コンパス分析化学改訂第3版
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 安井裕之/兎川忠靖 |
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ISBN | : 978-4-524-40386-8 |
発行年月 | : 2021年12月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 360 |
在庫
定価4,840円(本体4,400円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
「わかりやすい・ミニマムエッセンス」がコンセプトの分析化学・機器分析学の教科書.豊富な図とポイントを押さえた記述で,薬剤師国家試験の中級レベルの問題を確実に解けるようになることを目指す.今改訂では第十八改正日本薬局方に対応したほか,濃度変換,対応量,ファクターなどの計算方法や,分析に用いる器具の解説など基礎的な説明を充実させた.改訂薬学教育モデル・コアカリキュラム対応.
1 章 序論
A 薬学における分析化学
1 医薬品分析
2 臨床分析
B 物理量と単位
1 国際単位系(SI)
2 濃度の単位,物理量と濃度の関係
C 定量分析と定性分析
1 定量分析とは
2 定性分析とは
3 構造決定に用いられる機器分析法の特徴
D 分析に用いる基本的な器具 5
E 分析結果(実験データ)の取り扱い方と統計手法の適用
1 有効数字の意味
2 分析誤差の意味
3 測定値の正確さ(真度)と精密さ(精度)
4 分析結果の表示のための基本的統計量(平均値,標準偏差,相対標準偏差)
5 数値(異常値)の棄却法
F 医薬品分析法のバリデーション
1 バリデーションのパラメーター
2 真 度
3 精 度
4 特異性
5 検出限界(LOD)
6 定量限界(LOQ)
7 直線性
8 範 囲
9 頑健性
G 日局における標準分析法
1 重量分析法とは
2 容量分析法とは
3 生物学的定量法(バイオアッセイ)とは
2 章 酸と塩基
A 化学平衡と質量作用の法則
1 化学反応の平衡
2 弱電解質の解離平衡
B 酸と塩基の定義
1 アレニウスの酸・塩基の定義
2 ブレンステッド・ローリーの酸・塩基の定義
3 ブレンステッド・ローリーの酸・塩基の定義にしたがった純水の解離
C 酸と塩基の強さ
1 水溶液中における酸の強さ
2 水溶液中における塩基の強さ
D 強酸と弱酸
1 強酸の解離とpH
2 弱酸の解離とpH
E 弱酸の化学種とpH 分布
F 強塩基と弱塩基
1 強塩基の解離とpH
2 弱塩基の解離とpH
G 塩の加水分解とpH
1 弱塩基と強酸の塩の加水分解とpH
2 弱酸と強塩基の塩の加水分解とpH
H 緩衝液と緩衝作用
1 緩衝液および緩衝作用
2 一般的な緩衝液におけるヘンダーソン・ハッセルバルヒの式
3 一般的な緩衝機構について
4 酢酸緩衝液におけるヘンダーソン・ハッセルバルヒの式
5 緩衝液と緩衝作用のまとめ
I 多塩基酸の多段階解離
1 多塩基酸と多酸塩基
2 炭酸(H2CO3)の解離
3 pH を変化させたときの各炭酸イオン種の割合
4 リン酸(H3PO4)の解離
5 pH を変化させたときの各リン酸イオン種の割合
6 多塩基酸の塩の水素イオン濃度とpH
J 中和滴定
1 中和滴定における標準溶液の調製と標定
2 中和反応における[H+]とpH
3 中和滴定指示薬
4 中和滴定を用いて定量する日局収載の医薬品
K 非水溶媒中における酸・塩基反応(非水滴定)
1 溶媒の種類
2 反応終点の決定
3 非水滴定を用いて定量する日局収載の医薬品
3 章 錯体化学,キレート滴定
A 錯体生成反応
1 錯体とは
2 錯体の命名法
3 配位子の種類
4 錯体の安定性
5 錯体の生成
6 錯体の配位構造
7 静電結晶場理論と配位子場理論
B 錯体の安定度定数
1 錯体生成反応の平衡定数
2 錯体生成平衡に影響を及ぼす因子
C キレート滴定
1 キレート滴定とは
2 EDTA の特性
3 キレート滴定におけるpH の影響
4 金属指示薬
5 マスキング剤
6 キレート滴定を用いて定量する日局収載の医薬品
4 章 酸化と還元,酸化還元滴定
A 酸化還元反応
B 酸化還元電位
1 金属イオン- 金属系
2 イオン- イオン系
3 水素イオンが関与する酸化還元系
C 酸化還元平衡
1 鉄イオンとセリウムイオンの酸化還元系
