看護学テキストNiCE
病理学
編集 | : 鈴木貴/菅野恵美 |
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ISBN | : 978-4-524-21025-1 |
発行年月 | : 2025年8月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 272 |
在庫
定価3,300円(本体3,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文

看護学生にとって難解なイメージのある病理学を丁寧にわかりやすく解説した教科書.臓器の違いを越えて共通にみられる病因や疾患の成り立ちに関する知識 (総論)を軸に章立てし,個別の疾患に関する解説も適宜盛り込み構成.病理医と看護師との共同編集により,看護の臨床業務との関連性を意識した内容とした.各章冒頭の導入文では,病理学の知識を身近な医学・医療の題材にからめて解説.図や組織写真,学生の興味を惹くコラムも多数掲載.
序章 病理学を学ぶにあたって
1 病理学とは
A 病理学はどのような学問か
B 医療における病理学の役割
C 病理診断
2 病気とその原因
A 病気とは
B 病因とは
C 内因
D 外因
3 職業病,医原病,公害病
A 職業病
B 医原病
C 公害病
T章 細胞・組織の異常と再生・修復
1 細胞とは
A 核
B ミトコンドリア
C 細胞骨格
2 組織
A 組織とは
B 上皮組織
C 結合組織
D 筋組織
E 神経組織
F 器官・器官系・個体
3 細胞の増殖
A 細胞周期
B 細胞増殖能の病理学的評価
4 細胞の傷害
A 変性とは
B 石灰沈着(石灰化)
C 色素沈着
5 細胞死
A 壊死とは
B アポトーシス
C オートファジー細胞死
6 傷害に対する適応現象
A 萎縮
B 肥大,過形成
C 化生
7 再生と修復
A 再生
B 再生医療とは
C 組織の修復
8 DNAの傷害と修復
A DNAの傷害
B ミスマッチ修復機構
C 相同組替え修復
D ゲノム編集と遺伝子療法
U章 炎症
1 炎症とは
A 炎症の基本病変
B 炎症の4徴候
C 炎症の経過
D 炎症を持続させる原因
E 炎症にかかわる細胞
F 炎症の原因
2 炎症の分類・種類
A 経過による分類
B 性質による分類
3 さまざまな器官の炎症
A 皮膚・粘膜
B 呼吸器
C 消化器
D 循環器
E 脳・神経
F そのほか
G 炎症が全身にもたらす影響
V章 免疫のしくみと異常
1 免疫のしくみと種類
A 自然免疫
B 獲得免疫
2 免疫機能の障害
A アレルギー
B 免疫不全
C 自己免疫疾患
D 臓器移植と副作用
E 再生医療と副作用
W章 感染症
1 感染/感染症
A 感染/感染症の成立
B 病原体の種類
2 感染の成立にかかわる要因
A 感染源
B 感染経路
C 宿主の生体防御機構
3 感染の発生,経過のメカニズム
A 症状の発生メカニズム
B 外来微生物の体内における拡がり
C 感染後の経過
4 感染に対する生体防御機構
A 上皮組織による防御
B 抗原非特異的生体防御機構(自然免疫)
C 抗原特異的生体防御機構(獲得免疫)
5 感染症の現状
A 新興感染症および再興感染症
B 輸入感染症
C 院内感染または医療関連感染
X章 循環障害
1 循環/循環障害とは
A 循環系の働き
B 循環障害とは
2 充血とうっ血
A 充血
B うっ血
C うっ血に関する病態・疾患
3 浮腫
A 浮腫とは
B 浮腫(水腫)の原因
C 滲出液と漏出液
4 出血と凝固
A 出血
B 凝固
C 出血・凝固に関連する病態・疾患
5 血栓・塞栓
A 血管の構造
B 血栓
C 塞栓
D 血栓・塞栓に関連する病態・疾患
6 虚血・梗塞
A 虚血
B 梗塞
C 虚血・梗塞に関連する病態・疾患
7 血圧の異常
A 血圧の調節機構
B 高血圧症
C 低血圧症
D 血圧の異常に関連する病態・疾患
Y章 代謝異常・栄養障害
1 代謝および代謝異常・栄養障害とは
A 代謝とは
B 代謝異常・栄養障害とは
2 各種の代謝異常と疾患
A 脂質代謝に関連する疾患
B 糖代謝に関連する疾患
