看護学テキストNiCE
病態・治療論[6] 血液・造血器疾患改訂第2版
![病態・治療論[6] 血液・造血器疾患改訂第2版](https://d1gwi3e1mfwx7l.cloudfront.net/img/goods/L/9784524213979.jpg)
編集 | : 小川吉明/横田弘子 |
---|---|
ISBN | : 978-4-524-21397-9 |
発行年月 | : 2025年7月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 240 |
定価2,750円(本体2,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文

専門基礎分野において疾病の病態・診断・治療を学ぶためのテキストシリーズ(全14冊)の血液・造血器疾患編の改訂版.医師と看護師の共同編集により,看護学生に必要な知識を網羅.さまざまな症状を理解できる,診断の進め方・考え方がわかる,臨床看護に結びつく知識が得られる,の3点を重視して構成している.今改訂では各種情報を更新したほか,血液・造血器疾患の治療を受ける患者への看護を概説する項目を追加した.
目次
序章 なぜ血液・造血器疾患について学ぶのか
1 医師の立場から
2 看護師の立場から
第T章 血液・造血器の機能と障害
1 血液の構造と機能
1 血液とは何か
2 血液細胞の形態と機能
A.末梢血に含まれる血液細胞
B.赤血球
C.白血球
D.血小板
2 造血のしくみ
1 骨髄の構造と機能:造血の場所
A.血液細胞はどこでつくられるか?
B.骨髄の構造
C.血液産生のホメオスタシス
D.血液細胞はどのようにつくられるか? 幹細胞の分化と自己複製
E.骨髄に含まれる血液細胞
F.髄外造血
2 血液細胞の産生と造血因子:造血の調節
3 ヘモグロビンの生成と代謝:赤血球産生の材料
4 まとめ
3 血液・造血機能の異常と症状
1 赤血球の異常と症状
2 白血球の異常と症状
3 血小板の異常と症状
4 骨髄の異常と症状
第U章 血液・造血器疾患の診断・治療
1 血液疾患の主な症状と診断・治療
1 貧血
2 紫斑・止血困難(出血傾向)
3 リンパ節腫大
4 脾腫
5 発熱
2 血液・造血器の検査
1 末梢血検査
2 血小板・凝固機能の検査
3 生化学検査
4 免疫機能検査
5 染色体・遺伝子検査
コラム▶がんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査
6 骨髄検査
7 リンパ節生検
8 画像診断
3 血液・造血器疾患の治療
1 化学療法
もう少しくわしく▶急性白血病における化学療法の注意点
2 分子標的治療薬
コラム▶分子標的治療薬の問題点
3 CAR–T細胞療法
4 免疫抑制療法
5 輸血
6 放射線療法
7 造血幹細胞移植
8 よく使用される薬剤
A.制吐薬
臨床で役立つ知識▶予測性嘔吐の予防
B.造血因子薬
C.鉄剤・ビタミンB12製剤
D.鉄キレート薬
4 血液・造血器疾患の治療を受ける患者の看護
1 血液・造血器疾患の主な症状に対する看護
1–1 貧血のある患者の看護
1–2 出血傾向のある患者の看護
2 血液・造血器疾患の主な治療における看護
2–1 がん薬物療法を受ける患者の看護
2–2 輸血を受ける患者の看護
2–3 造血幹細胞移植を受ける患者の看護
3 血液・造血器疾患の治療を受ける患者の意思決定支援
3–1 診断時の意思決定支援
3–2 造血幹細胞移植の意思決定支援
3–3 再発時の意思決定支援
3–4 ベスト・サポーティブ・ケアへの意思決定支援
第V章 血液・造血器疾患 各論
1 貧血性疾患
1 鉄欠乏性貧血
2 再生不良性貧血
3 腎性貧血
4 溶血性貧血
5 巨赤芽球性貧血
6 血球貪食症候群
2 白血病と骨髄増殖性疾患
1 急性白血病
2 骨髄異形成症候群
3 慢性骨髄性白血病
4 真性赤血球増加症(真性多血症)
5 原発性骨髄線維症
3 リンパ・免疫系疾患
1 悪性リンパ腫
2 成人T細胞性白血病/リンパ腫
3 多発性骨髄腫
コラム▶サリドマイドと薬害
4 ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症
5 アミロイドーシス
4 出血性疾患
1 免疫性血小板減少症
2 血栓性血小板減少性紫斑病と溶血性尿毒症症候群
2-1 血栓性血小板減少性紫斑病
2-2 溶血性尿毒症症候群
3 播種性血管内凝固症候群
5 小児に特有な血液・造血器疾患
1 小児急性白血病
2 原発性免疫不全症候群
2-1 重症複合免疫不全症(SCID)
2-2 X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)
2-3 ウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)
2-4 慢性肉芽腫症(CGD)
2-5 原発性免疫不全症候群の患児とその家族への教育・注意点
3 先天性再生不良性貧血
3-1 ファンコニ貧血(FA)
3-2 先天性角化不全症(DKC)
3-3 ダイアモンド・ブラックファン貧血(DBA)
3-4 先天性再生不良性貧血の患児とその家族への教育・注意点
4 血友病
5 フォンウィルブランド病
主な略語一覧
【はじめに】(序文)
血液疾患の診療には最新の生物学的知見や技術革新が導入されやすく,診療体系の進化が著しい領域です.新たな診断法や新薬開発も進んでおり,これらの最新情報を収集し理解したうえで実践することには多大な時間と労力を必要とします.
