新薬剤学改訂第3版
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 原島秀吉 |
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ISBN | : 978-4-524-40286-1 |
発行年月 | : 2011年12月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 458 |
在庫
定価7,150円(本体6,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
薬効を最大限かつ安全に発揮させる投与方法・投与形態の理解に必要な知識を体系的に記述した教科書。コア部分(学部学生向け)と応用編(6年制高学年・大学院修士課程向け)に分かれた構成で、個々人のレベルに合わせた学習を支援。今改訂では新知見を追加したほか、章末の演習問題を拡充した。
I.薬剤学総論
1 総論
a.医薬品の定義と条件
b.物理薬剤学と生物薬剤学の目指すところ
c.医薬品の投与経路と剤形
1 剤形の歴史
2 薬剤の特性に応じた投与剤形の決定
2 21世紀の薬剤学・製剤学
a.薬物動態研究の進歩がもたらしたパラダイムシフト
b.医薬品開発におけるパラダイムシフトと新しい薬剤学のビジョン
1 医薬品開発の重要性
2 パラダイムシフト
3 薬剤学の新しいビジョン
II.生物薬剤学
1.生体膜透過
1 細胞膜の構造と機能
2 薬物の細胞膜輸送機構
a.受動輸送
1 単純拡散
2 促進拡散
b.能動輸送
1 一次性能動輸送
2 二次性能動輸送
c.膜動輸送
3 トランスポーターが介在する薬物の細胞膜輸送
a.トランスポーター遺伝子のクローニングとその組織局在性、分子構造認識・輸送特性、多様性
1 オリゴペプチドトランスポーター
2 グルコーストランスポーター
3 アミノ酸ポリアミンコリン(APC)トランスポーター
4 モノカルボン酸トランスポーター
5 有機イオントランスポーター
6 肝臓由来の有機アニオン輸送ポリペプチドおよびその分子種
7 ATP結合カセット(ABC)トランスポーター
b.トランスポーターの臨床的意義
1 トランスポーターの遺伝子変異と疾患
2 トランスポーターの遺伝子多型
c.トランスポーターを介した薬物輸送の評価
演習問題
2.吸収
1 消化管吸収
a.消化管の生理解剖学的特徴
1 胃
2 小腸
3 大腸
4 脈管系
b.消化管吸収の機構と予測
1 pH分配仮説
2 pH分配仮説に従わない吸収機構
2 消化管吸収機構
a.非攪拌水層の関与
b.トランスポーターが介在する吸収・分泌
1 トランスポーターを介した吸収
2 トランスポーターを介した分泌
3 消化管吸収に影響を与える要因
a.薬物の物理化学的特性
1 薬物の分子構造
2 薬物の溶解性
b.消化管の生理的要因
1 胃内pH
2 胃内容排出速度(胃内容排出時間)
3 血流速度
4 吸収上皮細胞における代謝
c.製剤学的要因
4 消化管吸収の評価・予測
a.in vitro実験法
1 反転腸管を用いた透過実験
2 拡散セルを用いた透過実験
3 単離膜小胞を用いた取り込み実験
4 培養上皮細胞を用いた透過実験
b.in situ実験法
1 in situループ法
2 in situ連続注入法
3 in situ灌流法
c.in vivo実験法
d.ヒト小腸を用いた小腸部分灌流実験
e.コンピュータを用いた吸収予測
5 消化管以外の経路からの吸収
a.直腸吸収
1 直腸の構造
2 直腸吸収の機構と特徴
3 直腸吸収に影響する要因と吸収促進
b.経皮吸収
1 皮膚の構造
2 経皮吸収の機構と特徴
3 経皮吸収に影響する要因と吸収促進
c.経皮吸収促進効果
d.注射部位からの吸収
1 投与部位と吸収の経路
2 吸収に影響する要因
3 吸収の制御
e.口腔粘膜吸収
1 口腔粘膜の構造
2 口腔粘膜吸収の機構と特徴
3 口腔粘膜適用製剤
f.鼻粘膜吸収
1 鼻粘膜の構造
2 鼻粘膜吸収の機構と特徴
3 鼻粘膜適用製剤
g.経肺吸収
