看護学テキストNiCE
老年看護学概論改訂第2版
「老いを生きる」を支えることとは
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 正木治恵/真田弘美 |
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ISBN | : 978-4-524-25901-4 |
発行年月 | : 2016年9月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 416 |
在庫
定価3,080円(本体2,800円 + 税)
正誤表
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2019年08月02日
第1〜3刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
本書では、老年看護の実践のベースとなる知識や考え方を学ぶ。看護の対象としての高齢者の特徴や、高齢者の多面的なとらえ方など、対象理解に重点を置く。老年看護に活用できる理論・アプローチは、具体的な事例を通してわかりやすく解説。高齢者に関する倫理的課題や家族介護者への支援、地域包括ケアを含めた地域づくりなども収載し、これからの老年看護の道しるべとなるテキスト。
第I章 老年看護学を理解するための基盤
1.“老い”の意味
A.“老い”と文化
1 老いをどうとらえるか
2 老いに向かう姿勢
3 老いに対する価値観
B.“老い”と家族
1 老いをとりまく家族構造
2 家族のうつり変わりと老いの課題
C.“老い”と社会
1 高齢者が暮らす社会
2 高齢者の生活
3 高齢者をとりまく社会的環境
D.“老い”と自分
1 老いと生活史
2 老いをかたちづくるもの
3 “老い”の意味
2.老年期の理解
A.老年期とは
1 人間発達論からとらえた老年期
2 発達段階からとらえた老年期
3 発達課題からとらえた老年期
B.加齢(老化)に関する理論
1 加齢と老化
2 さまざまな領域からみる加齢(老化)理論
C.老性変化
1 老年期の人の老性自覚
2 身体的な老性変化
3 精神心理的な老性変化
4 社会的な老性変化
5 高齢者の喪失体験と適応
3.高齢者をとりまく社会制度
A.高齢者人口の推移
1 日本の高齢化
2 性差にみる高齢化
3 地域格差
B.高齢者の健康
1 平均余命と健康寿命
2 疾病構造の変化
C.高齢者の療養生活と医療制度
1 医療保険制度の特徴
2 高齢化と医療制度
D.高齢者の介護・福祉施策
1 介護保険制度の背景
2 介護保険制度のしくみと動向
3 介護予防
4 健康増進対策
5 高齢者へのソーシャルサポート
4.高齢者の権利擁護
A.高齢者の倫理的課題と法的整備の動向
B.高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律
1 高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律とは
2 高齢者と養護者に対する対応システム
C.成年後見制度
D.差別
E.身体拘束
第II章 老年看護の理念と目標
1.老年看護の理念と目標
A.老年看護の理念
1 老年者の自我発達の特徴
2 老年者の自我発達と看護
3 臨床研究にみるケアによる老年者の自我発達
4 老年者を看護する視点
B.老年看護の目標
1 豊かな生の創出・支援
2 生かし生かされる地域づくり
第III章 老年看護の対象となる人々の特徴
1.対象特性
A.5つの側面(からだ,こころ,かかわり,暮らし,生きがい)が相互に関連しあう
B.個別性があり,多様である
C.他者との関係性の中に在る
D.自分の再吟味・再方向づけの模索
E.文化を継承する存在である
2.対象理解
A.統一体としての高齢者理解
1 統一体として全体論的な視点から理解する意義・必要性
2 統一体として高齢者を理解するための視点
B.環境の影響をふまえた高齢者理解
1 人間にとっての環境,高齢者にとっての環境
2 環境の見方・とらえ方
3 環境の影響をふまえた高齢者理解
4 環境の一部としての看護師
C.相互作用を通した高齢者理解
1 相互作用を通した高齢者理解とは
2 相互作用を通して高齢者を理解する意義
3 相互作用を通して高齢者を理解する方法
3.からだ
A.高齢者の身体機能の特徴
1 生理的老化とその特徴
