精神医学テキスト改訂第3版
精神障害の理解と治療のために
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 上島国利/立山萬里 |
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ISBN | : 978-4-524-26436-0 |
発行年月 | : 2012年2月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 380 |
在庫
定価4,620円(本体4,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
PT・OT、精神保健福祉士、保健師、看護師、ケースワーカーなどをめざす学生向けの最新のテキスト。現場で扱う精神疾患の解説を詳しくし、記述に軽重をつけ、また主要な疾患・症候には簡潔な「症例(ケース)」をつけ、具体的な理解を容易にしている。今改訂では、疾患の呼称変更、法改正などに対応し、新薬に関する情報も盛り込んで、内容をアップデートした。各項目に「学習のまとめ」を設け、学ぶべき内容を明確にした。
I.精神医学の基礎知識
A.精神医学の歴史
1 精神医学の源流
a.ギリシャ時代のヒポクラテス
b.近代精神医学のピネル
c.現代精神医学の黎明期
2 現代精神医学のはじまり
a.記述的精神医学
b.力動的精神医学
3 最近の精神医学
a.向精神薬療法の時代
b.“生物学的”精神医学の進歩と最近の国際分類への影響
4 日本の精神医学の歴史
B.精神医学の多元的な診断と治療
1 精神障害の力動的なモデル
2 DSM診断基準の「多軸評定法」
3 マイヤーの「精神生物学」
4 クレッチマーの「多元診断」
5 ビルンバウムの「構造分析」
6 最近の病因論と「構造分析」
a.素因的な因子
b.促進的な因子
c.持続的な因子
C.精神医学の基礎となる知識
1 脳の形態と機能
2 脳・神経の検査法
a.神経学的検査
b.神経心理学的検査
c.理化学的検査法
3 こころの発達理論と防衛機制
a.こころの発達理論
b.防衛機制
4 心理検査の種類
a.心理検査とは
b.心理検査の分類
c.心理検査の具体例
d.心理検査を用いる際の注意
D.精神科患者への接し方
1 治療者─患者関係のとり方
a.一般的な心得
b.面接が困難な患者の場合
c.転移と逆転移
d.治療者の倫理
2 治療契約と構造の重要性
a.治療契約
b.治療構造
3 インフォームド・コンセントの実際──精神医療領域で
a.精神医療におけるインフォームド・コンセント
b.統合失調症治療におけるインフォームド・コンセントの実際
c.精神科診断名の説明
E.精神症状のとらえ方
1 精神科的面接の方法
a.面接の目的・構造・方法
b.初回面接
c.望ましい面接を行うために考慮すべき事項
d.家族との面接
e.Shared Decision Makingの重要性
2 精神症状のとらえ方
a.精神的現在症のチェック
b.精神現象を「記述し了解する」方法
c.精神現象の「形」と「内容」の二分法
d.精神症状学における「形」のとらえ方
e.精神状態像のまとめ方
f.精神科診断の方法
g.精神状態像の多元的な診断
3 精神症状評価尺度の使い方
a.精神症状評価尺度の基礎知識
b.精神医学領域で使用される評価尺度
F.よくみられる精神症状と状態像
1 基本的な精神状態──意識・知能・性格の問題
a.意識の問題
b.知能の問題
c.性格の問題
2 知覚・思考・感情の異常
a.知覚の異常
b.思考の異常
c.感情の異常
3 記憶・意欲・行動・自我意識の異常
a.記憶の異常
b.意欲・行動の異常
c.自我意識の異常
G.精神科に必要な脳・神経症状の知識
1 巣症状
a.失語
b.失行
c.失認
2 脳局在症候群
a.前頭葉症候群
b.側頭葉症候群
c.頭頂葉症候群
d.後頭葉症候群
3 大脳辺縁系、間脳、大脳基底核、脳幹部の局在性障害による精神・神経症状
a.大脳辺縁系
b.間脳
c.大脳基底核
d.脳幹部
4 その他(意識障害に似た脳機能障害)
a.失外套症候群
b.無動無言症
c.閉じ込め症候群
●参考図書
II.精神障害の理解のための知識
A.身体因性の精神障害
1 症状性および器質性精神障害
a.疾患の概念
b.原因
c.臨床症状
d.各論
e.診断と治療
2 認知症性疾患
a.認知症の定義
b.認知症の原因疾患と分類
c.認知症と鑑別すべき状態
3 精神作用物質による精神と行動の障害
a.疾患の概念
b.アルコールによる障害
c.薬物依存(精神作用物質による精神および行動障害)
4 てんかん
a.疾患の概念
b.症状
c.診断
d.治療
B.内因性の精神障害
1 統合失調症
a.疾患の概念
b.疫学
c.病因
