教科書

看護学テキストNiCE

国際看護

国際社会の中で看護の力を発揮するために

編集 : 森淑江/山田智惠里/正木治恵
ISBN : 978-4-524-25264-0
発行年月 : 2019年4月
判型 : B5
ページ数 : 288

在庫あり

定価2,860円(本体2,600円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

グローバル化した現代において、多文化共生社会・国際社会で看護を実践するための素地を養うためのテキスト。基本となる国際看護の概念や異文化理解、世界の健康課題について学ぶ「総論」と、国際協力や在日外国人・在外日本人への看護の実際について学ぶ「各論」の2部構成。「各論」では、国際協力活動や外国での実体験が豊富に掲載されており、学生がイメージを掴みやすくなっている。

第1部 総論
 第I章 国際看護の概念と対象
  1.なぜ国際看護について学ぶのか
   A.地球規模で考える重要性
   B.日本における国際化
   C.国際協力と看護
   D.海外で看護職として働く
   E.なぜ国際看護について学ぶのか
  2.日本と海外で異なる国際看護の対象
   A.国際看護の場ごとの対象と求められる看護
   B.対象の把握方法
  3.何が看護に影響を与えるか
   A.看護と文化との関係
   B.看護に影響を与える文化以外の要因
  4.国際看護を知る
   A.看護の中での国際看護の位置づけ
   B.国際看護と異文化看護の関係
   C.国際看護と国際保健の関係
  5.日本の国際看護の歴史
   A.世界にみる国際看護協力の歴史
   B.日本における国際看護協力の歴史
   C.在日外国人の健康問題の歴史的背景
 第II章 看護における文化
  1.看護と文化
   A.看護師の倫理綱領と文化
   B.看護実践にみる文化
   C.文化への理解と看護実践
   D.日本文化に根ざした看護の視点
  2.異文化の理解と看護
   A.異文化とはなにか
   B.異文化に違和感を覚えるとき
   C.異文化を受け入れるとき
   D.異文化看護を知る
   E.異文化看護をアセスメントする
   F.サブ・カルチャーとマイノリティ
   G.ダイバーシティと文化的能力
  3.文化ケアアプローチ
   A.看護に文化ケアアプローチが求められる理由
   B.日本文化の特性と文化ケアアプローチ
   C.文化ケアアプローチの構造
   D.文化ケアアプローチのプロセス
   E.傾聴を促す問いかけ
   F.文化ケアアプローチの成果
   G.患者・家族中心のケア(P&FCC)の実践
  4.異文化への適応
   A.異文化への適応
   B.カルチャーショック
   C.異文化トレーニング
   D.在日外国人・在外日本人にみられる異文化不適応への対応
 第III章 世界の健康課題
  1.世界の健康課題を理解するうえでの基本概念
   A.健康の定義と測定
   B.世界の健康格差
   C.世界の健康課題とその変化
   D.世界の健康改善への取り組み
  2.世界的健康課題を引き起こす感染症
   A.現代における感染症の脅威
   B.途上国で問題となる感染症
   C.感染症対策の国際的な取り組み
  3.災害(自然災害・人為災害)に起因する健康問題
   A.災害(自然災害・人為災害)とは
   B.災害による健康被害
   C.災害による健康被害を軽減する取り組み
  4.世界の健康課題に関連する国際機関,国際協力機関
   A.世界の健康課題に取り組む国際機関,国際協力機関
   B.健康課題に対する近年の国際的な取り組み
 第IV章 世界の保健医療システムと課題
  1.保健医療システム
   A.保健医療システムとは
   B.ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)
  2.世界の保健医療システムに関連する看護職の課題
   A.看護職数の不足
   B.看護政策上の課題
   C.看護教育上の課題
   D.看護管理上の課題
  3.課題解決のための人材育成,看護政策,看護教育,看護管理の改善
   A.看護政策
   B.看護教育に関する取り組み
   C.看護管理に関する取り組み
 第V章 日本の看護師からみた国際看護の実践の場
  1.国際看護協力に関係する機関
   A.政府開発援助(ODA)
   B.国際機関
   C.非政府組織(NGO)
  2.在日外国人・訪日外国人への医療と看護
   A.在日外国人・訪日外国人の現状
   B.在日外国人・訪日外国人にみられる健康問題
   C.在日外国人・訪日外国人医療における問題
   D.日本人看護師に求められる看護
  3.在外日本人への医療と看護
   A.在外日本人の現状
   B.在外日本人に多い健康問題
   C.在外日本人への医療支援制度
   D.日本人看護師に求められる役割
  4.海外で働く
   A.どのように海外で看護師登録を行うか
   B.海外で働く看護師の概要
   C.海外の現場からみる日本と海外の看護業務の違い
   D.海外で日本人看護師が働くうえでの課題
  5.国内で外国人と働く
   A.外国人はどのように日本の看護師資格を得るのか
   B.日本で働く看護職の概要
   C.日本の現場からみえる日本と海外の看護業務の違い
   D.日本で外国人看護師が働くうえでの課題
   E.協働する意義と留意点
 第VI章 国際看護協力に必要とされる態度・能力・知識・技術
  1.国際協力で用いられる調査手法
   A.インタビュー,フォーカス・グループ・インタビュー
   B.フォーカス・グループ・ディスカッション
   C.記録を調べる
   D.質問紙調査
   E.質的,量的な調査
  2.住民参加型アプローチ
   A.健康と人々の主体的参加の関係
   B.プライマリ・ヘルス・ケア
   C.途上国援助のアプローチの変遷と国際看護協力
   D.新しいコンセプトへの理解と情報共有の重要性
  3.5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)
   A.5Sの基本的理念
   B.5Sの日本での発展過程
   C.医療分野での5S活動
   D.途上国の医療機関への5S活動の導入
   E.途上国の医療機関における5S活動展開のポイント
  4.国際看護協力に必要とされる態度・能力
   A.自身の心身管理能力
   B.信頼関係の構築
   C.協力の基本方針の説明
   D.心のしなやかさ
   E.コミュニケーション能力とアサーティブネス
   F.業務管理能力,専門的知識,技術,応用力
第2部 各論
 第VII章 国際協力としての看護の実際
  1.国際協力としての看護の現状と課題
   A.国際協力活動にかかわるまでの課題
   B.国際協力活動でぶつかる問題
   C.問題のとらえ方を変えることで乗り越える
   D.現地で協力活動を行うにあたっての基本的な方策
  2.病院での看護
   A.国際協力における病院での看護の概要
   B.実際の活動
  3.非感染性疾患(NCDs)と看護
   A.国際協力における非感染性疾患(NCDs)の概要
   B.実際の行動
  4.母子保健・母子看護
   A.国際協力における母子保健・母子看護の概要
   B.実際の活動
  5.難民への看護
   A.国際協力における難民支援の概要
   B.実際の活動
   C.国内における難民支援
  6.災害看護
   A.国際協力における災害看護の概要
   B.実際の活動
  7.地域看護(公衆衛生看護)
   A.国際協力における地域看護の概要
   B.実際の活動
  8.学校保健
   A.国際協力における学校保健の概要
   B.実際の活動
  9.感染症と看護
   A.国際協力における感染症と看護の概要
   B.実際の活動
  10.看護教育
   A.国際協力における看護教育の概要
   B.実際の活動
  11.看護管理
   A.国際協力における看護管理の概要
   B.実際の活動
  12.看護政策
   A.国際協力における看護政策の概要
   B.実際の活動
 第VIII章 在日外国人・在外日本人への医療と看護の実際
  1.在日外国人・訪日外国人への医療と看護の実際
   A.在日外国人・訪日外国人の健康問題とその対策
   B.在日外国人・訪日外国人への医療と看護
   C.看護職の役割
   D.実際の活動
  2.在外日本人への医療と看護の実際
   A.在外日本人の健康問題とその対策
   B.在外日本人の医療と看護
   C.実際の活動
 第IX章 外国で看護活動をするために
  1.外国での資格取得と選択の幅
   A.アメリカ
   B.オーストラリア
  2.海外での看護職としてのキャリアパス
   A.アメリカにおけるナースプラクティショナー
   B.アメリカにおけるフィジシャン・アシスタント
   C.オーストラリアにおける看護師
  3.国連組織での派遣までの過程と勤務
   A.国連職員・インターン
   B.国連ボランティア
  4.政府機関(JICA)関連での派遣までの過程と勤務
   A.青年海外協力隊
   B.JICA派遣専門家
   C.国際協力専門員
  5.非営利組織(NPO)での採用までの過程と勤務
   A.国境なき医師団
   B.日本国際民間協力会
付録
 1 参考になる関係機関・統計資料のURL集
 2 世界の健康問題に関連する主な国際機関,開発援助機関一覧
 3 途上国・地域の分類(DAC統計上のODA対象国・地域)
索引

