教科書

医薬 分子生物学改訂第4版

: 野島博
ISBN : 978-4-524-40363-9
発行年月 : 2019年7月
判型 : B5
ページ数 : 352

在庫あり

定価4,400円(本体4,000円 + 税)

  • お気に入りに登録

サポート情報

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

医療系学生を対象とした分子生物学の教科書。基礎から薬・病気との関連まで体系的に学習できる。また、ダイエットと寿命の関係や身体に優しいジャガイモなど、身近な例から分子生物学の解説に入ることにより、初学者でも興味を持って読み進められるよう工夫した。今改訂では一部章立ての変更により、利用頻度の少なくなった実験手法の記述を圧縮、近年発展の著しい分子生物学に関連した疾患治療についての記述を拡充した。薬学教育モデル・コアカリキュラム(平成25年度改訂版)対応。

第1章 遺伝子とは何か
 1 遺伝学の始祖,メンデル
 2 近代遺伝学の発展
 3 細胞の微細構造と細胞を構成する物質
 4 タンパク質の構造と機能
 5 核酸の構造と機能
 6 遺伝子の実体はDNAだった!
第2章 遺伝子の分子生物学
 1 DNAの二重らせん構造
 2 複製
 3 転写
 4 翻訳
 5 突然変異と遺伝子組換え
 6 染色体の構造
 7 テロメアとテロメラーゼ
 8 セントロメア
 9 ミトコンドリア
第3章 ゲノムの分子生物学
 1 ヒトゲノムの遺伝子地図
 2 ヒトゲノムプロジェクトの成就
 3 ヒトのゲノム情報の概略
 4 ゲノムを占拠するトランスポゾン
 5 機能性RNA:「RNA新大陸」の発見
 6 RNA編集
 7 エピジェネティックス
 8 ヒト以外の生物のゲノム情報
 9 バイオインフォマティクス
第4章 細胞の分子生物学
 1 細胞のシグナル伝達
 2 細胞周期
 3 老化
 4 アポトーシス
 5 エンドサイトーシス
 6 エクソソーム
 7 小胞体ストレス応答
第5章 病気の分子生物学
 1 遺伝子の変異を原因とする遺伝性疾患
 2 多因子性遺伝性疾患と糖尿病
 3 脂質異常症
 4 肥満体質の遺伝
 5 繰り返しの数が原因となるトリプレット・リピート病
 6 筋ジストロフィー
 7 筋萎縮性側索硬化症と脊髄小脳変性症
 8 アルツハイマー病
 9 ヒトにもある狂牛病
 10 狂牛病の病原体としてのプリオン
 11 パーキンソン病
 12 がん遺伝子
 13 がん抑制遺伝子
 14 がんの多段階発症説
 15 腸内フローラと病気
 16 遺伝子の水平伝播
第6章 薬の分子生物学
 1 薬理作用の基礎
 2 ホルモン
 3 細胞膜受容体
 4 チロシンキナーゼ
 5 核内受容体
 6 カルシウムイオン制御
 7 その他のイオンチャネル
 8 生理活性ペプチド
 9 プロスタグランジン系
第7章 遺伝子工学の基礎と応用
 1 遺伝子操作技術の誕生
 2 遺伝子操作技術を担う酵素群
 3 分子生物学の発展
 4 ベクターの開発
 5 PCRの開く無限の可能性
 6 高速DNA塩基配列決定法
 7 組換え体の大量発現
 8 組換えタンパク質の検出と解析
 9 RNA干渉
 10 役に立つリボザイム
 11 アンチセンスRNAとコードブロッカー
 12 アプタマー
 13 ペプチド核酸
 14 アブザイム
第8章 ゲノム編集と人工生命
 1 ゲノム編集の原理
 2 細菌の獲得免疫系としてのCRISPR-Cas9
 3 CRISPR-Cas9技術の実際の運用
 4 CRISPR-Cas9技術の展開
 5 ゲノム編集技術の医療への応用
 6 ゲノム編集技術の農作物への応用
 7 ゲノム編集技術の畜産への応用
 8 ゲノム編集技術の漁業への応用
 9 ゲノム編集と創薬(抗生物質)
 10 新たな人工生命
 11 新しい技術の危険性と規制
第9章 再生医学と医薬品
 1 胚操作とキメラ生物
 2 クローン動物
 3 体細胞クローンヒツジ
 4 発生工学の誕生とトランスジェニックマウス
 5 遺伝子ターゲッティングとキメラ生物
 6 遺伝子ノックアウトマウス
 7 遺伝子ノックインと組織特異的な遺伝子ノックアウト
 8 幹細胞と再生医学
 9 iPS細胞
第10章 バイオ医薬品
 1 初期のバイオ医薬品
 2 分子標的医薬品
 3 分子標的抗体医薬品
 4 Fc融合タンパク質製剤
 5 ペプチド製剤とタンパク質製剤
 6 ペプチドワクチン製剤
 7 がん光免疫療法
第11章 遺伝子の診断と治療
 1 病気の原因としての遺伝性素因と環境因子
 2 遺伝子変異の種類と遺伝子診断
 3 遺伝子マーカー
 4 SNPタイピング技術
 5 ハップマップ計画と医療の個別化
 6 コピー数多型
 7 DNA採取法
 8 金メダル遺伝子
 9 遺伝子治療の歴史と実例
 10 がんウイルス療法
第12章 ゲノム創薬と先端医療
 1 ゲノム創薬科学とは
 2 ゲノム創薬の基盤となる薬理ゲノミクス
 3 トランスクリプトームから得られるゲノム創薬情報
 4 DNAマイクロアレイ
 5 バイオチップ(バイオアレイ)
 6 プロテオームとプロテオミクス
 7 ゲノム創薬への戦略
 8 がんゲノム医療
 9 ナノ技術と薬物送達システム
 10 光免疫療法
参考文献
索引