C タンパク代謝に関連する疾患
D 核酸代謝に関連する疾患
E ビリルビン代謝に関連する疾患
F 骨代謝に関連する疾患
G 結石
3 代表的な栄養障害
A 肥満
B ビタミンと関連する疾患
C ミネラルと関連する疾患
Z章 生活習慣および外的要因による生体への影響
1 外因とは
A 栄養
B 物理的因子
C 化学的因子
D 生物学的因子
2 日常生活・生活習慣が生体に及ぼす影響
A 食生活と関連する疾患
B 飲酒と関連する疾患
C 喫煙と関連する疾患
D 身体活動と関連する疾患
E 睡眠と関連する疾患
F ストレスと関連する疾患
3 外的要因が生体に及ぼす影響
A 中毒
B 放射線障害
[章 先天異常
1 遺伝の働き
A 遺伝子
B セントラルドグマ
C 染色体
D 遺伝子変異
2 先天異常とは
A 染色体異常
B 遺伝子異常
C 外因による先天異常
\章 腫瘍
1 腫瘍とは
A 腫瘍の定義
B 腫瘍の分類と命名法
C 腫瘍の肉眼的性状
D 腫瘍の組織学的性状
2 腫瘍の生物学
A 腫瘍の原因
B DNAの修復機構
C 癌遺伝子と癌抑制遺伝子
D 腫瘍免疫
3 腫瘍の臨床病理
A 異型とは
B 腫瘍の診断
C 悪性腫瘍の特徴
D がんの病期分類
E 前がん病変
F 家族性腫瘍
G 腫瘍マーカーとリキッドバイオプシー
4 腫瘍の治療戦略
A 外科的切除
B 放射線治療
C 薬物療法
D コンパニオン診断
E がんゲノム医療・遺伝子パネル検査
F CAR-T細胞療法
G がん予防のための生活習慣
]章 老化と死
1 老化とは,死とは
A 生理的老化
B 病的老化
C 老化の4原則
D 個体の死
2 老化のメカニズム
A プログラム説
B エラー蓄積説
3 老化に伴う細胞・組織・臓器・機能の変化
A 老年症候群と廃用症候群
B フレイル,サルコペニア,ロコモティブシンドローム
C 組織の変化
病理学は「やまい(病)のことわり(理)」を知る学問で,形の変化を通して病気の本質を明らかにします.基礎医学に分類されますが,患者の病名確定や治療の効果判定など,医療の現場においても大変重要な役割を担っています.看護師として働く際は,病気や医療行為を科学的に理解するうえで病理学の知識が不可欠です.この度,看護基礎教育における専門基礎科目の1つとして,菅野恵美教授と共同で本書を編集できたことは大きな喜びです.
一般に病理学は「総論」と「各論」で構成されています.「各論」とは臓器ごとに病気を知るもので,肺では肺炎や肺がん,胃なら胃炎や胃がん,などと勉強していきます.一方,「総論」は病気の本質を臓器横断的に体系化したものです.たとえばがんは肺にも胃にも起こりますが,そもそもがんはどのようにして起こるのか,どのように診断されるかなどを学びます.病気の世界を1枚の布と考えると,「総論」と「各論」は縦糸と横糸のような関係です.このうち本書は「総論」に相当します.各論は「看護学テキストNiCEシリーズ」の病態・治療論の各巻に含まれますので,本書と合わせて勉強することで,病気がより深く理解できると思います.
病理学の総論は臓器を超えて病気の本質を記載するため,どうしても抽象的になりやすく,勉強していても実感が湧きにくいと感じるかもしれません.実は学生時代の編者がそうでした.そこで当時の自分を思い返し,皆さんが自然と夢中になって読み進めながら病理学を理解できるように,以下の点に気を配り編集しました.@まず各章の冒頭に導入を設け,身近な医学・医療の話題に絡めながらその章の全体像をわかりやすく概説しました.Aまた病理学を理解するうえで基礎となる知識を適宜解説する一方,側注を積極的に用いて用語の説明を充実させました.Bさらに,豊富な図とともに組織写真は解説を充実させ,イメージを掴みやすいようにしました.C加えて,「コラム」「臨床で役立つ知識」「もう少しくわしく」「トピックス」「看護の視点から」といった記載を多く載せ,病理学のおもしろさや一歩深い内容,看護師が臨床の現場で役立つような知識を充実させました.
本書は看護教育はもちろん,多くの医療系学生に役立つような内容となっています.本書を通して病理学の楽しさ,奥深さを少しでも皆様にお伝えできればと心から願っています.
2025年6月
鈴木 貴
