看護学テキストNiCE
リハビリテーション看護
障害をもつ人の可能性とともに歩む
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 酒井郁子/金城利雄 |
---|---|
ISBN | : 978-4-524-25081-3 |
発行年月 | : 2010年4月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 374 |
在庫
定価2,640円(本体2,400円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
リハ看護の専門性と具体的実践の理解を目指したテキスト。リハ看護の対象は何かを理解するため、障害をもつ人の身体面の特徴だけではなく、心理面・社会面の特徴を、事例を用いながらわかりやすく解説する。具体的な実践方法についても、回復過程別、生活障害別の観点から、イラスト・写真を交えながらていねいに紹介。基礎知識から最新の知見、また今後のリハ看護の展望までを包括的に網羅したテキスト。
第I章 リハビリテーション看護とは
1.リハビリテーション医療の目指すもの
A.リハビリテーションの定義
B.リハビリテーションの分野(教育的、医学的、社会的、職業的)
1●教育的リハビリテーション
2●医学的リハビリテーション
3●社会的リハビリテーション
4●職業的リハビリテーション
C.リハビリテーション医療が提供される場所
1●急性期病院
2●リハビリテーション専門施設
3●その他の施設
4●地域
5●学校
2.リハビリテーション医療の歴史
A.世界におけるリハビリテーションと障害のとらえ方の歴史
1●リハビリテーションの発展と戦争
2●障害者運動の発展
3●障害とリハビリテーションの国際的な定義の変遷
B.日本におけるリハビリテーションと障害のとらえ方の歴史
1●明治時代
2●大正時代
3●第2次世界大戦後
3.リハビリテーション医療に携わる専門職の役割・機能
A.リハビリテーション医療に携わる専門職種
B.専門職の役割と機能
1●看護師
2●医療ソーシャルワーカー
3●介護福祉士
4●理学療法士
5●作業療法士
6●言語聴覚士
7●義肢装具士
8●心理療法士
9●医師
4.リハビリテーション看護の専門性
A.リハビリテーション看護の定義
B.“療養上の世話”として急性期から維持期まで展開する
1●生活機能障害の詳細なアセスメント
2●リハビリテーション医療の必要性の判断とチームの調整
3●廃用の徹底的な予防
4●患者の主観的な回復過程の促進
5●患者の学習支援
C.“診療の補助”として医療展開中に求められる看護
1●療養の場における活動の促進と参加の支援
2●リハビリテーション医療展開の阻害因子の発見
3●リハビリテーション医療の効果の評価
第II章 生活機能障害をもつ人とその家族の理解
1.生活機能分類と生活機能障害の構造
A.生活機能とは何か
B.ICFモデルとその理念
1●障害の概念モデル(ICIDHからICF)の流れ
2●ICFモデルの特徴
C.ICFの構造と構成因子
1●生活機能と障害
2●背景因子
D.新しいモデルの目的、目指すところ
2.生活機能障害を引き起こす要因と、障害の広がり・影響
A.活動制限と参加制約
B.生活機能障害をもつ人の動向
C.生活機能障害を引き起こす要因
1●生活機能障害の要因となる主な健康障害
2●生活機能障害に影響を及ぼす背景因子
D.生活機能障害の広がりと影響
E.生活機能障害に伴う喪失体験と悲嘆
3.患者と家族が体験する障害の世界
A.脳卒中を生きる意味
1●危機としての突然の発症
2●「生きる」ための試行錯誤
3●「新しい自分」の発見と「重要な他者」との「出会い」
B.健常者の文化から障害者の文化へ移行すること―マジョリティからマイノリティへの移行(身体障害者の例から)
1●社会化と文化統合
2●新しい「環境」―障害をもった身体
3●文化統合と情報収集
4●社交の場、緩衝地帯としての「情報がたまる場所」
5●The Wise―2つのコミュニティのはざまで出会う「橋渡し」
6●2つの言語を獲得する
C.障害とともに年をとる
1●障害者の高齢化
2●「障害と加齢」をめぐる2つの仮説
3●「障害者の高齢化」に対して看護師に期待されること
第III章 リハビリテーション看護の展開に必要な概念と理論