1 肺の構造
2 肺吸収の機構と特徴
3 肺吸収型製剤
h.その他の部位からの吸収
1 眼からの吸収
2 腟からの吸収
演習問題
3.分布
1 分布とは
2 組織移行性
a.血流量
b.組織-血液間分配係数
c.灌流律速
d.透過律速
e.組織移行クリアランスの測定
3 脳移行と血液脳関門・血液脳脊髄液関門
a.血液脳関門
b.血液脳脊髄液関門
4 トランスポーターを介した脳への移行とその回避
a.血液脳関門におけるトランスポーターの役割
1 P-糖タンパク質
2 モノカルボン酸輸送系
3 MRP
4 oatp
5 塩基性薬物輸送系
b.血液脳脊髄液関門におけるトランスポーターの役割
1 oatp
2 MRP
5 高分子薬物の体内分布
a.抗体の半減期
b.FcRnによるリサイクリング
c.タンパク質の半減期延長への応用
6 リンパへの移行
a.リンパ管系の構造と循環
b.血液からリンパ液への移行
c.組織液からリンパ液への移行
d.消化管からリンパ液への移行
7 分布容積
a.定義
b.定常状態と偽定常状態
8 薬物のタンパク結合
a.遊離形薬物濃度の重要性
b.タンパク結合率の測定
c.タンパク結合の解析
9 正常時・病態時における薬物のタンパク結合
a.血漿中でのタンパク結合と体内動態
b.病態時におけるタンパク結合の変動と体内動態
1 肝疾患の場合
2 腎疾患の場合
10 妊娠時における薬物のタンパク結合
11 胎児移行と血液胎盤関門
a.妊娠時における母体の薬物動態変動
b.胎盤の構造と血液胎盤関門
c.胎盤における内因性物質および薬物の輸送
1 栄養物質・内因性物質の輸送
2 トランスポーターを介した薬物輸送
d.胎盤の代謝酵素
演習問題
4.代謝
1 肝臓の機能と構造
a.機能
b.構造
c.小胞体
2 第I相反応と第II相反応
a.第I相反応
1 酸化
2 還元
3 加水分解
b.第II相反応
3 薬物代謝酵素と分子種
4 代謝の内的・外的変動要因
a.内的変動要因
1 年齢
2 性
3 病態
4 種差・系統差
5 遺伝的因子
b.外的要因
5 酵素誘導と酵素阻害、遺伝的多型
a.酵素誘導
b.酵素阻害
c.遺伝的多型
6 薬物の代謝評価・予測法
演習問題
5.排泄
1 腎臓の構造と機能
2 腎排泄機構――糸球体濾過、尿細管分泌、再吸収
a.糸球体濾過
b.尿細管分泌
c.再吸収
d.腎排泄機構の見分け方
3 尿細管分泌・再吸収の分子機構
a.尿細管分泌に働くトランスポーター
b.再吸収に働くトランスポーター
4 薬物の腎排泄評価法
5 胆汁中排泄
a.肝臓の構造
b.胆汁
6 胆汁中排泄の分子機構
a.血管側細胞膜に存在するトランスポーター
b.胆管腔側膜に存在するトランスポーター
c.トランスポーターと代謝酵素の関連
7 薬物の胆汁中排泄評価法
8 その他の排泄
a.唾液中排泄
b.乳汁中排泄
c.呼気中排泄
d.汗中排泄
e.消化管管腔内排泄
演習問題
6.薬物相互作用
1 薬物相互作用の発現機序
2 吸収過程における薬物相互作用
a.消化管内のpHの変化による相互作用
b.消化管運動能の変化による相互作用
c.消化管内における物理化学的相互作用
1 吸着
2 複合体の形成
d.能動輸送系を介した相互作用
1 吸収方向への輸送系での相互作用
2 排泄方向への輸送系での相互作用
e.小腸上皮細胞における薬物代謝酵素を介した相互作用
3 分布過程における薬物相互作用
a.薬物のタンパク結合
b.薬物分布制御機構における相互作用
4 代謝過程における薬物相互作用
a.シトクロムP450(CYP)を介した相互作用
b.薬物代謝酵素の阻害による相互作用
1 薬物自身によるCYP酵素活性の阻害(非特異的阻害)
2 代謝物によるCYP酵素活性の阻害による相互作用(メカニズム依存性阻害)
3 同一の薬物代謝酵素によって代謝される薬物の併用による相互作用(競合的阻害)
c.薬物代謝酵素の誘導による相互作用
d.代表的なCYP分子種の特徴と相互作用
1 CYP3A4
2 CYP2D6
3 CYP2C19
4 CYP2C9
5 CYP1A2
e.抱合反応およびそのほかの薬物代謝経路における相互作用
