教科書

看護学テキストNiCE

老年看護学概論改訂第3版

「老いを生きる」を支えることとは

編集 : 正木治恵/真田弘美
ISBN : 978-4-524-22709-9
発行年月 : 2020年3月
判型 : B5
ページ数 : 416

在庫あり

定価3,080円(本体2,800円 + 税)

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  • 主要目次
  • 序文

老年看護の実践のベースとなる知識や考え方を解説した好評テキストの最新版。看護の対象としての高齢者の特徴や、高齢者の多面的なとらえ方など、対象理解に重点を置く。老年看護に活用できる理論・アプローチは、具体的な事例を通してわかりやすく解説。高齢者に関する倫理的課題や家族介護者への支援、地域包括ケアを含めた地域づくりなども収載。今改訂では、情報を全面的に見直し、令和元年版高齢社会白書など最新の統計や政策を反映した。

第I章 老年看護学を理解するための基盤
 1.“老い”の意味
  A.“老い”と文化
  B.“老い”と家族
  C.“老い”と社会
  D.“老い”と自分
 2.老年期の理解
  A.老年期とは
  B.加齢(老化)に関する理論
  C.老性変化
 3.高齢者をとりまく社会制度
  A.高齢者人口の推移
  B.高齢者の健康
  C.高齢者の療養生活と医療制度
  D.高齢者の介護・福祉施策
 4.高齢者の権利擁護
  A.高齢者の倫理的課題と法的整備の動向
  B.高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律
  C.成年後見制度
  D.差別
  E.身体拘束
第II章 老年看護の理念と目標
 1.老年看護の理念と目標
  A.老年看護の理念
  B.老年看護の目標
第III章 老年看護の対象となる人々の特徴
 1.対象特性
  A.5つの側面(からだ,こころ,かかわり,暮らし,生きがい)が相互に関連し合う
  B.個別性があり,多様である
  C.他者との関係性の中に在る
  D.自分の再吟味・再方向づけの模索
  E.文化を継承する存在である
 2.対象理解
  A.統一体としての高齢者理解
  B.環境の影響をふまえた高齢者理解
  C.相互作用を通した高齢者理解
 3.からだ
  A.高齢者の身体機能の特徴
  B.高齢者の“からだ”の把握方法
 4.こころ
  A.こころとはどのようなものか
  B.高齢者のこころの状態に影響する要因
  C.高齢者のこころを理解する方法
 5.かかわり
  A.高齢者の“かかわり”
  B.高齢者の立場から“かかわり”を理解する
  C.“かかわられること”による影響を理解する
  D.高齢者の“かかわり”の把握方法
 6.暮らし
  A.高齢者の“暮らし”:生活の構造
  B.高齢者の生活のリズムと生活習慣
  C.高齢者の“暮らし”の把握方法
 7.生きがい
  A.“生きがい”とは
  B.高齢者にとっての“生きがい”とは
  C.高齢者の“生きがい”の把握方法
 8.歳月の積み重ね
  A.生活史
  B.高齢者にとっての健康歴
  C.高齢者のもつ文化と価値観
 9.高齢者ケアにおける高齢者理解の発展
  A.高齢者ケアにおける高齢者理解の発展とは
  B.事例にみる高齢者理解の発展
第IV章 老年看護に活用できる理論・アプローチ
 1.健康の概念
  A.老年看護に活用できる健康の概念
  B.健康の概念の活用事例
 2.セルフケア
  A.老年看護に活用できるセルフケア
  B.セルフケアの活用事例
 3.サクセスフルエイジング
  A.老年看護に活用できるサクセスフルエイジング
  B.サクセスフルエイジングの活用事例
 4.ウェルネスアプローチ
  A.老年看護に活用できるウェルネスアプローチ
  B.ウェルネスアプローチの活用事例
 5.コンフォート
  A.老年看護に活用できるコンフォート理論
  B.コンフォート理論の活用事例
 6.ライフストーリー
  A.老年看護に活用できるライフストーリー
  B.ライフストーリーの活用事例
 7.レジリエンス
  A.老年看護に活用できるレジリエンス
  B.レジリエンスの活用事例
 8.エンパワメント
  A.老年看護に活用できるエンパワメント
  B.エンパワメントの活用事例
  C.個人のエンパワメントを集団や地域社会のエンパワメントに生かす
 9.スピリチュアリティ
  A.「こころを支えるスピリチュアリティ理論」ができた背景
  B.こころを支えるスピリチュアリティ理論
  C.こころを支える看護:スピリチュアル・ケア
第V章 「健やかに老い,安らかに永眠する」を支える看護
 1.老いること,死ぬことの意味と備え
  A.老いを生きることの意味
  B.老いの発見と死期の受容
 2.「豊かな生」の創出・支援
  A.高齢者の「豊かな生」
  B.高齢者の健康の特質に着目した支援
  C.環境適応への支援
第VI章 高齢者の健康生活の支援
 1.高齢者の健康生活の維持と支援
  A.高齢者の多様な健康生活
  B.健康生活の維持への支援
 2.高齢者の生活機能のアセスメント−指標やツールを活用して
  A.高齢者に対するアセスメント
  B.ICF生活機能評価
