教科書

OTC医薬品学

薬剤師にできるプライマリ・ケア

編集 : 渡辺謹三/葦沢龍人/佐藤誠一
ISBN : 978-4-524-40331-8
発行年月 : 2016年10月
判型 : B5
ページ数 : 286

在庫なし

定価3,960円(本体3,600円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

薬学教育モデル・コアカリキュラムに対応した、OTC医薬品を学ぶための教科書。総論では関連する法律・制度から広告まで、基本的な知識を体系的に解説。各論では薬局で遭遇する様々な症候に対して、薬剤師として的確な情報提供を行えるよう、臨床推論の過程をフローチャートとして示した。またOTC薬の有効成分について薬効群ごとに解説し、各成分の化学的、生理学的事項を記載することで他科目との連続性も意識した。薬学部における今後のOTC薬教育の指標となる一冊。

第1部 薬剤師とOTC医薬品
 1 社会におけるOTC医薬品と薬剤師
 2 チーム医療における薬剤師のセルフメディケーション支援
 3 OTC医薬品の特徴
  3-1 安全性の確保と誤用・濫用の防止
  3-2 製品名(商品名)
  3-3 配合成分
  3-4 一般生活者への指向
 4 OTC医薬品を取り巻く法律と制度
 概説
  4-1 製造販売白根喜浩
   1 製造販売業許可と製造販売承認
   2 OTC医薬品(要指導・一般用医薬品)の承認申請と申請区分
   3 製造販売承認基準
   4 ダイレクトOTCとスイッチOTC
   5 一般用医薬品と要指導医薬品
   6 GMP適合性調査
   7 承認審査の流れ
  4-2 販売制度
   1 医薬品の区分と一般用医薬品・要指導医薬品
   2 要指導医薬品・一般用医薬品の取扱い
   3 「濫用等のおそれのある医薬品」の販売
   4 一般用医薬品の特定販売
   5 OTC医薬品の販売業者の種類
   6 医薬部外品および化粧品の販売
  4-3 医薬品副作用被害救済制度
   1 医薬品副作用被害救済制度とは
   2 医薬品副作用被害救済制度のしくみ
   3 救済の対象とならない医薬品
 5 OTC医薬品の剤形
  1 錠剤
  2 カプセル剤
  3 顆粒剤,散剤
  4 経口液剤,シロップ剤
  5 軟膏剤
  6 クリーム剤
  7 外用液剤,ゲル剤
  8 貼付剤
  9 スプレー剤
  10 点眼剤
  11 点鼻剤
  12 坐剤
  13 口腔用剤
  14 含嗽剤
  15 口腔用スプレー剤
 6 OTC医薬品の容器・包装と表示
  6-1 OTC医薬品の容器および包装形態
  6-2 OTC医薬品の表示
   1 行政機関による法令・通知等の規制に基づく表示
   2 業界団体による自主的な規制に基づく表示
 7 添付文書から得られる情報
  7-1 OTC医薬品の添付文書の特徴
  7-2 OTC医薬品の添付文書から得られる情報のポイント
   1 OTC医薬品の添付文書に使用される標識的マーク
   2 販売名,薬効名およびリスク区分
   3 使用上の注意
   4 効能または効果
   5 用法および用量
   6 成分および分量
   7 保管および取扱い上の注意
   8 消費者相談窓口
   9 製造販売業者等の氏名または名称および住所
 8 OTC医薬品の広告
 9 相談対応の手順
  9-1 OTC医薬品についての相談対応の手順と特徴
   1 OTC医薬品についての相談対応の特徴
   2 OTC医薬品の相談対応を構成する5つの段階
  9-2 情報収集による臨床推論
  9-3 OTC医薬品の選択
   1 OTC医薬品選択の考え方
  9-4 OTC医薬品の情報提供
   1 来局者に提供しなければならない医薬品情報
   2 来局者が求める医薬品情報
   3 健康に関する情報提供など
   4 OTC医薬品販売後のアフターケアのための情報提供
  9-5 販売後のモニタリングとアフターケア
   1 販売記録の作成