2 高齢者の身体機能における相互連関
B.高齢者の“からだ”の把握方法
4.こころ
A.こころとはどのようなものか
B.高齢者のこころの状態に影響する要因
C.高齢者のこころを理解する方法
5.かかわり
A.高齢者の“かかわり”
1 発達段階の特徴やそれに伴う暮らしの変化に影響を受ける
2 高齢者が新たに形成し,維持している豊かな“かかわり”
B.高齢者の立場から“かかわり”を理解する
C.“かかわられること”による影響を理解する
D.高齢者の“かかわり”の把握方法
6.暮らし
A.高齢者の“暮らし”:生活の構造
1 高齢者の家族・世帯構成
2 “暮らし”の場:住宅と環境
3 “暮らし”を支える収入・生計
B.高齢者の生活のリズムと生活習慣
1 高齢者の生活のリズムの多様性
2 高齢者の生活習慣・生活様式の多様性
C.高齢者の“暮らし”の把握方法
7.生きがい
A.“生きがい”とは
B.高齢者にとっての“生きがい”とは
1 役割からとらえる“生きがい”
2 就労・雇用からとらえる“生きがい”
3 社会活動・余暇活動からとらえる“生きがい”
4 日常生活の中でとらえる“生きがい”
C.高齢者の“生きがい”の把握方法
8.歳月の積み重ね
A.生活史
1 生活史とは
2 生活史の把握方法
B.高齢者にとっての健康歴
1 健康歴とは
2 健康歴聴取の方法
C.高齢者のもつ文化と価値観
1 文化・価値観とは
2 高齢者にとっての文化や価値観の重要性
3 文化や価値観の把握方法
9.高齢者ケアにおける高齢者理解の発展
A.高齢者ケアにおける高齢者理解の発展とは
B.事例にみる高齢者理解の発展
第IV章 老年看護に活用できる理論・アプローチ
1.健康の概念
A.老年看護に活用できる健康の概念
1 健康の概念
2 幸福論モデルを基盤とした高齢者の健康
3 生活機能の視点からとらえる高齢者の健康
B.健康の概念の活用事例
2.セルフケア
A.老年看護に活用できるセルフケア
1 セルフケアの意義
2 セルフケアの概要
B.セルフケアの活用事例
3.サクセスフルエイジング
A.老年看護に活用できるサクセスフルエイジング
1 サクセスフルエイジングの考え方,意義
2 サクセスフルエイジングの概要
3 サクセスフルエイジングの考え方でとらえる高齢者
B.サクセスフルエイジングの活用事例
4.ウェルネスアプローチ
A.老年看護に活用できるウェルネスアプローチ
1 ウェルネスアプローチの意義
2 ウェルネスアプローチの概要
B.ウェルネスアプローチの活用事例
5.コンフォート
A.老年看護に活用できるコンフォート理論
1 コンフォート理論を活用する意義
2 コンフォート理論の概要
B.コンフォート理論の活用事例
6.ライフストーリー
A.老年看護に活用できるライフストーリー
1 ライフストーリーを活用する意義
2 ライフストーリーの概要
B.ライフストーリーの活用事例
7.レジリエンス
A.老年看護に活用できるレジリエンス
1 レジリエンスの意義
2 レジリエンスの概要
3 レジリエンスを高めるための介入
B.レジリエンスの活用事例
1 レジリエンスの視点によるとらえ方
2 レジリエンスを活用した看護実践
8.エンパワメント
A.老年看護に活用できるエンパワメント
1 エンパワメントの意義
2 エンパワメントの概要
B.エンパワメントの活用事例
C.個人のエンパワメントを集団や地域社会のエンパワメントに生かす
9.スピリチュアリティ
A.「こころを支えるスピリチュアリティ理論」ができた背景
B.こころを支えるスピリチュアリティ理論
1 スピリチュアリティの対象と決定要因
2 スピリチュアリティの機能と効力
3 スピリチュアリティと高齢者の健康およびヘルスプロモーションとの関係
4 スピリチュアリティの効力のエビデンスとその解釈
C.こころを支える看護:スピリチュアル・ケア
1 スピリチュアル・アセスメント
2 スピリチュアリティとの「つながり」の促進
3 スピリチュアル・ケアの体現:スピリチュアル・ナース
第V章 「健やかに老い,安らかに永眠する」を支える看護
1.老いること,死ぬことの意味と備え
A.老いを生きることの意味
1 老いの意味
2 老いの自覚
3 老いを生きることの備え
B.老いの発見と死期の受容
1 高齢者本人がとらえる健康
2 人生を締めくくる
2.「豊かな生」の創出・支援
A.高齢者の「豊かな生」
1 高齢者の「豊かな生」とは
2 豊かな生の創出の支援方法
B.高齢者の健康の特質に着目した支援
