看護学テキストNiCE
母性看護学I 概論・ライフサイクル
生涯を通じた性と生殖の健康を支える
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 大平光子/齋藤いずみ/定方美恵子/長谷川ともみ/三隅順子 |
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ISBN | : 978-4-524-25359-3 |
発行年月 | : 2014年3月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 246 |
在庫
定価2,860円(本体2,600円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
少子高齢化、晩婚・晩産化、生殖補助医療の発達、国際化など時代の変化に対応。倫理的課題を具体的に取り上げ、わかりやすく解説。母子保健統計では多くの資料を掲載し、日本や世界という大きな視点から分析する力を養う。女性のライフサイクル各期の特徴的な健康課題を事例として取り上げ、看護を展開。性と生殖の健康を支える看護を行うために必要な幅広い知識と考え方が身につくテキスト。
第I章 母性看護学の概念
1.母性看護学とは
A.母性とは
1 母性の定義をめぐって
2 母子保健法における「母性」の使われ方
3 母性という言葉の歴史
4 医学の中の「母性」−時代のうねりと社会のはざまで
5 現在の代表的な「母性」の定義
B.母性看護学のなりたちと変遷
1 母性看護学のなりたち
2 母性看護学の対象
3 母性看護学と助産学
C.母性看護学の目的
2.親になること
A.母性・父性
B.母性・父性から親性に
C.親役割獲得過程
1 母親になる過程
2 父親になる過程
D.役割形成支援にかかわる母性看護学の視座
3.家族とは
A.新生児の誕生による家族の変化
B.家族のアセスメントの視点
1 家族の構造面
2 家族の発達面
3 家族の機能面
C.事例−Rさん、産褥2日目
1 アセスメント
2 看護診断
3 看護目標
D.看護職の家族へのかかわり
4.母性看護学の基盤
A.母性看護実践の基盤となる理論と概念
1 リプロダクティブ・ヘルス/ライツ
2 ヒューマン・セクシュアリティ
3 ヘルスプロモーション
4 ウェルネス
5 エンパワメント
6 自己決定
B.母性看護学における看護診断・看護過程の特徴
1 看護過程とは
2 看護診断とは
3 母性看護学領域における看護過程の特徴
5.母性看護を支える主な職種
A.女性と母性にかかわる職種の紹介
1 女性と母性にかかわる職種
2 職種間の連携・協働(チーム医療)
第II章 母子保健統計と社会資源
1.母子や家族にかかわる統計の理解
A.識字率
B.労働力に関連する諸要因
1 年齢階級別労働力率
2 労働の継続と職場環境
3 女性が職業をもつことに対する価値観
4 賃金
5 女性の就業率
6 共働き世帯の家事・育児時間
7 世帯の種類
8 地域差
C.女性の進出
D.婚姻や子どもに関すること
1 晩婚化
2 理想の子どもの数
3 離婚率
2.母子保健統計の理解
A.日本の人口、出生、死亡に関する概観
1 人口
2 出生数
3 ひのえうま
4 合計特殊出生率
B.日本の母子保健水準と統計値
1 周産期死亡率、乳児死亡率、新生児死亡率
2 妊産婦死亡率
3 人工妊娠中絶
C.諸外国における母子保健統計と日本の比較
1 諸外国の合計特殊出生率とその背景
2 諸外国における母子保健水準と統計値
3.母子にかかわる社会資源とその活用
A.母子個々の健康の保持・増進のための法律
1 母子の健康にかかわる法律
2 福祉にかかわる法律
3 暴力の防止にかかわる法律
B.そのほかの施策、国民運動施策など
1 健やか親子21
2 男女共同参画社会基本法
3 少子化社会対策基本法
4 そのほかの少子化対策・子育て支援
C.連携する主な職種
D.母子保健を推進している資源
1 物的資源−母子健康手帳
2 機能的資源−提供されているサービス