   2 医薬品購入後のアフターケア
   3 症状が改善しない,副作用などの発症に対する対処
   4 医薬品副作用被害救済制度についての情報提供
   5 医薬品安全性情報報告
 10 OTC医薬品の相談対応に必要なコミュニケーション
  10-1 身だしなみ
  10-2 基本的な態度
  10-3 言葉づかい
  10-4 解釈モデルの把握と理解
 11 OTC医薬品で発症する可能性がある重篤副作用
  11-1 副作用とその種類
  11-2 OTC医薬品の添付文書で注意喚起される重篤な副作用
第2部 症候からみたOTC医薬品
 1 発熱
  1-1 はじめに(概念,定義,頻度,病因,病態)
  1-2 判断に必要な病歴聴取(問診)
  1-3 判断に必要なフィジカルアセスメント
   1 視診
   2 触診
  1-4 鑑別
   1 かぜ症候群
   2 溶血性連鎖球菌感染症
   3 壊死性リンパ節炎(菊池病)
   4 伝染性単核球症
   5 ネコひっかき病
  1-5 OTC医薬品の適応
  1-6 受診勧奨
  1-7 おわりに
 2 頭痛
  2-1 はじめに(概念,定義,頻度,病因,病態)
  2-2 判断に必要な病歴聴取(問診)
  2-3 判断に必要なフィジカルアセスメント
  2-4 鑑別
   1 片頭痛
   2 緊張型頭痛
   3 群発頭痛
  2-5 OTC医薬品の適応
   1 一次性頭痛(片頭痛,緊張型頭痛)を疑う場合
   2 かぜ症候群に伴う頭痛を疑う場合
  2-6 受診勧奨
  2-7 おわりに
 3 歯痛
  3-1 はじめに(概念,定義,頻度,病因,病態)
  3-2 判断に必要な病歴聴取(問診)
  3-3 判断に必要なフィジカルアセスメント
  3-4 鑑別
   1 心臓性歯痛
   2 筋・筋膜性歯痛
   3 神経血管性歯痛
   4 神経障害性歯痛
   5 上顎洞性歯痛
   6 精神疾患による歯痛
   7 特発性歯痛(非定型歯痛)
  3-5 OTC医薬品の適応
   1 う蝕の場合
   2 その他の歯原性歯痛
   3 知覚過敏
  3-6 受診勧奨
  3-7 おわりに
 4 腰痛
  4-1 はじめに(概念,定義,頻度,病因,病態)
  4-2 判断に必要な病歴聴取(問診)
  4-3 判断に必要なフィジカルアセスメント
  4-4 鑑別
   1 非特異的腰痛
  4-5 OTC医薬品の適応
   1 骨格筋組織に由来する疼痛
  4-6 受診勧奨
  4-7 おわりに
 5 リンパ節腫脹
  5-1 はじめに(概念,定義,頻度,病因,病態)
  5-2 判断に必要な病歴聴取(問診)
  5-3 判断に必要なフィジカルアセスメント
   1 感染性
   2 腫瘍性
   3 皮膚病変
  5-4 鑑別
   1 溶血性連鎖球菌感染症
   2 壊死性リンパ節炎(菊池病)
   3 伝染性単核球症
   4 ネコひっかき病
  5-5 OTC医薬品の適応
  5-6 受診勧奨
  5-7 おわりに
 6 不眠
  6-1 はじめに(概念,定義,頻度,病因,病態)
  6-2 判断に必要な病歴聴取(問診)
  6-3 判断に必要なフィジカルアセスメント
  6-4 鑑別
  6-5 OTC医薬品の適応
  6-6 受診勧奨
  6-7 おわりに
 7 咳嗽
  7-1 はじめに(概念,定義,頻度,病因,病態)
  7-2 判断に必要な病歴聴取(問診)
  7-3 判断に必要なフィジカルアセスメント
  7-4 鑑別
  7-5 OTC医薬品の適応
  7-6 受診勧奨
  7-7 おわりに
 8 下痢
  8-1 はじめに(概念,定義,頻度,病因,病態)
  8-2 判断に必要な病歴聴取(問診)
  8-3 判断に必要なフィジカルアセスメント
  8-4 鑑別
   1 急性下痢
   2 過敏性腸症候群
  8-5 OTC医薬品の適応
  8-6 受診勧奨
  8-7 おわりに
 9 便秘
  9-1 はじめに(概念,定義,頻度,病因,病態)