1.リハビリテーションを必要とする人への看護の目的を
定めるために
A.QOL
1●QOLとは何か
2●健康関連QOL
3●QOLの測定
4●リハビリテーション医療におけるQOL
B.自立から自律へ
1●自立と自律
2●日本における「自立支援」
3●リハビリテーション医療がめざす自律
C.セルフケア
1●セルフケアとは
2●看護におけるセルフケア
3●日本におけるセルフケア
4●セルフケア支援のためのセルフケアのとらえ方
5●リハビリテーションにおけるセルフケア支援
D.動機と主体性
1●リハビリテーション看護における動機と主体性
2●患者の主体性をどのようにとらえるか
3●援助者がとらえた主体性は、どのように動機づけされ援助に活用されるか
4●主体性の発揮を妨げるとき
5●“当事者による主体的なリハビリテーション”を支える
E.自我発達
1●自我発達という考え方
2●発達とは
3●自我発達に関するさまざまな理論
4●発達を促進するもの
5●発達にかかわる看護師として
2.リハビリテーションを必要とする人との関係を構築するために
A.協働的パートナーシップ
1●協働的パートナーシップ関係の主な特徴
2●協働的パートナーシップのらせんモデルと共同目標設定プロセス
3●リハビリテーション看護における協働的パートナーシップ
B.相互作用と意味ある世界
1●リハビリテートするのは誰か
2●相互作用とは何か
3●リハビリテーション看護における相互作用
3.リハビリテーションを必要とする人への看護を展開するために
A.日常生活活動の構造
1●ADLの概念
2●リハビリテーションにおける評価
B.成人における学習と移行
1●専門職チームの看護師として
2●リハビリテーションと運動学習
C.専門職連携実践
1●専門職の専門性と連携・協働
2●IPWのグランドルール
3●IPEとその効果
4●IPWとIPEの今後の課題
第IV章 リハビリテーション看護の目的と方法
1.廃用症候群の予防(生命レベル)
A.廃用症候群とは
B.生活不活発状態がもたらす弊害
1●局所性廃用症候
2●全身性廃用症候
3●精神・神経性廃用症候
C.廃用症候群の予防
1●関節可動域訓練
2●基本動作の拡大
3●筋力維持・向上のための運動
4●骨萎縮に対する援助
5●生活の活性化と運動量の維持
2.活動の促進(生活レベル)
A.活動の促進とADL
1●生活機能の発揮と日常生活の自立
2●ADLの要素
B.活動の促進に向けた自助具・補助具使用の意義
1●自助具の使用
2●補装具の使用
C.活動の促進に向けたADL支援方法
1●移動動作への支援
2●移乗動作への支援
3●食事動作への支援
4●整容動作への支援
5●更衣動作への支援
6●入浴動作への支援
7●トイレ動作への支援
3.参加の促進(人生レベル)
A.参加とは
B.行動範囲を拡大できるような機会の整備
C.住居環境をアセスメントする
1●行動様式に合わせた住宅改修
2●屋外へ出ることを想定する
D.外出する機会の整備
第V章 回復過程とリハビリテーション看護
1.急性期におけるリハビリテーション看護
A.急性期のリハビリテーションとは
B.急性期のリハビリテーションが行われる場とその特徴
C.急性期におけるリハビリテーション看護の目的と方法
1●主な援助内容
2●リスク管理
D.急性期におけるリハビリテーション看護の評価
2.回復期におけるリハビリテーション看護
A.回復期のリハビリテーションとは
B.回復期のリハビリテーションが行われる場とその特徴
C.回復期におけるリハビリテーション看護の目的と方法
1●機能障害の回復とADLの改善
2●本人と家族への支援
D.回復期におけるリハビリテーション看護の評価
3.維持期におけるリハビリテーション看護
A.維持期リハビリテーションとは
B.維持期リハビリテーションが展開される場所とその特徴
1●訪問サービス
2●通院・通所によるサービス
3●入院・入所サービス
C.維持期におけるリハビリテーション看護の目的と方法
1●摂食・嚥下障害へのケア
2●心理的ケア
3●生活面へのケア
D.維持期におけるリハビリテーション看護の評価
第VI章 生活機能障害とリハビリテーション看護
1.高次脳機能障害を有する人への看護
A.高次脳機能障害とは
1●高次脳機能障害の定義
2●高次脳機能障害の原因疾患
B.高次脳機能障害の症状
1●中心的な障害
2●日常生活にみられる障害
C.高次脳機能障害のアセスメント
