パートナーシリーズ
パートナー医薬品化学改訂第2版
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 佐野武弘/内藤猛章/堀口よし江 |
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ISBN | : 978-4-524-40284-7 |
発行年月 | : 2012年2月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 320 |
在庫
定価5,170円(本体4,700円 + 税)
サポート情報
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2015年03月12日
改訂薬学教育モデル・コアカリキュラム(平成25年度改訂版)対応表
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
有機化学や薬理学の知識を土台として、医薬品を化学構造から理解することを目的とした教科書。30年にわたって版を重ねてきた『薬品化学』(津田喜典ほか編)の後継書籍。今改訂では化学構造に関連した相互作用の記述を追加したほか、使用頻度の多い医薬品の構造式にマークをつけ、学習のめやすとした。
序章 医薬品化学とは
1.医薬品化学の目標
2.医薬品化学の位置づけ
第1章 医薬品と生体との関わり
1.医薬品と生体との相互作用
A 医薬品の作用の特徴
B くすりの作用部位―薬物受容体
C くすりと生体との結合
1)共有結合
2)配位結合
3)イオン結合
4)水素結合
5)疎水性結合
6)電荷移動錯体形成
7)カチオン-π結合
D タンパク質構造の特徴
E 薬物受容体と薬物の結合
F アゴニス卜とアンタゴニス卜
G 代謝拮抗薬
2.医薬品のコンポーネント
A ファーマコフォアの同定の基本的な考え方
B ファーマコフォアの同定のいくつかのサンプル
1)β-ラクタム系抗生物質のファーマコフォア
2)非ステロイド酸性抗炎症薬のファーマコフォア
3)抗コリン薬のファーマコフォア
4)統合失調症治療薬のファーマコフォア
5)アリールピペラジンをファーマコフォアとする薬物
第2章 ベンゼン誘導体:ベンゼン置換医薬品
1.ベンゼンの化学的性質
2.フェノール誘導体
A 殺菌薬としてのフェノール誘導体
B 緩下薬としてのフェノール誘導体
C 診断薬としてのフェノール誘導体
D 抗がん薬としてのフェノール誘導体
代表的な医薬品
3.ベンゼンカルボン酸誘導体
A 解熱・鎮痛・抗炎症薬としてのベンゼンカルボン酸誘導体
1)COXの構造
2)NSAIDs各論
B COX-2選択的阻害薬
C 造影剤としてのベンゼンカルボン酸誘導体
D 抗カビ薬・保存剤としてのベンゼンカルボン酸誘導体
代表的な医薬品
4.アミノベンゼン誘導体
A 解熱・鎮痛薬としてのアミノベンゼン誘導体
B 局所麻酔薬・抗不整脈薬としてのアミノベンゼン誘導体
C その他
代表的な医薬品
5.ベンゼンスルホンアミド誘導体
A サルファ剤
1)サルファ剤の歴史
2)サルファ剤の作用
3)サルファ剤の構造と作用の関係
4)変形サルファ剤
B スルホンアミド系利尿薬
1)腎臓の機能と利尿薬
2)炭酸脱水酵素阻害薬
3)サイアザイド(チアジド)系利尿薬
4)ループ利尿薬
C アリールスルホニルウレア血糖降下薬
D その他のスルホンアミド類
代表的な医薬品
酸・塩基の性質
A 酸・塩基の定義
B 酸・塩基の強さの尺度
1)酸の場合
2)塩基の場合
C 医薬品に含まれる酸性官能基と塩基性官能基
1)酸性官能基
2)塩基性官能基
一般的性質と反応
A 錯塩形成反応
B 加水分解反応
C アシル化反応
D カルボニル誘導体とアミン類の縮合
E 各級アミンと亜硝酸との反応
F フェノールのブロム化
G 熱、酸およびアルカリ分解反応
H フェノール誘導体の酸化と還元
第3章 複素環化合物:複素環関連医薬品
1.医薬品における複素環の意義
A 複素環化合物の分類
B 医薬品における複素環の意義
1)生体内物質との相互作用を考慮して開発された複素環を有する合成医薬品
2)複素環を有する天然化合物より誘導された医薬品
3)複素環化合物の新合成法開発が引き金となって合成された医薬品
