神経内科学テキスト改訂第3版
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 江藤文夫/飯島節 |
---|---|
ISBN | : 978-4-524-26215-1 |
発行年月 | : 2011年4月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 396 |
在庫
定価5,280円(本体4,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
難解と敬遠されがちな神経内科学を、図表を多数用いてわかりやすく解説した教科書。「理学療法士・作業療法士国家試験出題基準」に準拠。「総論」「神経診断学」「神経疾患各論」の3部からなり、知識を系統的に整理できる。今改訂では、「神経と免疫」の章を新設した他、多系統萎縮症、高次脳機能障害について解説を充実させた。さらに各章の冒頭に「学習目標」を設定し、より学びやすい構成とした。
I.神経内科学総論
A.神経内科学とは
B.神経・筋疾患とリハビリテーション
C.神経解剖学の基礎
1 神経系の構成と発生
2 脊髄と脊髄神経
3 脳幹と第III-第XII脳神経
4 小脳と小脳にかかわる脳幹の神経核
5 間脳と視神経
6 大脳基底核
7 大脳新皮質
8 大脳辺縁系と嗅神経
9 神経系を機能系としてとらえる
D.神経生理学の基礎
1 静止電位
a.イオン機構
b.ナトリウムポンプ
2 活動電位
a.イオン機構
b.活動電位の特徴
c.不応期
d.活動電位の伝導
e.活動電位伝導の特性
3 シナプス
a.シナプス後電位
b.シナプス結合様式
c.シナプス後電位の加重
d.シナプス伝達の特徴
E.神経薬理学の基礎
1 薬物作用機序の概要
2 薬物動態
3 神経系に作用する薬物
a.中枢伝達物質
b.自律神経系に作用する薬物
c.神経筋接合部に作用する薬物
d.麻酔薬
e.抗不安薬と催眠薬
F.分子遺伝学の基礎
1 メンデルの法則と遺伝子
2 遺伝子とDNA
a.核酸
b.遺伝子情報
c.ゲノム
3 遺伝子発現
a.転写
b.RNA
c.翻訳
d.セントラルドグマ
4 DNAの変異と神経疾患
a.DNAの変異
b.トリプレットリピート病
5 染色体
a.常染色体と性染色体
b.減数分裂と組換え現象
6 遺伝子異常と病気
a.染色体異常
b.単一遺伝子疾患
c.多因子遺伝疾患
d.ミトコンドリア病
7 原因遺伝子同定のアプローチ
a.機能的クローニング
b.位置的クローニングと連鎖解析
c.1塩基多型(SNP)解析
d.コピー数多型(CNV)解析
8 倫理的配慮
G.神経免疫学の基礎
1 神経内科学における免疫学の重要性
2 免疫系のなりたち
a.獲得免疫と自然免疫
b.T細胞の機能
c.ヘルパーT細胞の分類と制御性T細胞
d.B細胞と自己抗体
3 胸腺内選択と自己免疫
a.胸腺内選択
b.多発性硬化症の発症機序
c.免疫性神経疾患の治療戦略
4 まとめ
H.神経系の発達と加齢
1 神経系の発達
a.神経解剖学的発達
b.反射機能
c.運動の発達
d.感覚の発達
e.言語の発達
f.知的能力・個性の発達
2 神経系の加齢
a.神経系の形態学的・生理学的変化
b.脳神経の変化
c.運動機能の変化
d.反射の変化
e.感覚の変化
f.自律神経系の変化
g.認知機能の変化
h.学習と記憶の変化
i.性格の変化
●参考図書
II.神経診断学
A.神経診断学とは
1 病歴のとり方
2 神経学的診察法
a.系統的な診察
b.局在診断と病理組織診断
B.各機能の診かた
1 意識障害
a.定義
b.失神
c.意識を保つ系
d.意識レベルの量的変化
e.意識の質的変化
f.睡眠と意識障害
g.特殊な意識障害
h.意識障害の原因
i.昏睡患者の診察と片麻痺の検出
j.脳死の診断