1●全般的な認知機能のアセスメント
2●注意力のアセスメント
3●記憶力のアセスメント
4●遂行機能のアセスメント
D.認知リハビリテーションと看護師の役割
1●認知リハビリテーションとは
2●認知リハビリテーションにおける看護師の役割
3●行動障害への認知リハビリテーション
4●注意力障害への認知リハビリテーション
5●記憶障害への認知リハビリテーション
6●遂行機能障害への認知リハビリテーション
7●心理的なケア
E.家族への支援
F.高次脳機能障害者の職業リハビリテーション
2.言語機能障害を有する人への看護
A.コミュニケーションとは
1●コミュニケーション
2●言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーション
B.言語機能
1●大脳と言語野
2●言語機能の障害
C.失語症の理解と基本的なリハビリテーション
1●失語症
2●言語機能とコミュニケーション能力の評価
3●言語機能再獲得のためのリハビリテーション
4●コミュニケーションの方法
D.言語機能障害のアセスメントと看護援助
1●アセスメント・評価を活用したコミュニケーション方法の実際
2●コミュニケーションの受け手・送り手としての能力を高める方法
3●コミュニケーションを促進する工夫
4●生活を支える援助
5●言語機能の回復・改善を促す援助
6●回復過程における患者理解と援助
3.身体運動機能障害を有する人への看護(脳卒中・脊髄損傷)
A.運動障害とは
1●運動麻痺
2●運動失調
3●不随意運動
4●筋緊張異常
B.脳血管障害とは
1●脳血管障害の分類
2●脳血管障害の病態
3●機能障害
C.脳血管障害による運動障害に対するリハビリテーション看護
1●急性期
2●回復期
3●維持期
D.脊髄損傷とは
1●脊髄損傷とは
2●脊髄損傷による機能障害の発生メカニズム
3●脊髄損傷の症状
4●脊髄損傷の評価
5●治療およびリハビリテーション
E.脊髄損傷の回復過程別にみた看護
1●急性期
2●回復・慢性期
4.発達障害を有する子どもへの看護
A.障害を有する子どもとリハビリテーション
1●身体障害を有する子ども
2●発達障害を有する子ども
B.障害を有する子どものリハビリテーションにかかわる基本的考え方
1●療育の概念と早期療育の重要性
2●多職種連携による継続した支援
3●本人の意思とQOL
C.障害が子どもの発達に及ぼす影響と援助の基本
1●知的障害の場合
2●運動障害の場合
3●感覚器の障害の場合
4●発達障害の場合
D.障害を有する子どものニーズ
1●生じやすい健康問題
2●日常生活の自立・自律
3●自我発達とセルフケア
E.障害を有する子どもの家族の特徴と支援
1●障害を有する子どもの家族支援の基本
2●障害を有する子どもの家族の反応
3●家族の関係性と支援
4●専門職との良好な関係
5●家族のよりよい意思決定へ向けての支援
F.発達段階の視点からみた発達障害を有する子どもの支援
1●乳幼児期
2●学童期-青年期
5.循環機能障害を有する人への看護(心筋梗塞を中心に)
A.心筋梗塞とは
1●心筋梗塞後の患者の心肺機能の変化と活動への影響
2●急性心筋梗塞患者の特徴
B.心筋梗塞患者へのリハビリテーション
1●急性期リハビリテーション
2●回復期リハビリテーション
C.急性期から回復期における患者教育
1●疾患や症状を理解するための支援
2●身体や生活に対する患者の関心に即した患者教育の必要性
3●患者教育において考慮すべきこと
D.入院中における看護の展開
1●病状の理解について
2●心の状態について
3●活動の状態について
6.摂食・嚥下障害を有する人への看護
A.摂食・嚥下障害とは
B.摂食・嚥下のメカニズム
C.摂食・嚥下障害の原因
1●器質的障害
2●機能的障害
D.摂食・嚥下障害を有する人への看護
1●ゴール設定
2●経口摂取の開始基準
3●リスク管理
E.摂食・嚥下障害のアセスメント
1●問診
2●視診、触診、聴診
3●検査法
F.嚥下障害を有する人への看護―間接訓練と直接訓練
1●間接訓練
2●直接訓練
7.排泄機能障害を有する人への看護
A.排泄とは
B.排尿障害の理解
1●正常な排尿のしくみ
2●排尿障害の原因
3●神経因性膀胱による排尿障害の症状
4●機能的な排尿障害の症状
C.排尿障害をもつ人のリハビリテーション看護
1●排尿障害のアセスメント
2●看護の実際
