精神医学テキスト改訂第4版
精神障害の理解と治療のために
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 上島国利/立山萬里/三村將 |
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ISBN | : 978-4-524-25942-7 |
発行年月 | : 2017年3月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 378 |
在庫
定価4,620円(本体4,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
理学療法士・作業療法士養成過程を中心とした学生向けテキスト。現場で扱う精神疾患の解説を詳しくし、記述に軽重をつけ、また主要な疾患・症候には簡潔な「症例(ケース)」にて典型例を紹介し、具体的な理解を容易にしている。今改訂では、DSM−5、新薬を反映。好評の「症例」も充実させたほか、「女性のライフサイクルと心身医学」の章を新設し、採用者の要望に応えて全体を充実させた。
I 精神医学の基礎知識
A.精神医学の歴史
1 精神医学の源流
2 現代精神医学のはじまり
3 最近の精神医学
4 日本の精神医学の歴史
B.精神医学の多元的な診断と治療
1 精神障害の力動的なモデル
2 DSM診断基準(III〜IV TR版)の「多軸評定法」
3 マイヤーの「精神生物学」
4 クレッチマーの「多元診断」
5 ビルンバウムの「構造分析」
6 最近の病因論と「構造分析」
C.精神医学の基礎となる知識
1 脳の形態と機能
2 脳・神経の検査法
3 こころの発達理論と防衛機制
4 心理検査の種類
D.精神科患者への接し方
1 治療者−患者関係のとり方
2 治療契約と構造の重要性
3 インフォームド・コンセントの実際−精神医療領域で
E.精神症状のとらえ方
1 精神科的面接の方法
2 精神症状のとらえ方
3 精神症状評価尺度の使い方
F.よくみられる精神症状と状態像
1 基本的な精神状態−意識・知能・性格の問題
2 知覚・思考・感情の異常
3 記憶・意欲・行動・自我意識の異常
G.精神科に必要な脳・神経症状の知識
1 巣症状
2 脳局在症候群
3 大脳辺縁系,間脳,大脳基底核,脳幹部の局所損傷による精神・神経症状
4 その他(意識障害に似た脳機能障害)
II 精神障害の理解のための知識
A.身体因性の精神障害
1 症状性および器質性精神障害
2 認知症性疾患
3 精神作用物質による精神と行動の障害
4 てんかん
B.内因性の精神障害
1 統合失調症
2 統合失調型障害と妄想性障害
3 気分(感情)障害
C.心因性の精神障害
1 神経症とストレス障害
D.摂食障害,睡眠障害
1 摂食障害
2 睡眠障害
E.成人のパーソナリティおよび行動障害
1 概念
2 症状と診断
3 治療
F.知的障害と心理的発達の障害
1 発達障害のとらえ方と特徴
2 知的障害
3 学習障害
4 小児自閉症
5 アスペルガー症候群
6 注意欠陥多動性障害
G.児童・青年期の行動と情緒障害
1 児童・青年期の行動と情緒障害の分類
2 児童・青年期の行動と情緒障害の一般的な特性
3 児童・青年期の行動と情緒障害の症状・診断・治療
4 児童・青年期に発症する統合失調症
5 児童・青年期に発症する気分障害
6 児童・青年期に発症する強迫性障害
7 児童・青年期に発症する不安障害
8 児童・青年期に発症する身体表現性障害
9 児童・青年期に発症するストレス障害
10 チック障害
11 その他の児童・青年期の行動と情緒の障害
H.女性のライフサイクルと心身医学
1 女性のライフサイクル
2 女性の心身医学
III 精神科における治療法
A.薬物療法
1 抗精神病薬
2 抗うつ薬
3 抗躁薬および気分安定薬
4 抗不安薬
5 睡眠薬
6 抗てんかん薬
7 精神刺激薬
8 抗酒薬
9 抗認知症薬
B.精神療法とカウンセリング