2 高次脳機能障害
a.記憶障害
b.失語
c.失行
d.失認
e.遂行機能障害
f.注意障害
g.社会的行動障害
h.認知症
3 脳神経
a.各脳神経の機能と診かた
b.構音障害
c.嚥下障害
4 運動系
a.解剖と生理
b.運動麻痺
c.錐体外路障害
d.協調運動障害
e.不随意運動
f.歩行障害
5 感覚系
a.解剖と生理
b.深部覚障害
c.表在覚障害
d.感覚系の評価
6 自律神経系
a.解剖と生理
7 反射
a.反射とは
b.腱反射
c.病的反射
d.表在反射
e.その他の反射
C.検査法
1 画像診断
a.神経放射線診断の特徴
b.X線単純撮影
c.血管撮影
d.CT
e.MRI
f.PETとSPECT
2 電気生理学的検査
a.脳波
b.誘発電位
c.筋電図
d.神経伝導速度
3 筋生検・神経生検
a.筋生検
b.神経生検
4 脳脊髄液検査
a.採取
b.髄液の性状とその異常
5 自律神経機能検査
a.主に交感神経機能を表す検査
b.主に副交感神経機能を表す検査
●参考図書
III.神経疾患各論
A.脳血管障害
1 脳血管障害とは(分類)
2 疫学
3 脳血管の解剖と生理
4 脳出血
5 くも膜下出血
6 脳梗塞
7 一過性脳虚血発作
8 高血圧性脳症
9 脳静脈・静脈洞血栓症
10 無症候性脳血管障害
B.変性疾患
1 変性疾患とは
2 大脳基底核障害を示す疾患
2-1.パーキンソン症候を示す変性疾患
a.パーキンソン病
b.二次性パーキンソン症候群
c.パーキンソン病の類縁疾患
2-2.不随意運動をきたす変性疾患
a.ハンチントン病
3 脊髄小脳変性症
a.脊髄小脳変性症とは
b.非遺伝性脊髄小脳変性症
c.遺伝性脊髄小脳変性症
4 運動ニューロン疾患
a.運動ニューロン疾患とは
b.筋萎縮性側索硬化症
c.認知症を伴うALS
d.球脊髄性筋萎縮症
e.脊髄性進行性筋萎縮症
C.脱髄疾患
1 脱髄疾患とは
2 多発性硬化症
3 視神経脊髄炎
4 急性散在性脳脊髄炎
5 白質ジストロフィー
D.末梢神経障害(ニューロパチー)
1 末梢神経障害とは
a.呼称
b.分類
c.症状
d.評価
2 末梢神経障害各論
a.免疫異常によるニューロパチー
b.遺伝性運動性感覚性ニューロパチー
c.家族性アミロイド多発ニューロパチー
d.糖尿病性ニューロパチー
e.全身疾患に伴う末梢神経障害
f.圧迫性ニューロパチー
g.特発性顔面神経麻痺
h.その他の末梢神経障害
E.筋疾患(ミオパチー)
1 筋疾患(ミオパチー)とは
2 筋疾患各論
a.進行性筋ジストロフィー
b.筋強直症候群
c.先天性ミオパチー
d.ミトコンドリア病
e.多発筋炎・皮膚筋炎
f.周期性四肢麻痺
g.代謝性ミオパチー
h.内科疾患、内分泌疾患に伴うミオパチー
F.神経筋接合部疾患
1 神経筋接合部疾患とは
2 重症筋無力症
3 筋無力症候群
G.腫瘍
1 脳腫瘍総論
2 脳腫瘍各論
a.星細胞系腫瘍
b.乏突起膠細胞系腫瘍
c.上衣系腫瘍
d.胎児性腫瘍
e.脳、脊髄神経腫瘍
f.髄膜腫瘍
g.血管系腫瘍
h.脳原発悪性リンパ腫
i.胚細胞系腫瘍
j.嚢胞およびその他の病変
k.隣接臓器腫瘍の局所進展
l.転移性腫瘍
m.下垂体腺腫
3 脊髄腫瘍
H.脊髄疾患
1 脊髄障害による神経症候
a.完全横断性脊髄障害
b.ブラウン・セカール症候群
c.脊髄中心症候群
d.円錐部症候群
e.馬尾症候群
2 脊髄血管障害
a.前脊髄動脈閉塞症候群
b.脊髄内出血
c.脊髄血管奇形
3 脊椎疾患
a.変形性脊椎症
b.椎間板ヘルニア
c.後縦靱帯骨化症
4 脊髄・延髄空洞症
5 脊髄炎
6 放射線脊髄症
I.感染性疾患
1 髄膜炎
2 脳炎
3 遅発性ウイルス感染症
3-1.亜急性硬化性全脳炎
3-2.進行性多巣性白質脳症
4 急性灰白髄炎
5 後天性免疫不全症候群(エイズ)