  9-2 判断に必要な病歴聴取(問診)
  9-3 判断に必要なフィジカルアセスメント
  9-4 鑑別
   1 弛緩性便秘
   2 直腸性便秘
   3 過敏性腸症候群
  9-5 OTC医薬品の適応
  9-6 受診勧奨
  9-7 おわりに
 10 掻痒症
  10-1 はじめに(概念,定義,頻度,病因,病態)
  10-2 判断に必要な病歴聴取(問診)
  10-3 判断に必要なフィジカルアセスメント
  10-4 鑑別
   1 全身性掻痒
   2 限局性掻痒
  10-5 OTC医薬品の適応
  10-6 受診勧奨
  10-7 おわりに
 11 結膜充血
  11-1 はじめに(概念,定義,頻度,病因,病態)
  11-2 判断に必要な病歴聴取(問診)
  11-3 判断に必要なフィジカルアセスメント
  11-4 鑑別
  11-5 OTC医薬品の適応
  11-6 受診勧奨
  11-7 おわりに
 12 排尿障害(下部尿路症状)
  12-1 はじめに(概念,定義,頻度,病因,病態)
  12-2 判断に必要な病歴聴取(問診)
  12-3 判断に必要なフィジカルアセスメント
  12-4 鑑別
   1 前立腺肥大症
   2 過活動膀胱(OAB)
  12-5 OTC医薬品の適応
  12-6 受診勧奨
  12-7 おわりに
第3部 薬効からみたOTC医薬品
 ■各章末に掲載されている配合成分表についての注釈
 1 解熱鎮痛薬
  1-1 解熱鎮痛薬の効能効果
  1-2 解熱鎮痛薬の主な配合成分
  1-3 成分の配合と特徴的な製品
  1-4 情報提供と服薬説明
  1-5 セルフケアのポイント
 2 外用鎮痛消炎薬
  2-1 外用鎮痛消炎薬の効能効果
  2-2 外用鎮痛消炎薬の主な配合成分
   1 NSAIDs
  2-3 成分の配合と特徴的な製品
   1 製品選択の指針
  2-4 情報提供と服薬説明
  2-5 セルフケアのポイント
 3 睡眠改善薬,鎮静薬
  3-1 睡眠改善薬,鎮静薬の効能効果
  3-2 睡眠改善薬,鎮静薬の主な配合成分
   1 睡眠改善薬
   2 鎮静薬
  3-3 成分の配合と特徴的な製品
   1 睡眠改善薬
   2 鎮静薬
  3-4 情報提供と服薬指導
  3-5 セルフケアのポイント
 4 鼻炎用薬
  4-1 鼻炎用薬の効能効果
  4-2 鼻炎用薬の主な配合成分
  4-3 成分の配合と特徴的な製品
  4-4 情報提供と服薬説明
  4-5 セルフケアのポイント
 5 鎮咳去痰薬
  5-1 鎮咳去痰薬の効能効果
  5-2 鎮咳去痰薬の主な配合成分
  5-3 成分の配合と特徴的な製品
  5-4 情報提供と服薬説明
  5-5 セルフケアのポイント
 6 かぜ薬
  6-1 かぜ薬の効能効果
  6-2 かぜ薬の主な配合成分
  6-3 成分の配合と特徴的な製品
  6-4 情報提供と服薬説明
  6-5 セルフケアのポイント
 7 鎮暈薬
  7-1 鎮暈薬の効能効果
  7-2 鎮暈薬の主な配合成分
  7-3 成分の配合と特徴的な製品
  7-4 情報提供と服薬説明
  7-5 セルフケアのポイント
 8 胃腸薬
  8-1 胃腸薬の効能効果
  8-2 胃腸薬の主な配合成分
  8-3 成分の配合と特徴的な製品
  8-4 情報提供と服薬説明
  8-5 セルフケアのポイント
 9 止瀉薬,整腸薬
  9-1 止瀉薬,整腸薬の効能効果
  9-2 止瀉薬,整腸薬の主な配合成分
  9-3 成分の配合と特徴的な製品
   1 止瀉薬
   2 整腸薬
  9-4 情報提供と服薬説明
  9-5 セルフケアのポイント
 10 瀉下薬,浣腸薬
  10-1 瀉下薬,浣腸薬の効能効果
  10-2 瀉下薬,浣腸薬の主な配合成分
  10-3 成分の配合と特徴的な製品
  10-4 情報提供と服薬説明
  10-5 セルフケアのポイント
 11 痔疾用薬
  11-1 痔疾用薬の効能効果
  11-2 痔疾用薬の主な配合成分
  11-3 成分の配合と特徴的な製品