1 カウンセリングとは何か−カウンセリングをめぐる誤解
2 精神療法(心理療法)
C.社会療法と家族療法
1 社会療法
2 家族療法
D.精神科作業療法
1 作業療法とは
2 精神科作業療法
3 精神科作業療法での評価法
4 治療目標の設定
5 治療構造
6 精神科作業療法の実際
7 精神科作業療法の算定基準
8 精神科作業療法に関連する歴史
E.精神科救急治療法
1 精神科救急とは
2 精神科救急の受診形態
3 精神科救急面接法
4 精神科救急の診断手順
5 精神科救急の各病態と治療法
6 精神保健福祉法とインフォームド・コンセント
F.電気けいれん療法
1 治療の適応となる疾患
2 治療の副作用
3 治療の流れ
IV 精神医学に関連した知識
A.他科とのリエゾン精神医学での注意点
1 コンサルテーション・リエゾン精神医学の定義と歴史
2 医療スタッフとリエゾン精神医学
3 他科とのリエゾン精神医学での注意点
B.精神鑑定と精神医療関連の法制度
1 精神鑑定の定義と種類
2 精神医療法制度の変遷
C.産業精神医学田中克俊
1 産業精神医学とは
2 労働安全衛生法
3 業務上のストレッサー
4 職域におけるストレスモデル
5 メンタルヘルスの保持・増進(一次予防活動)
6 職域における精神障害の早期発見・早期介入(二次予防活動)
7 職場復帰支援(三次予防活動)
D.自殺
1 概念
2 疫学
3 自殺問題の背景
4 自殺予防の対象
5 自殺予防対策
6 自殺予防対策の事例
E.向精神薬一覧渡邊衡一郎
1 抗精神病薬
2 抗うつ薬
3 抗不安薬
4 睡眠薬
5 気分安定薬
6 精神刺激薬
参考図書
索引
改訂第4版の序文
今日、精神医学領域における教科書はかなり多数に上る。それぞれの教科書には特色があるが、本書は医師や医学生のみならず、理学療法士・作業療法士、看護師、臨床心理士、精神保健福祉士、言語聴覚士など、医療に携わる多職種の人々が精神医学について学ぶ際に座右に置いていただくことを主眼としている。教科書の中では比較的、基本的重要事項を重んじ、できるだけ平易な表記を心がけたこともあり、幸いにして多くの医療系の学校で教科書として採用されている。その意味では好評を博してきたといえると思うが、今回、改訂第4版を出版するにあたって、大幅な改稿を試みた。これまでどおりの平易でわかりやすい表現を踏襲するとともに、とくに各章のはじめの「学習のまとめ」を工夫し、いわゆる“takeaway”として各章で学ぶべきところを簡潔に要約するように努めた。
内容についてはかなり追記がなされている。筆者の学生時代から考えると、精神医学領域でも新たに学習しなければならないこと、知っておかなければならない知識は飛躍的に増大している。今の学生は大変だと教員の間でもよく話題になる。しかし、それだけ脳とこころに関する理解が深まり、精神医学が学問としても進展してきている証なのであろう。クレペリンやブロイラーらによって現代の精神医学が創始されて百年あまり、基本的には変わらない不動の考え方や知識がある。これらは精神医学の根幹をなす精神病理学ないし精神症候学といった「精神医学の基本問題」として連綿と受け継がれてきた。
一方で、最近の十年をとってみても大きく変化し、あるいは進歩してきている知識もある。たとえば、疾患概念として、発達障害や認知症、軽度認知障害への理解は大きく変わってきており、併せて診断基準としてもDSM-5が登場した。検査ではfMRIやPET,NIRSといった技術に代表される画像診断の進歩がある。治療としては、抗うつ薬や抗精神病薬、睡眠薬、抗てんかん薬など、臨床的に多用される新たな薬剤が登場するとともに、認知療法/認知行動療法が普及し、隆盛である。
本改訂では、精神医学の王道であり、不動の財産とも呼ぶべき「精神医学の基本問題」を重んじながら、可能な限り最先端の知識・情報を集約することに努めた。さまざまな立場の読者が精神医学を学び、脳とこころのあり方を理解する上で本書が道しるべとなれば幸いである。
2017年1月
編著者を代表して 三村將