今回,2019年に出版された初版の全項目に関して情報更新し,改訂第2版を出版しました.「第U章 血液・造血器疾患の診断・治療」では,初版以降に改訂されたガイドラインに準じた情報更新や,皆さんに知ってほしい情報を「コラム」や「もう少しくわしく」「臨床で役立つ知識」で紹介するなど,幅広くこの分野に興味を持っていただけるような工夫も試みています.最新の治療法として分子標的治療薬やCAR-T細胞療法の項目を追加し,より充実した構成となっています.また,臨床現場で活躍する看護師の力を借りて,「第U章4節 血液・造血器疾患の治療を受ける患者の看護」を追加しました.血液領域での代表的な看護の実際を示すことで看護師の役割に対するイメージを助け,理解してもらうことを目指しています.第V章の疾患各論では,成人領域だけでなく,小児科医師により小児特有な血液・造血器疾患のうち代表的な疾患も解説いただいています.
本書は,臨床現場で活躍する医師と看護師が中心となって,血液疾患の病態,検査値の示す意味,診断から治療などを分かりやすく解説しています.血液疾患をもつ患者への看護を学ぶ導入編として,どの診療科にも共通する普遍的な知識も含め,血液疾患の特殊性を学ぶことのできる教材です.
患者を中心としたチーム医療を円滑に進めるために,看護師の果たす役割はとても大きいです.患者にいちばん近い存在である看護師には,患者の変化にいち早く気づき,心身の苦痛を緩和することなどが求められることも多いと思います.
医師が患者と対座して医療を提供する存在であるのに対し,看護師は患者と並座してケアを提供する存在で,患者に寄り添うという言葉に代表されるように,常に患者の立場に立ち,患者を支えることが求められる存在であると考えます.そのときに本書で学んだことを役立てていただければ幸いです.
本書は医学的にみても看護学的にみても,実践的かつ教育的に必要な内容がわかりやすく解説されています.臨床現場において活躍されている方々のご尽力によりでき上がりました.この場を借りて,各執筆者に深くお礼を申し上げます.
2025年4月
編集者を代表して
小川 吉明
【初版の序】
血液疾患の多くは稀少疾患であり,総合病院であっても血液疾患の診療を行っていない病院も多い.それにもかかわらず,看護師が血液疾患について学ぶことの意義は何だろうか.
血液は全身を巡り,すべての臓器への酸素供給,栄養供給,ホルモン・サイトカインの運搬を行っており,生体を病原微生物やがんなどから守り,止血・線溶機構により循環系を維持している.このことから血液疾患では全身のさまざまな症状を引き起こす.また同時に多くの臓器疾患が血液に異常をきたす原因となり,貧血,易感染性,出血傾向などの血液症状を引き起こす.したがって血液疾患の病態生理を理解することは看護の基礎知識となる.
一方で,血液疾患の診断・治療法は専門性の高いものが多く,初学者には敷居が高く感じられることも事実である.化学療法,輸血療法,感染症治療,緩和療法などは臨床腫瘍学に必須の知識である.また科学の進展を反映して,診断法,治療法が目まぐるしく変化している.たとえば,分子生物学の成果である分子標的治療により悪性腫瘍の予後が著しく改善している.幹細胞生物学の成果である造血幹細胞移植は再生医療の成功例となっている.分子標的治療も再生医療も未来の医学を先取りした治療法である.これらの医療は専門家によるチームワークなくして成功しない.患者を中心としたチーム医療を円滑に行う上で看護師の果たす役割は大きい.
『ケアの本質』(ミルトン・メイヤロフ著,ゆみる出版,1987)では知識に関して次のように記載されている.「誰かをケアするためには,私は多くのことを“知る”必要がある.たとえば,その人がどんな人なのか,その人の力や限界はどれくらいなのか,その人の求めていることは何か,その人の成長のたすけになることはいったい何なのか,などを私は知らねばならない.そして,その人の要求にどのようにこたえるか,私自身の力と限界がどのくらいなのかを私は知らねばならない」.
本書で学ぶ知識はケアを行う看護師が必要とする知識のごく一部であるが,必須の知識でもある.本書ではこれらの知識を理解し身につけやすいように,図を多用することをはじめとして多くの工夫が取り入れられている.医療技術の進歩と看護の心をどのように融和させることができるのか.本書が新しい時代の看護師の要望に応えることができれば幸いである.
2019 年4 月
編集者を代表して
安藤 潔