6 ヒトTリンパ球向性ウイルス脊髄症
7 プリオン病
a.クロイツフェルト・ヤコブ病
b.変異型クロイツフェルト・ヤコブ病
8 脳膿瘍
9 神経梅毒
J.先天異常、脳性麻痺
1 先天異常
a.ダウン症候群
b.母斑症
c.ウィルソン病
d.ポルフィリン症
e.フェニルケトン尿症
2 脳性麻痺
a.原因と頻度
3 分娩時損傷
a.分娩麻痺
4 二分脊椎
a.障害評価法
b.発生頻度
K.代謝、中毒性疾患
1 全身疾患
a.内分泌疾患
b.血液疾患
c.肝疾患
d.腎疾患
e.心肺疾患
f.膠原病
g.悪性腫瘍に伴う神経障害
h.その他の内科疾患に伴う疾患
2 欠乏症
a.ビタミン欠乏症に伴う神経症候
3 中毒性疾患
a.急性中毒の一般的治療法
L.外傷
1 頭部外傷
2 脊髄損傷
3 末梢神経損傷
M.自律神経疾患
1 自律神経障害をきたす疾患
a.障害部位が明らかでない疾患
b.中枢神経系に異常のみられる疾患
c.末梢神経系に異常がみられる疾患
d.その他
N.機能性疾患
1 てんかん
2 頭痛
3 めまい
4 睡眠障害
O.認知症疾患
1 認知症とは
2 疫学
3 診断
4 認知症疾患各論
a.アルツハイマー病
b.血管性認知症
c.レヴィ小体型認知症
d.前頭側頭型認知症
e.その他の認知症
5 認知症疾患の治療と介護
●参考図書
和文索引
欧文索引
本書がリハビリテテーション医療に携わる専門職を目指す学生ならびに臨床家のためのテキストとして2000年に刊行されて以来、医学研究の進歩は一段と加速されている。そこで第3版では、新しい知見が増加し続けることにあわせてかなりの改訂を試みた。さらに、理学療法士・作業療法士国家試験出題基準に則して取り上げる項目を見直し、各章の冒頭には「学習目標」を設定して、学習意欲の向上とより効率のよい学習支援を心掛けた。
現代の医療は多種多数の専門職によるチームにより遂行される場面が増えている。その代表はリハビリテーション医療であろう。近代において、病人ではなく病気を標的とすることで臨床医学研究は急速な改善を遂げた。しかし救命技術の進歩だけでなく、経済発展に伴う社会環境の整備、食生活の改善などによりヒトの平均余命が延長されると、医療の進歩を支える医学研究の標的は病人へと回帰した。医師の診療科の細分化に加えて医療職の専門分化は、学問や研究の進歩を反映したものである以上に、医療のマーケットが拡大したためであることも考察されている。医療サービスの対象として大切なLifeという言葉の中身には、日本語の「生命」「生活」「人生」のいずれもが含まれる。生命にかかわる死亡統計の標準化を目指して国際疾病分類の作業が始まり、軌道に乗って100年ほどして生活にかかわる障害の分類を目指した標準化作業が始まっている。WHOが目標に掲げる健康の定義に、「社会的にも幸福な状態(well-being state)」が加えられて久しい。
神経学者が脳の世紀と呼ぶ21世紀も、はじめの10年間が経過した。この間に、遺伝子や分子レベルで特定された疾病因子の制御に基づく、より特異的な治療法の開発への期待も実現しつつある。四肢の不自由があっても、脳とコンピュータとのコミュニケーションを介した機器操作により、主体的生活を補う技術の可能性も見えてきた。さらに、神経経済学、神経政治学、神経倫理学など神経科学の広がりはめざましものである。
リハビリテーション医療の専門職にとって、神経内科学の学習は敬遠されがちであるとの声も聞かれる。しかし、本書にご執筆くださった先生方は医療職を目指す学生の教育にも日常的にかかわり、学習意欲の向上に努めておられることから、本書が学生にとって勉学のためのよき伴侶として役立つことを確信するものである。加えて、神経学の面白さに目覚め、より専門的興味をもち、リハビリテーション領域の神経学を発展させる人材が生まれることになれば幸いである。
2011年2月
江藤文夫
飯島節