雑誌

別冊整形外科

No.58 肩関節・肩甲帯部疾患

病態・診断・治療の現状

編集 : 長野昭
ISBN : 978-4-524-27758-2
発行年月 : 2010年10月
判型 : A4
ページ数 : 256

在庫品切れ・重版未定

定価6,696円(本体6,200円 + 税)


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  • 主要目次
  • 序文

肩関節に関する研究は著しく発展しているが、近年では特に病態の解明の進歩に伴う臨床的診断法の開発とMRIの新たな応用、そして関節鏡を用いた診断と治療法の開発は目覚ましい。現在の肩関節疾患の病態・診断・治療のゴールドスタンダードをまとめた。

I.解剖・病態
1.肩関節の解剖の新知見
  ■上腕二頭筋長頭腱の安定化機構―肩甲下筋腱、上関節上腕靱帯、烏口上腕靱帯の解剖学的構築
  ■腱板筋群の構造と停止部の新しい解剖知見
2.各種疾患の病態の解明
  ■肩関節疾患における疼痛評価―知覚・痛覚定量分析装置を用いた客観的評価
3.肩のバイオメカニクス
  ■投球動作による肩関節周囲の筋力低下と関節位置覚の変化
4.その他
  ■高齢者の上腕骨近位端骨折における骨密度と骨強度―骨接合術を行うにあたってのヒント

II.診断
1.各種疾患の診断手技のコツ
  ■腱板断裂の臨床的診断
  ■腱板部分断裂の臨床症状とその特徴―断裂形態別比較と保存的治療
  ■肩甲上神経麻痺に対する感覚検査
2.各種疾患の現在の画像診断法
  ■肩鎖関節変形性関節症における画像スコアリングの意義
  ■Bankart損傷に合併した上方関節唇損傷に対するMR関節造影法の有用性

III.治療―保存的治療と手術的治療の現状
1.骨折と脱臼
 1)鎖骨骨折
  ■鎖骨骨幹部骨折の治療戦略―アスリートにおける確実な早期復帰をめざして
  ■鎖骨中1/3骨折に対する経皮ピンニングによる治療
  ■鎖骨骨折の手術的治療―自転車競技選手の治療経験から
  ■鎖骨体部骨折に対する術式の検討
  ■鎖骨骨幹部骨折に対するプレート固定法―前下方プレート法、minimally invasive plate osteosynthesis法
  ■三次元的プレートを用いた鎖骨骨幹部骨折の手術的治療
  ■鎖骨遠位端骨折に対する骨接合術―ポリエチレン編糸を用いた小侵襲手術
  ■烏口鎖骨靱帯の解剖学的修復を主術式とする鎖骨遠位端骨折の手術法
  ■人工靱帯を用いた円錐靱帯再建術によるNeer分類type II鎖骨遠位端骨折の治療成績
 2)肩甲骨骨折
  ■肩甲骨関節窩骨折に対する関節鏡の応用
 3)上腕骨近位部骨折
  ■高齢者の上腕骨近位部骨折に対する骨接合術の成績
  ■ロッキングプレートを用いた上腕骨近位端骨折の治療成績
  ■上腕骨解剖頚骨折(AO分類11−C)に対するロッキングプレートを使用した手術の工夫と成績
  ■上腕骨近位端・近位骨幹端骨折に対するtransmedullary support screwの応用
 4)肩鎖関節脱臼
  ■Tossy分類grade III肩鎖関節完全脱臼に対する保存的治療の成績
  ■一期的に肩鎖靱帯および烏口鎖骨靱帯の縫合術を行った新鮮肩鎖関節脱臼の検討
  ■肩鎖関節脱臼に対するBosworth−Neviaser変法の治療経験
  ■肩鎖関節脱臼Rockwood分類type IIIに対する手術方法―Cadenat変法
  ■陳旧性肩鎖関節脱臼に対するCadenat変法の治療成績
  ■人工靱帯を用いた烏口鎖骨靱帯再建術による肩鎖関節完全脱臼の治療成績
 5)肩関節脱臼
  ■コンタクトスポーツ選手に対する反復性肩関節脱臼の手術方法―Bristow変法単独手術
  ■外傷性肩関節前方不安定症に対する鏡視下Bankart修復術の治療経験―thermal capsulorrhaphy併用とrotator interval closure併用の比較
2.神経障害(副神経麻痺)
  ■副神経麻痺15例の検討―臨床症状とその経時的変化を中心に
3.変性疾患
 1)石灰性腱炎
  ■慢性石灰沈着性腱板炎に対する体外衝撃波療法の有効性
 2)腱板損傷
  ■スーチャーブリッジ法による腱板修復術―打ち込み型インプラントを利用したknotless suture-bridge法
  ■腱板断裂に対するmini-open repairの臨床成績と画像評価
  ■一次修復不可能な腱板広範囲断裂に対する筋前進術を併用した鏡視下腱板修復術
  ■一時修復不能な広範囲腱板断裂に対する鏡視下大腿筋膜移植術
 3)インピンジメント症候群
  ■腱板断裂を含むインピンジメント症候群における烏口突起形成術
  ■烏口突起下インピンジメントに対する鏡視下烏口突起形成術
4.その他
 1)肩甲骨の腫瘍
  ■肩関節発生滑膜性骨軟骨腫症の治療経験
 2)化膿性肩関節炎
  ■化膿性肩関節炎に対する鏡視下デブリドマンと開放性ドレナージ
  ■化膿性肩関節炎の治療―鏡視下手術による感染鎮静化と早期リハビリテーション併用による機能温存
 3)骨端症
  ■器械体操選手に発生した上腕骨大結節骨端症
5.手術手技―人工関節の現状
  ■上腕骨近位端骨折および骨頭壊死に対する第4世代人工骨頭置換術の治療経験
  ■モジュラー型人工肩関節の有用性
6.リハビリテーション
  ■肩関節術後リハビリテーションにおける経時的肩内外旋筋力の有用性
  ■鏡視下腱板修復術後のリハビリテーション―スリングを利用した肩関節機能訓練
  ■投球障害肩のリハビリテーション―肩周辺機能からみた競技復帰への必要条件とは