D.排便障害の理解
1●正常な排便のしくみ
2●排便障害の原因
3●排便障害で起こる症状
E.排便障害を有する人のリハビリテーション看護
1●排便障害のアセスメント
2●看護の実際
第VII章 リハビリテーション看護における倫理的諸問題
A.看護の倫理とリハビリテーションにおける看護の専門性
1●看護の専門性
2●看護実践に関連する道徳的概念とリハビリテーション看護
B.リハビリテーション看護における倫理的葛藤および倫理的問題
1●リハビリテーション看護における倫理的葛藤
2●患者の尊厳とリハビリテーション看護
C.リハビリテーション展開のための倫理的問題
第VIII章 リハビリテーション看護のシステム化と発展を目指して
1.場に応じたチームビルディング
1●チーム医療とは
2●チームの形成
3●協働の基盤となる体制づくり
4●チームの成熟
2.療養の場の移行に伴う看護の継続
A.リハビリテーションを行う場
B.場の移行に伴う看護の継続
1●対象者や家族への援助
2●次の療養の場への引き継ぎ
C.看護の継続の評価
3.地域リハビリテーションの理念と社会の変革
A.地域リハビリテーションのあるべき姿
B.地域リハビリテーションとは
1●地域リハビリテーションの定義と活動指針
2●CBRとは
3●ノーマライゼーションからソーシャルインクルージョンへ
C.地域リハビリテーション推進システム
D.地域リハビリテーションを具現化するには
4. リハビリテーション看護の現状と課題
A.オーストラリアにおけるリハビリテーション看護の現状と課題
1●リハビリテーション看護師スペシャリスト
2●高齢化社会とリハビリテーション看護
B.日本におけるリハビリテーション看護の現状と課題
1●リハビリテーション看護の変遷
2●リハビリテーション看護の現状と課題
付録
付録1 評価スケール
付録2 身体の関節運動と可動域
付録3 自助具・補助具一覧
索引
いつも、どこかに、戦争で傷つく人々がいます。さまざまな国で災害が発生し、被災者が助けを求めています。アジア諸国は、急速に高齢社会へとシフトしながらも、社会のシステムは追いついていません。人間は常に病とともにあり、結果として病にともなう生活機能障害は、人類にとって切っても切れない深い関係のものとなっています。今も昔も、世界中で看護とリハビリテーションが必要とされているといえます。そして、これからもっと必要とされるようになるでしょう。この本を読もうとしている皆さんにまずそのことを伝えたいと思います。現代社会で看護職という職業を選択するということは、“障害をもつ人”と“リハビリテーション”について考え続けることでもあるのです。
ナイチンゲールは、「病は回復過程である」と言いました。ヘンダーソンは、「看護独自の機能は、病人であれ、健康人であれ、各人が、健康あるいは健康の回復(あるいは平和な死)に資するような行動をするのを助けることである。この援助はその人ができるだけ早く自立してできるように仕向けるやり方で行う」と説明しました。つまり看護は、常にリハビリテーションという考え方を実践に包みこんで行われてきました。
リハビリテーションが対象とする人は、障害をもった人々です。障害をもった人々が、勇気と信頼を携えて、その後の人生という旅をその入らしく歩んでいくことができるように、障害とともに生きるためのさまざまな知恵とスキルと態度を身につけることを、チームで支援する活動がリハビリテーションです。
しかし、一方で、リハビリテーションという用語は、さまざまな場所で、さまざまな人が、いろいろな意味で使っています。たとえば、「リハに行ってくる」という言葉ひとつにしても、それは理学療法士などとともに行う本格的な運動練習を指す場合もあれば、患者1人でも行うことができるような、たとえば散歩のような簡単な運動のことを指す場合もあります。その意味合いは広範にわたり、何を指して“リハビリテーション”または“リハビリテーション看護”というのか、保健・医療・介護において必ずしも共有されていないという問題があります。このことが、リハビリテーションに携わる看護師たちに、自分の行う実践の専門性とその領域について、あいまいさあるいは疑念を起こさせることにもつながります。これは常に悩ましい問題です。「リハビリテーションにおける看護の役割ってなんだろう」「看護師は何を期待されているのだろうか」と自分たちの活動を振り返っては考え、振り返っては考え、それでも明確な答えは簡単に出るものではありません。