1 高齢者の「豊かな生」をとらえる視点
2 高齢者の健康の特質に着目した支援方法
C.環境適応への支援
1 加齢とともに変化する環境
2 生活環境の変化と高齢者への影響
3 環境適応の支援方法
第VI章 高齢者の健康生活の支援
1.高齢者の健康生活の維持と支援
A.高齢者の多様な健康生活
1 日常生活場面で生きる喜びを味わう
2 人とつながる
3 役割を発揮する
4 自分を友に楽しむ
5 その人らしく生きる
B.健康生活の維持への支援
1 活動−休息のバランスの保持を支援する
2 その人らしく生きることを支援する
3 セルフケアを支援する
2.高齢者の生活機能のアセスメント−指標やツールを活用して
A.高齢者に対するアセスメント
1 高齢者の生活機能の臨床的特徴
2 高齢者のヘルスアセスメントの際の注意点
B.ICF生活機能評価
1 国際生活機能分類(ICF)とは
2 ICF生活機能評価モデル
3 ICF生活機能評価モデルの活用と問題点
C.高齢者総合機能評価(CGA)
1 高齢者総合機能評価(CGA)とは
2 高齢者総合機能評価(CGA)の実施と課題
D.基本的日常生活動作(BADL)と手段的日常生活動作(IADL)
1 基本的日常生活動作(BADL),手段的日常生活動作(IADL)の概要
2 BADLとIADLの評価方法
E.認知機能のアセスメントツール
1 認知機能のアセスメントの意義・目的
2 認知機能のアセスメントツール
3 認知機能のアセスメントの際の注意点
3.高齢者に特有な症候と看護
A.老年症候群
1 老年症候群の3分類
2 老年症候群を引き起こす要因と関連疾患
B.老年症候群の理解と看護
1 ICF生活機能評価モデルによる老年症候群の理解
2 老年症候群の看護
C.事例
第VII章 高齢者の療養生活の支援
1.薬物療法を受ける高齢者への看護
A.薬物療法と薬物有害事象(薬物有害作用)
B.加齢と薬物動態・薬力学
1 薬物動態
2 加齢に伴う薬物動態と薬力学の変化
C.薬物療法を受ける高齢者への援助とリスクマネジメント
1 薬物有害事象の予防
2 高齢者のアドヒアランスを高めるための援助
D.事例
2.手術療法を受ける高齢者への看護
A.高齢者に多く実施されている術式と術前の耐術予備機能の評価
B.インフォームドコンセントと看護の役割
1 高齢者の医療行為に対する意思決定への援助
2 意思能力がない高齢者の代理判断
C.手術前・手術中・手術後の看護
1 手術前の看護
2 手術中の看護
3 手術後の看護
3.高齢者のリハビリテーション看護
A.リハビリテーションの理念・概念の変遷
B.リハビリテーションを受ける高齢者への看護
1 高齢者の暮らし・生きることの困難・人生を支えるインフォームド・コオペレーションに基づく個別リハビリテーション
2 健康レベルとニードに応じた継ぎ目のない一貫したリハビリテーションの提供
3 リハビリテーションを受ける高齢者を介護する家族に対する支援
4.受療形態に応じた高齢者への看護
A.高齢者の受療状況と受療環境
B.高齢者に対する入院時と退院に向けての看護
C.外来診療および検査時の看護
5.地域連携における退院時の看護
A.退院支援・退院調整の定義
B.退院支援過程における看護
C.地域連携における高齢者看護の視点
D.地域における他職種連携の多様性
6.療養生活の場の特徴と看護
A.治療の場(病院)の特徴と看護
1 治療の場と制度
2 高齢者の特徴からみた治療の場
3 治療の場における看護
B.療養生活の場(介護施設)の特徴と看護
1 療養生活の場と制度
2 高齢者の特徴からみた療養生活の場
3 療養生活の場における看護
C.日常生活の場の特徴と看護
1 日常生活の場と制度
2 高齢者の特徴からみた日常生活の場
3 日常生活の場の環境づくり
D.事例
第VIII章 認知症の高齢者の支援
1.認知症と社会制度
A.認知症高齢者数の推移
B.認知症をとりまく制度の変遷
1 痴呆をめぐる歴史
2 ケアなき模索の時代
3 認知症対策の動き
2.認知症の予防
A.認知症は予防できるか
B.脳血管性認知症の予防
1 原因と予防
2 生活習慣病と認知症
C.アルツハイマー型認知症の予防
1 アルツハイマー病におけるβ蛋白の蓄積
2 β蛋白の蓄積を予防する
D.認知症予防における2つのアプローチ
1 認知的予防アプローチ
2 両輪での予防
E.認知症予防と老いの生き方
1 豊かな老いを支えること
2 もっとも重要な認知症予防の視点
3.認知症の高齢者への看護