5 排泄過程における薬物相互作用
a.腎排泄における相互作用
1 糸球体濾過
2 尿細管分泌
3 尿細管再吸収
b.胆汁中排泄における相互作用
演習問題
7.ファーマコキネティクス
1 コンパートメントモデル
2 1-コンパートメントモデル解析
a.瞬間静注時の1-コンパートメントモデル解析
1 モデルからの式の導出
2 消失速度定数
3 分布容積
4 全身クリアランス
5 尿中排泄データの解析
b.0次吸収時(点滴静注)の1-コンパートメントモデル解析
1 モデルからの式の導出
2 定常状態
3 点滴静注停止後の血中濃度
4 投与計画
c.1次吸収時の1-コンパートメントモデル解析
1 モデルからの式の導出
2 消失速度定数と吸収速度定数
3 分布容積
4 最高血中濃度に達する時間tmaxと最高血中濃度Cmax
5 Wagner-Nelson法
3 2-コンパートメントモデル解析
a.瞬間静注時の2-コンパートメントモデル解析
1 モデルからの式の導出
2 残余法によるパラメータの求め方
3 速度論的パラメータの算出
b.1次吸収時の2-コンパートメントモデル解析
4 ラプラス変換
a.ラプラス変換の定義
b.コンパートメントモデルの数式解
1 1-コンパートメントモデルにおける点滴式を解く
2 1-コンパートメントモデルにおける経口投与式を解く
3 2-コンパートメントモデルにおける静注式を解く
c.関数の合成による数式解
5 デコンボリューション法
a.コンボリューション
b.デコンボリューションの数値計算
6 モーメント解析
a.モーメントの定義
b.モーメントの計算法
1 単回投与後の血中薬物濃度
2 単回投与後の尿中排泄データ
3 点滴静注時の血中薬物濃度
c.1-コンパートメントモデルとモーメント解析
d.モーメント解析によるデコンボリューション
7 クリアランス
a.全身クリアランス
b.組織クリアランス
c.固有クリアランス
1 ウェル・スタードモデル
2 パラレルチューブモデル
d.生理学的薬物速度論
e.アニマルスケールアップ
f.ハイブリッドモデル
8 非線形体内動態
a.タンパク結合の非線形性
b.クリアランスの非線形性
9 バイオアベイラビリティ
a.バイオアベイラビリティの定義
b.量的バイオアベイラビリティ
c.速度的バイオアベイラビリティ
d.抽出率と利用率
10 投与計画
a.瞬間静注での繰り返し投与
1 モデルからの式の導出
2 定常状態と平均血中濃度
3 蓄積率と投与計画
b.1次吸収での繰り返し投与
c.間欠的点滴静注(点滴による繰り返し投与)
d.2-コンパートメントモデル
e.非線形薬物
11 臨床薬物速度論――臨床の現場における投与計画の実際
a.腎疾患
b.速度論パラメータと生理的因子の関係式
c.少数採血をもとにした投与計画
12 ポピュレーションファーマコキネティクスとベイジアン解析
a.TDMとポピュレーションファーマコキネティクス
b.ベイジアン解析によるパラメータの最適化
演習問題
8.ファーマコダイナミクス
1 血漿中薬物濃度推移と薬効の関係
2 効果推移の定量的予測――PK/PDモデル
a.薬効の速度論
1 シグモイド最大効果モデル
2 最大効果モデル
3 線形モデル
4 対数線形モデル
5 固定効果モデル
6 モデルに依存しない方法(抗菌薬の血中濃度と薬効の関係)
b.薬物動態学モデルと薬力学モデルの結合(PK/PD解析)
1 薬効コンパートメントモデル
2 間接反応モデル
3 受容体理論に基づいたモデル
3 時間薬理とファーマコキネティクス
a.薬物動態の日周リズム
b.時間薬理の治療への応用
演習問題
9.治療薬物モニタリング(TDM)の実際
1 Therapeutic Drug Monitoring(TDM)とは
a.概念と意義
b.臨床的意義と有用性
2 TDMの対象薬物
3 血中薬物濃度の測定
a.検体
b.サンプル採取・保存方法
1 採血時間
2 採血管の問題、血液採取時の注意点
3 測定法
4 投与計画
5 TDMの実際
a.効果とTDM
1 症例:バンコマイシンのTDMより
b.副作用発現時のTDM