そこで、こう見方を変えてはいかがでしょうか。すなわち、看護師が、障害をもつ人の「問題点」を数えるのではなく、むしろ障害をもつ人の「強さ」と「可能性」を信頼することに重きをおく専門職であり、その点にこそ看護師の大きな“強み”があると考えるのです。「強さ」と「可能性」への信頼は、自分にとっての相手が、また相手にとっての自分が、互いに“唯一無二の存在である”という関係性を築きうる重要な働きかけです。そのような医療従事者‐患者間の好ましい信頼関係の構築は、とくに看護師が果たしうる特徴的な価値であるといえます。この看護師の役割に気づくことができれば、リハビリテーション看護は、障害をもつ人にとっても、看護職者にとっても、魅力とやりがい、また達成感に満ちた意義深い活動となります。リハビリテーション看護の感動は、人間の強さと成長の可能性を目の当たりにし、障害をもつ人との相互作用によって、看護師自らも成長することを実感できるところにあります。
“リハビリテーション看護”とは、“健康な生活”という視点から、障害をもった人の可能性を見出し、困難に満ちているかもしれない人生の長い旅を支え続ける活動です。長期間の視野に立つ、また生活機能障害をもつ人の日常生活に添った援助というためには、ただ単に“リハビリテーション”という言葉では足りず、やはり“リハビリテーション看護”という観点が欠かせません。本書は、看護学を学ぼうとしている皆さんに、“看護”だけではなく、また“リハビリテーション”だけではなく、“リハビリテーション看護”の本質を伝えたいとの思いに貫かれています。以下、その特長を紹介します。
本書の特長
まず、リハビリテーションとリハビリテーション看護に関する考え方をしっかりと学び、看護師らしく考えるための基礎を確認しましょう(第I章)。また、リハビリテーション看護が、近年、学問・理論の領域においても大きな進歩を遂げていることをふまえ、学問的基盤に立脚して日々の看護援助を創造するために必要な重要概念・理論の理解に重点をおきました(第II章・第III章)。さらに、リハビリテーション看護は、生活機能障害を有する人のQOL (Quality of Life)を向上するという具体的な目的を有する活動です。そして“Life”とは、生命・生活・人生を含む包括的な概念です。つまり看護師は、“生命レベル”では廃用を予防し、“生活レベル”ではその人の活動を促進し、“人生レベル”では社会への参加を促進する、という多くの役割があります。それらのさまざまな看護援助を創造するための基本的な考え方と知識を理解しておく必要があります(第IV章)。
リハビリテーションの過程は、障害をもつ人の自然回復力を最大限引き出し、その回復過程に当事者が適応していくように援助する過程です。ひとりの看護師が当事者の回復過程のすべてにかかわることはありませんが、それぞれの回復過程には必ず看護職者がかかわっています。そのため看護師は、リハビリテーションにおける一連の回復過程を理解しておくことが大切です(第V章)。また、多様な生活機能障害への援助を実践的に考えていくことができるように、代表的な生活機能障害を挙げ、その具体的な援助方法を解説しました(第VI章)。
リハビリテーション看護は、倫理的実践である必要があります。倫理的感受性を磨くためには、リハビリテーション看護に特有の倫理的課題を検討することが役に立ちます。本書で紹介する具体的な問題を材料に、場面を想像しながら、自分がとるだろう行動などを考えてみるのもよいかもしれません(第VII章)。なお、最後に、質の高いリハビリテーション看護活動を保証していくための、今後の教育や管理のありかたについても言及しています(第VIII章)。
以上の内容は、国内外の研究者と実践者が総力を挙げて執筆し、また編集作業を行い、実現したものです。気鋭の研究者と豊かな経験を有する実践者のコラボレーションも本書の大きな特長であり魅力となっています。
皆さんは、これから本書という地図を片手にリハビリテーション看護の探求の旅に出かけるのです。思いつくまま歩き回ることも楽しいでしょう。あるミッションを達成するためにこの本を開くときもあるかもしれません。探している答えがなければ、文献リストを参考に、さらなる探求の旅に出てください。本書は、かなり役立つガイドブックになることでしょう。しかし、旅をするのは皆さん自身です.
2010年4月
酒井郁子
金城利雄