生物薬剤学[電子版付]改訂第4版
| 編集 | : 谷川原祐介/井上勝央 |
|---|---|
| ISBN | : 978-4-524-40381-3 |
| 発行年月 | : 2024年3月 |
| 判型 | : B5判 |
| ページ数 | : 346 |
在庫
定価5,830円(本体5,300円 + 税)
正誤表
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2024年06月11日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文

初めて"生物薬剤学"を標ぼうし本領域の発展を支えた「生物薬剤学」(1975年刊)をルーツとした教科書.薬物動態,薬物速度論,投与設計,相互作用,DDS等を体系的に編纂.初学者でも学習しやすいよう,発展的内容を区別して記載.今改訂では全体の約8割を一新し,臨床事例を多数追加した.薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版/平成25年度改訂版)対応.電子版付.
生物薬剤学序論
1 生物薬剤学とは
2 薬物の吸収,分布,代謝,排泄
A 吸 収
B 分 布
C 薬物代謝
D 排 泄
3 薬物速度論
4 ドラッグデリバリーシステム(DDS)
5 新薬開発と生物薬剤学
6 医療と生物薬剤学
1章 生体膜透過
総 論
A 生体膜透過の分類
B 生体膜透過と薬物動態の関係
1 薬物の生体膜透過機構
A 生体膜の構造と機能
B 単純拡散による薬物の生体膜透過
C 担体介在性輸送による薬物の生体膜透過
D 膜動輸送を介した物質の取り込みと放出
2 トランスポーター
A 構造的特徴
B 分 類
C 薬物動態との関連
D 薬物動態的に重要なトランスポーター
E トランスポーター分子間の機能的連携
F 薬物トランスポーターの特徴
G トランスポーターの発現調節
3 トランスポーターの薬理遺伝学
A 薬理遺伝学とトランスポーター
B BCRPの遺伝子多型と臨床的意義
C OATP1B1の遺伝子多型と臨床的意義
2章 吸 収
総 論
A 吸収に関わる諸要因
B 各種投与部位の特性
C バイオアベイラビリティ
1 薬物の消化管吸収
A 消化管の構造と機能
B 薬物吸収における製剤特性の影響
C 小腸での薬物吸収過程
D 小腸上皮での薬物透過機構
E 吸収に影響を及ぼす要因
2 非経口剤からの吸収
A 消化管以外の投与部位からの薬物吸収
B 注射部位からの薬物吸収
C 皮膚を介した薬物吸収
D 直腸からの薬物吸収
E 鼻腔からの薬物吸収
F 肺からの薬物吸収
G 口腔からの薬物吸収
H 眼組織からの薬物吸収
I 膣からの薬物吸収
3 バイオアベイラビリティと生物学的同等性
A バイオアベイラビリティ
B 生物学的同等性
C バイオ後続品(バイオシミラー)
3章 分 布
総 論
A 薬物の体内分布特性の基本的事項
B 組織分布の変動要因
1 薬物の血漿タンパク結合
A 薬物のタンパク結合に関与する血漿タンパク質
B 薬物の血漿中濃度に及ぼす血漿タンパク結合の影響
C 病態時における血漿タンパク結合の変動
D 血漿タンパク結合と組織移行性
E 血漿タンパク結合の解析法
F 血漿タンパク結合の測定法
2 薬物のリンパ系移行性
A リンパ系の機能と循環
B リンパ系の構造と薬物の移行
3 薬物の脳内移行性
A 薬物の脳内移行経路
B 血液脳関門を介した薬物透過機構
C 血液脳脊髄液関門を介した薬物透過機構
D 脳への薬物分布の定量評価
4 薬物の胎児移行性
A 胎児胎盤の発達と薬物の影響
B 胎盤関門を介した薬物透過機構
C 胎盤関門における薬物代謝
D 胎児への薬物分布の定量評価
5 薬物の乳汁移行性
A 母乳分泌量
B 薬物の乳汁移行メカニズム
C 薬物乳汁移行のパラメータ
D 母乳を介する薬物曝露
4章 薬物代謝
総 論
A 薬物代謝反応と薬物代謝酵素
B 薬物代謝の変動要因
1 薬物代謝反応の過程