  C.高齢者総合機能評価(CGA)
  D.基本的日常生活動作(BADL)と手段的日常生活動作(IADL)
  E.認知機能のアセスメントツール
 3.高齢者に特有な症候と看護
  A.老年症候群
  B.老年症候群の理解と看護
  C.事例
第VII章 高齢者の療養生活の支援
 1.薬物療法を受ける高齢者への看護
  A.薬物療法と薬物有害事象(薬物有害作用)
  B.加齢と薬物動態・薬力学
  C.薬物療法を受ける高齢者への援助とリスクマネジメント
  D.事例
 2.手術療法を受ける高齢者への看護
  A.高齢者に多く実施されている術式と術前の耐術予備機能の評価
  B.インフォームドコンセントと看護の役割
  C.手術前・手術中・手術後の看護
 3.高齢者のリハビリテーション看護
  A.リハビリテーションの理念・概念の変遷
  B.リハビリテーションを受ける高齢者への看護
 4.受療形態に応じた高齢者への看護
  A.高齢者の受療状況と受療環境
  B.高齢者に対する入院時と退院に向けての看護
  C.外来診療および検査時の看護
 5.地域連携における退院時の看護
  A.退院支援・退院調整の定義
  B.退院支援過程における看護
  C.地域連携における高齢者看護の視点
  D.地域における多職種連携の多様性
 6.療養生活の場の特徴と看護
  A.治療の場(病院)の特徴と看護
  B.療養生活の場(介護施設)の特徴と看護
  C.日常生活の場の特徴と看護
  D.事例
第VIII章 認知症の高齢者の支援
 1.認知症と社会制度
  A.認知症高齢者数の推移
  B.認知症をとりまく制度の変遷
 2.認知症の予防
  A.認知症は予防できるか
  B.脳血管性認知症の予防
  C.アルツハイマー型認知症の予防
  D.認知症予防における2つのアプローチ
  E.認知症予防と老いの生き方
 3.認知症の高齢者への看護
  A.認知症とは
  B.認知症の原因疾患と看護
  C.認知症の一般的な経過と看護
  D.認知症の高齢者の心理を理解した看護
  E.家族介護者の心身の苦痛の理解と看護
  F.長い経過の中,地域で安全に安心して暮らすための援助
  G.急性期治療を行う病院での認知症看護
  H.事例
第IX章 高齢者の尊厳を支える看護と看取り,家族への支援
 1.高齢者の尊厳を支える看護
  A.高齢者の意思決定を支える
  B.高齢者と周囲の人々との関係性を支える
 2.高齢者の尊厳を支える看取り
  A.“老い”と死
  B.終末期を迎える準備
  C.エンド・オブ・ライフ・ケア−有終の美を飾るケア
  D.高齢者の看取り
 3.家族介護者の生活支援
  A.日本の家族形態の変遷
  B.介護家族にかかわる看護職者の視点
  C.家族介護者の健康と介護力
  D.介護家族の介護負担軽減に向けた社会資源の活用
  E.事例
 4.終末期の家族支援
  A.地域で看取る
  B.急性期病院で看取る
  C.高齢者ケア施設で看取る
  D.看取った家族によい余韻を残す−家族の生活の再構築
  E.事例
第X章 生かし生かされる地域づくり
 1.高齢者が安全で安心して希望をもって暮らせる地域
  A.高齢者が安全で安心して希望をもって暮らせる地域とは
  B.地域と環境
  C.環境のとらえ方
 2.よりよい地域づくりのための多職種協働
  A.多職種協働とは
  B.予防のための多職種協働
  C.診断・治療のための多職種協働
  D.療養生活のための多職種協働
  E.地域包括ケアシステムの構築に向けた協働連携
 3.事例にみる高齢者が生かし生かされる地域づくり
  A.さまざまな地域づくり
  B.ストレングスを生かした地域づくり
  C.災害にも応用できる地域づくり
第XI章 老年看護学の課題
 1.保健医療福祉制度の変革の中で変化する老年看護の役割
  A.保健医療福祉制度の変革の中で変化する老年看護の役割
  B.求められる高齢者ケア
 2.高齢者ケアのパイオニアとしての展望
  A.高齢者ケアの夜明け−1970〜1980年代ごろに高齢者が置かれていた状況
  B.政策保健学の時代に求められている高齢者ケアの方向性
  C.将来展望
 3.国際的視野からみた老年看護学
  A.日本の老年看護学の歴史的発展と役割
  B.老年看護の国際的な活動の基盤となる看護観と看護の対象者
 4.老年看護学研究の発展
  A.老年看護領域における臨床研究
  B.老年看護学研究の展望
 5.米国のCNS・NPからみる今後の日本の看護師像について
  A.米国の高度実践看護師
  B.日本の高度実践看護師
付録 評価スケール・アセスメントツール
 付録1 バーセルインデックス(Barthel Index)
 付録2 IADL尺度
 付録3 FIM(機能的自立度評価表)
 付録4 HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)
 付録5 MMSE(簡易精神機能検査)
 付録6 CDR(観察式行動尺度)
 付録7 NMスケール(N式老年者用精神状態尺度)
 付録8 FAST(Functional Assessment Staging)
 付録9 GDS-15
 付録10 主観的健康感のVAS
 付録11 ZBI(ザリット介護負担尺度)
索引