A.認知症とは
B.認知症の原因疾患と看護
1 認知症の原因疾患と治療
2 認知症の原因疾患の特徴に基づく対応
C.認知症の一般的な経過と看護
1 一般的な経過をふまえた対応
2 診断時の対応
3 認知症の進行に伴う身体合併症の予防
D.認知症の高齢者の心理を理解した看護
1 心理と対応
2 コミュニケーション方法
E.家族介護者の心身の苦痛の理解と看護
F.長い経過の中,地域で安全に安心して暮らすための援助
1 地域での連携
2 認知症に対する理解を広める活動
3 犯罪や消費トラブルを避けるための支援
G.急性期治療を行う病院での認知症看護
1 認知症の診断,支援につなぐ
2 心身の苦痛を予測し緩和する
3 チームで臨機応変に対応する
H.事例
第IX章 高齢者の尊厳を支える看護と看取り,家族への支援
1.高齢者の尊厳を支える看護
A.高齢者の意思決定を支える
1 看護する私たちの高齢者への態度
2 高齢者の意思を支える−意思のある一人の人格として尊敬する
3 了解を得る
B.高齢者と周囲の人々との関係性を支える
1 高齢者との関係を築く
2 言語の理解に障害をもつ高齢者との関係性を支える
3 言葉による意思疎通ができないと思われる高齢者との関係性を支える
4 家族との関係性を支える
2.高齢者の尊厳を支える看取り
A.“老い”と死
1 高齢者の死
2 日本の高齢者死亡に関する現状
B.終末期を迎える準備
1 終末期に関係する用語
2 終末期における生き方や死の迎え方の意向
3 終末期のプロセス
4 終末期を迎える家族の不安や負担感の軽減
5 終末期を支えるチームアプローチ
6 日々のケアこそがよりよい死への準備
C.エンド・オブ・ライフ・ケア−有終の美を飾るケア
1 終末期の身体徴候
2 苦痛の緩和
3 安楽へのケア−基本ケアの充足,人間らしさの保証
D.高齢者の看取り
1 よりよい旅立ちに向けてのコーディネイト
2 老いの延長線上にある看取りの看護実践事例
3.家族介護者の生活支援
A.日本の家族形態の変遷
1 戦前戦後の家族から現代の家族への移り変わり
2 65歳以上の高齢者のいる世帯の移り変わりと高齢者の意識の変化
3 介護問題に直面する家族の出現
B.介護家族にかかわる看護職者の視点
1 ケアの対象として家族をみる
2 家族の個別性に応じて信頼関係を築く
3 家族のもつ力を引き出す
4 介護家族のアセスメント
C.家族介護者の健康と介護力
1 要介護高齢者と主介護者の関係からみた介護家族の葛藤
2 介護家族のストレス
D.介護家族の介護負担軽減に向けた社会資源の活用
1 介護保険の利用申請
2 ケアマネジャーとの連携
3 介護サービスの利用
4 インフォーマルなサービスの利用
E.事例
4.終末期の家族支援
A.地域で看取る
1 在宅での看取りと家族支援
2 在宅での看取りを行うための準備
3 介護家族への支援
B.急性期病院で看取る
1 急性期病院における終末期の特徴
2 看取りまでの家族への支援
3 看取りを終えた家族への援助
C.高齢者ケア施設で看取る
1 施設で看取る家族の思い−家族の思いを知る
2 施設に入所させている家族のグリーフケア
3 施設で看取りを終えた家族への生活の再構築
D.看取った家族によい余韻を残す−家族の生活の再構築
E.事例
第X章 生かし生かされる地域づくり
1.高齢者が安全で安心して希望をもって暮らせる地域
A.高齢者が安全で安心して希望をもって暮らせる地域とは
B.地域と環境
C.環境のとらえ方
1 物的環境
2 人的環境
2.よりよい地域づくりのための多職種協働
A.多職種協働とは
B.予防のための多職種協働
C.診断・治療のための多職種協働
D.療養生活のための多職種協働
E.地域包括ケアシステムの構築に向けた協働連携
3.事例にみる高齢者が生かし生かされる地域づくり
A.さまざまな地域づくり
1 安心して暮らせる地域づくり
2 高齢者と地域が相互作用する地域づくり
3 さまざまな専門職者が高齢者を支える地域づくり
4 豊かな療養生活を支える地域づくり
5 高齢者による自発的な活動を通した地域づくり
6 高齢者の社会活動を促進する地域づくり
B.ストレングスを生かした地域づくり
1 高齢者のストレングスを生かした地域づくり
2 地域のストレングスを生かした地域づくり
C.災害にも応用できる地域づくり
第XI章 老年看護学の課題
1.保健医療福祉制度の変革の中で変化する老年看護の役割
A.保健医療福祉制度の変革の中で変化する老年看護の役割