   1 坐剤
   2 注入軟膏
   3 軟膏剤,クリーム剤,ゲル剤
   4 内服薬
  11-4 情報提供と服薬説明
  11-5 セルフケアのポイント
 12 化膿性疾患用薬,口唇ヘルペス再発用薬
  12-1 化膿性疾患用薬,口唇ヘルペス再発用薬の効能効果
  12-2 化膿性疾患用薬,口唇ヘルペス再発用薬の主な配合成分
   1 化膿性疾患用薬
   2 口唇ヘルペス再発用薬
  12-3 成分の配合と特徴的な製品
   1 化膿性疾患用薬
   2 口唇ヘルペス再発用薬
  12-4 情報提供と服薬説明
   1 化膿性疾患用薬
   2 口唇ヘルペス再発用薬
  12-5 セルフケアのポイント
 13 みずむし・たむし用薬,腟カンジダ再発用薬
  13-1 みずむし・たむし用薬,腟カンジダ再発用薬の効能効果
   1 みずむし・たむし用薬
   2 腟カンジダ再発用薬
  13-2 みずむし・たむし用薬,腟カンジダ再発用薬の主な配合成分
   1 みずむし・たむし用薬
   2 腟カンジダ再発用薬
  13-3 成分の配合と特徴的な製品
   1 みずむし・たむし用薬
   2 腟カンジダ再発用薬
  13-4 情報提供と服薬指導
   1 みずむし・たむし用薬
   2 腟カンジダ再発用薬
  13-5 セルフケアのポイント
   1 みずむし・たむし用薬
   2 腟カンジダ再発用薬
 14 外用鎮痒消炎薬
  14-1 外用鎮痒消炎薬の効能効果
  14-2 外用鎮痒消炎薬の主な配合成分
  14-3 成分の配合と特徴的な製品
  14-4 情報提供と服薬説明
  14-5 セルフケアのポイント
 15 口内炎用薬,うがい薬,のどスプレー
  15-1 口内炎用薬,うがい薬,のどスプレーの効能効果
  15-2 口内炎用薬,うがい薬,のどスプレーの主な配合成分
   1 口内炎用薬
   2 うがい薬およびのどスプレー
  15-3 成分の配合と特徴的な製品
   1 口内炎用薬
   2 うがい薬
   3 のどスプレー
  15-4 情報提供と服薬説明
   1 口内炎用薬
   2 うがい薬およびのどスプレー
  15-5 セルフケアのポイント
   1 口内炎
   2 のどの炎症
 16 眼科用薬
  16-1 眼科用薬の効能効果
  16-2 眼科用薬の主な配合成分
   1 充血除去成分
   2 調節機能改善成分
   3 消炎・収れん成分
   4 抗ヒスタミン成分
   5 抗アレルギー成分
   6 抗菌成分
   7 ビタミン類
   8 その他
  16-3 成分の配合と特徴的な製品
   1 一般点眼薬
   2 抗菌点眼薬
   3 人工涙液
   4 コンタクトレンズ装着液
   5 洗眼薬
   6 アレルギー専用薬
  16-4 情報提供と服薬説明
   1 使用者は誰か?
   2 治療中の疾患や服用中の薬はあるか?
   3 コンタクトレンズの使用の有無
   4 ニーズの確認
  16-5 セルフケアのポイント
 17 ビタミン主薬製剤,ビタミン含有保健薬,薬用酒
  17-1 ビタミン主薬製剤,ビタミン含有保健薬,薬用酒の効能効果
   1 ビタミン主薬製剤
   2 ビタミン含有保健薬
   3 薬用酒
  17-2 ビタミン主薬製剤,ビタミン含有保健薬,薬用酒の主な配合成分
   1 ビタミン主薬製剤
   2 ビタミン含有保健薬
   3 薬用酒
  17-3 成分の配合と特徴的な製品
   1 ビタミン主薬製剤
   2 ビタミン含有保健薬
   3 薬用酒
  17-4 情報提供と服薬説明
   1 ビタミン主薬製剤,ビタミン含有保健薬
   2 薬用酒
  17-5 セルフケアのポイント
 18 最近登場したOTC医薬品
  1 フッ化ナトリウム
  2 イコサペント酸エチル
  3 赤ブドウ葉乾燥エキス混合物
  4 チェストベリー乾燥エキス
  5 ミノキシジル
  6 テストステロン
  7 テストステロンプロピオン酸エステル(プロピオン酸テストステロン)
索引

