はじめて学ぶやさしい疫学改訂第2版
疫学への招待
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
監修 | : 日本疫学会 |
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総編集 | : 田中平三/秋葉澄伯 |
ISBN | : 978-4-524-26086-7 |
発行年月 | : 2010年10月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 152 |
在庫
定価2,200円(本体2,000円 + 税)
正誤表
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2012年12月04日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
概念的な学問で理解するのが難しいといわれている疫学について、初心者を対象にわかりやすく解説したテキスト。内容は基本的事項にとどめ、実践的な流れを理解、修得できる構成とした。文章による説明はできる限り避け、図表、イラストによって視覚的な理解ができるよう配慮した。
日本疫学会
http://jeaweb.jp/
1 疫学とはなにか
A 定義
B 疫学的な考え方と疫学が取り扱う分野
C 歴史上の疫学の業績に学ぶ
●コレラ伝播様式の解明
●脚気予防対策の解明
●喫煙と肺がんの因果関係の解明
2 疫病の発生原因解明の追究までの流れとその関連事項
3 疫学で用いられる指標
A 頻度の測定
●割合・率・比
●罹患率と累積罹患率
●有病率
●罹患率と有病率の関係
●致命率
●死亡率と年齢調整(標準化)
●相対頻度
B 頻度の比較
●相対危険と寄与危険
●オッズ比
4 疫学研究を始める前に
A 調査対象の選択に関する基本的条件
●どの範囲(集団)の者の、何について知りたいかを明確に
B 分母の選定方法
●分母となる集団が備えるべき条件
●対象の選定方法
C 標本の抽出方法と問題点
D 分子の把握の方法について
●分子となる集団が備えるべき条件
●分子の把握方法
E 疫学研究方法の種類
5 スクリーニング
A 目的・定義
●定義
●目的
●意義
●対象疾病
●スクリーニングの例
B スクリーニング実施上の原則
C スクリーニングの妥当性の検討
●有効性の指標
●スクリーニングの妥当性
D スクリーニングの評価
●評価の種類
●評価時のバイアス
6 疫学研究方法の種類とその原因究明の手順
A 疫病の発生原因究明のための一般的な手順
7 記述疫学
A 目的
B 主な記述要因とその目的
C 実例
D 仮説の設定方法
8 分析疫学
A 定義
B 種類と特徴
C 症例対照研究とコホート研究の比較
1 横断研究と生態学的研究
A 横断研究
●横断研究の例
B 生態学的研究
●生態学的研究の例
2 症例対照研究(後向き研究)
A 概要
B 定義
C 症例対照研究の分析
D 症例の選定
E 対照の選定
●病院対照
●健康者対照
●マッチング
F 情報の収集
●情報収集法の原則
●直接的な方法
●間接的な方法
G 症例対照研究で生じやすいバイアス
●選択バイアス
●情報バイアス
●交絡バイアス
●結果の解釈における注意点
●症例対照研究の例
H 症例対照研究の利点と欠点
I コホート研究を利用した症例対照研究
3 コホート研究
A 概要
B 研究の進め方
C 研究遂行上考慮すべき条件
D 解釈における注意点
●コホート研究の例
9 介入研究
A 定義と特徴
B 研究参加者に関する留意事項
●インフォームド・コンセント
●研究参加者の条件
C 無作為割り付けとブラインド法(盲検法)
●無作為割り付け
●ブラインド法(盲検法)
●介入研究の質向上
D 効果判定
●疾病の罹患率(死亡率)
●プログラムの実行状況・危険因子の変化
E 介入研究の例
●臨床試験
●地域介入試験
10 因果関係
A 関連の種類
B 因果関係の判定
11 交絡因子
A 交絡因子とは
B 交絡因子の判定方法
●連続型変数の場合
●離散型変数の場合
C 交絡因子の調整方法
12 疫学で用いられる統計学的方法とその解釈
A 疫学データの整理
●疫学データの性質