A 薬物代謝反応の概要
B 代表的な薬物代謝反応
2 薬物代謝反応部位と薬物代謝酵素
A P450
B P450以外の第1相反応に関わる薬物代謝酵素
C 抱合酵素
3 薬物代謝酵素の阻害と誘導
A 薬物代謝酵素(P450)の阻害
B 薬物代謝酵素の誘導
4 薬物代謝能の変動要因
A 内的要因
B 外的要因
5 薬物代謝の薬理遺伝学
A 薬理遺伝学とは
B 遺伝型と表現型
C 薬理遺伝学検査において重要な薬物代謝酵素
5章 排 泄
総 論
A 薬物処理臓器としての腎臓と肝臓
B 薬物の排泄と生体膜トランスポーター
C 腎排泄の制御と疾患治療
1 腎排泄
A 腎臓の構造と機能
B 薬物の腎排泄
2 胆汁中排泄
A 肝臓の組織学的構造
B 胆汁の性質
C 薬物の胆汁中排泄を支配する要因
D 腸肝循環
6章 薬物相互作用と体内動態の制御
総 論
A 薬物相互作用の分類
B 薬物相互作用の事例と高リスク薬物
C 医薬品開発における薬物相互作用
D 臨床における薬物相互作用
1 薬物動態に基づく薬物相互作用
A 薬物相互作用を生じる阻害様式について
B 代謝酵素・トランスポーターの阻害により生じる薬物相互作用
C 発現誘導により生じる薬物相互作用
D 局所の薬物濃度が変動する相互作用
2 薬力学に基づく薬物相互作用
A 治療上の有益性向上を期待する薬力学的相互作用
B 治療上の不利益が生じる薬力学的相互作用
3 内因性物質の動態制御に基づく医薬品
A 内因性物質の代謝酵素の阻害に基づく医薬品との薬物相互作用
B 内因性物質に対するトランスポーターを標的とした医薬品
7章 ドラッグデリバリーシステム
総 論
A ドラッグデリバリーシステムの定義
B ドラッグデリバリーシステムの歴史
C ドラッグデリバリーシステムに用いられる方法
1 放出制御型ドラッグデリバリーシステム
A 放出制御製剤の目的と利点
B 徐放性製剤の放出制御法
C 臨床使用されている徐放性製剤
2 プロドラッグとアンテドラッグ
A プロドラッグとアンテドラッグの概念
B プロドラッグとアンテドラッグの血中濃度
C プロドラッグ設計に利用される酵素
D 臨床応用されるプロドラッグの例
3 標的指向化(ターゲティング)
A 標的指向化を規定する因子
B 受動的ターゲティング
C 能動的ターゲティング
8章 バイオ医薬品の体内動態
総 論
1 抗体医薬品の構造と薬効・体内動態との関連
2 吸収と投与経路
3 分 布
4 消 失
A 非特異的な消失機構とFcRnを介した逃避機構
B 標的分子を介した特異的消失機構
C TMDDモデル
5 抗体医薬品に対する抗体(抗薬物抗体)
9章 薬物動態パラメータ
総 論
1 生物学的半減期
2 AUC
3 分布容積
4 クリアランス
5 バイオアベイラビリティ
10章 薬物速度論:コンパートメント解析
1 コンパートメントモデルの概念
2 分布容積
3 線形1-コンパートメントモデル
A 静脈内急速投与
B 静脈内定速投与
C 一次吸収過程のある場合
D 繰り返し投与
4 線形2-コンパートメントモデル
A 血漿中薬物濃度推移
B 分布容積
5 非線形モデル
11章 薬物速度論:ノンコンパートメント解析
総 論
1 モーメントとは
2 モーメントの算出法
A 実測値を用いた数値積分による方法
B モデルパラメータから求める方法
C 静脈内定速投与(持続点滴)時の血中薬物濃度推移とモーメント
D 尿中排泄データとモーメント
3 体内分布の評価
4 モーメント解析による薬物体内動態に影響する各過程の分離評価
5 溶出過程におけるモーメント解析
6 まとめ
12章 TDMと薬物投与設計
総 論
1 TDMの実際
2 TDMを必要とする薬物
3 TDMが活用される臨床上の場面
4 TDMを活用した薬物投与設計
5 病態時のTDM(腎臓,肝臓,心臓)
A 腎機能低下時
B 肝機能低下時
C 心不全時
6 母集団薬物動態とベイジアン個別化投与設計
7 薬物各論
A バンコマイシン
B テイコプラニン
C ジゴキシン
