これからの社会薬学改訂第2版
社会の変化と,対応する薬剤師への期待
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 福島紀子/早瀬幸俊/宮本法子 |
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ISBN | : 978-4-524-40304-2 |
発行年月 | : 2013年3月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 212 |
在庫
定価3,520円(本体3,200円 + 税)
サポート情報
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2015年03月12日
改訂薬学教育モデル・コアカリキュラム(平成25年度改訂版)対応表
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
薬や薬剤師を取り巻く社会環境とその変化を理解できる能力を身につけ、薬を通して社会に貢献できる薬剤師を育てることをめざした、社会薬学の教科書。医療関係の倫理、法律、制度、薬の流通や管理、医療経済、地域薬局等を学ぶ。今改訂では各種法規、制度、統計等の情報を更新したほか、2色刷でより読みやすい紙面とした。薬学教育モデル・コアカリキュラムC18[薬学と社会]に対応。
I 薬と社会
1.薬学の社会性
A 薬学は社会を変えるか
B 薬学教育:医療人教育の開始
C 医療倫理と薬の倫理
D 日本の「薬剤師倫理規定」
E 社会の秩序
F 健康の定義
G 生命・健康権の法的根拠:
日本国憲法第13条・第25条
2.「薬剤師」の法的根拠
A 「医師(歯科医師)」の法的根拠
B 「保健師・助産師・看護師」の法的根拠
C 薬剤師の任務
D 薬剤師が関係する主な法律
E 薬剤師の責任はなぜ重いのか:
薬剤師免許のもつ意味
F 薬剤師に課せられる3つの法的責任
1)民事責任
2)刑事責任
3)行政上の責任
4)近時の裁判例
■レポート課題
II 薬剤師をとりまく環境の変化
1.主な行政資料
A 人口動態統計(基幹統計)
B 国民生活基礎調査(基幹統計)
C 国民健康・栄養調査(一般統計調査)
D 患者調査(基幹統計)
E 医療施設調査(基幹統計)
F 薬事工業生産動態統計調査(基幹統計)
G 社会医療診療行為別調査(一般統計調査)
H 医師・歯科医師・薬剤師調査(一般統計調査)
I 医療経済実態調査(一般統計調査)
2.平均寿命の推移
3.人口構造
4.疾病構造の変化
A 受診率
B 死亡率
5.医薬品等の生産額
■レポート課題
III 医薬品等の流通と市販後調査
1.医薬品等の定義
A 医薬品
B 医薬部外品
C 化粧品
D 医療機器
E 生物由来製品・特定生物由来製品
F 体外診断用医薬品
G 希少疾病用医薬品
H 保健機能食品の利用
1)保健機能食品制度と特別用途食品制度
2)特定保健用食品(健康増進法第26条)
3)栄養機能食品(健康増進法第31条)
2.医薬品の流通
A 医薬品の流通経路
B 医薬品の区分
1)医療用医薬品
2)一般用医薬品
3)スイッチOTC薬
4)ダイレクトOTC薬
C 医薬品の販売
D 諸外国の医薬品の販売
3.医薬品販売等における規制緩和の流れ
A 規制緩和の歴史的背景
B 医薬品・医薬部外品の見直し
4.医薬品の市場動向
A 国内の医薬品の市場
1)医療用医薬品の市場
2)一般用医薬品の市場
B 世界でみる医薬品の市場
C 市販後調査
■レポート課題
IV 医薬品の適正使用
1.副作用被害と薬害
2.日本における副作用被害と主な薬害
A 社会に影響を与えた薬害の概要
1)サリドマイド事件
2)スモン事件
3)ソリブジンとフルオロウラシルの相互作用による被害
4)生物由来製品により被害が発生した事例
B 医薬品被害の教訓を活かして
C 今後、さらに取り組みを強化しなければならない医薬品等の被害
1)薬剤性スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)発症の被害
2)その他の医薬品被害