●母集団と標本
●データの分布
●データを要約する
●割合と率
B 推定と検定
●点推定と区間推定
●検定
C 二種類のデータの関連
●相関係数
●回帰分析
●分散分析(一元配置分散分析)
●2×3分割表以上のχ2検定
D 高度な分析方法
●重回帰分析
●二元配置分散分析
●共分散分析
●多重ロジスティック分析
●生存分析
13 疫学研究と倫理
A 研究者が守るべき基本原則
B 個人情報保護
●個人情報保護のための体制づくり
●情報収集
●情報管理
●情報破棄
C インフォームド・コンセント
●質問票
●検診データ
●既存データ
●診療記録
●血液などの生体由来試料
●以前に採取された血液などの生体由来試料
●公的に収集された資料の目的外使用
D 研究結果の発表
E がん登録
F 介入研究
●無作為化比較試験・無作為化対照試験
G 倫理審査委員会
●疫学研究の倫理指針(厚生労働省・文部科学省)の適用範囲
付録
1 日本疫学会「疫学研究を実施するにあたっての倫理指針」
2 日本疫学会倫理審査委員会設置要項
3 日本疫学会「疫学研究を実施するにあたっての倫理宣言」
4 疫学研究に関する倫理指針
索引
この教科書は、疫学をはじめて学ぶ学生を主な対象に書かれたものです。本書で説明されている疫学の原理とその方法論は、病気以外の事象の研究にも応用可能で、社会に起こるさまざまな現象を正しく理解するためにも有用と思われます。また、疫学の主な目的の一つは病気の原因を探ることですから、疫学を学ぶことは因果関係の概念を学ぶことにもつながります。その意味で、疫学の原理を理解することは、科学の方法論における特に重要な基礎を身につけるためにも役立ちます。
疫学をむずかしい学問と考える人、簡単と思う人、さまざまかもしれません。しかし、多くの人にとって疫学は、一見したところ簡単そうに見えるものの、勉強すればするほどむずかしくなってくる学問ではないかと思います。疫学を学ぶ上でのむずかしさの一つは、医学・生物学だけでなく、生物統計学、社会学、倫理学などに関する知識を必要とすることです。また、因果関係の理解には認識論に関する知識も必要となります。疫学の専門家にも、そのような広範な分野の知識をそれぞれの分野の専門家並みに備えた上で疫学を理解している人はほとんどいないものと思われます。もちろん、かくいう私もそのようなレベルで疫学を理解できているわけではありません。しかし、疫学の勉強が進むにつれ、そのような多様な方面の勉強を必要と感じることになるのは間違いありません。本書を読んで疫学をさらに勉強されたいと思われた方は、日本疫学会編集の『疫学─基礎から学ぶために』、『疫学ハンドブック─重要疾患の疫学と予防』(ともに南江堂)を読むことをお勧めします。
わが国で最初に書かれた疫学の本格的な教科書に、1966年に出版された『疫学とその応用』(南山堂)があります。著者は、金光正次(札幌医科大学教授)、岡田?博(名古屋大学教授)、甲野礼作(国立予防衛生研究所ウイルス中央検査部長)、重松逸造(国立公衆衛生院疫学部長)、平山?雄(国立がんセンター疫学部長)の各先生です(敬称略、肩書は当時)。帯に「画期的な好著」、「集団の診断学としての必須知識を集成」と書かれたこの本は、わが国の疫学の基礎を作られた先生たちが新進気鋭のころに書かれたものです。これらの先生にとっては孫の世代に当たる疫学研究者によって書かれたのが本書であります。この改訂第2版では、章立ての見直し、新しい概念・定義等の追加、解説の充実、各章末のレポート課題の新設などを行いました。わが国の疫学の将来を担うであろう中堅の疫学者が疫学の基本的な原理、概念、その応用を簡明にまとめた本書が多数の方に読まれ、わが国の疫学研究がさらに発展することを期待しております。
私たち、教育に携わる者にとって、学生が「先生、分かりました」と言ってくれることは大きな喜びです。さらに、「今まで理解できなかったことが、先生の説明を聞いて初めて理解できました」と言われれば、一教師としてこれに優る名誉はありません。本書が、これまで疫学をむずかしいと考えておられた皆さんにとって疫学を理解する上で少しでもお役に立つことができれば、本書の編集に当たった者の一人として、これに優る喜びはありません。
平成22年9月
日本疫学会理事長
秋葉澄伯