肩関節は肘関節とともに端末器官である手を目的の位置にもたらし、その機能を十分に発揮させるために非常に重要な関節で、その障害は日常生活のみならず、スポーツ活動に大きな障害を生じるとともに、その治療に当たっては安定性と運動性という相矛盾する機能を同時に求められる関節である。
 『別冊整形外科』では、1999年に「肩関節 ― 病態・診断・治療の新たな展開」と題して論文を募集し、その出版から約10年を経過した。この10年、肩関節に関する研究は著しく発展し、病態の解明の進歩に伴う臨床的診断法と関節鏡を用いた診断・治療法の開発には目覚ましいものがある。そこで今回、「肩関節・肩甲帯部疾患 ― 病態・診断・治療の現状」と題して、現在の肩関節の病態・診断・治療をまとめたいと考え企画したところ、幸い多数のご投稿をいただくことができた。
 前号とその内容を比較してみると、外傷によるものが多い点は変わりないが、今回は鎖骨骨折、肩鎖関節脱臼、上腕骨近位部骨折に関する論文が多かった。これらの骨折・脱臼はいずれも保存的治療か手術的治療かの選択に議論の多い外傷であるが、これらに対する各治療法の問題点から新たに考案した手術法とその成績が投稿され、この分野の進歩が伺われる。一方、スポーツ障害の治療に関する論文は少なくなっているが、これはその診断・治療が成熟してきていることを表しているのかもしれない。腱板断裂に対しては鏡視下修復術が広く行われているが、これについてもいくつかの問題点があり、それに対する開放式低侵襲手術、また広範囲断裂に対する新しい鏡視下修復術も考案されている。その他にも病態・診断・治療に関して質の高い論文が掲載されており、本誌は読者諸氏にとって肩関節疾患の病態・診断・治療の現状を知るとともに、日常診療に大変役立つものと確信している。
2010年9月
浜松医科大学名誉教授
長野昭