3.医薬品副作用被害救済制度
A 公的救済制度の必要性
B 予防接種による健康被害の救済
C 独立行政法人医薬品医療機器総合機構による
医薬品副作用被害救済制度および生物由来製品感染等被害救済制度の設立経緯
D 独立行政法人医薬品医療機器総合機構による救済と条件
E 独立行政法人医薬品医療機器総合機構では救済されない場合
F 救済に当てる資金の調達
G 医薬品副作用被害救済制度および生物由来製品感染等被害救済制度等に関連した取り組み
4.医療過誤・調剤過誤・医療裁判
A 医療と薬剤師の責務
B 薬剤師が負う法的責任
C 医療過誤・医療事故・医療裁判
1)医療の性格と医療過誤・医療事故
2)医療過誤・医療事故と法的責任
3)医療事故(調剤過誤)と刑事責任
4)医療事故(調剤過誤)と民事責任
5)不適正な医療と行政処分
■レポート課題
V 制度・仕組みの動き
1.医療提供体制
A 医療法改正の動き
B 医療提供の理念
1)第五次医療法改正
2)患者との信頼関係
3)「薬局」が医療提供施設へ
C 医療供給体制の改革
1)医療連携体制への転換
2)医療提供体制の確保に関する基本方針
3)在宅医療を推進するための規定の整備(医療法・薬剤師法)
D 日本における医療機関数の推移
E 医療従事者数
2.薬局
A 薬局の形態
B 薬局開設の許可
1)許可の申請
2)薬局の構造設備
3)薬局の業務を行う体制
C 保険薬局
3.医薬分業制度
A 医薬分業の意義
B 医薬分業の起源
C 日本における医薬分業の歴史
D 医薬分業の現状
4.薬局の業務運営ガイドライン
5.基準薬局制度
■レポート課題
VI 社会保障制度
1.社会保障制度
A 社会保障制度の概要
B 社会保障制度の役割
C 社会保障制度の変遷
2.社会保険制度
A 社会保険制度の概要
1)公的年金制度
2)労働者災害補償保険
3)雇用保険
3.医療保険制度
A 医療保険制度の成り立ち
B 医療保険の種類
1)被用者保険
2)国民健康保険
3)後期高齢者医療制度
C 自費による医療
D 保険診療・保険調剤
1)保険診療・保険調剤の仕組み
2)保険医・保険薬剤師の責務
3)療養の給付
4)健康保険事業の健全な運営の確保
5)保険診療・調剤の流れ
E 保険給付の種類
F 公費負担医療制度
G 医療保険制度の現状と医療制度改革
4.諸外国の医療保障制度
A イギリス
1)医療保障制度の特徴
2)給付と支払いの概要
B フランス
1)医療保障制度の特徴
2)給付と支払いの概要
C ドイツ
1)医療保障制度の特徴
2)給付と支払いの概要
D アメリカ
1)医療保障制度の特徴
2)給付と支払いの概要
■レポート課題
VII 医療経済の基礎
1.薬物治療とコスト
2.国民医療費の動向
A 国民医療費
B 国民医療費の動向
C 国民医療費の内訳
3.薬剤料の比率
4.薬価基準制度
A 薬価基準の2つの側面
B 薬価収載の基準
C 薬価の算定方式
D 既収載医薬品の薬価改定
5.薬物治療の経済性評価
A 薬剤経済学
B 費用と効果を評価するための分析手法
1)費用―効果分析
2)費用―効用分析
3)費用―便益分析
C 分析の立場
D 薬剤経済分析の例題
VIII 診療報酬制度
1.診療報酬制度
A 診療報酬の仕組み
B 診療報酬の内容
C 診療報酬の支払い方式
D 薬剤料の計算
2.診療報酬と薬剤師
A 医科診療報酬と病院薬剤師
B 調剤報酬と薬局薬剤師
C 調剤報酬算定
3.保険処方せんの読み方
A 保険処方せん
B 処方せんの形式の確認(記載事項の確認)
1)「公費負担医療」欄について
2)「医療保険」欄について
3)「患者」欄について
4)「保険医療機関」欄について
5)「交付年月日」「処方せんの使用期間」欄について
6)「処方」欄について
7)「備考」欄について
8)その他
C 処方内容の確認
1)調剤薬の特定
2)用法・用量
3)投与日数
4)警告・禁忌・使用上の注意
5)重複投薬・相互作用
6)薬剤学的確認
D 処方内容に疑わしい点等があるとき
■レポート課題
IX 高齢社会
1.高齢社会の現状
2.高齢者に対する施策
A 高齢者の医療
B 新たな高齢者の医療の確保に関する
制度