d.症状
e.診断
f.経過
g.治療
2 統合失調型障害と妄想性障害
a.統合失調型障害
b.妄想性障害
3 気分(感情)障害
a.疾患の概念
b.症状
c.診断
d.治療
C.心因性の精神障害
1 神経症とストレス障害
a.概念
b.神経症の病因論
c.各論
d.詐病と虚偽性障害
e.治療
D.摂食障害、睡眠障害
1 摂食障害
a.疾患の概念と症状
b.診断
c.治療
2 睡眠障害
a.不眠のタイプと症状
b.過眠をきたす疾患と症状
c.睡眠時随伴症
d.治療
E.成人のパーソナリティおよび行動障害
1 概念
2 症状と診断
a.パーソナリティ障害
b.習慣および衝動の障害
c.性同一性障害
d.性嗜好障害
e.他の成人のパーソナリティおよび行動の障害
3 治療
F.知的障害と心理的発達の障害
1 発達障害のとらえ方と特徴
a.とらえ方
b.分類
c.診断
2 知的障害
a.概念
b.症状と程度
c.病因
d.治療
3 学習障害
a.概念
b.症状
c.治療
4 小児自閉症
a.概念
b.症状
c.治療
5 アスペルガー症候群
a.概念
b.症状
c.治療
6 注意欠陥多動性障害
a.概念
b.症状
c.治療
G.児童・青年期の行動と情緒障害
1 児童・青年期の行動と情緒障害の分類
2 児童・青年期の行動と情緒障害の一般的な特性
3 児童・青年期の行動と情緒障害の症状・診断・治療
a.症状
b.診断
c.治療
4 児童・青年期に発症する統合失調症
a.学童期での発症
b.中学生での発症
c.高校生以降の発症
5 児童・青年期に発症する気分障害
6 児童・青年期に発症する強迫性障害
7 児童・青年期に発症する不安障害
8 児童・青年期に発症する身体表現性障害
9 児童・青年期に発症するストレス障害
a.急性ストレス反応
b.外傷後ストレス障害
10 チック障害
11 その他の児童・青年期の行動と情緒の障害
a.非器質性睡眠障害
b.選択性緘黙
c.分離不安障害
d.抜毛症
e.行為障害
f.被虐待児症候群・愛情剥奪症候群
●参考図書
III.精神科における治療法
A.薬物療法
1 抗精神病薬
a.抗精神病薬の種類
b.抗精神病薬の作用の特徴および作用機序
c.抗精神病薬が有効な疾患、病像
d.抗精神病薬の使用法
e.抗精神病薬の副作用
2 抗うつ薬
a.抗うつ薬の種類
b.抗うつ薬の作用の特徴および作用機序
c.抗うつ薬の適応
d.抗うつ薬の使用法
e.抗うつ薬の副作用
3 抗躁薬および気分安定薬
4 抗不安薬
a.抗不安薬の種類
b.抗不安薬の作用の特徴および作用機序
c.抗不安薬の適応
d.抗不安薬の使用法
e.抗不安薬の副作用
5 睡眠薬
a.睡眠薬の種類
b.睡眠薬の作用の特徴および作用機序
c.睡眠薬の使用法
d.睡眠薬の副作用
6 抗てんかん薬
7 精神刺激薬
8 抗酒薬
9 抗認知症薬
B.精神療法とカウンセリング
1 カウンセリングとは何か──カウンセリングをめぐる誤解
2 精神療法(心理療法)
a.支持的精神療法
b.表現的精神療法
c.洞察的(探索的)精神療法
d.訓練療法
e.芸術療法
f.催眠療法
g.集団精神療法
C.社会療法と家族療法
1 社会療法
a.ヨーロッパの流れ
b.日本の流れ
2 家族療法
a.家族研究からの発展
b.家族と感情表出
c.家族と心理教育
d.行動療法的家族療法
e.家族臨床
D.精神科作業療法
1 作業療法とは
2 作業療法の歴史
a.諸外国の歴史
b.わが国の歴史
3 作業療法士の教育
4 作業療法士の活動分野
5 作業療法の治療手段
a.作業種目の利用
b.グループの利用
c.作業療法士自身の利用
6 作業療法の目的と役割
a.評価
b.治療
c.リハビリテーション
d.予防
7 院内作業療法の実際
a.組織の概要
b.作業療法の流れ
c.作業活動
8 今後の課題
a.リハビリテーションシステムの整備
b.精神科チーム医療の推進
c.作業療法士の配置の適正化
d.作業療法の学問としての体系化
e.経済的基盤としての診療報酬の整備
E.精神科救急治療法
1 精神科救急とは
2 精神科救急の受診形態
3 精神科救急面接法
a.基本的面接態度
b.同伴者からの情報
c.患者本人の面接
4 精神科救急の診断手順
5 精神科救急の各病態と治療法
a.器質性精神障害および症状性精神障害
b.中毒性精神障害と急性薬物中毒
c.急性興奮状態
d.抑うつ状態および自殺企図
e.不安状態
f.錐体外路症状
6 精神保健福祉法とインフォームド・コンセント
F.電気けいれん療法
1 治療の適応となる疾患
2 治療の副作用
3 治療の流れ
a.前日まで
b.当日
c.治療コース
●参考図書
IV.精神医学に関連した知識
A.他科とのリエゾン精神医学での注意点
1 コンサルテーション・リエゾン精神医学の定義と歴史