巻頭言

 薬剤師法第1条に規定された「医薬品の供給」、すなわちOTC医薬品についての相談対応、情報提供、販売は、薬剤師の重要な任務である。とくにわが国で要指導医薬品および第1類医薬品を対象として、これらを行うことが許されているのは薬剤師のみである。
 最近、こうした薬剤師の任務に対する社会のニーズは高くなっており、「日本再興戦略〜JAPAN is BACK 〜」(平成25年6月14日、閣議決定)には、薬局を地域の健康情報の拠点として、セルフメディケーションを推進することが盛り込まれた。また、厚生労働省の「健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会」(平成27年6月4日開催)では、その資料の中に「薬局薬剤師の課題と今後の方向性」の1つとして、「OTC・衛生材料などの提供と適正使用を推進し、健康・栄養などの生活習慣全般に関する相談などを気軽に受けられる薬局を増やして行く必要がある(セルフメディケーションの推進)」ことが記された。
 薬学教育では、平成27年4月の新入生から適用されている「平成25年度改訂版薬学教育モデル・コアカリキュラム」(平成25年12月25日、薬学系人材養成の在り方に関する検討会)の「E医療薬学」のなかに、「要指導医薬品・一般用医薬品とセルフメディケーション」が1つのユニットとして新たに取り入れられた。
 このような現状から、薬剤師を養成する六年制薬学部の講義に使用し得るOTC医薬品に関する教科書の必要性を感じ、下記の編集方針のもとに本書を企画、作成した。
 本書は、前述の薬学教育モデル・コアカリキュラムへの対応と薬剤師が行うOTC医薬品の相談対応業務の双方における使用を前提として、総論と各論をバランスよく配し講義、実務実習、薬局実務などのいずれの場面においても使用できるものとした。
 第1部では、総論としてOTC医薬品に焦点を絞って特徴、法規、剤形などに言及し、さらに来局者からの相談に対応する際の手順とコミュニケーションなどを解説した。
 第2部では、薬剤師によるプライマリ・ケアとして受診勧奨の必要性、あるいはOTC医薬品による経過観察の可能性を判断するための病歴聴取、フィジカルアセスメントのポイントについて、比較的薬局で出会うことの多い症候を中心に解説した。
 第3部では、各薬効群の医薬品について配合される主な成分とその特徴、情報提供と服薬説明、セルフケアについて解説した。章末には、各薬効群の医薬品に配合される成分を厳選して表にまとめて記し、可能なものについては構造式を付した。
 6年間の薬学教育の現状を踏まえると、講義で「要指導医薬品・一般用医薬品とセルフメディケーション」を学ぶのは3年生後期から4年生のうちの半期(15回程度の講義)と考えられる。そこで第1部から第3部のすべてを要点のみに絞った解説に努めた。しかし、OTC医薬品に関する情報は膨大なため結果300頁近い規模になった。講義では適宜取捨選択し使用していただければ幸いである。また、前述の通り要点のみに絞り、すべてを網羅することができなかったために、本書に足りない内容が多々あるのは否めない。それらはOTC医薬品を広範囲に取り扱った好著も多く上梓されているので、そちらを参照していただければ幸甚である。
 なお、本書では処方箋なしに販売が可能な「要指導医薬品」と「一般用医薬品」をまとめて「OTC医薬品」と表記した。ただし、法規の解説などでこれらを区別する必要があるときは、それぞれ「要指導医薬品」、「一般用医薬品」と記した。「薬局製造販売医薬品(薬局製剤)」は、紙数などの関係から今回は本書に含めることができなかった。これらの製造販売は薬剤師の重要な任務の1つなので、解説は今後の課題としたい。
 各章あるいは各項目間で、内容の精粗、表現や用語の不統一などがあれば編者の責任である。また、内容の不備、誤りなどについてはお手数をおかけすることになるがご指摘をいただければ幸甚である。 最後に、多くの制約の中で各章のご執筆を担当して下さった先生方、種々の情報を提供して下さった方々と本書の企画から出版に至るまで著者との連絡、打合せや校正などに多大な労を取られた株式会社南江堂の諸氏に深甚なる感謝の意を表する次第である。

2016年初秋
編集者ら

9784524403318