C 特定健康診査等基本指針
D 高齢者の介護
E 介護保険法
F 介護保険と薬剤師のかかわり
G 高齢者のための施設
3.高齢者と薬剤
A 薬の使用状況
B 薬剤の使用状況
C 高齢者における不適切な薬剤処方基準
■レポート課題
X 地域医療の役割
1.地域医療と薬局・薬剤師
2.疾病予防と健康の維持向上
3.健康保持・増進に関する施策
4.健康増進法
5.健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)
A 健康日本21の分野別概要
1)栄養・食生活
2)身体活動・運動
3)休養・こころの健康づくり
4)たばこ
5)アルコール
6)歯の健康
7)糖尿病
8)循環器病
9)がん
B 取り組みの評価と今後の方向性
6.取り組み事例にみる地域薬局の役割
A 健康教室の開催
B 小児の服薬支援
C 透析患者への服薬・食事療法支援
7.災害時における薬剤師の役割
A 災害等の非常時における例外規定
1)調剤の場所について
2)医療用医薬品の取扱い
8.獣医療分野における薬局・薬剤師の役割
■レポート課題
XI 環境衛生
1.薬剤師の環境衛生への取り組み
A 環境衛生
B 学校保健と学校薬剤師
C 学校環境衛生検査
1)定期環境衛生検査
2)臨時環境衛生検査
3)日常における環境衛生(日常点検)
4)学校給食調理場の衛生管理に関する指導体制
D 社会的要請による学校薬剤師活動
2.医療廃棄物
A 廃棄物の種類
B 感染性廃棄物の範囲と種類
C 在宅医療廃棄物
■レポート課題
付 社会薬学的研究課題
1.社会薬学的研究とは
2.研究の進め方
3.社会調査
A 社会調査の種類
1)国勢調査の特徴
B 統計的調査
C 事例的調査
D 時系列分析と技法の組み合わせ
E 社会調査の過程
4.疫学
A 手法の分類
1)記述疫学
2)分析疫学
3)介入研究
B 研究方法(研究デザイン)
■レポート課題
VII 例題の解答
索引
いつの時代にも、どこの国においても、人々は病気を治すために薬を必要としてきた。医学・薬学・科学技術の発展とともに、次から次へ新しい薬が開発され、難病とされてきた病も克服することが可能となった。しかし、病気で苦しんでいる人たちのQOLをどう向上させるか、そこに薬剤による治療がどのように貢献できるか、薬学を学ぶ者として常にその視点に立ち戻ることができなければW明日の薬学Wはありえないと考える。
私たちは、薬学が歴史的、倫理的、法的そして社会的に様々な影響を受けながら発達してきたことを知り、社会と密接に関わっていることを学び、人間の生命の尊厳を重視し、国民の健康保持に貢献する薬学の方向性を一緒に考えていきたい。
近年、薬科大学に「薬と社会」に関する活動や研究を行う講座が新設され、薬学を薬と社会とのつながりの中で考察する事の重要性が認知され、「社会薬学」の分野が教育の中に組み込まれてきている。
「社会薬学」の講義の目的は、薬学を学ぶ上で知っておかなくてはならない薬をめぐる社会の動きや医療に関する制度の変化、それに伴う薬や医療関係者等の動向を、多くの関連資料より深く理解できる様になること、そして現在の医薬品や薬剤師の置かれている状況を社会との関連の中で把握できること、また、将来的に薬学を社会で活かすために、果たすべき役割を個々に考察できるようになることにある。
本書は、共立薬科大学(現慶應義塾大学薬学部)の社会薬学研究室が設立以来、毎年テキストとして更新してきたものを基に、全国の社会薬学に関連する方々に、ご担当をいただき2009年に発行した。それから社会の環境も変化し、データの更新も必要となり、今回改訂するに至った。本書により、薬学生の皆さんが「社会の変化と、対応する薬剤師への期待」を考えるきっかけになれば幸いである。
社会薬学は、法律・制度の改正に敏感に対応しなければならない学問であるため、可能な限り最新の内容となるように努めたつもりであるが、最近の変化は著しく、不十分な点もあると思われる。データの更新については、南江堂のホームページ等で見られるようにしたいと考えている。本書が良い教科書となるためにも、皆様の忌憚のないご意見を是非お願いしたい。
2013年2月
編者を代表して
福島紀子