看護学テキストNiCE
在宅看護論
自分らしい生活の継続をめざして
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 石垣和子/上野まり |
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ISBN | : 978-4-524-26046-1 |
発行年月 | : 2012年1月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 372 |
在庫
定価2,860円(本体2,600円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
社会的な関心が高まっている在宅看護のテキスト。法的基盤、地域社会や家族、多様化する在宅看護の場と看護の提供方法などの基礎知識をまとめるとともに、さまざまな対象者への実践的看護として、ヘルスアセスメント・看護技術を具体的な事例を取り入れ解説。豊富な図表・写真を用いたわかりやすい内容、学生が在宅看護への興味を維持・拡大できるような内容をめざした。
第I章 わが国の在宅看護成立への軌跡
1.保健師活動における個別ケア展開の歴史と評価
A.わが国における戦後の行政で働く保健師活動の概史
B.保健師活動の主な対象と個別ケアの展開
C.保健師活動の個別ケアの評価
2.近代における看護活動の歴史と訪問看護制度の確立
A.前病院時代の看護活動
B.看護教育の始まりと派出看護婦活動
C.戦時、災害発生時における公衆衛生活動と慈善活動
D.終戦と経済復興期の保健師活動
E.高齢社会の到来と訪問看護制度の創設
F.介護保険制度の創設と訪問看護師活動
3.社会の変化と在宅看護ニーズ
A.在宅で療養する人々の社会背景
B.在宅看護サービスを提供する訪問看護師の役割
第II章 在宅看護の法的基盤とシステム
1.介護保険制度
A.介護保険制度の目的
B.介護保険制度のしくみ
C.介護保険制度の現状と課題
2.訪問看護制度
A.訪問看護制度の創設と経緯
B.訪問看護制度のしくみ
1 介護保険制度による訪問看護
2 医療保険制度による訪問看護
3 障害者自立支援法による訪問看護
C.訪問看護制度の現状と課題
3.訪問看護ステーションの経営と管理
A.訪問看護ステーションの経営
B.訪問看護ステーションの管理
4.居宅等における医行為の特徴と課題
A.医行為とは
B.居宅等における医行為の特徴と課題
C.居宅等における安全で確実な医行為の実施に向けて
5.在宅医療と診療報酬
A.診療報酬における在宅医療
B.診療報酬改定による在宅医療の推進
第III章 わが国の地域社会・家族の特徴と在宅看護
1.地域社会と文化
A.地域社会とは
1 地域社会に住む人々
2 地域社会の変容
3 地域社会への期待
B.地域社会と文化
C.在宅看護と文化
2.死のとらえ方
A.死の多様なとらえ方
B.死の判定
C.在宅での死と死亡診断
D.プロセスとしての死
コラム 死の受容過程
3.わが国の家族の特徴と家族看護
A.在宅における家族看護とは
B.わが国の家族の特徴
C.在宅療養と家族
1 家族の機能
2 家族のアセスメント
3 家族介護者のアセスメント
4 介護方法の指導
5 家族関係の調整
6 レスパイトケア
4.生活の場での療養者の理解と援助関係形成
A.在宅という療養者の生活の場の特徴
B.療養者および家族との援助関係形成の過程
第IV章 在宅看護と施設看護、保健師活動との連携
1.わが国の医療事情と入院・入所者の推移
A.わが国の医療の概観
B.各国と比較したわが国の医療供給体制
C.入院施設
D.病床数の推移
E.療養病床の区分と課題
F.入所施設
G.療養病床の再編
2.多様化する看護の場と看護の提供方法
A.外来
1 外来看護の必要性
2 外来看護の役割
3 外来看護の提供方法
4 外来看護の可能性
B.通所介護(デイサービス)
1 デイサービスにおける看護師の役割
2 デイサービスと訪問看護の連携
3 デイサービスにおける他職種との連携
C.認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
1 グループホームで生活する認知症高齢者のケアと看護師のかかわり
2 グループホームにおける看護師の役割、機能
D.介護保険施設
1 介護老人福祉施設
2 介護老人保健施設(従来型)
3 介護療養型老人保健施設
4 介護療養型医療施設