1 病院における高齢者ケアの課題
2 高齢者ケア施設における課題
3 在宅における高齢者ケアの課題
4 地域における高齢者ケアの課題
B.求められる高齢者ケア
2.高齢者ケアのパイオニアとしての展望
A.高齢者ケアの夜明け−1970〜1980年代ごろに高齢者が置かれていた状況
B.政策保健学の時代に求められている高齢者ケアの方向性
1 WHOが目指す政策的アプローチ
2 日本の高齢者政策
3 高齢者ケアのマンパワー教育と老年看護教育研究の高揚
C.将来展望
1 30年以上先を見通した活動に向かって
2 エンド・ステージケアに求められること
3 認知症ケアに求められること
4 老年看護領域における看護師の役割拡大と連携に求められること
5 データを読む力をもつこと
3.国際的視野からみた老年看護学
A.日本の老年看護学の歴史的発展と役割
1 日本と米国における高齢化の変化と老年看護学の発展の比較
2 主要国における高齢化の進展と日本の老年看護学の役割
B.老年看護の国際的な活動の基盤となる看護観と看護の対象者
1 国際的な看護実践の基盤となる人権と倫理に関する法
2 国際的視野から見た老年看護の対象者とケア
3 国際化する老年看護の実践者の場
4.老年看護学研究の発展
A.老年看護領域における臨床研究
B.老年看護学研究の展望
5.米国のCNS・NPからみる今後の日本の看護師像について
A.米国の高度実践看護師
B.日本の高度実践看護師
付録 評価スケール・アセスメントツール
付録1 バーセルインデックス(Barthel Index)
付録2 IADL尺度
付録3 FIM(機能的自立度評価表)
付録4 HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)
付録5 MMSE(簡易精神機能検査)
付録6 CDR(観察式行動尺度)
付録7 NMスケール(N式老年者用精神状態尺度)
付録8 FAST(Functional Assessment Staging)
付録9 GDS-15
付録10 主観的健康感のVAS
付録11 ZBI(ザリット介護負担尺度)
索引
はじめに
初版が発行されて5年経過したが、その間にもわが国の高齢化は進展し、少子高齢化社会に対応すべく様々な政策が打ち出されている。老年学や老年医学の研究も進み、特に老化や健康問題の予防に関する研究成果が次々に発表されている。人生50年時代から80年時代に変わった現代に生きる高齢者の心身の能力は、一昔前とは格段に違いが出ているのである。65歳以上を高齢者とする定義すら見直しの必要性が謳われている現代では、社会や地域の中での生き方も変貌させている。
そのような社会状況や高齢者の心身の変化を踏まえ、本改訂では、高齢者の健康に焦点を当てた新しい章を起こすとともに、各章においてもその内容の確保を図った。また、今後認知症高齢者数の急速な増加が予測されていることから、認知症に関する知識とその看護に関しても新たな章を設定し、内容を充実させた。さらに地域包括ケアシステムによって高齢者ケアが地域の中で展開されることを前提に、「生かし生かされる地域づくり」という目標を保持し、昨今の課題である災害支援についても追加した。
急速な高齢化がもたらす大きな社会変化は、高齢者にとって生き方の転換を迫る時期ともなりうるし、同時に高齢者ケアを担う者にも考え方の転換が求められる。専門領域の一部であった老年看護学の知識も、今後は社会一般の常識として確立される必要があろう。死で閉じられる人生の最終ステージを生きる人々に対し、個別性を尊重し、老いに内在する人間存在の非合理性を捨象せずに解釈していく人間理解の力量が問われてくる。
年齢を重ねていくにつれ衰え、いずれは他者のケアを受ける状態になる。それは正常な心身の変化であり、自然の摂理ともいえる。ただ、老年看護学を学ぶ若い人たちにとって、高齢者の主観に着目して理解することは、年齢の差が大きいだけに困難なことであるように思われる。しかし躊躇する必要はないように思う。何故なら、ケアしケアされる関係性において、経験を積み重ねてきた人々がもつ寛容性に助けられながら、援助者として成長していくであろうから。
“老い”を生きる意味は、老いた本人のみでなく、周りの者が共同して付与するものでもある。ここに老年看護の醍醐味があるのである。生命の尊厳を保持しつつ、最後まで豊かに生きることのできる社会が築かれることを願ってやまない。
2016年7月
正木治恵
真田弘美