基準・コアカリキュラムを精査,新たな章立てとし,発展学習のためのコラム,レポート課題を充実,各領域国家試験から良問を掲載.日本疫学会疫学専門家認定試験標準テキスト.

1章 疫学とはなにか
  A 疫学の定義
  B 歴史的な疫学事例
  C 健康の決定要因と「社会の健康」

2章 疫学を理解するための基本
  A 疫学研究の手順
  B 研究課題と仮説の設定
  C 研究対象者の選定
  D 情報収集方法の検討
  E 疫学研究デザイン
  F 信頼性・妥当性・誤差
  G 因果関係
  H 結果の社会還元

3章 疫学で用いられる指標
  A 頻度を表す指標
  B 関連を表す指標
  C 指標の比較

4章 疫学研究デザイン
 イントロダクション
 4章-1 記述疫学
  A 概要・方法
  B 長 所
  C 短 所
  D 疫学研究事例
 4章-2 生態学的研究
  A 概要・方法
  B 長 所
  C 短 所
  D 疫学研究事例
 4章-3 横断研究
  A 概要・方法
  B 長 所
  C 短 所
  D 疫学研究事例
 4章-4 症例対照研究
  A 概要・方法
  B 長 所
  C 短 所
  D 疫学研究事例
 4章-5 コホート研究
  A 概要・方法
  B 長 所
  C 短 所
  D 疫学研究事例
 4章-6 介入研究:ランダム化比較試験
  A 概要・方法
  B 長 所
  C 短 所
  D 疫学研究事例
 4章-7 介入研究:非ランダム化比較試験
  A 概要・方法
  B 長 所
  C 短 所
  D 疫学研究事例

5章 システマティックレビュー
  A 定 義
  B 方 法

6章 バイアスと交絡
  A はじめに
  B 選択バイアスと情報バイアス
  C 交絡因子

7章 スクリーニング
  A 定義・目的
  B スクリーニング実施上の原則
  C スクリーニングの有効性の検討

8章 情報収集方法
  A 情報の種類
  B 調査票などによる調査方法
  C 調査票と依頼文

9章 情報処理
  A 情報処理の基礎
  B 情報セキュリティ
  C 文献検索

10章 疫学で用いられる統計学的方法とその解釈
  A 疫学データの整理
  B 推定と検定
  C 2種類のデータの関連
  D 欠損値の処理方法
  E 図の種類と使い分け
  F 高度な分析方法

11章 生命表・平均寿命
  A 平均寿命の計算の考え方
  B 生命表関数
  C 健康寿命

12章 保健統計調査
  A 公的統計と統計法
  B 主な人口・保健統計調査

13章 診療関連データベース
  A 二次利用可能な診療関連データベース
  B 研究・実務に使用されるレセプトデータ
  C 診療関連データベースを利用する利点と注意点

14章 疫学研究と倫理
  A 研究者が守るべき基本原則
  B 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針
  C 個人情報保護
  D インフォームド・コンセント(IC)
  E 対象者の保護,侵襲・介入
  F 研究計画書と倫理審査
  G 臨床試験登録,研究結果の発表
  H 臨床研究法,治験
  I 研究不正
  J 利益相反

