看護学テキストNiCE
看護関係法規
看護職の責任と法的根拠を学ぶ
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 田中幸子/野村陽子 |
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ISBN | : 978-4-524-24576-5 |
発行年月 | : 2020年11月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 324 |
在庫
定価2,530円(本体2,300円 + 税)
正誤表
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2023年12月08日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
看護師免許をもつ教員らによる、“看護師に必要な関係法規”を看護の立場から解説したテキスト。法や制度の成立過程やその意義、看護職や看護実践にどのように関わるのかを解説している、これまでにない構成が特徴。
第I章 看護関係法規を学ぶにあたって
1 なぜ看護に関する法規を学ぶのか
A どのようなことが法令で決められているのか
B 看護関係法規を概観してみよう
C 制度はどのように変わるのか
D 看護関係法規を楽しく学ぶ
2 法および関連する規範の概念
A 社会規範と法
B 法の種類
C その他の規範
D 医療の現場における法や規範と日常業務
3 社会の基盤にある法・制度
A 少子化社会対策基本法
B 高齢社会対策基本法
C 個人情報の保護に関する法律
第II章 医療提供体制の基本となる法・制度を理解する
1 医療提供体制に関する法・制度を理解する
A 医療法と医療提供体制の変遷
B 医療法
2 医療従事者の身分・業務に関する法・制度を理解する
A 保健師助産師看護師法の制定までの経緯
B 保健師助産師看護師法
C その他の医療職・関連職種の身分法
D 看護師等の人材確保の促進に関する法律
3 社会保険制度に関する法・制度を理解する
A 医療保険制度
B 診療報酬制度
C 健康保険法
D 国民健康保険法
E 高齢者の医療の確保に関する法律(旧老人保健法)
4 臓器移植法および人の死に関する法・制度を理解する
A 臓器の移植に関する法律
B 人の死に関する法律:死体解剖保存法
第III章 薬剤に関する法・制度を理解する
1 医薬品の取り扱いに関する法・制度を理解する
A 医薬品医療機器等法(旧薬事法)
B 麻薬及び向精神薬取締法
C 覚醒剤取締法
D 毒物及び劇物取締法
E 看護師が医薬品を取り扱うにあたって
2 薬害被害者の救済に関する法・制度を理解する
A 薬害と被害者の救済
B 健康被害救済制度
第IV章 地域で看護を提供する際に必要な法・制度を理解する
1 訪問看護に関する法・制度を理解する
A 訪問看護制度
B 介護保険制度
C 訪問看護に関連する看護職以外の資格制度
2 健康の保持・増進に関する法・制度を理解する
A 保健とは
B 地域保健法
C 母子保健法
D 母体保護法
E 健康増進法
F 感染症法
G 予防接種法
H 学校保健安全法
I 自殺対策基本法
J アルコール健康障害対策基本法
3 疾病対策に関する法・制度を理解する
A がん対策基本法
B 肝炎対策基本法
C 難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)
D アレルギー疾患対策基本法
E 健康寿命の延伸等を図るための脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(脳卒中・循環器病対策基本法)
4 社会保障・社会福祉制度を理解する
A 社会保障の成立と展開
B 社会福祉に関する法・制度の概要
C 障害者福祉に関する法・制度
D 子ども・家庭の福祉に関する法・制度
E 女性の福祉に関する法・制度
F 公的扶助(生活保護)
G 高齢者に関する法律の主な内容
5 災害時の医療に関する法律
A 災害対策基本法
B 防災基本計画
第V章 労働者として労働に関する法・制度を理解する
A 労働基準法
B 労働契約法
C 労働安全衛生法
D 労働者災害補償保険法
E 雇用保険法
F 育児・介護休業法(育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)
G 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
H 職場におけるハラスメント
I 働き方改革関連法
第VI章 看護の臨床業務と法・制度の関わりを知る
1 看護業務に関係する法規を理解する
A 法的責任の種類
B 看護業務における法的責任の具体例
2 臨床で重要となる法判断−裁判例を通して考える
A カルテ改竄
B 無資格者による診療を補助する行為の範囲
C 無資格者による「診療の補助」が違法となる条件
D モニター機器のアラーム対応における注意義務
第VI章 看護政策と立法
A 政策とはなにか
B 政策過程
C 立法過程
D 看護制度・看護政策と参加者(アクター)
付録
付録1 練習問題
付録2 看護関係法令集
保健師助産師看護師法
保健師助産師看護師法施行令
保健師助産師看護師法施行規則
保健師助産師看護師法学校養成所指定規則
看護師等の人材確保の促進に関する法律
刑法
練習問題 解答と解説
索引
はじめに
看護師になりたい、看護を学びたいと思っているのに、なぜ「法律」や「制度」を学ばなければならないのかと疑問に思い、難しそうだと敬遠されるかもしれない。
しかし、患者の生命・身体・心に関わる仕事をする看護職にとって、法律はなくてはならないものである。例えば、看護師は医師の指示に基づいて患者に注射を実施するが、注射は基本的に危険な行為であり一般の人には認められていない。看護師は、保健師助産師看護師法で認められている診療の補助行為として、注射を実施している。したがって、“患者・地域の人々を護りたい”のであればこそ、法律の理解が必要となる。さらに、その法律がどのような意義・理念を持ち、どのように制定・改正され、看護にどのように関わってくるのかがわかると面白いと感じるのではないだろうか。そしてその法律が、本当に“患者・地域の人々を護る”法律になっているのかどうかを考えることがさらに関心を高めることになるだろう。筆者は“患者・地域の人々を護る”ために、看護職は声を出し、社会に働きかけていくことによって社会全体の看護の質の向上につながっていくと考えている。
本書は、看護職が中心になって作成した看護に関係する法規(以下、看護関係法規)についてまとめたテキストである。読者が法律や制度を身近なものと感じ学んでもらえるよう、以下のような構成・内容としている。
第I章は、看護関係法規がどのように現実の看護に関わっているのか概観したうえで、法や規範の概念や、基盤となる法・制度について解説している。第II章では、まず医療提供体制の基本となる法律について医療制度の成り立ち・法改正のプロセスを含めて説明し、現在の保健師助産師看護師法の立法過程を述べたうえで看護職の職種や業務等がどのように規定されているのかを解説している。また、戦後から続いた看護職不足を背景に看護職の人材確保・質の向上を理念として制定された看護師等の人材確保法を解説した。第III章は、看護職に身近な薬剤に関する法律や、薬害被害者の救済に関する法・制度を紹介している。第IV章では、近年ますます重要となっている地域で看護を提供する際に必要な法・制度について制度の成立過程や背景、制度改正の経緯を説明し、制度の重要性を理解できる内容としている。第V章は、これから社会人となる看護学生が、労働者としての自分の権利と義務を自覚し、活き活きと働き続けられるよう看護労働の歴史を盛り込みながら労働に関する法律について解説している。第VI章では、現実の看護業務に関わる看護師の法的責任について説明し、チーム医療における医療過誤事件に遭遇した場合の看護師としての行動を学習できるようにしている。臨床実習における看護学生の法的責任のコラムを通して、実習に出る前の心構えや責任を学んでいただきたい。最後に第VII章では具体的な政策過程を図説し、患者の代弁者・アドボケーターとしての看護職の政策的な思考の重要性を解説している。
本書を活用していただき、看護に関する法・制度と政策により関心を深めていただくことを期待したい。
2020年9月
田中幸子
野村陽子