3 経済的資源
第III章 生殖に関する形態機能とライフサイクル
1.発生
A.性周期と妊娠の成立
1 性周期とは
2 性周期とホルモンの関係
3 性周期の正常と異常を見分けるポイント
4 妊娠の成立
B.受精のメカニズム
1 精子の機能
2 受精
3 着床と妊娠の継続
2.性分化のメカニズム
1 染色体上の性
2 性腺の性
3 身体的性
4 性同一性
3.遺伝
A.遺伝のメカニズム
1 遺伝子と遺伝
2 減数分裂
B.遺伝性疾患
1 代表的な遺伝性疾患
2 遺伝性疾患の分類
C.遺伝診療科における周産期から育児期までの支援例
4.生殖器の形態と機能
A.女性の生殖器のライフサイクルにおける成長、発達、変化
1 女性生殖器の形態
2 ライフサイクルにおける女性生殖器の変化
B.男性の生殖器のライフサイクルにおける成長、発達、変化
1 男性生殖器の形態
2 男性生殖器の発達
C.性反応
5.社会的・心理的特性からみた女性・男性
A.社会的存在としての女性・男性
1 ジェンダーとは
2 ジェンダー・フリー
3 ジェンダーの不平等を示す指数
B.日本の社会と性
1 日本におけるジェンダー
2 日本における男女の平等感
3 日本における男女の賃金格差
4 日本における看護という仕事
C.ジェンダー・アイデンティティとセクシュアル・マイノリティ
1 ジェンダー・アイデンティティとその多様性
2 セクシュアル・マイノリティとは
第IV章 母性看護学領域における倫理的課題
1.母性看護学領域における倫理的課題とは
A.母性看護学領域における倫理的課題の特徴
1 一般不妊治療、生殖補助医療(ART)をめぐる倫理的課題
2 出生前診断をめぐる倫理的課題
3 人工妊娠中絶をめぐる倫理的課題
2.専門職として高い倫理性を育成する
A.倫理的課題にアプローチするためのツール
1 倫理原則
2 ケアリング
3 看護職の責務−看護者の倫理綱領
B.女性・胎児の権利と擁護と看護職の行動
C.倫理的意思決定プロセス
D.専門職として高い倫理的感受性を育成する姿勢
第V章 国際化の中での母性看護学の役割
1.文化の違いと在日外国人女性の健康
A.在日外国人の抱える問題
B.周産期にある在日外国人女性の健康問題
1 在日外国人女性にとっての妊娠
2 在日外国人女性にとっての出産
3 在日外国人女性にとっての産後
C.在日外国人の母子保健
2.国際貢献と母性看護学領域
A.国際的支援を必要とする開発途上国の状況
B.母性看護学領域の国際援助
C.JICA
1 JICAとは
2 事業内容
第VI章 女性のライフサイクル
1.女性のライフサイクルの全体像
A.ライフサイクルの定義
1 ライフサイクルとは
2 マタニティサイクルとは
3 ライフサイクル各期
B.現代社会における日本の女性のライフサイクル
1 ライフサイクルと現代女性の生き方
2 ライフコースと看護
3 ライフコースの多様性
2.思春期
A.思春期の女性の特徴
1 身体的特徴
2 心理的特徴
3 社会的特徴
4 性意識、性行動の発達
B.思春期の女性の健康課題
1 性行動における健康課題−性感染症罹患
C.思春期の女性への看護の視点とヘルスプロモーション
D.事例(1)−やせ願望のA子さん
1 アセスメント
2 看護診断
3 看護計画の立案
4 実施
5 評価
E.事例(2)−性感染症のBさん
1 アセスメント
2 看護診断
3 看護計画の立案
4 実施
5 評価
3.成熟期
A.成熟期の女性の特徴
1 身体的特徴
2 心理的特徴
3 社会的特徴
B.成熟期の女性の健康課題
1 月経困難症と月経痛
2 月経前症候群
3 不妊症
4 不育症
5 ドメスティック・バイオレンスによる健康への影響
6 成熟期と女性特有のがん
C.成熟期の女性への看護の視点とヘルスプロモーション
1 月経とセルフケア
2 リプロダクティブ・ヘルス/ライツと家族計画
3 不妊症カップルへの看護ケア
4 ドメスティック・バイオレンスと女性への支援
5 女性特有のがんとヘルスケア
D.事例(3)−月経不順・月経痛による受診時に子どもをもつ時期の相談があったCさん