5 介護保険施設において実践されている看護
3.退院支援のあり方と看護職どうしの連携
A.退院支援とは
B.退院支援のプロセス
1 退院に向けた意思決定支援
2 退院に向けた調整活動
C.退院支援における多職種との連携・協働
D.退院支援における看護職どうしの連携
コラム 退院支援を担う福祉専門職――ソーシャルワーカー
4.病院と訪問看護の連携
A.入院時の継続看護
コラム 地域連携クリティカルパス
B.退院支援における医師との連携
C.退院に向けた継続看護
コラム 自宅で最期を迎えることのむずかしさ
5.介護保険施設・事業所の諸サービスと訪問看護の連携
A.施設サービスと訪問看護の連携
1 介護老人福祉施設
2 介護老人保健施設
B.居宅サービスと訪問看護の連携
1 訪問介護
2 訪問入浴介護
3 療養通所介護
4 特定施設入居者生活介護
5 福祉用具貸与・購入および住宅改修
6 居宅介護支援
6.主治医と訪問看護の連携
A.訪問看護制度で定めている文書
B.訪問看護師の役割
C.主治医、そのほかの医師との連携
7.チームケアとマネジメント
A.在宅看護におけるチームケア
1 在宅ケアチームのメンバーとマネジメント
2 在宅ケアチームにおける看護師の役割
3 看護職どうしの連携
4 他職種との連携・協働
B.ケアマネジメント
1 ケアマネジメントとは
2 介護保険制度におけるケアマネジメント
C.社会資源とサービスの調整
8.保健師活動と訪問看護の連携
A.保健師活動と訪問看護の連携
1 個別の療養者支援における連携
2 必要な支援が包括的・継続的に受けられる体制づくりにおける連携
B.事例――難病患者に対する保健師と訪問看護師の連携
9.災害対策と災害時の連携
A.在宅療養者の災害対策の必要性
B.災害サイクルに応じた対策の実際と在宅看護の役割
1 静穏期
2 災害発生時-急性期
3 亜急性期-慢性期(復旧復興期)
第V章 在宅看護の姿勢・考え方と看護過程の展開
1.病状・病態の変化の予測と自立支援
A.在宅という場の特徴と地域の保健医療福祉資源
B.訪問看護師のおかれた立場
C.病状・病態の変化の予測の重要性
D.自立支援への取り組み
2.在宅看護に求められるヘルスアセスメント
A.ヘルスアセスメントとは
B.医師などとの連携におけるヘルスアセスメント
1 医師との連携におけるヘルスアセスメント
2 介護職との連携におけるヘルスアセスメント
3 連携のためのインフォームドコンセント
C.在宅看護に求められるヘルスアセスメント
1 在宅看護に求められるヘルスアセスメントの特徴
2 ヘルスアセスメントの方法
3 ヘルスアセスメントの実際
3.在宅における看護過程の展開
A.初回面接(インテーク)
B.情報収集
C.アセスメント
D.計画立案
1 看護目標
2 看護計画
E.実施
F.評価
G.リアセスメント
H.計画修正
4.在宅看護における倫理的課題
A.自己決定支援
B.権利擁護(アドボカシー)
C.成年後見制度
D.高齢者の虐待防止
1 高齢者虐待とは
2 看護師の基本的視点
E.情報管理
1 個人情報とは
2 個人情報保護法
第VI章 さまざまな対象者への在宅看護
1.要介護高齢者への在宅看護
A.在宅で療養する要介護高齢者の特徴
B.療養者の理解
C.在宅で療養する要介護高齢者への看護の提供
1 療養者の意向に沿ったケア
2 残存機能の維持向上
3 コミュニケーション
4 セルフケアの重視
5 合併症の予防
D.安全管理
E.倫理的課題
F.事例(1)――寝たきりの高齢者
G.事例(2)――介護予防が必要な高齢者
2.認知症高齢者への在宅看護
A.在宅で療養する認知症高齢者の特徴
B.療養者の理解
1 認知症の原因疾患の理解
2 認知症の症状の理解
C.在宅で療養する認知症高齢者への看護の提供
D.安全管理
1 中核症状の薬物療法と安全管理
2 BPSDの薬物療法と安全管理
E.倫理的課題
F.事例――在宅で療養する認知症高齢者
3.がんの療養者への在宅看護
A.がんの療養者の特徴
B.療養者の理解
最新の研究 がんの在宅療養者の予後
C.がんの療養者への看護の提供
1 痛みの緩和
2 療養者と家族に対する全人的ケア
3 在宅ケアチームの連携と制度の活用
D.安全管理
E.倫理的課題
F.事例――乳がんの療養者
4.神経系難病の療養者への在宅看護
A.難病の療養者の特徴
B.療養者の理解
C.神経系難病の療養者への看護の提供
1 身体状況の理解と看護
2 精神的苦痛の理解と看護
3 家族介護者の理解と看護支援