2 金属亜鉛と銅(U)イオンの酸化還元系
D 酸化還元滴定
1 酸化還元滴定曲線
2 容量分析用標準液
3 滴定の終点検出法
4 酸化還元滴定を用いて定量する日局収載の医薬品
5 章 沈殿の生成と溶解,沈殿滴定
A 沈殿平衡と溶解度積
1 溶解度に及ぼす因子
B 沈殿滴定
1 沈殿滴定の終点検出法
2 沈殿滴定
3 沈殿滴定を用いて定量する日局収載の医薬品
6 章 分配平衡
A 溶媒抽出
1 分配の法則
2 弱電解質における分配係数
3 分配係数とpH の関係
4 試料の前処理法
B イオン交換
1 イオン交換樹脂
7 章 有機物の確認試験
A 官能基の定性反応
1 アルコール類の定性反応
2 フェノール類の定性反応
3 アルデヒド,ケトン類の定性反応
4 活性メチレンの定性反応
5 カルボン酸類の定性反応
6 アミン類の定性反応
B 構造特異的反応
1 糖および炭水化物
2 タンパク質
3 アヘンアルカロイド
4 トロパンアルカロイド
5 インドール環
6 ピリジン環
7 フェノチアジン環
8 キサンチン骨格
9 キノリン誘導体
10 ジギトキソース
11 ステロイド
8 章 無機イオンの定性分析
A 無機イオンの分析法
1 錯体生成反応
2 酸化還元反応
3 沈殿反応
4 気体発生反応
5 炎色反応
B 無機イオンの定性分析
C 純度試験
1 アンモニウム試験法
2 塩化物試験法
3 重金属試験法
4 鉄試験法
5 ヒ素試験法
6 硫酸塩試験法
7 硫酸呈色物試験法
9 章 その他の分析法
A 滴定終点検出法
1 指示薬法
2 電気的終点検出法
B 導電率測定法
1 導電率とは
2 導電率の測定原理
3 導電率測定法の終点
C 熱分析法
1 熱重量測定法(TG)
2 示差熱分析法(DTA)
3 示差走査熱量測定法(DSC)
10章 分離分析
A クロマトグラフィーと関連用語
B クロマトグラフィーの種類
1 薄層クロマトグラフィー
2 液体クロマトグラフィー
3 ガスクロマトグラフィー
C クロマトグラフィーの実際
D 電気泳動
1 電気泳動の原理
2 電気泳動の分類
3 電気泳動の装置および分離例
11章 電磁波分析法
A 紫外可視吸光度測定法
1 光の吸収
2 光の吸収と電子遷移
3 ランベルト・ベールの法則および吸収スペクトル
4 装置と測定法
5 紫外可視吸光度測定法の応用
B 蛍光光度法
1 光の吸収と発光(蛍光)
2 装置と測定法
3 励起スペクトルと蛍光スペクトル
4 構造との関連
5 蛍光光度法の応用
C 原子スペクトル/ICP 分析法
1 原子吸光光度法
2 原子発光光度法
3 誘導結合プラズマ- 発光分光分析法(ICP-AES)
4 誘導結合プラズマ-質量分析法(ICP-MS)
D 赤外吸収・ラマンスペクトル測定法
1 赤外吸収スペクトル測定法
2 ラマンスペクトル測定法
E X 線分析法
1 X 線とは
2 粉末X 線回折法
3 単結晶構造解析
4 X 線吸収分析法
5 蛍光X 線分析法
F 旋光度測定法,円偏光二色性測定法
1 旋光度測定の原理
2 測定装置
3 旋光度の定性・定量分析への応用
4 旋光分散(ORD)
5 円偏光二色性(CD)
6 ORD 曲線およびCD スペクトルの応用
G 磁気共鳴法(NMR/ESR)
1 核磁気共鳴(NMR)の原理
2 1H NMR スペクトル
3 13C NMR スペクトル
4 電子スピン共鳴(ESR)の原理
12章 質量分析法
A 装 置
1 イオン化部(イオン源)
2 質量分析部
3 検出部
B マススペクトルの解析
1 フラグメンテーション
2 同位体とその他のピーク
C ほかの分析法との結合(ハイフネーテッド)
13章 分子間相互作用解析法
A 分子間の相互作用を解析することにより得られる情報
1 分子間の相互作用を解析する分析法
B 検出方法の違いによる相互作用解析法の分類
1 単体と複合体を分離した後に,複合体のみを検出する方法
2 単体と複合体を分離せずに,混合状態から複合体のみを検出する方法
C 相互作用解析実験の手順
1 単体と複合体を分離して,複合体を観測
2 単体と複合体を分離せずに,混合状態から複合体を観測
3 複合体の形成部位に関する微視的情報の付加
D 実験系環境の違いによる相互作用解析法の分類
1 標的タンパク質もしくはリガンドのどちらか一方を固相に固定させた実験系
2 標的タンパク質およびリガンドの両方が溶液中に存在する実験系
3 標的タンパク質およびリガンドの両方が細胞中に存在する実験系