1 症例:ピルジカイニドのTDMより
2 症例:アプリンジンのTDMより
c.薬物相互作用発現時のTDM
1 症例:ジゴキシンのTDMより
d.コンプライアンスとTDM
1 症例:ジゴキシンのTDMより
e.TDMとその考え方
1 症例:シベンゾリンのTDMより
2 症例:薬物相互作用の考え方
6 TDMデータの再構築による薬物適正使用への支援
7 チーム医療とTDMのコーディネーター
演習問題
III.物理薬剤学
1.化学反応速度論と薬物の安定性・安定化
1 反応速度と反応次数
2 反応速度式
a.反応次数と残存率
b.速度定数と単位
c.速度定数と半減期
3 反応の実際
a.0次反応と1次反応
b.複合反応
c.逐次反応
d.並行反応
e.可逆反応
4 反応速度に影響を及ぼす因子
a.温度
b.pH
c.イオン強度
5 誘電率
6 複雑なpH-反応速度定数プロファイルと反応機構
7 製剤の安定化
a.用時溶解
b.安定な溶液条件、保存条件の選択
c.添加剤(抗酸化剤、保存剤)
d.抗酸化剤
e.薬物の化学的修飾・難溶化
f.複合体形成
演習問題
2.粉体科学
1 結晶の科学
a.結晶状態
b.溶媒和物・水和物
c.結晶状態の同定
1 熱分析
2 X線回折
2 粒子物性
a.粒子径と粒度分布
b.粒子径測定法
1 顕微鏡法
2 ふるい分け法
3 コールターカウンター法
4 沈降法
5 比表面積法
6 光散乱法
7 動的光散乱法
c.表面積
1 表面積の測定
d.粒子密度
3 粉体物性
a.粒子内空隙・粒子間空隙とその測定法
1 水銀圧入法
b.付着・凝集性
1 付着力測定法(水平引っ張り破断法)
c.充填性
d.流動性
1 流動性の測定
e.混合性
f.ぬれ性
g.吸湿性
1 水不溶性物質の吸湿性
2 水溶性物質の吸湿性
3 水溶性物質の混合物の吸湿性
演習問題
3.拡散と溶解
1 拡散
2 溶解と溶解度
a.溶解度の考え方
b.溶解度の変化
3 溶解速度
a.ノイエス・ホイットニー式
b.拡散と溶解過程
c.ヒクソン・クロウェル式
4 溶解速度に影響を与える因子
5 製剤からの薬物放出
a.錠剤の崩壊と薬物溶出
b.薬物放出開始時間の制御
c.拡散制御による徐放性製剤
d.基剤の分解、侵食(エロージョン)による薬物放出制御
e.浸透圧差による薬物放出制御
f.イオン交換による薬物放出制御
演習問題
4.界面化学
1 界面活性と表面吸着
a.表面(界面)張力の概念
b.界面吸着とギブズの吸着等温式
2 表面張力の測定
a.毛管上昇法
b.滴重法
c.輪環法
d.つり板法
3 界面活性剤の性質
a.界面活性剤の分類
b.ミセル形成と可溶化
c.クラフト点と曇点
d.親水・親油性バランス(HLB)
4 分散系
a.エマルションとサスペンション
b.分散系の安定性
c.疎水コロイドの凝析
d.乳化と転相
演習問題
5.レオロジー
1 弾性変形と粘性流動
a.弾性
b.粘性
c.層流と乱流
d.ハーゲン・ポアズイユの法則
2 構造粘性
3 チキソトロピー
4 粘弾性の力学的模型
a.粘弾性
b.マックスウェル2要素モデル
c.フォークト2要素モデル
5 レオロジー的性質の測定方法
a.粘度計
1 毛細管型粘度計
2 回転粘度計
3 落下球粘度計
4 レオメーター
b.ペネトロメーター
c.スプレッドメーター
d.カードテンションメーター
6 固有粘度(極限粘度)と分子量
演習問題
6.製剤とバイオアベイラビリティ
1 バイオアベイラビリティに影響を与える因子
a.経口投与製剤のバイオアベイラビリティ
b.製剤側のバイオアベイラビリティ変動要因
1 製剤のぬれ過程
2 製剤の溶解過程
c.生体側のバイオアベイラビリティ変動要因
1 吸収部位のpHによる薬物吸収への影響
2 吸収部位の消化管壁膜の薬物吸収への影響
3 食物と消化管内移動速度の影響
2 生物学的同等性とバイオアベイラビリティの向上を目的とした製剤技術
a.製剤原末のぬれ特性がバイオアベイラビリティに与える影響
b.製剤中の滑沢剤の混合がぬれ特性を低下させる場合
c.製剤原末の粒子径がバイオアベイラビリティに与える影響