D.安全管理
E.倫理的課題
F.事例――人工呼吸器を装着しているALSの療養者
5.感染症をもつ療養者への在宅看護
A.感染症をもつ療養者の特徴
B.療養者の理解
C.感染症をもつ療養者への看護の提供
1 HIV感染症/AIDS
2 結核
3 B型肝炎、C型肝炎
4 疥癬
5 MRSA
D.安全管理
E.倫理的課題
F.事例――HIV感染症に結核を合併した療養者
6.疾病や障害をもつ小児への在宅看護
A.在宅で療養する小児の特徴
B.療養者の理解
C.在宅で療養する小児と家族への看護の提供
1 呼吸
2 栄養
3 排泄
D.安全管理
E.倫理的課題
F.事例――人工呼吸器管理が必要な小児
7.精神疾患をもつ療養者への在宅看護
A.精神疾患をもつ療養者の特徴
B.療養者の理解
C.精神疾患をもつ療養者への看護の提供
1 症状のアセスメント
2 コミュニケーション技術
3 症状の変化への対応
4 日常生活技能に対する援助
5 社会資源の活用
D.安全管理
E.倫理的課題
F.事例――統合失調症をもつ療養者
第VII章 ヘルスアセスメントと看護技術(1)――在宅医療支援
1.服薬管理
A.服薬管理の目的と療養者の特徴
B.ヘルスアセスメント
C.看護技術
コーヒーブレイク コンプライアンスを保つ――家族のかかわり
コーヒーブレイク 坐薬を1/2にする工夫
2.在宅酸素療法(HOT)
A.在宅酸素療法(HOT)の目的と療養者の特徴
1 在宅酸素療法(HOT)とは
2 HOTの目的
3 HOTの対象
4 HOTの保険適用基準
5 HOTの使用機器
B.ヘルスアセスメント
C.看護技術
1 HOT自己管理のための学習内容と目標
2 HOT実施上の注意
3 合併症の予防
4 チーム医療
3.在宅輸液療法
A.在宅輸液療法の目的と療養者の特徴
B.ヘルスアセスメント
C.看護技術
1 基本的な技術
2 療養者・家族の教育(HPN)
コーヒーブレイク 在宅で看取りを行う末期患者への輸液
3 医師との連携
4 機器メーカーへの連絡
4.在宅人工呼吸療法(HMV)
A.在宅人工呼吸療法(HMV)の目的と療養者の特徴
1 人工呼吸療法の種類と目的、対象者
2 人工呼吸器の原理・構造
B.ヘルスアセスメント
C.看護技術
1 気道浄化
2 気道管理(TPPV)
3 人工呼吸器、吸引器などの管理
4 心理面への支援
5 合併症の予防
6 指導と安全管理
5.腹膜透析
A.腹膜透析の目的と療養者の特徴
1 腹膜透析の目的
2 腹膜透析の原理
3 腹膜透析のメリットとデメリット
4 腹膜透析の種類
5 療養者の特徴
B.ヘルスアセスメント
C.看護技術
1 腹膜透析手技
2 出口部ケア
3 入浴方法
4 食事管理
6.在宅血液透析(HHD)
A.在宅血液透析(HHD)の目的と療養者の特徴
B.ヘルスアセスメント
C.看護技術
1 教育訓練の目標
2 講義・実技の内容と教育担当者
7.経管栄養
A.経管栄養の目的と療養者の特徴
1 経管栄養の目的
2 療養者の特徴
3 カテーテルと経腸栄養剤の種類と特徴
B.ヘルスアセスメント
C.看護技術
1 栄養剤の注入法
2 経管栄養の日常管理
3 療養者・家族への教育
4 医師との連携
8.膀胱留置カテーテルの管理
A.膀胱留置カテーテルの目的と療養者の特徴
1 膀胱留置カテーテルの目的
2 膀胱留置カテーテル挿入の適応
3 膀胱留置カテーテルの種類
B.ヘルスアセスメント
C.看護技術
1 膀胱留置カテーテルの挿入
2 日常生活上の管理と指導
3 合併症の予防と対処
9.呼吸リハビリテーション
A.呼吸リハビリテーションの目的と療養者の特徴
B.ヘルスアセスメント
C.看護技術
1 呼吸訓練
2 リラクセーション
3 運動療法
10.疼痛管理
A.疼痛管理の目的と療養者の特徴
B.ヘルスアセスメント
C.看護技術
1 薬物療法
2 そのほかの疼痛緩和療法と今後の課題
11.褥瘡管理
A.褥瘡管理の目的と療養者の特徴
B.ヘルスアセスメント
1 褥瘡のリスクアセスメント
2 褥瘡局所のアセスメント
3 褥瘡ケアのための環境のアセスメント
C.看護技術
1 予防的ケア
2 褥瘡局所の治療的ケア
3 地域連携と福祉用具の活用
第VIII章 ヘルスアセスメントと看護技術(2)――在宅療養支援
1.療養支援技術のとらえ方
2.口腔ケアと嚥下訓練
A.口腔ケアと嚥下訓練の目的と療養者の特徴
B.ヘルスアセスメント
1 身体的健康状態のアセスメント
2 心理的・社会的健康状態のアセスメント
C.看護技術
