臨床雑誌整形外科≪月刊≫
次世代を拓く整形外科教育(Vol.77 No.6)2026年5月増刊号
- 主要目次
- 序文

特集 次世代を拓く整形外科教育
●編集にあたって 松田秀一
�T章.整形外科の専門医教育
1.教育なくして未来なし―整形外科医の使命 河野博隆
2.整形外科専門医制度の現在と未来 渡辺雅彦
3.次世代を拓く小児整形外科教育の実践 ―日本小児整形外科学会教育研修会の歴史とその役割 小林直実
4.骨・軟部腫瘍の教育と専門医育成 松本誠一
5.外傷なき大学病院の“罪” ―専門分化の影で進行する整形外科基盤教育の空洞化 渡部欣忍
�U章.診療教育
1.臨床推論能力の向上のために ―整形外科臨床推論教育における仮説駆動型身体診察(HDPE)の実装 山内かづ代
2.診察手技教育 中嶋啓文
3.運動器エコーの教育について―さまざまな試みの紹介 藤原憲太
4.外科医のノンテクニカルスキル 石堂敬太
5.医療現場におけるアンガーマネジメントの基礎 蓮沼直子
�V章.手術手技教育
1.Cadaver surgical trainingの有用性 清水淳也
2.当科における脊椎内視鏡外科医の育成に関する取り組み 高見正成
3.マイクロサージャリーの教育 工藤俊哉
4.外傷教育におけるTraumaVisionの有用性 千田鉄平
5.人工膝関節手術支援ロボットNAVIO/CORIとマニュアル手技を併用した手術手技と手術教育 和田佳三
6.複合現実を用いた高機能膝関節鏡シミュレーター 村津裕嗣
7.Augmented Realityナビゲーションを用いた手術手技教育 下村聖一郎
8.ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を用いた整形外科教育 上野雅也
�W章.身につけておくべき基本的知識
1.医療専門職のためのリベラルアーツ教育 藤垣裕子
2.整形外科医のための保険診療入門 城戸優充
3.整形外科医への医療安全教育 内山勝文
4.放射線被曝に関するリスクマネジメント 大野和子
5.書類における医療倫理 ―診断書など日常診療での困りごと 冨士武史
�X章.教育環境・支援体制
1.若手医師が求める働きやすい環境と教育体制づくり 酒井政彦
2.若手医師のメンタルヘルスケア 長崎一哉
3.次世代を拓くメンターシップを考える ―わが国の文化的背景をふまえて 片山皓太
4.整形外科医のジェンダーバイアスとキャリア形成 桑沢綾乃
5.働き方改革に対する取り組み 青木秀之
�Y章.業務効率化
1.整形外科診療補助・医師教育アプリ「Medeco Pro」がもたらす業務効率化 ―外来・病棟・手術準備の“探す/計算する/伝える”を短縮 北原貴之
2.働き方改革時代の生成AI活用 香田将英
3.加速するIT社会における医師のツール活用の現状と未来 阪本将輝
4.SNSの有効利用・注意点 河井利之
�Z章.学会発表・論文作成
1.医師のためのビジュアルプレゼンテーション 宮本俊之
2.生成AI時代の論文解読 ―若手臨床医のための「論文読解with AI」入門 中島誉也
3.統計解析での生成AI活用 ―できること,気をつけること 立森久照
4.生成AIを用いた英語医学論文の書き方 押味貴之
5.生成AIと論文執筆―適切な活用法と注意点 吉田和生
�[章.キャリアアップ
1.整形外科医が研究・開発をめざすとき 齋藤 琢
2.整形外科医の行政出向という選択肢 本間康弘
3.海外留学のすすめ 山本哲也
4.海外で整形外科医として働くということ 長井 肇
5.米国における整形外科医のリーダーシップ教育 ―American Orthopaedic Association(AOA)の体系とその特徴 長嶺里美
6.大学および大学病院におけるリーダーシップ教育の取り組み 上條由美
●編集後記
特集 次世代を拓く整形外科教育
■ 編集にあたって
医療の高度化と社会構造の変化が加速する現代において,整形外科領域における教育のあり方は大きな転換期を迎えています.少子高齢化に伴う疾患構造の変化,医療デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展,さらにはジェンダーや働き方改革に象徴される価値観の多様化など,従来の教育モデルのみでは十分に対応しきれない課題が顕在化しています.こうした時代にあって,整形外科はこれまで以上に教育に力を注ぎ,将来を見据えた人材育成に主体的に取り組む必要があります.とりわけ重要なのは,卒後教育にとどまらず,医学部学生の段階から整形外科の魅力と社会的役割を的確に伝え,早期から教育に関与していく姿勢です.運動器医療の重要性を広く認識してもらうとともに,臨床・研究・社会貢献を担う人材の裾野を広げることが,今後の発展に直結すると考えられます.
整形外科は,急性期から慢性期,予防から再建,さらには運動器リハビリテーションにいたるまで幅広い領域を担う総合的専門分野です.その教育には,臨床能力や手術技術の習得に加え,論理的思考力,倫理観,チーム医療への理解,さらには人工知能(AI)を含むデジタル技術の活用といった新たな能力の涵養が求められています.また,エビデンスに基づく医療を実践するための研究マインドの醸成や,国際的な視野をもつ人材育成も重要です.さらに,教育を担う側の役割も変化しています.指導医や教育者には,知識や技術の伝達にとどまらず,キャリア形成の支援やメンタルヘルス・働き方への配慮を通じて,多様な人材が力を発揮できる環境整備が求められています.
本特集号では,「次世代を拓く整形外科教育」というテーマのもと,専門医制度,診療教育,手術トレーニング,AI・デジタル技術の活用,キャリア支援,リーダーシップなど,多角的な視点から整形外科教育の現在と未来を俯瞰したいと考えました.本書の刊行にあたり,全国の第一線でご活躍され,整形外科教育に深い見識と豊富な経験を有する先生方にご執筆をお願い申し上げました.ご多忙の中,快くお引き受けいただきました先生方に,この場をお借りして心より御礼申し上げます.
本書が,日々の診療と教育に携わる整形外科医の皆様に新たな視点と示唆をもたらし,次世代の整形外科医育成に資する一助となることを願っております.
京都大学整形外科教授
松田秀一