2.複素環の性質
3.含窒素複素環化合物
A 核酸塩基類似医薬品
ナビゲーション:抗がん薬(抗悪性腫瘍薬)
1)ピリミジン塩基類似薬
2)プリン塩基類似医薬品
3)葉酸関連医薬品
4)キナゾリン関連医薬品
5)キサンチン類似医薬品
代表的な医薬品
B アシル尿素類
1)バルビタール類
2)非環式アシル尿素類
3)抗てんかん薬
4)チオ尿素類:チロキシン合成阻害薬
代表的な医薬品
C ベンゾジアゼピン系医薬品
1)ベンゾジアゼピンの作用機構
2)構造上の特徴
3)代謝と作用時間
4)その他の類似薬
代表的な医薬品
D ピリジン関連医薬品
1)イソニコチン酸誘導体
代表的な医薬品
E キノリン、イソキノリン関連医薬品
1)8-ヒドロキシキノリン類
2)キニーネ類(キナ塩基)
3)4-キノロン-3-カルボン酸類
4)9-アミノアクリジン誘導体
代表的な医薬品
5)イソキノリン誘導体
6)イソキノリン誘導体の多様性
7)パパベリンとその転換体
代表的な医薬品
F アゾール関連医薬品
1)ピラゾール誘導体
2)フェニルピラゾロン類
3)フェニルピラゾリジンジオン類
代表的な医薬品
G インドール関連医薬品
1)インドール誘導体の多様性
2)トリプタミン誘導体の幻覚発現作用
3)インドールアルカロイド
代表的な医薬品
H その他の含窒素複素環化合物
1)ジヒドロピリジン類とカルシウム拮抗薬
2)べンゾイミダゾール誘導体
3)トロンビン阻害作用薬
4)カリウムチャネル作用薬
5)アゾール系抗真菌薬
6)その他の含窒素複素環化合物
代表的な医薬品
4.含酸素複素環化合物
A フラン誘導体
B クマリン類とその誘導体
1)クマリン誘導体
2)ヒドロキシクマリン類
代表的な医薬品
C フラボン類、クロモン類、クロマン類
代表的な医薬品
一般的性質と反応
A π過剰系複素環化合物
1)ピロール、フラン、チオフェン類
2)縮合ヘテロ5員環化合物
3)1、2-アゾールおよび1、3-アゾール類
B π不足系複素環化合物
1)ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン類
2)縮合ヘテロ6員環化合物
3)プリン誘導体
4)3H-1、4-べンゾジアゼピン
5)2-ピラノン、4-ピラノン、クマリン、クロモン類
第4章 オニウム塩:アセチルコリン類似医薬品
1.ニコチン作用関連医薬品
A 神経節刺激薬と神経節遮断薬
B 神経筋遮断薬
C 中枢性ニコチン受容体部分作動薬
代表的な医薬品
2.ムスカリン作用関連医薬品
A コリン作動薬
B 抗コリン作動薬(抗ムスカリン薬)
代表的な医薬品
3.コリンエステラーゼ(ChE)阻害薬
A 可逆的ChE阻害薬
B 非可逆的ChE阻害薬(リン酸化剤)
C ChE再賦活薬
D 中枢性ChE阻害薬(アルツハイマー病治療薬)
代表的な医薬品
一般的性質と反応
第四級アンモニウム塩
第5章 脂肪族アミン:生体アミン関連医薬品
1.カテコールアミン関連医薬品
A カテコールアミンの生合成
1)生合成過程
2)生合成の調節
3)遊離の制御
B カテコールアミンの不活性化過程
1)モノアミンオキシダーゼ(MAO)による代謝
2)カテコール-0-メチルトランスフェラーゼ(COMT)によるメチル化
3)モノアミントランスポーターによる再吸収
C カテコールアミン受容体
1)アドレナリン受容体
2)ドパミン受容体
D アドレナリンの構造修飾と作用
1)ヒドロキシ基の存在と作用形式
2)光学活性と作用
3)アミン部分の置換基の修飾と受容体選択性
4)芳香環の構造修飾―フェノール性ヒドロキシ基の変換
5)芳香環および側鎖の構造修飾―β受容体拮抗薬の発見
6)α1およびα2サブタイプの受容体の発見
E アドレナリン作動薬
1)α1受容体作動薬
2)α2受容体作動薬
3)β1受容体作動薬
4)β2受容体作動薬
5)混合型および間接型アドレナリン作動薬
F アドレナリン拮抗薬
1)α受容体拮抗薬(αアンタゴニス卜)
2)非選択的β受容体拮抗薬(非選択的βアンタゴニス卜)
3)選択的β1受容体拮抗薬(選択的β1アンタゴニスト)
4)α1、β1受容体拮抗薬(α1、β1アンタゴニス卜)
5)選択的β2受容体拮抗薬(選択的β2アンタゴニス卜)
6)ノルアドレナリンの生合成阻害(降圧薬)