1 器質的口腔ケアの方法
2 嚥下訓練の方法
3 他職種との連携
3.排泄支援
A.排泄支援の目的と療養者の特徴
B.ヘルスアセスメント
1 排尿障害
2 排便障害
3 排泄のアセスメント
4 排尿日誌・排便日誌の活用
C.看護技術
1 尿閉への支援
2 尿失禁への支援
3 便失禁への支援
4 便秘への支援
5 排泄補助用具の種類と選択方法
6 多職種との連携と制度の利用
4.清潔ケア
A.清潔ケアの目的と療養者の特徴
B.ヘルスアセスメント
1 清潔ケアの情報収集とアセスメント
2 清潔ケアの評価
C.看護技術
1 在宅における清潔ケアの工夫
2 他職種との連携
D.事例――入浴を生きがいとする療養者へのかかわり
5.フットケア
A.フットケアの目的と療養者の特徴
B.ヘルスアセスメント
C.看護技術
1 フットケアの方法
2 他職種との連携
6.移動の援助
A.移動の援助の目的と療養者の特徴
B.ヘルスアセスメント
C.看護技術
1 移動の援助方法
2 他職種との連携
7.肺炎予防
A.肺炎予防の目的と療養者の特徴
B.ヘルスアセスメント
1 肺炎発症リスクの予測
2 気道クリアランスのアセスメントと評価
C. 看護技術
1 排痰法
コラム 訪問看護師の肺炎発症リスクの予測の実際
2 日常生活指導
3 他職種との連携
8.感染予防
A.感染予防の目的と療養者の特徴
B.ヘルスアセスメント
1 感染源および感染症発症のリスク
2 感染(定着)か感染症か
C.看護技術
1 在宅における感染防止対策の概要
キーワード ノンエンベロープウイルスと芽胞
2 そのほか感染予防のために注意すべきこと
3 他職種との連携
9.心不全予防
A.心不全予防の目的と療養者の特徴
B.ヘルスアセスメント
1 慢性心不全の主な症状とアセスメントのポイント
2 心機能のヘルスアセスメント
C.看護技術
1 心不全予防の方法
2 他職種との連携
10.低栄養予防
A.低栄養予防の目的と療養者の特徴
B.ヘルスアセスメント
C.看護技術
1 看護師の役割
2 必要栄養素とその量の決定
3 疾患や症状に合わせた栄養摂取の工夫
4 介護食品の利用
5 他職種との連携
第IX章 諸外国の在宅看護
1.米国の在宅看護
2.英国の在宅看護
3.オランダの在宅看護
4.韓国の在宅看護
索引
日本は、家で病気を治すことが多くの庶民の唯一の選択肢であった戦後の一時期から、経済復興と医学の進歩により多くの人が病院で医療を受けるようになり、最後まで治療を受けつつ病院で亡くなることが当たり前とされる一時代があった。しかし、平成に入って行き過ぎが見直され、在宅で療養する意義が再認識されるようになった。
その原動力となったのが高齢化とそれに付随する要介護高齢者の増加への危惧であったにせよ、それをきっかけに高齢者に限局しない在宅療養の制度や仕組みができあがってきている。そして今日までのその発展を支えてきたのは、訪問看護の先駆者たちである。彼女たちの素晴らしい活躍によって、困難な疾患を抱える人たちの在宅での安心や安楽、虚弱な高齢者の再入院の予防、その人らしい在宅での看取りなどが得られている。
しかし今日、社会からの期待にこたえるには訪問看護の基盤が不足しているという現実がある。もっとたくさんの訪問看護ステーション、もっとたくさんの訪問看護師が必要なのである。
このテキストは、看護を勉強する学生の皆さんが、訪問看護のもたらす在宅療養者・家族の安寧と満足を知り、将来の訪問看護師をめざしてくれることを願って、訪問看護の先駆者や訪問看護の熟達者、そして教育者たちによって執筆された。また、たとえ訪問看護師にはならなくとも、病院や施設から訪問看護師と連携できるだけの理解と知識は身につけてほしいという思いも込められている。訪問看護師は療養者・家族の何を大切にしているのか、どのようなレベル・種類のケアまで在宅でできるようになっているのか、今後に向けてどのような可能性があるのか、このテキストを使ってよく知って考えていただきたい。皆さんには訪問看護の意義と素晴らしさを身につけて、今後の日本の在宅療養をもっと発展させる人材となっていただきたいと思っている。そのための材料をこのテキストに込めたつもりである。
日本の在宅療養環境は、社会資源やそれらが連携できるシステムなどの改革中であり、さまざまな課題に気づかされる。しかし、療養者・家族の身になって考える訪問看護師たちによってこれまでも改革されてきており、今後もそうであるに違いないと考えている。
2011年12月
石垣和子
上野まり