教科書

Essential細胞生物学原書第5版

監訳 : 中村桂子/松原謙一/榊佳之/水島昇
ISBN : 978-4-524-22682-5
発行年月 : 2021年7月
判型 : A4変型
ページ数 : 880

在庫あり

定価8,800円(本体8,000円 + 税)


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サポート情報

正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

各国で翻訳されている世界的な生命科学,分子生物学の第一選択の教科書.ストーリー性のある解説と美しい図版により,複雑な生命現象をイメージしながら学ぶことができる.改訂版では新知見の追加や情報更新を実施.より深い知識を得ることができるようになった.

第1章 細胞:生命の基本単位
 パネル 1–1 顕微鏡
 パネル 1–2 細胞のつくり
 解明への手がかり:生命に共通するしくみ
第2章 細胞の化学成分
 解明への手がかり:巨大分子とは何か?
 パネル 2–1 化学結合と基
 パネル 2–2 水の化学的性質
 パネル 2–3 非共有結合の基本型
 パネル 2–4 いくつかの糖のあらまし
 パネル 2–5 脂肪酸とその他の脂質
 パネル 2–6 タンパク質を構成する20種類のアミノ酸
 パネル 2–7 ヌクレオチドについて
  第3章 エネルギー,触媒作用,生合成
 パネル 3–1 自由エネルギーと生物学的反応
 解明への手がかり:“高エネルギー”リン酸結合が細胞の各種反応を動かす
第4章 タンパク質の構造と機能 
 パネル 4–1 タンパク質の機能の例
 パネル 4–2 抗体の作製と利用
 解明への手がかり:酵素の能力を測る
 パネル 4–3 細胞の破砕と細胞抽出液の最初の分画
 パネル 4–4 クロマトグラフィーによるタンパク質の分離
 パネル 4–5 電気泳動によるタンパク質の分離
 パネル 4–6 タンパク質の構造決定 
  第5章 DNAと染色体
 解明への手がかり:遺伝子はDNAでできている 
第6章 DNAの複製と修復
 解明への手がかり:複製様式
第7章 DNAからタンパク質へ―細胞がゲノムを読み取るしくみ
 解明への手がかり:遺伝暗号の解読
第8章 遺伝子発現の調節
 解明への手がかり:遺伝子調節―eveの話
第9章 遺伝子とゲノムの進化
 解明への手がかり:遺伝子を数える
第10章 遺伝子の構造と機能の解析
 解明への手がかり:ヒトゲノム塩基配列の決定 
第11章 膜の構造 
 解明への手がかり:膜の流れを測定する
第12章 膜を横切る輸送
 解明への手がかり:ヤリイカを用いて膜の興奮の秘密を探る
第13章 細胞が食物からエネルギーを得るしくみ
 パネル 13–1 解糖の10の反応の詳細
 パネル 13–2 クエン酸回路の全要
 解明への手がかり:クエン酸回路の発見
第14章 ミトコンドリアと葉緑体でのエネルギー生産
 パネル 14–1 酸化還元電位
 解明への手がかり:化学浸透共役がATP合成を駆動するしくみ
第15章 細胞内区画とタンパク質の輸送
 解明への手がかり:タンパク質と小胞の輸送を追う
第16章 細胞のシグナル伝達
 解明への手がかり:細胞のシグナル伝達経路を解き明かす
第17章 細胞骨格
 解明への手がかり:微小管に付随するモータータンパク質の探究
第18章 細胞周期
 解明への手がかり:サイクリンとCdkの発見 
 パネル 18–1 動物細胞のM期のおもな段階
第19章 有性生殖と遺伝学
 パネル 19–1 古典遺伝学の概要
 解明への手がかり:SNPを手がかりにヒトの疾患を調べる
第20章 細胞のつくる社会:組織,幹細胞,がん
 解明への手がかり:がん化に重要な遺伝子を理解する