G カテコールアミン代謝酵素阻害薬
1)MAO阻害薬
2)COMT阻害薬
H ドパミン作動薬
1)末梢組織での作動薬
2)中枢神経でのドパミン作動薬(パーキンソン病治療薬)
I ドパミン桔抗薬(アンタゴニスト)
代表的な医薬品
2.セロトニン関連医薬品
A セロトニンの生合成と代謝
1)生合成
2)代謝
B セロトニンの貯蔵、再取り込み、および遊離
1)貯蔵
2)再取り込み
3)遊離の調節
C セロトニンの作用と受容体
D セロトニン作動薬(セロ卜ニンアゴニスト)
1)5-HT1受容体作動薬
2)5-HT4受容体作動薬
E セロトニン拮抗薬(セロトニンアンタゴニスト)
1)5-HT2受容体拮抗薬
2)5-HT3受容体拮抗薬
F セロトニントランスポーター阻害薬
代表的な医薬品
3.ドパミンおよびセロトニン関連医薬品(統合失調症治療薬)
A 統合失調症治療薬の開発
B 定型抗精神病薬
1)フェノチアジン系統合失調症治療薬(D2受容体拮抗薬)
2)ブチロフェノン系統合失調症治療薬(D2・5-HT2受容体拮抗薬)
3)ジベンゾアゼピン系統合失調症治療薬(D2受容体拮抗薬)
4)ベンズアミド系統合失調症治療薬(D2受容体拮抗薬)
C 非定型抗精神病薬
1)セロトニン・ドパミン拮抗薬(SDA)
2)多受容体作用抗精神病薬(MARTA)
3)治療抵抗性統合失調症治療薬
4)ドパミン部分アゴニスト
代表的な医薬品
4.セロトニンおよびノルアドレナリン関連医薬品(抗うつ薬)
A 抗うつ薬の開発
B 三環系抗うつ薬
C 四環系抗うつ薬とNaSSA
1)四環系抗うつ薬
2)ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)
D トリアゾロン系抗うつ薬
E 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
F セロトニンーノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
代表的な医薬品
5.ヒスタミン関連医薬品
A ヒスタミンの生合成と代謝
B ヒスタミンの作用と受容体
C ヒスタミン受容体作動薬(ヒスタミンアゴニスト)
D ヒスタミン受容体拮抗薬(ヒスタミンアンタゴニス卜)
1)H1受容体拮抗薬構造モデル
2)古典的H1受容体拮抗薬(第一世代)
3)非鎮静性H1受容体拮抗薬(第二世代)
4)抗アレルギー性H1受容体拮抗薬(第二世代)
5)同受容体拮抗薬の開発
6)H2受容体拮抗薬の修飾
代表的な医薬品
6.オピオイド関連医薬品
A モルヒネの歴史
B モルヒネの構造
C モルヒネの構造修飾と鎮痛活性
1)官能基の修飾
2)モルヒネ骨格の単純化
D オピオイド拮抗薬(オピオイドアンタゴニスト)
E 麻薬拮抗性オピオイド鎮痛薬
F 光学活性と鎮痛活性
G 中枢性鎮咳薬
H 内因性オピオイドとオピオイド受容体
1)内因性オピオイド
2)オピオイド受容体
代表的な医薬品
一般的性質と反応
A 2-アミノアルコール部分の反応
1)β-アミノアルコールの酸化
2)NaOHとの反応
3)銅錯塩の形成(長井反応)
B アミン部分の反応
1)Picrateの形成
2)ベンズアミドの形成
3)イソニトリル反応(carby lamine反応)
4)ニトロプルシドナトリウムとの反応
第6章 ステロイド系医薬品
1.構造と命名
2.ステロイド系生理活性物質と医薬品
A 性ホルモン
1)男性ホルモン
2)黄体ホルモン
3)卵胞(発情)ホルモン(エストロゲン)
B 副腎皮質ホルモン
3.合成ステロイド
A エストロゲンの転換デザイン
B 合成エス卜ロゲンの構造要件
4.HMG-CoA還元酵素阻害薬
代表的な医薬品
一般的性質と反応
A 分光学的確認法
B 化学的確認法
第7章 アミノ酸とペプチド関連医薬品
1.アミノ酸関連医薬品
A 甲状腺ホルモン製剤
B 抗プラスミン薬
C 中枢神経刺激伝達に関連するアミノ酸誘導体
代表的な医薬品
2.ペプチド関連医薬品
A ヒトインスリン
B 合成カルシトニン誘導体
C 下垂体後葉ホルモン
D 視床下部ホルモン
E カルシニューリン阻害薬
F レニンーアンギオテンシン系に作用する降圧薬
1)アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