1 アセスメント
2 看護診断
3 看護計画の立案
4 実施
5 評価
E.事例(4)−生殖補助医療を継続することにストレスを感じているDさん
1 アセスメント
2 看護診断
3 看護計画の立案
4 実施
5 評価
4.更年期
A.更年期の女性の特徴
1 身体的特徴
2 心理・社会的特徴−人生の再評価
B.更年期の女性の健康課題
C.更年期の女性への看護の視点とヘルスプロモーション
1 看護の視点
2 ヘルスプロモーション
D.事例(5)−更年期症状を克服していくEさん
1 アセスメント
2 看護診断
3 看護計画の立案
4 実施
5 評価
5.老年期
A.老年期の女性の特徴
1 身体的特徴
2 心理的特徴
3 社会的特徴
4 老年期のセクシュアリティの特徴
B.老年期の女性の健康課題
1 骨盤底筋の弛緩と尿道括約筋の障害
2 老人性腟炎、外陰炎
C.老年期の女性への看護の視点とヘルスプロモーション
1 看護の視点
2 ヘルスプロモーション
D.事例(6)−夫との死別後、パソコン教室で知り合った男性との関係に躊躇するF子さん
1 アセスメント
2 看護診断
3 看護計画の立案
4 実施
5 評価
資料
練習問題 解答と解説
索引
母性看護学は、生涯を通じた性と生殖の健康の維持・増進・疾病予防を基盤として、次世代の育成を目指すことを役割としています。
母性看護の対象は、かつて妊娠・分娩・産褥期の母子あるいは女性というとらえ方が色濃く反映されていましたが、現在のその対象は、女性の一生、さらに女性のみならず、男性、子ども、家族、社会環境へと拡大されています。
母性看護学は、男女両性が学ぶことで、異なる性が互いに刺激し尊重することの重要性を実感できる科目です。性と生殖という視点を通して、人としての価値観や倫理観を形成することに深く影響すると考えます。
学問としての母性看護学は、看護学の基本となる構成科目の一分野を担う学問で、看護師となる人全員が学ぶ必修科目です。母性看護学や助産学の第一歩を導く学問が、母性看護学の概論です。母性看護学がもつ、看護の基礎的学問としての責任は非常に大きいと考えます。私たちは母性看護学を単に母性看護学の視点からとらえるのみならず、社会的動向や関連分野の学術的進化に呼応し、それらを吸収・咀嚼した学問としたいと考えました。最新のEBM、EBNに準拠し、その知見をもとに女性・子ども・男性・家族・社会に貢献することが求められています。それゆえ本書では、母性看護学をとりまく周辺で起こっている事実を広く紹介し、学んだ知識を活用して初学者の皆さんが理解できるように心がけました。
また、学生の皆さんがこの教科書で学んだことを看護実践で生かすことができるよう、とくに以下の工夫をしました。「第VI章女性のライフサイクル」では、ライフサイクル各期にリアルな事例を登場させ、その事例を第I〜V章で学んだ知識や理論を活用しながら、どのような視点からアセスメント・計画立案をするかがわかるよう、「看護過程」を展開しました。
看護過程においては、ウェルネスの視点に立ち展開をしています。今後は、正常な妊娠・分娩・産褥経過のみならず、妊娠年齢の高齢化や不妊治療後の妊婦の増加など、ハイリスク事例が増えることが予測されます。ウェルネスの視点を大切にしながらも、身体・心理・社会的リスクを抱える妊産褥婦・新生児・家族を総合的に分析し、看護実践できる力量が今後ますます必要になるでしょう。そのため、関連する知識を基盤に、起きている事象を俯瞰し構造的に分析する基礎力を養うことをねらい、執筆・編集しました。
読者の皆さんと、「いま」必要とされている新しい母性看護学を切り開き、作り上げたいと心から願っています。本書がさらに臨床に根ざしたよりよい内容となるよう、読者の皆さんからのご意見を大切に受け止めたいと思います。
私たち編者一同、この教科書で学んだ皆さんが、女性・男性であることを互いに尊重し、人間の一生にわたる生と性について考えを深め、あらゆる科における看護の対象者に援助する際にも心に留めていただけることを願います。
2014年2月
編者一同