a.コンサルテーション・リエゾン精神医学の定義
b.コンサルテーション・リエゾン精神医学の歴史
c.コンサルテーション・リエゾン精神医学の役割
2 医療スタッフとリエゾン精神医学
a.看護師とリエゾン精神医学
b.リハビリテーションとリエゾン精神医学
3 他科とのリエゾン精神医学での注意点
a.精神科への紹介の仕方
b.その他の注意点
B.精神鑑定と精神医療関連の法制度
1 精神鑑定の定義と種類
a.刑事精神鑑定
b.民事精神鑑定
2 精神医療法制度の変遷
a.精神病者監護法
b.精神病院法
c.精神衛生法
d.精神保健法
e.精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(「精神保健福祉法」)
f.心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(「心神喪失者等医療観察法」)
C.産業精神医学
1 産業精神医学とは
2 労働安全衛生法とメンタルヘルス指針
a.セルフケア
b.ラインによるケア
c.事業場内産業保健スタッフ等によるケア
d.事業場外資源によるケア
3 業務上のストレッサー
a.職場の人間関係
b.作業環境や作業管理上の問題
c.雇用システムの変化
d.配置転換、異動、役割の変化
e.交代勤務
4 職域におけるストレスモデル
a.デマンド─コントロールモデル
b.努力─報酬不均衡モデル
5 メンタルヘルスの保持・増進(一次予防活動)
a.職場環境改善
b.過重労働対策
c.セルフケア教育
6 職域における精神障害の早期発見・早期介入(二次予防活動)
a.教育相談活動、スクリーニング
b.EAP(従業員支援プログラム)
7 職場復帰支援(三次予防活動)
a.病気休業中のケア
b.職場復帰可否の判断と職場復帰支援プランの作成
c.職場復帰後のフォローアップ
d.職場復帰する労働者への心理的支援
D.自殺
1 概念
2 疫学
3 自殺問題の背景
4 自殺予防の対象
5 自殺予防対策
6 自殺予防対策の事例
a.自殺未遂者ケア
b.病院内の自殺事故対策
c.地域自殺対策
E.向精神薬一覧
1 抗精神病薬
a.従来型抗精神病薬(定型抗精神病薬)
b.新規抗精神病薬(非定型抗精神病薬)
c.デポ剤
2 抗うつ薬
a.三環系抗うつ薬
b.非三環系抗うつ薬
c.SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬
d.SNRI:セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
e.NaSSA:ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬
3 抗不安薬
a.ベンゾジアゼピン受容体作動薬
b.セロトニン1A受容体作動薬
4 催眠薬
a.バルビツレート系
b.ブロム類
c.ベンゾジアゼピン系
d.メラトニン受容体作動薬
5 気分安定薬
a.炭酸リチウム
b.カルバマゼピン
c.バルプロ酸ナトリウム
d.ラモトリギン
6 精神刺激薬
a.メチルフェニデート
b.アトモキセチン
●参考図書
和文索引
欧文索引
本書は、2000年に初版が、2005年に改訂第2版が出版され、そして今回、発展が続く精神医学の新知見をもりこむために、改訂第3版を発行することになった。今回の改訂にあたっては、実際に本書で精神医学を学んでいる学生の意見を取り入れ、各項目の冒頭に「学習のまとめ」をつけた。また、最近の精神医学の重要課題でもある「自殺」の項目をもうけ、「脳の形態と機能」、「精神科的面接の方法」、「電気けいれん療法」、「産業精神医学」の執筆は、新しい著者にお願いした。また、日本の精神医学の基盤を見直す意味もこめて、歴史的なドイツ精神医学を、現代の新しい視点で取り入れる試みもおこなった。
本書は初版から、精神医学をはじめて学ぶコ・メディカルの学生向けに、「わかりやすく」、「できるだけ具体的なケースを載せて」という方針で、臨床にリアルタイムで関わっている新進気鋭の精神科医を中心に執筆をお願いしてきた。裏話的になるが、当時、コ・メディカルの学生に精神医学を教えていた筆者は、医学生用のどの教科書にも遜色のない精神医学の内容を、当初から目指していた。難解な印象をもたれやすい精神医学を、「わかりやすく」する方針は、読者を選ばない、との期待もあった。
初版からのこの願いが、すこしでも実を結ぶためには、本書をじかに手にしてもらい、その読者の意見を、さらに待たなければならないと思っている。
各著者のご尽力により、新時代にそって大幅に改訂された本書が、今後とも、「精神障害の理解と治療」を目指す方々のための一助となり、なによりも、当事者である患者に益するものとなれば幸いである。
2011年12月
編著者を代表して 立山萬里