d.結晶多形生成によるバイオアベイラビリティへの影響
e.非晶質化によるバイオアベイラビリティの改善
f.塩の選択によるバイオアベイラビリティの改善
g.シクロデキストリン包接体の調製によるバイオアベイラビリティの改善
h.徐放化によるバイオアベイラビリティへの影響
i.腸溶化によるバイオアベイラビリティの改善
j.プロドラッグ化によるバイオアベイラビリティの改善
演習問題
7.新しい剤形:ドラッグデリバリーシステム
1 ドラッグデリバリーシステム(DDS)の概念
2 物理学的アプローチ(放出制御型製剤)
a.経口製剤
1 放出制御の原理
2 放出制御の実際
3 口腔内崩壊錠
b.経皮吸収型製剤
1 放出制御型経皮吸収製剤
2 イオントフォレシス
c.注射剤
1 放出制御型皮下注射剤
2 ターゲティング型注射剤
d.粘膜適応型製剤
1 経鼻粘膜投与製剤
2 呼吸器吸入製剤
3 その他の粘膜適応型製剤
3 化学的アプローチ
a.プロドラッグ
1 プロドラッグの概念
2 体内動態の改善を目指したプロドラッグ
3 標的部位における安定性(薬効持続性)や薬効選択性の改善を目指したプロドラッグ
4 副作用軽減を目指したプロドラッグ
5 製剤的な改善を目指したプロドラッグ
b.化学修飾核酸
4 生物学的アプローチ
a.トランスポーターを介した吸収促進
b.遺伝子改変型タンパク
c.抗体医薬
d.EPR効果を介したがんへのDDS
5 高分子素材を利用した薬物体内動態の制御
a.ポリエチレングリコール(PEG)化
b.抗体やリガンドの利用
c.アルブミンの利用
6 リポソームの利用
a.リポソームとその構造
b.リポソームへの薬物封入法
c.未修飾リポソーム
d.長期血中滞留性リポソーム(ステルスリポソーム)
1 シアル酸修飾リポソーム
2 水溶性高分子修飾リポソーム、PEG修飾リポソーム
e.イムノリポソーム
f.カチオニックリポソーム
g.ハイブリッド型リポソーム
h.バブルリポソーム
i.多機能性リポソーム
7 高分子ミセルの利用
8 新たなDDS
9 DDSの副反応
10 DDSの課題
演習問題
付録
A.ラプラス変換の基礎
B.特定薬剤治療管理料が算定できる薬物
参考図書
演習問題解答
索引
21世紀に入り、医薬品開発・創薬の世界では歴史的な変化が起こっている。20世紀後半に劇的な進歩を遂げた生命科学に関する研究成果に基づいて、セレンディピティーに依存した創薬から、より合理的に薬を設計することができる時代へ突入する、いわゆる「ゲノム創薬」の時代が来た、という気運が高まっている。また、経済的な観点からみても、医薬品市場は年間約80兆円という巨大なマーケットであり、この領域での成功は日本の国益を支える基幹産業となりうるであろう。薬剤学は医薬品開発の中核を支える重要な学問領域である。薬剤学の範囲は広範で、物理薬剤学、生物薬剤学、医療薬剤学からなり、本書では、物理薬剤学と生物薬剤学の観点から最先端の薬剤学が解説されている。
このような状況の中、製薬会社が直面したのはいわゆる「2010年問題」であり、パラダイムシフトのキーコンセプトとして期待された「ゲノム創薬」という木からいまだ大きな果実は得られていない。予想に反して、抗体医薬が新しい治療領域で大きく成長し、バイオ医薬を牽引するようになってきた。低分子医薬は依然として医薬品の主役を担っているが、高分子医薬が新しいヒーローとして脚光を浴び、これを支援する薬物送達システムのコンセプトと革新的技術の重要性が認識されることになった。平成23年(2011年)4月、第十六改正日本薬局方が施行された。本改正は製剤総則の全面改正で、これは近年の技術革新によってもたらされた患者指向の新剤形を含めることにより、投与経路および適用部位についての大分類、さらに形状、機能および特性からの細分類が行われ、臨床使用されているほぼすべての剤形、約70の剤形が各条中に規定された。また、アメリカおよびヨーロッパ各国薬局方の活発な改正を反映、調和させ、通則、生薬総則、および一般試験法にわたってかなりの改正と統一が行われており、本書の改訂は絶妙のタイミングとなった。
2011年秋
編集代表 原島秀吉