序文

 科学技術の進歩により、現在では地球の隅々まで世界中の人々が行き交い、物が流通し、情報もインターネットのおかげで瞬時に世界中を駆け巡ります。世界各国が容易につながるとともに、感染症も地球規模で広がるようになりました。世界には災害や紛争によって人々の生命が危険にさらされている国々があります。環境の悪化は世界の人々の健康を脅かすことになります。また世界の人々の死亡の3分の2以上に非感染性疾患が関わっており、これは各国共通の健康問題です。
 これらの課題は1つの国だけで解決できるものではありません。世界中の国々はこれらの問題を解決するために持続可能な開発目標(SDGs)を定め、協力しています。これがグローバル、地球規模で問題解決を図る動きですが、この国際協力活動には看護職の貢献も求められています。
 日本国内に目を向けると、日本国外から来日する外国人は年々増加し、定住する人も増えています。医療機関や地域で外国人を対象とした看護活動の機会は当たり前のことになりました。それら外国人の健康問題への対応に必要とされるものは語学力だけではなく、その人の文化・社会・経済・教育等の背景に合った看護です。
 本書「NiCE国際看護−国際社会の中で看護の力を発揮するために」は、国際社会の中で求められている看護職の役割を果たすために、必要とされる知識を提供するものです。「第1部 総論」では、国際看護の概念や、世界の健康課題、国際看護の実践の場についてなど、国際看護における基本事項について解説しています。「第2部 各論」では、国際協力における看護活動や日本での外国人への看護活動などについて具体的に述べています。各項目における「実際の活動」や「現場発」は、執筆者の実経験が基になっており、国際看護の実際に触れていただけるものと思います。
 国際看護では、国内外での看護活動を実践するために、対象とする人々の背景を十分考慮することの必要性が強調されていますが、これは日本国内で日本人へ看護を行う際にも重要な概念です。その意味では、国際看護を学ぶことは、看護の基本に立ち返ることとも言えます。本書が、看護学生のみならず、看護職の方々にもご活用いただければ幸いです。

2019年4月
森淑江
山田智惠里
正木治恵

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