薬系 物理化学[電子版付]
| 編集 | : 向高弘/田中将史/安川圭司 |
|---|---|
| 編集協力 | : 安岡久志 |
| ISBN | : 978-4-524-40431-5 |
| 発行年月 | : 2025年9月 |
| 判型 | : B5判 |
| ページ数 | : 320 |
在庫
定価6,050円(本体5,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文

薬学部向けの物理化学の教科書.学生が苦手意識を抱きやすい数式については導入背景やその意味を丁寧に解説するとともに,イメージを把握しやすいように図やイラストも活用.問題を充実させ,理解の定着を図った.また,コラムなどで他科目や臨床とのつながりについても触れ,学生が物理化学を学ぶ意義を実感しやすい内容とした.薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)に対応.電子版付.
序章 物理化学を学ぶ準備
1 数学の基礎知識
A 三角比と三角関数
B ベクトル
C 指数関数と対数関数
D 微分
E 不定積分
F 定積分
G 微分方程式
2 物理の基礎知識
A 物理量
B 有効数字
C 物体の運動
D 仕事とエネルギー
E 運動量
F 等速円運動と単振動
G 波動(波の性質,波の表し方)
章末問題
第1部 物質の構造
1章 化学結合
1 原子軌道と電子配置
A 電子は原子の中でどのようにふるまうのか?
B 量子数
C 電子配置に関する原則
D 価電子
E 電気陰性度
2 化学結合の種類
A イオン結合
B 共有結合
C 配位結合
3 分子軌道法と混成軌道
A 分子軌道法
B 混成軌道
4 共役と共鳴
A 共役
B 共鳴
章末問題
2章 分子間相互作用
1 静電相互作用
A クーロン力
B クーロンポテンシャルエネルギー
2 双極子とファンデルワールス引力
A 双極子とその種類
B 双極子モーメント
C 永久双極子と永久双極子の相互作用
D 永久双極子と誘起双極子の相互作用
E 瞬間的に生じる双極子と誘起双極子の相互作用
F レナード?ジョーンズポテンシャル
3 水素結合
A 水素結合と水分子
B 水素結合と物性
C 水素結合と生体分子
4 疎水性相互作用
A 疎水性相互作用の原動力
B 疎水性相互作用の具体例
5 電荷移動相互作用
A 電子供与体と電子受容体,電荷移動錯体とそのスペクトル
B 電荷移動相互作用の具体例
6 医薬品と生体高分子間の相互作用
A 医薬品とDNAの相互作用
B 医薬品とタンパク質の相互作用
章末問題
3章 原子・分子の挙動
1 電磁波の性質,電磁波と物質との相互作用
A 電磁波の性質
B 物質との相互作用と分析への応用
2 電子遷移,分子の振動と回転
A 分子のエネルギー
B 電子遷移
C 分子振動
D 分子回転
3 スピンと磁気共鳴
A スピン
B 磁気共鳴
4 屈折,旋光性,回折,散乱
A 屈折
B 旋光性
C 回折
D 散乱
章末問題
第2部 物質のエネルギーと平衡
4章 気体の状態と物質のエネルギー
1 ファンデルワールスの状態方程式
A 状態量と状態方程式
B ファンデルワールスの状態方程式
2 気体の分子運動とエネルギーの関係
3 エネルギーの量子化とボルツマン分布
A 分子運動のエネルギーの量子化
B ボルツマン分布則
4 熱力学における系,外界,境界
5 熱力学第一法則
A 仕事
B 熱
C 熱力学第一法則
6 状態関数と経路関数
7 定圧過程,定容過程,等温過程,断熱過程
A 定圧過程
B 定容過程(定積過程)
C 等温過程
D 断熱過程
8 定容熱容量および定圧熱容量
A 熱容量
B 定容熱容量
C 定圧熱容量
D p?V図での仕事
9 エンタルピー
10 化学変化に伴うエンタルピー変化
A 化学変化に伴うエンタルピー変化
B ヘスの法則
C 標準状態
D 標準生成エンタルピー
E 標準生成エンタルピーを用いた標準反応エンタルピーの計算
章末問題
5章 自発的な変化
1 自発的な変化
A 自発的な変化と乱雑さ
B エントロピー
C 状態関数としてのエントロピー
D 熱力学第二法則
E 物理過程に伴うエントロピー変化
F 熱力学第三法則
G 化学反応に伴うエントロピー変化
2 自発的な変化の方向とギブズエネルギー
A ギブズエネルギー
B ギブズエネルギー変化と温度・圧力との関係
C 反応に伴うギブズエネルギー変化
3 酵素反応とギブズエネルギー
章末問題
6章 化学平衡の原理
1 ギブズエネルギーと化学ポテンシャル
A そもそも,部分モル量とは?
B 化学ポテンシャルとは?
C 化学ポテンシャルの組成による変化
2 ギブズエネルギーと平衡定数
A 圧平衡定数と濃度平衡定数
B 反応ギブズエネルギーと平衡定数
C 「平衡状態に達する」とは?
