教科書

これからのコミュニティファーマシー[電子版付]

編集 : 恩田光子/岡田浩
ISBN : 978-4-524-40459-9
発行年月 : 2025年12月
判型 : B5判
ページ数 : 312

在庫あり

定価5,720円(本体5,200円 + 税)

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薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)「B 社会と薬学」の内容を「コミュニティファーマシー(地域薬局)」の視点から扱う教科書.個人と集団双方のwell-beingに貢献できる力を養う.注目のトピックスに関してコラムを掲載したほか,「プロフェッショナリズム」,「デジタル技術」,「アウトカムの可視化」など,新たな学修事項にも対応.各章末にはグループディスカッション用のテーマを掲載.

 優良業種とみなされた薬局の倒産がニュースとなる昨今である。薬局の未来に対して「これでいいのか」と考える薬剤師は増えつつあるのではないか。現在の業務や経営について、改善点や新たなアイデアを求めている人に「これからの」という言葉は刺さるだろう。本書を手にするのは主に薬学生だと思うが、上記のように疑問を抱く薬剤師にもおすすめの本である(電子版も付属している)。すぐに使えて明日の業務に役立つマニュアルが書かれたハウツー本、ではないが、急がば回れ、基本に立ち返って考える上で非常に参考になる本書をぜひご一読頂きたい。
 薬学部が6年制となり20年、この間の社会情勢の変化は凄まじく、それに伴って医療をめぐる環境も激変した。その変化を見越しての年限延長であったが、この間2度の薬学教育のカリキュラムの改訂が行われ、令和4年度改訂版モデル・コア・カリキュラムの「B.社会と薬学」がカバーする範囲は拡大の一途に見受けられる。この「社会と薬学」の内容に基づき、特に地域住民の「健康とwell-being」を支える存在としての薬剤師についてまとめられたものが本書である。本書全体を眺めて、薬学教育の変遷がここに凝縮されていると感じた。すなわち、いわゆる「薬局業務」の最先端に止まらない、いわば日本の医療の変化に基づく地域医療のあり方と、それを支える技術・教育・研究が「コミュニティファーマシー」という言葉に包含されているとの印象を持ったのである。本書の冒頭には、倫理観とプロフェッショナリズムの章があり、低学年の薬学生にはなかなか難しいかとは思うが、学習の進展に併せ何度もこの章に立ち戻って理解を深めるのが良いと思う。また本書の大きな特徴として、デジタル技術の活用や、データサイエンスなど、今後の薬局に必要となるであろう項目が具体例とともに紹介されている。さらに、アウトカムの可視化として、臨床研究について述べられており、薬局で行う実例が紹介されている。製薬企業の行う治験は、極めて多くの人員と時間、そして経済力を必要とするが、薬局で行う臨床研究は、患者のケアに直結するものでありながら、費用は決して莫大なものではない。医療の発展に薬局が直接貢献できる臨床研究は、今後ぜひ一般化し定着していただきたいものである。
 1970年代半ばからの医薬分業の進展に伴い、「薬局」は処方箋調剤モデルが一般化し、保険薬局は一般的に「調剤薬局」と認識されるようになった。もちろん、薬剤師の専権業務は調剤であり、その責務は医薬品の適正使用にある、というのは全ての根幹である。しかし一方で薬剤師法第一条にある通り、薬剤師は、「調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保する」ものである。確かに第一条の前半については、技術的にも大きく進歩し、実績も上げている。しかしこの文章の謳う最終目的は「国民の健康な生活を確保するもの」であり、前半部分を全うすればこの究極の目的は達成されると無邪気に考えるのが許されたのは、前世紀までのことであろう。
 薬学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂が始まろうとしている。次の改訂では間違いなく、薬剤師のプロフェッショナリズムに基づく活動の教育が拡大すると考えられる。本書はその方向性を予見するものとして、優れた未来予測の書と言えるだろう。

評者●神戸大学名誉教授/京都大学医学研究科特任教授 平井みどり

9784524404599