コンパスシリーズ
コンパス医薬品情報学
理論と演習
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 小林道也/中村仁 |
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ISBN | : 978-4-524-40333-2 |
発行年月 | : 2015年9月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 242 |
在庫
定価4,620円(本体4,200円 + 税)
正誤表
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2018年02月26日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
演習問題の豊富な医薬品情報学の教科書。わかりやすくコンパクトにまとめられた各章で基礎を学んだ後、章末の演習問題に取り組むことにより、実務実習に出る前から手を動かし経験を積むことができる。演習問題は自主学習のほか、スモールグループディスカッションの課題も含まれており、幅広い学習を支援。新旧両方の薬学教育モデル・コアカリキュラムに対応。
1章 医薬品情報学総論
A 医薬品情報とは
1 医薬品と化合物(試薬)の違い
2 医薬品として必須の情報
3 医薬品情報の性質
4 医薬品情報の活用
5 医薬品情報の評価・創出
B 医薬品情報にかかわる法律と制度
1 法律,政令,省令
2 医薬品医療機器等法
3 薬剤師法
4 医薬品開発に関する厚生労働省令
C 医薬品情報にかかわる職種
1 製薬企業における医薬品情報にかかわる職種
2 卸売販売業者における医薬品情報にかかわる職種
3 病院・薬局における医薬品情報にかかわる職種
4 行政機関の医薬品情報に果たす役割
5 医薬品情報にかかわる認定専門薬剤師
2章 医薬品情報の発生過程
A 開発過程で得られる情報
1 医薬品の研究開発から製造販売承認
2 製造販売承認に必要な医薬品情報コンテンツ
3 コモン・テクニカル・ドキュメント(国際共通化資料,CTD)の構成
4 医薬品の製造販売承認審査
5 添付文書と医療用医薬品の承認審査情報
6 開発時の製造販売承認の際に必要な申請時情報の活用とその限界
B 市販後に得られる情報
1 GVPに関連する医薬品情報
2 GPSPに関連する医薬品情報
3 副作用・感染症報告制度
3章 医薬品の情報源
A 加工度による分類
1 加工度による医薬品情報の分類
2 医薬品情報の収集手順
3 一次資料
4 二次資料
5 三次資料
B 情報発信者による分類
1 厚生労働省など行政機関の提供する資料
2 製薬企業などの提供する資料
C 日常よく利用する医薬品情報源
1 医療用医薬品添付文書
2 一般用医薬品添付文書
3 医薬品インタビューフォーム
4 その他の医薬品情報
4章 医薬品情報の検索
A 医薬品情報のデータベース
1 データベースとは
2 データベースの種類
3 医薬品情報データベース
B 情報の検索方法
1 情報検索のキーワードの選択と検索式
2 医学・薬学論文の検索とキーワード・シソーラス
5章 医薬品情報の評価
A 医薬品情報の信頼性と妥当性
1 医薬品情報の評価に必要な基本的事項
2 種々の情報源の評価
B 医薬品の有効性の評価
1 医薬品の有効性評価のための基礎知識
2 有効性に関する医薬品情報の評価
3 医療施設における有効性情報の比較評価
C 医薬品の安全性の評価我妻恭行
1 医薬品の安全性を評価するしくみの概要
2 医薬品開発における安全性評価
3 市販後における医薬品の安全性評価
4 医療施設における医薬品の安全性評価
5 医薬品リスク管理計画(RMP)
D その他の評価(医薬品適正使用のための評価)
1 医薬品の採用・選択のための評価
2 医薬品適正使用のための評価
6章 医薬品情報の加工と提供
A 受動的医薬品情報提供
1 受動的医薬品情報提供に関する法律
2 受動的医薬品情報提供の流れ
3 医療スタッフへの受動的医薬品情報提供
4 患者への受動的医薬品情報提供
B 能動的医薬品情報提供
1 能動的医薬品情報提供に関する法律
2 能動的医薬品情報提供の流れ
3 医療スタッフへの能動的医薬品情報提供
4 患者への能動的医薬品情報提供
5 知的所有権
7章 EBMと臨床研究
A EBMの概念とプロセス
1 EBMとは
2 EBMのプロセス
3 EBMの実践による利点と欠点
B 臨床研究の手法
1 生物統計
2 観察研究
3 介入研究
C 臨床研究と倫理
1 ヘルシンキ宣言
2 臨床研究の倫理指針
3 疫学研究の倫理指針
D 臨床研究の立案と実践
1 エンドポイント
2 サンプルサイズ
3 バイアスと交絡の回避
4 臨床適用上の結果の解釈
本書で対応する薬学モデルコア・カリキュラム一覧
索引
序文
「くすりくそうばい(薬九層倍)」という言葉がある。薬の売価が原価に比べて非常に高いことを示す言葉であるが、薬をただの化学物質としてみればその原価は安い。しかし、薬としての価値は、その化学物質に付加された情報にある。どのくらいの量をいつ飲めばどのような病気に効果があるのか、期待する効果以外にどのような作用をもっているのか、体内ではどのような挙動をするのか、などの情報が備わってはじめて薬として認められる。これらの情報を生み出すためのコストが薬の価格には含まれている。
医薬品はさまざまな情報を有しているわけであるが、情報はあくまで意思決定のための道具である。たとえば、朝に傘をもって出かけるかどうかを判断するのに、私たちは降水確率の情報を利用する。もちろん、同じ40%の降水確率でも、人によって傘が必要かどうかの判断は異なるであろう。しかし、情報があるのとないのでは、判断のしやすさはまったく違う。同様に、医療の現場で適正な薬物療法を実施するための判断にも、医薬品情報を道具として上手に用いることが必要になる。そのためには、医薬品情報がどのように私たちに提示されるのか、どのように評価し活用すればよいのかを理解する必要がある。これらを扱うのが医薬品情報学である。
インターネットの発達により、誰もが医薬品情報に容易にアクセスすることが可能な時代になった。しかし、膨大な情報のなかから意思決定に必要な「価値のある情報」をみつけることは必ずしも容易ではない。薬剤師は薬の専門家として、患者やほかの医療従事者に真に必要とされる医薬品情報を選択し提供する大きな役割を担っている。
本書は「わかりやすい・ミニマムエッセンス」をコンセプトとした南江堂「コンパスシリーズ」の1つとして刊行された。主に実務実習前の薬学生を対象とし、実務実習に必要な医薬品情報の知識・技能を習得できる教科書を目指した。多くの演習を掲載し、読者が実際に手を動かし医薬品情報の扱いかたの経験を積むことができるように編集した。ぜひ課題に積極的に取り組み、医薬品情報の活用術を身に付けていただきたい。
本書は現行のコアカリキュラム「C15治療に役立つ情報(1)医薬品情報」に対応した内容になっており、各章の大項目ごとに対応するSBOを示してある。(平成27)年度から新薬学教育モデル・コアカリキュラムに基づいた教育カリキュラムが各大学でスタートしているが、新コアカリキュラムでは「E3治療に役立つ情報(1)医薬品情報」の部分をカバーしているので、新旧カリキュラムの対応一覧表をあわせてご覧いただきたい。また、実務実習での学生指導にも活用できる内容を盛り込んでいるので、医療現場の薬剤師の先生方にも役立てていただければと考えている。
2015年7月
小林道也
中村仁