雑誌

別冊整形外科

No.74 しびれ・痛みに対する整形外科診療の進歩

編集 : 大川淳
ISBN : 978-4-524-27774-2
発行年月 : 2018年10月
判型 : A4
ページ数 : 220

在庫あり

定価6,804円(本体6,300円 + 税)


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  • 序文

本号では、日常診療で最も頻度の高い主訴であるしびれ・痛みなどの神経症状に対する診断・治療の進歩をテーマとした。超音波やMRIなどの画像機器や電気生理学的検査の進歩による診断精度の向上、インターベンショナル治療や手術的治療の進歩はもちろん、近年登場した鎮痛薬の実際的なプロトコルや処方のコツ、ブロック療法や理学療法など、多岐にわたって取り上げている。

I.総論
 1.薬物療法
  非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬のやめ方・減らし方−患者を苦しめず減量・離脱をするために
  副作用による脱落低減を目的とした経口トラマドール製剤の少量漸増投与法
  副作用軽減を意図したトラマドール製剤の導入方法
  慢性腰痛に対するデュロキセチンの効果
  慢性腰痛に対するデュロキセチンの効果
  セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬の使用方法−効果は抑うつの有無により影響するか
  運動器疾患に対するオーダーメイドの新しい疼痛治療戦略
  整形外科の疼痛性疾患に対する漢方治療
  人工膝関節全置換術後の周術期疼痛管理−関節周囲多剤カクテル療法を中心に
 2.理学療法
  腹部体幹筋力低下はロコモティブシンドロームと腰痛の発現に関連する
  腰痛および下肢の痛みとしびれに対する経験的治療に基づいた運動療法
  成人脊柱変形に対するノルディックウォーキングの有用性
  AKA(arthrokinematic approach)-博田法について
  AKA(arthrokinematic approach)-博田法と関節受容器
  原因不明の両足底慢性疼痛にacceptance and commitment therapyによる介入が奏功した1例−慢性疼痛治療における認知行動療法とマインドフルネスの展望
 3.インターベンショナル治療
  高周波熱凝固療法とパルス高周波法
  脊髄刺激療法
  最近の脊髄刺激療法の動向
  周術期疼痛管理のオプションとしての経頭蓋直流電気刺激−Preliminary study
II.疾患・病態別の診断・治療
 1.頚椎・上肢
  頚椎症性神経根症に対する治療法の進歩
  頚椎症性神経根症・脊髄症による上肢痛に対する診断と治療の進歩
  頚椎症に関連するしびれ・痛みに対する薬物治療の効果−神経障害性疼痛治療薬1stラインの薬剤を中心に
  交通事故による頚椎捻挫(外傷性頚部症候群)の治療が遷延する構造−共分散構造モデルによる可視化の試み
  超音波ガイド下頚椎神経根ブロックを利用した肩関節授動術
  母指回内運動に着目した手根管症候群診断の試み
 2.腰椎
  非特異的腰痛のペインドローイング分類
  骨粗鬆症性椎体偽関節に対する病態に応じた手術療法
  胸腰椎椎体骨折時の椎間板損傷は骨折治癒後の遺残性腰痛に影響するのか
  腰椎後方すべりは姿勢異常を伴う
  脊椎領域におけるサルコペニア(加齢性筋肉減少症)
  脊髄係留症候群による腰下肢痛
  専門病院における椎間板ヘルニア治療に対する薬物使用の現状
  運動器慢性痛に対する入院型集学的治療
 3.仙腸関節
  仙腸関節障害の診断と治療の進歩
  日常診療で知っておくと役に立つ仙腸関節障害の診断と初期治療
  仙腸関節障害における疼痛の特徴と治療
  超音波ガイド下fasciaハイドロリリースにより治療した仙腸関節障害の合併症状に関する検討
  「みえない腰痛」の疼痛部位を「みえる化」する診療ツールについて−習慣的偏荷重姿勢による長後仙腸靱帯炎・仙結節靱帯炎の発症メカニズム
 4.下肢
  下肢に生じた脆弱性骨折に対するIlizarov創外固定と低出力超音波骨折治療器,テリパラチドの併用による早期疼痛減少効果
  Morton病の診断と治療
  Peroneal spastic flatfoot(腓骨筋痙直性扁平足)の病態と治療
  前足部におけるしびれ・違和感の病態と治療
 5.診断法
  末梢神経障害に対する電気生理学的検査への超音波ガイドの応用
  上肢末梢神経損傷の超音波画像診断
  神経磁界計測による脊髄から末梢神経までの機能診断



 外傷などの急性期症状を除けば、主病巣が神経、関節、筋、骨のどこにあるかにかかわらず、整形外科を受診する患者の主訴はしびれと痛みがほとんどである。近年、侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛などの痛みの病態が周知されるようになり、それに対応する新しい薬剤が登場した。以前の非ステロイド性抗炎症薬の剤形を変えるだけだった時代に比べて、薬剤選択の幅は大きく広がった。一方で、オピオイドも含めて適確、適量の投薬ができずに患者にドラッグショッピング状態をもたらしかねないという課題も見えてきた。
 エコーやMRIなどの画像診断機器や電気生理学的検査の進歩による診断精度の向上も、新たな病態解析、治療法開発につながっている。手術的治療のみならず保存的治療についても、脊髄刺激療法や理学療法、装具療法に関して多彩な手段やプロトコルが開発・提案され、それぞれのエビデンスが集積されつつある。
 本号は、「しびれや痛み症状に対する整形外科診療の進歩」をテーマとした論文集である。四肢・脊椎のしびれ・痛みに関する現状の集大成を目指したところ、百花繚乱の様相を呈した。仮説検証を目的とした科学論文形式をとっていない総説やエッセイ風の文章も含めて、投稿された論文の内容をできるだけ尊重した。臨床研究ではないかもしれないが、逆にさまざまな診断・治療法の根底にあるコンセプトを把握することができるであろう。なかには、これまで手術的治療を中心に据えてきた整形外科において、あえて議論の対象にされてこなかった領域や考え方も含まれている。仙腸関節障害に対する治療や認知行動療法などがこれにあたるが、広い視野でしびれと痛みをとらえるにはこうした知見に触れることも大切な姿勢と考える。また、数多くの方策が存在することは、自覚的なしびれや痛みは、一定の治療法だけでは解決しにくいことを意味している。本誌を通じて多種多様な診断・治療法の意義と限界を見極め、日常診療の参考にしていただければ幸甚である。

2018年10月
東京医科歯科大学教授
大川淳