D 反応の自発性と温度
3 平衡定数に及ぼす圧力および温度の影響
A 平衡定数に及ぼす圧力の影響
B ファントホッフの式の導出
C 平衡定数に及ぼす温度の影響
4 共役反応の原理
章末問題
7章 相平衡
1 純物質の相と相平衡
A 相と相転移
B 純物質(1成分系)の相図
C 2つの相境界における圧力と温度の関係
D 相律
2 多成分系の相平衡
A 2成分系の相平衡
B 3成分系の相平衡
章末問題
8章 溶液の性質
1 活量と活量係数
A 理想溶液の蒸気圧とラウールの法則
B 実在溶液の蒸気圧とヘンリーの法則
C 活量と活量係数
2 希薄溶液の束一的性質
A 蒸気圧降下と沸点上昇
B 凝固点降下
C 溶解度
D 浸透圧
E 溶質に電離や会合が生じる場合の束一的性質
3 束一的性質の薬学的応用
A オスモル濃度
B 食塩価法(食塩当量法)
C 浸透とろ過との対比および逆浸透
D 拡散および人工透析
4 電解質溶液の性質
A イオン雰囲気
B イオン間の相互作用と平均活量,平均活量係数
C 電解質溶液の電気伝導性
章末問題
9章 電気化学
1 化学電池
2 起電力とギブズエネルギー
A 起電力
B 化学電池と熱力学
3 ネルンストの式
4 電極電位(酸化還元電位)とその応用
A 濃淡電池
B pH測定
5 生体膜電位
章末問題
第3部 物質の変化
10章 反応速度
1 反応次数と速度定数
A 反応速度とは
B 反応次数とは
C 反応速度定数とは
2 微分型速度式と積分型速度式
A 0次反応
B 1次反応
C 2次反応
3 反応次数の決定法
A 積分法とは
B 微分法とは
C 半減期法とは
4 見かけの反応次数
A 擬1次反応
B 擬0次反応
5 複合反応
A 可逆反応
B 平行反応
C 連続反応
6 反応速度と温度
A アレニウスの式
B 活性化エネルギー
7 代表的な触媒反応
A 触媒とは
B 酸塩基触媒とは
8 酵素反応と阻害様式
A 酵素の特徴
B 酵素の反応機構
C ラインウィーバー?バークプロット
D 阻害剤とは
章末問題
章末問題 解答・解説
物理化学とは,物理学の理論や実験方法を用いて物質の構造や化学的性質,変化などを解明する化学の一分野であり,原子,電子のふるまいから物質の状態や性質をとらえる量子化学,物質全体の巨視的な性質を対象とする熱力学,化学反応の速度の制御や反応機構の解明を目的とする反応速度論などが含まれる.物理化学は薬学教育においても基礎薬学を構成する1 つの柱であり,医薬品の性質,医薬品が投与される生体やそれを構成する細胞の性質,さらには投与された後の医薬品の作用や動態など,医薬品に関連する多くのことを理解するうえで非常に重要となる.にもかかわらず,基礎薬学科目の中で物理化学を苦手とする薬学生は一定数存在しているのではないかと危惧している.
本書は,物理化学を苦手とする薬学生にとってわかりやすい物理化学の教科書を提供することを目的に企画された.令和4 年度改訂版の『薬学教育モデル・コア・カリキュラム』の「C‒1 化学物質の物理化学的性質」の中の「C‒1‒2 電磁波,放射線」の大部分については放射薬学の良書に譲ることとし,「C‒1‒1 化学結合と化学物質・生体高分子間相互作用」,「C‒1‒3 エネルギーと熱力学」,「C‒1‒4 反応速度」を本書の対象とした.これらの内容は網羅しつつ,学術的な論理展開に沿った構成とすることで,読者の理解度が高まることを期待した.また,物理化学を苦手とする薬学生が物理化学的な事象をイメージとして把握しやすいよう,図を多用することを心がけた.数式については,導出される背景やその意味を詳述するとともに,例題として典型的な問題に解説を加えることで数式の理解とその活用法についての知識の定着を図った.また各章には,基本的な事項の確認問題から薬剤師国家試験を意識した応用問題までと幅広い章末問題を用意した.さらに,コラムなどで他科目や臨床とのつながりについても触れ,薬学生が物理化学を学ぶ意義を実感しやすい内容とした.
薬学部での物理化学の履修は,高校卒業後すぐの初年次など,低学年であることが多いかと思われる.また,本書で取り上げた内容は,高校の物理や化学といった教科で紹介される事項もあり,一方で高校で習ったことと少々取り上げ方が異なる場合もある.そこで,高校と大学での学習のギャップを埋めるべく,高校で長く教鞭をとられた安岡久志先生に参画いただき,序章にて大学の物理化学を学ぶために必要な高校における数学,物理の基礎的な内容を紹介いただくとともに,本書全般にわたっての編集協力をお願いした.この取り組みが物理化学のより良い理解へつながることを期待する.
本書は,物理化学を苦手とする薬学生のためにわかりやすい物理化学の教科書を作成するとの情熱から生まれたものであるが,著者の意図と読者の認識は必ずしも一致するとは限らない.本書の内容に関して,読者からの率直なご批判やご意見をお寄せいただければ幸いである.それらを参考にして,今後,薬学生にとってより良い教科書となるようブラッシュアップしたいと願っている.
最後に,本書の出版に多大なるご尽力をいただいた株式会社南江堂の諸氏に心よりお礼申し上げたい.薬学部で学ぶ学生諸君が,本書を通じて物理化学の魅力とその実用性を実感することができ,その理解が諸君の未来に対して少しでも役立つことになれば幸いである.
2025 年8 月
向 高弘
田中将史
安川圭司


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