E 相互作用解析実験の実際
1 表面プラズモン共鳴(SPR)
2 等温滴定カロリメトリー(ITC)
3 どの相互作用解析法を選択するのか
14章 臨床分析
A 概 論
B 試料の前処理
1 前処理の目的と代表的な前処理法
2 溶媒抽出法
3 固相抽出法
4 除タンパク法
5 カラムスイッチング
6 誘導体化
C 精度管理と標準物質
1 精度管理とその意義
2 標準物質
D 分離分析法
E 酵素を用いる分析法
1 酵素を利用する分析
2 酵素反応速度論
3 酵素反応に影響を及ぼす因子
4 酵素分析法の種類
5 酵素分析法による生体成分の定量
F 免疫反応を用いる分析法
1 免疫測定法とは
2 抗体と抗原の特性
3 免疫測定法の種類と原理
4 B/F 分離
5 ラジオイムノアッセイ
6 酵素免疫測定法
7 蛍光免疫測定法
8 免疫比濁法,免疫比ろう法
G ドライケミストリー
1 ドライケミストリーの歴史
2 ドライケミストリーの長所と短所
3 ドライケミストリーの測定原理
4 ドライケミストリーの基材の特徴
5 臨床現場で使用されているドライケミストリーの実例
H センサー
I 薬毒物分析
1 試料の取り扱い
2 中毒原因物質(乱用薬物を含む)のスクリーニング法
3 代表的な中毒原因物質の分析
J 画像診断法
1 医用画像診断装置(モダリティー)
2 X 線を使用した診断
3 核医学検査
4 MRI
5 超音波診断法
6 内視鏡
7 薬学領域で汎用されるそのほかの分析技術
本書で対応する薬学教育モデル・コアカリキュラム一覧
索 引
分析化学は,最近のゲノム編集にみられるような華やかさとは好対照の地味な学問である.分析法の開発には,こつこつと地道に積み上げられた実験データが基となっている.しかし,分析化学ほど重要な学問はない.自然科学を支える基礎研究分野のなかでも,その重要度は最上位に位置するのではないだろうか.世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の例をとっても, 感染(ウイルス陽性)もしくは非感染(ウイルス陰性)かの議論の根底は,確かな信頼性に基づいた分析法による測定値が鍵を握っている.この信頼性が崩れるとしたら,議論自体が成り立たない.すなわち,今日の生命科学や臨床診断を支える一翼を担っているのも,間違いなく分析化学である.事実,分析化学はさまざまな分野における学問の発展に起動力的な役割を果たしており, 多くのノーベル化学賞やノーベル生理学・医学賞の受賞につながる優れた研究成果を産み出してきた.
日本の薬学は,明治時代に天然物化学と分析化学から創始された歴史をもつ.時代の経過とともに,薬学における分析化学は基礎系の学問から発展し,次第に臨床系の学問も包括していくこととなった.現在では,大きく分けて化学分析,機器分析,臨床分析の主要な3つの分野から構成され,医薬品やそれに関連する化学物質,および生体物質の定性分析(化学構造,存在状態,化学反応性, 生理活性などの確認や同定)と定量分析(高感度で高精度な量の測定)に関する化学の基礎理論や方法論を扱う学問と認識されている.
本書の初版では, 最初の薬学教育モデル・コアカリキュラムに沿って,「化学物質の分析」「生体分子を解析する手法」「化学物質の構造決定」に関するすべての内容を網羅するように構成した. 初版の出版から3 年後に, 初版のコンセプト(わかりやすく,ミニマムエッセンスで記述され,図表を多用して見た目からの理解を促す構成とする)を継承する改訂第2 版を出版した. 改訂第2 版では,2015 年度からの改訂薬学教育モデル・コアカリキュラムで整理された分析化学の6 分野である「(1)分析の基礎,(2)溶液中の化学平衡,(3)化学物質の定性分析・定量分析,(4)機器を用いる分析法,(5)分離分析法,(6)臨床現場で用いる分析技術」に準拠し,現代医療の要請に合わせた基本的な内容を厳選した.
改訂第3 版となる本書では,改訂のポイントとして,2021 年4 月より施行された第十八改正日本薬局方の内容に合わせた対応を図り,全体として日本薬局方も意識し,主な試験法ごとに具体的な医薬品分析への適用例を追加した.見やすいように本文内容と局方収載試験法との対応一覧表も追加した.
最後に,改訂第3 版の刊行にあたり,丁寧に執筆くださった執筆者の先生方と,多大なご協力をいただいた南江堂の津野将輝氏,宮本博子氏に執筆者を代表して心からお礼を申し上げたい.
2021年8月
安井 裕之,兎川忠靖