改訂第4版の序

 分子生物学を基盤とした医薬関連分野を含むバイオサイエンスの進展の速度にはめざましいものがある。とくに医薬関連分野では、こうして生まれたさまざまな発見が次々と新しい医薬品として展開し、次々と臨床分野に応用されていくので、それらの動向からは目を離せない。なかには従来の常識を打ち破るほどの革新的な技術が生み出されることもあるので、皮相的な理解だけでなく、その根本的な原理を深く理解していないと、何が革新的なのかさえわからなくなってしまう。そのような状況に陥らないためには、信頼のおける教科書を座右において、不明な点は復習するという心構えが肝要である。
 本書の初版(2004年)、第2版(2009年)、および第3版(2014年)は、薬学や医学を専攻する学徒が、バイオサイエンス進展の基盤となった分子生物学を体系的に学ぶ目的で出版された教科書である。いずれの版においても初心者が適切な専門家の講義の教科書として使用すれば、医薬分子生物学の発展の歴史と最先端の知識が獲得できるように、精密かつ広範な記述を進めてきた。さらには、すでに大学などを卒業して実社会で活躍されている社会人の方々が、現在の専門にかかわらず、バイオサイエンスの発展の歴史と最先端の基礎知識を独学でも苦労せずに理解できるよう、わかりやすい記述を心がけた。一方で、図表が豊富な辞書としていつも手元に置いて参照できるよう、各項目をわかりやすい配置で効率よくまとめ、索引を充実させて、必要な知識に速やかにたどりつけるような工夫も随所に織り込んだ。
 幸いにして、初版、第2版、第3版とも好評を得ることができ、多くの読者に恵まれた。一冊の教科書が初版以来14年以上も愛読されたことに対し、読者に深く感謝したい。しかし、さすがに第3版から5年も経ってくると、急速な研究進展の速度に対応できていない部分も増えてきた。そこで、この第4版では第3版に対する読者アンケートの結果を参考にして、読者の希望に沿って内容を刷新し、章立てを第3版以上に大幅に改訂して、いっそうの読みやすさを追求するとともに、時代の進展に即した新たな知識を大幅に取り入れた。その代わり、時代遅れの感のある技術に関する記述は大幅に削除した。まず第1章では「遺伝子とは何か」というタイトルで、旧版通り分子生物学の基礎となる遺伝子について概説した。第2章では「遺伝子の分子生物学」、第3章では「ゲノムの分子生物学」、第4章では「細胞の分子生物学」、第5章では「病気の分子生物学」、第6章では「薬の分子生物学」というタイトルで、全体の中で各章がどのような位置を占めて連繋しているかをわかりやすく概観できるようにした。改訂した文章には読者アンケートで指摘された改善を進めるとともに、最新の知見も取り入れて最先端の基礎知識を追加して解説した。
 第4版で大きく改訂したのは第7章と第8章である。まず第7章では「遺伝子工学の基礎と応用」というタイトルで、旧7章と旧8章を統合して、時代遅れとなった技術の解説は図説とともに大幅に割愛した。その代わり、新たな第8章では「ゲノム編集と人工生命」というタイトルで、ゲノム編集の原理やCRISPR-Cas9技術や遺伝子ドライブなどの最先端の知見を簡潔にわかりやすく解説した。また、ゲノム編集技術の医療や創薬への応用のみでなく、農作物や畜産や漁業への応用についても言及した。「人工生命」は、近い将来どのように展開するか未知の部分はあるが、ゲノム編集と組み合わさって大きく進展し、安全性も含めた大きな社会問題となる可能性を秘めているので、第8章に収録して基礎的な知識を簡潔に解説した。
 第9章では「再生医学と医薬品」、第10章では「バイオ医薬品」、第11章では「遺伝子の診断と治療」、第12章では「ゲノム創薬と先端医療」というタイトルで、旧版の利点を生かしつつ、最先端の基礎知識を簡潔に追記した。追記した内容の中には、免疫チェックポイント阻害医薬品やがん光免疫療法を含む抗がん抗体医薬品(第10章)、金メダル遺伝子やがんウイルス療法(第11章)、がんゲノム医療やナノ技術と薬物送達システム(第12章)といった、時流に即した話題についても簡潔に解説した。全体として読みやすくするために、本文からは原則として英文は省いて日本語のみで一気に読めるようにした。その代わりに重要語句は索引として巻末に英文を併記し、国際化に対応できる知識を得る手助けとなるようにした。これらの工夫が読者の学習効率をいっそう増進させる一助となれば幸いである。
 本書を執筆するにあたり南江堂出版部の方々、とくに岩ア公希氏と杉山由希氏には大変お世話になった。彼らの優れた情報収集力と叱咤激励のお蔭で、初版、第2版、第3版で不足していた点が大幅に改善でき、この第4版ではいっそう充実した内容を持つことができるようになったと思う。ここに深く感謝したい。

2019年 如月吉日
野島博