15章 領域別の疫学
 はじめに
 15章-1 臨床疫学
  A 概 要
  B 領域固有の事項,測定方法や疫学指標
 15章-2 栄養疫学
  A 概 要
  B 領域固有の事項,測定方法や疫学指標
 15章-3 運動疫学
  A 概 要
  B 領域固有の事項,測定方法や疫学指標
 15章-4 分子疫学
  A 概 要
  B 領域固有の事項,測定方法や疫学指標
  C 疫学研究事例
 15章-5 感染症疫学
  A 概 要
  B 領域固有の事項,測定方法や疫学指標
 15章-6 社会疫学
  A 概 要
  B 領域固有の事項,測定方法や疫学指標
 15章-7 環境疫学
  A 概 要
  B 領域固有の事項,測定方法や疫学指標
  C 疫学研究事例
 15章-8 放射線疫学,電磁界の疫学
  A 概 要
  B 領域固有の事項,測定方法や疫学指標
 15章-9 小児保健の疫学
  A 概 要
  B 領域固有の事項,測定方法や疫学指標
 15章-10 歯科保健の疫学
  A 概 要
  B 領域固有の事項,測定方法や疫学指標
  C 疫学研究事例
 15章-11 睡眠・休養
  A 概 要
  B 領域固有の事項,測定方法や疫学指標
 15章-12 メンタルヘルス
  A 概 要
  B 領域固有の事項,測定方法や疫学指標
 15章-13 嗜癖・依存
  A 概 要
  B 領域固有の事項,測定方法や疫学指標
 15章-14 生活・人生
  A 概 要
  B 領域固有の事項,測定方法や疫学指標
練習問題・想定問題
解 答
索 引

 疫学とは「明確に規定された人間集団の中で出現する健康関連のいろいろな事象の頻度と分布およびそれらに影響を与える要因を明らかにして,健康関連の諸問題に対する有効な対策樹立に役立てるための科学」と定義されています.歴史的には,19世紀半ばのロンドンで,ジョン・スノウが,コレラの流行状況を時間的・地理的に注意深く観察した結果,ある特定の地域の給水ポンプで汲み上げた井戸水が原因と推察し,給水ポンプの取っ手を外すことで流行をくい止めたことが,疫学の始まりとして語られます.日本では,高木兼寛の海軍における脚気予防の活動が有名です.いずれも当時置かれていた衛生環境や信じられていた学説,また,コレラの原因であるコレラ菌,脚気の原因であるビタミンB1(不足)の発見がどちらも30年後だったことを考えると,両者の注意深い観察とそれに基づいた実践活動の素晴らしさがわかります.近年では,新型コロナウイルス感染症の流行に伴い,どのような人に,どのような時に,どのような場所で,感染が広がるのかを観察することで,予防行動につなげる知見が得られたことは記憶に新しく,疫学研究に対する社会の理解も広まり,さまざまな場でその重要性を増しています.
 本書は,2002年初版,2010年第2版,2018年第3版を経て,今回第4版の刊行となりました.当初より,疫学を「はじめて学ぶ」大学生・専門学校生等に対し,疫学の理論,手法また展開をわかりやすく簡潔に解説した書として,多くの医療従事者の養成課程で採用されてきました.第3版からは日本疫学会認定疫学専門家試験に向けた標準テキストとしても活用されています.さらに,今版は,学会監修として多くの疫学者が賛同できる内容とすることを主眼として,学会内で公募したパブリックコメントの反映,構成・項目内容の精査を行い,同じく公募にお応えいただいた上級疫学専門家を主とした著者による執筆と,これまで以上に広く読者のニーズに応える大幅改訂となっています.医学,歯学,薬学,看護学,保健学,その他の医療の各領域の国家試験出題基準・モデルコアカリキュラムと照合し,記述内容,用語の定義などを精査して汎用性を高めたのみならず,実社会で役立っている疫学事例の提示などの記述・項を新設し,学生の興味,発展的な学習意欲を喚起するものといたしました.学習効果向上のために,図表を多用し,各章の冒頭には「学修のポイント」を示すこと,アクティブ・ラーニング,セルフ・ラーニングの観点から,章末掲載の「レポート課題」を継続・拡充すること,各項に関連する良問を各領域の国家試験から抜粋し練習問題として盛り込むこと,実際的な教材とすることなどを心がけて作成し,紙面の工夫,教材の充実を図りました.
 医療の各領域を学ぶ学生,大学院生や,公衆衛生活動の従事者等の学びにつながるよう編集しております本書が,多くの方の知識の習得と知識に裏打ちされた実践活動につながることを期待しております.

2024年2月吉日
第12・13代 日本疫学会理事長
玉腰 暁子

9784524204489