2)アンギオテンシンII(AII)受容体拮抗薬(ARB)
G HIVプロテアーゼ阻害薬
H タンパク質性医薬品と抗体医薬品
代表的な医薬品
3.β-ラクタム系抗生物質
A ペニシリン系抗菌薬
1)ペナム型化合物
2)ペネム型化合物
3)カルバペネム型化合物
4)オキサペナム型化合物:β-ラクタマーゼ阻害薬
代表的な医薬品
B セファロスポリン系抗菌薬
1)セフェム型化合物
2)セファマイシン型化合物
3)オキサセフェム型化合物
C モノバクタム系抗菌薬
4.その他のペプチド系抗生物質
一般的性質と反応
A アミノ酸の反応
1)酸化
2)Ninhydrin反応
3)硫黄の検出
B ペプチドの反応
1)Biuret反応
2)Lowry法
3)Edman分解
第8章 脂肪酸関連医薬品
1.エイコサノイドとは
A エイコサノイドの発見
B エイコサノイドの構造と命名法
2.エイコサノイド関連の必須脂肪酸と医薬品
3.エイコサノイドの生合成(アラキドン酸カスケード)
A リン脂質からのアラキドン酸の遊離
B プロスタグランジン類の生合成(シクロオキシゲナーゼ経路)
C ロイコトリエン類の生合成(リポキシゲナーゼ経路)
D 多価不飽和脂肪酸の代謝と生合成されるプロスタグランジン類
4.エイコサノイドの代謝(不活性化)
5.エイコサノイドの薬理作用
6.医薬品としてのエイコサノイド
7.エイコサノイド関連のターゲット医薬品
代表的な医薬品
一般的性質と反応
A 脂肪酸
1)熱分解反応
B プロスタグランジン
1)脱離反応E1ーelimination
和文索引
欧文索引
本書は2008年、薬学6年制教育に合わせて初版が刊行された。薬学6年制教育における薬学教育モデル・コアカリキュラムの中の「生体分子・医薬品を化学で理解する」の項目と「リード化合物の創製と最適化」の項目を意識して「医薬品の作用を化学構造と関連づけて理解できる」ことを基本方針として編集した。
今回の改訂にあたって以下のようなことを考慮した。2011年度で薬学6年制の学年が揃い、病院・薬局での実務実習も2年目を迎えている。医療の現場で薬剤師はチーム医療を担う一員として医薬品の専門家として薬物治療に加わると共に、薬品管理や医薬品情報の収集や発信の役割を担うことも期待されている。薬剤師の立場から医療に関与する場面を考えるとき、医薬品を化学物質としてとらえることができる目はこれまで以上に求められるものと思われる。今回の改訂は、新しい概念に基づく医薬品の出現や2011年に改正された第十六改正日本薬局方にも対応している。そしてこの機会に、本書が薬剤師にとっての単なる基礎知識となるだけではなく、医療現場における諸問題を分子レベルで科学的に解決するための知識の活用もできるように工夫して編集した。
第2版改訂の方針
(1)本書の基本的な概念「医薬品の作用を化学構造と関連させて理解するために、医薬品に含まれる代表的な化学構造とその性質に関する基礎的な知識を理解させる」は維持する。
(2)医薬品の作用発現には、医薬品の吸収、代謝、排池などの過程が重要な役割を果たしていることは、よく知られている。これらの過程もまた医薬品の構造に基づく化学的および物理的な性質に支配されている。その点を理解できるように化学構造上でそのことを示した。
(3)抗がん薬に関しては、その化学構造の多様なこと、それに対応して抗腫瘍作用のメカニズムが多様なことなどの理由で各章にわたって記載してきた。しかし、新薬として分子標的抗がん薬や抗体医薬が数多く市場に現れ始めている。これらに関して、コラムとして、抗がん薬の項を設けて詳述した。
(4)学生の知識として必要な重要な医薬品には、その構造にマークを付けた。
(5)医薬品の相互作用についても化学構造から理解できることが多いためその部分を新たに加筆した。
以上、本書の各章において、医薬品の構造認識に基づいて医薬品を理解するというコンセプトを具体的に表現するための工夫を追加した。しかし、複雑な構造を持つ医薬品の理解には、これで十分ではなく、更なる工夫が必要なことも認識している。そのためのご教示、ご批判をいただければ幸いである。また、本書は医薬品化学の教科書として刊行されたものではあるが、薬理学や薬物動態学の参考書としても活用いただければ幸いである。
2012年1月
佐野武弘 内藤猛章 堀口よし江