D フェニトイン
E バルプロ酸
F タクロリムス
13章 薬力学
総 論
1 薬力学モデル
2 薬物動態/薬力学(PK/PD)関係の記述
A 直接反応モデル
B 間接反応モデル
C 薬効コンパートメントモデル
3 曝露-反応関係の記述に用いる指標
A 曝露の指標
B 反応の指標
4 用量-曝露-反応関係の記述
A 曝露-反応関係の探索的な検討
B 曝露-反応関係を記述するモデル
C 用量-曝露-反応関係の記述
5 曝露-反応解析の臨床事例
6 まとめ
14章 生理学的薬物速度論
総 論
1 バイオアベイラビリティ
2 血球移行と組織分布
A 血液中/血漿中薬物濃度比
B 分布容積
3 クリアランス
A 全身クリアランスと組織クリアランス
B 肝クリアランスと肝固有クリアランス
C 血流律速と代謝律速
4 PBPKモデルの組み立て
15章 臨床毒性学
1 副作用はタイプAとタイプBに分けられる
A タイプAの副作用
B タイプBの副作用
2 まれな副作用の発症頻度の考え方
A 標的への作用が副作用発現の起点となる
B 常用量で生じるまれな副作用の考え方
C まれな副作用発症には複数条件を満たすことが必要と考えられる
学問領域にはその体系を記述する教科書が必要である.1970 年代に興った「生物薬剤学」は今や医薬品の創製のみならず,臨床現場で医薬品を適正に使用する上でも必要不可欠な学問領域となった.本書は,約50年前の1975年に初めて生物薬剤学を標ぼうした教科書をルーツとしており,以来,日本における生物薬剤学の標準教科書として支持されてきた.この間,生物薬剤学領域は順調に発展を続け,学問的な深さに加えて扱う範囲も多岐にわたり,薬学における基幹領域のひとつとなった.それゆえ,生物薬剤学の標準知識と学問体系を網羅的に解説した教科書はより一層重要性を増している.
本書は,近年の最新情報を取り入れるとともに,生物薬剤学の基礎から標準レベルの知識を伝えるという教科書の原点に則り,9 年ぶりとなる全面改訂によって第4 版として上梓するものである.生物薬剤学は,創薬や製剤設計など医薬品を開発する側,臨床で医薬品を使用する側の双方で必須の知識であるため,薬学・医学を学ぶ学生,大学院生,そして薬剤師等の医療従事者が手にする教科書をめざした.
第4 版の改訂ポイントは下記の3点である.
第一に,ほぼすべての応用事例をヒトおよび臨床データで呈示するという第3 版の方針を引き継ぎ,各章での臨床適用事例の解説をさらに充実させた.加えて,読者の理解を助けるための模式図を数多く掲載した.これは,生物薬剤学は実験室内の学問ではなく,医薬品を開発し適正に臨床使用するための学問であるという信念に基づいている.本改訂により,学生は臨場感をもって医薬品適正使用の学問的背景を学ぶことができ,医療に従事する薬剤師は身近な問題の本質を理解する上で役に立つと期待できる.
第二に,本書の特長であった通読性をさらに高め,オーソドックスなADME という現象論と,トランスポーター・薬物代謝酵素の分子論の両面から解説し,薬剤適用時の生物学的効果とそのメカニズムを有機的なつながりをもって体系的に学べるように配慮した.領域全体を俯瞰した「生物薬剤学序論」,各章の冒頭に配置した「総論」は,先ずそこだけを読めばエッセンスを習得することができる.
そして第三に,近年注目されている新しい話題として,「バイオ医薬品の体内動態」「臨床毒性学」を新たな章として加えた.これにより,本書は一冊で生物薬剤学のすべてを学ぶことができる.
執筆は,現在の生物薬剤学を牽引する気鋭の現役教授陣にお願いした.日本を代表する専門家たちが意欲的に執筆した本書は,生物薬剤学の標準教科書と言える完成度の高さに仕上がったと自負している.本書が薬学を学ぶ者の糧となり,創薬および医療薬学の発展に貢献できることを心から願っている.
最後に,本改訂にあたり編者の方針に賛同し粘り強いご支援とご協力をいただいた南江堂の岩公希氏と笠井由美氏に深く感謝の意を表する.
2024 年1 月
谷川原祐介
井上勝央