はじめに

 本書は2011年に初版が発行されて9年近くが経過したが、その間にもわが国の高齢化は進展し、少子高齢化社会に対応すべく様々な政策が打ち出されている。老年学や老年医学の研究も進み、特に老化や健康問題の予防に関する研究成果が次々に発表されている。人生50年時代から80年時代に変わった現代に生きる高齢者の心身の能力は、一昔前とは格段に違いが出ているのである。また、65歳以上を高齢者とする定義を75歳以上へと見直す必要性が謳われている現代では、社会や地域の中での生き方も変貌させている。そのような社会状況や高齢者の心身の変化を踏まえ、3年前の改訂では高齢者の健康に焦点を当てた章や認知症の理解と看護に関する章を新設し内容の充実を図り、今改訂では全体的に情報の見直し・更新を行っている。
 急速な高齢化がもたらす社会変化は大きく、高齢者にとっては生き方の転換が迫られており、同時に高齢者ケアを担う者にも考え方の転換が求められている。高齢化に加え人口減少が始まっている日本では、地域づくりに関する発想の転換も必要になっている。本書が初版より提示してきた「生かし生かされる地域づくり」という目標は、看護基礎教育課程が地域包括ケアシステムを前提とした看護へと方向性を転換しようとしている今、その先駆けにもなったといえよう。
 専門領域の一部であった老年看護学の知識も、今後は社会一般の常識として確立される必要があろう。死で閉じられる人生の最終ステージを生きる人々に対し、個別性を尊重し、老いに内在する人間存在の非合理性を捨象せずに解釈していく人間理解の力量が問われてくる。年齢を重ねていくにつれ衰え、いずれは他者のケアを受ける状態になる。それは正常な心身の変化であり、自然の摂理ともいえる。ただ、老年看護学を学ぶ若い人たちにとって、高齢者の主観に着目して理解することは、年齢の差が大きいだけに困難なことであるように思われる。しかし躊躇する必要はないように思う。何故なら、ケアしケアされる関係性において、経験を積み重ねてきた人々がもつ寛容性に助けられながら、援助者として成長していくであろうから。
 “老い”を生きる意味は、老いた本人のみでなく、周りの者が、さらに社会が付与するものでもある。ここに老年看護の醍醐味がある。生命の尊厳を保持しつつ、最後まで豊かに生きることのできる社会が築かれることを願ってやまない。

2020年1月
正木治恵
真田弘美