 第5 版の翻訳が完成期に入った2020 年は, 新型コロナウイルス感染症(COVID–19)のパンデミックで世界中が振り回され,先行きが見えないままに過ぎていった1 年でした.その中で,まさに生きているとはどういうことかという問いに基本から向き合う細胞生物学を考え続けたことは,忘れられない記憶として残るに違いありません.本書の基本となる分子生物学は,20 世紀半ばごろに遺伝子の本体がDNA であることを明らかにし,続いてその二重らせん構造が遺伝子としての特性をみごとに表していることを解明するという,今想像してもワクワクする過程を短時間で示した独特の学問です.そしてそれが,半世紀ほどを経て細胞へと眼を向けるようになったのです.教科書としてもまず『遺伝子の分子生物学』が著されましたが,今やそれは終わり,『細胞の分子生物学』になりました.その基本部分を伝える本書も第5 版まできました.そして,おそらくこれはそう簡単に終わることはないでしょう.まさに生きているという現象の基本は細胞にあり,細胞の探求は生きているということがわかったというときまで続くはずですから.地道な研究の中に興味深い発見があり,そこからまた次の問いが生まれるという長い道を楽しむことが科学研究の本質であり,細胞研究はそれをみごとに示してくれる分野です.
 本書は現在急速に進展し,大量のデータが生まれ蓄積しつつある細胞研究の先端を意識しながらも,その中から基本原則を抽出し,解説するという目的で編集されています.Essential という言葉にはそのような基本という意味と同時に,すべての人に必要なという意味も込められているに違いないと,翻訳を進めながら感じました.今まさに体験しているCOVID–19 のパンデミックへの対処を考えるとき,政治家,企業経営者などはもちろん,すべての人がウイルスと人間との関係や自然生態系の中でのウイルスの位置づけを理解していることが求められます.つまり医学・生物学を学ぶ人だけでなく,理工学・人文・社会科学を学ぶ人も本書を読んでほしいのです.本書はそれを意識して編集されています.
 近年,細胞という1/100 ミリメートルから1/1000 ミリメートルという小さな世界の中に存在する分子や構造体はもちろん,それらの間で起きている反応を実際に「観る」技術が急速に進んでいます.「手にとるように見える」という言葉がありますが,まさに小さな世界を手の上の身近な世界のように観られることは,理解の大きな助けになります.楽しみながら自分自身の体,他の生きものとのかかわりについて豊かなイメージを膨らませることは,生きることの喜びにまでつながります.
 21 世紀に入り,細胞内にある染色体のすべてに存在するDNA,つまりゲノムを対象に日々多くのデータが出されつつあり,ゲノムの働きから細胞の働きを考える作業が重要になっています.ゲノムには38 億年という生きものの歴史が刻み込まれており,その解読は進化の歴史を読み解くことにつながります.本書でもその側面が興味深く示されています.
 本書の特徴の1 つである「解明への手がかり(原題How We Know)」は研究の現場を伝え,科学の面白さをみごとに示しています.今回,食べものの中にあるエネルギーを私たちが生きるために用いるエネルギーの形にするために,細胞内で起きている分子の動きを示すという,生体反応の基本であり日常とも直接つながる研究物語が加わりました.毎日の食事が私たちの生を支えているメカニズムは,誰にも関心があることでしょう.教科書は知識を得るだけのものではありません.それを通して自分で考えることを楽しむためのものです.それを助けるために,本書にはこの「解明への手がかり」のほか,問題がついています.解答が1つでないような問いが多いのは,考えることへの誘いでしょう.
 本書の翻訳は,基本から先端へと続く学問を感じる楽しいものでした.一人一人がそれぞれ楽しみながら心を込めて日本語にしていきました.第5 版から,中村桂子,松原謙一,榊佳之,水島昇の監訳となり,これまでに増して充実した翻訳になったと思います.とはいえ,大部の教科書です.誤りやわかりにくい表現があるかもしれません.お気づきの点をご指摘いただけましたら幸いです.
 読者の皆様が細胞を好きになってくださることを願いながら
翻訳者を代表して
    中村桂子
松原謙一
榊 佳之
水島 昇