臨床雑誌整形外科≪月刊≫
変形性関節症の診断と治療―保存的治療から再生医療まで(Vol.74 No.6)2023年5月増刊号

- 主要目次
- 序文

特集
変形性関節症の診断と治療―保存的治療から再生医療まで
●編集にあたって 安達伸生
Ⅰ章.変形性関節症に関する基礎研究
1.変形性関節症の疫学 吉村典子
2.変形性膝関節症の痛みの発生機序 阿漕孝治
3.変形性関節症の原因遺伝子研究―現状と今後の課題 池川志郎
4.変形性関節症の分子機構 味八木 茂
5.変形性関節症のバイオマーカー 森田充浩
Ⅱ章.変形性脊椎症関連
1.椎体終板障害と腰痛 山田清貴
2.腰椎椎間関節障害と椎間関節変性のメカニズム 中村孝幸
3.成人脊柱変形の病態と治療 有馬秀幸
Ⅲ章.変形性肩関節症
1.変形性肩関節症に対する保存的治療 高瀬勝己
2.変形性肩関節症に対する鏡視下手術 菅谷啓之
3.変形性肩関節症に対する解剖型人工肩関節置換術 伊﨑輝昌
4.Cuff tear arthropathyに対するリバース型人工肩関節置換術 海江田英泰
Ⅳ章.変形性肘関節症
1.変形性肘関節症に対する鏡視下関節形成術 富田一誠
2.変形性肘関節症における支援ナビゲーションシステム 岡 久仁洋
3.変形性肘関節症に対する人工肘関節全置換術 伊藤 宣
Ⅴ章.手関節および手指の変形性関節症
1.母指手根中手関節症に対する装具療法 佐々木秀一
2.鏡視手術を併用した第1中手骨外転対立位骨切り術 松田匡弘
3.Ligament reconstruction suspension arthroplasty 村岡邦秀
4.母指手根中手関節症に対する関節固定術の手術術式 服部泰典
Ⅵ章.変形性股関節症
1.変形性股関節症のバイオメカニクス 東藤 貢
2.変形性股関節症の危険因子と歩行特徴 稲井卓真
3.変形性股関節症の画像診断(X線像,CT,MRIなど) 帖佐悦男
4.変形性股関節症に対するジグリングを中心とした保存的治療 古市州郎
5.変形性股関節症に対する関節温存手術 ―大腿骨骨切り術の適応 森谷光俊
6.変形性股関節症に対する骨盤骨切り術 安永裕司
7.変形性股関節症への進展を予防するための股関節鏡視下手術(関節唇損傷,大腿骨寛骨臼インピンジメント) 村田洋一
8.若年者セメントレス人工股関節全置換術の長期成績と問題点 松原正明
9.人工股関節全置換術のコンピュータ支援手術(ナビゲーション,ロボット) 髙尾正樹
Ⅶ章.変形性膝関節症
1.縦断的疫学研究からみた早期変形性膝関節症の発症・進行の危険因子 佐々木英嗣
2.力学的な病態解明に迫る歩行中に生じる半月板逸脱の動態解析 石井陽介
3.変形性膝関節症診療ガイドラインからみた保存的治療 遠山晴一
4.変形性膝関節症に対する多血小板血漿(PRP)療法 齋田良知
5.変形性膝関節症に対する鏡視下手術 ―半月板切除術の有効性 落合聡司
6.変形性膝関節症に対するaround knee osteotomy(AKO)
―変形解析とsingle-photon-emission computed tomography/CTから考える使い分け 齊藤英知
7.変形性膝関節症治療における単顆型人工膝関節置換術 浜口英寿
8.変形性膝関節症に対する人工膝関節全置換術(ロボット以外) 道下和彦
9.変形性膝関節症に対する人工膝関節全置換術(ロボット手術) 石田一成
10.変形性膝関節症の発症・進行予防の可能性 ―滑膜幹細胞移植による半月板の再生医療 大関信武
Ⅷ章.足関節・足部の変形性関節症
1.変形性足関節症の保存的治療 木村 正
2.変形性足関節症に対する鏡視下デブリドマン 萩尾友宣
3.変形性足関節症に対する低位脛骨骨切り術 原口直樹
4.変形性足関節症に対する足関節固定術と人工足関節置換術 黒川紘章
5.変形性距骨下関節症 今出真司
6.Lisfranc関節症 嶋 洋明
7.強剛母趾 秋山 唯
●編集後記
■編集にあたって
現在の日本は少子・超高齢社会です.今後も経済活動の担い手である労働人口が減少し,支援や介護を必要とする高齢者が増加すると予想されており,経済へのマイナス負荷が増加し,経済が縮小,社会保障制度の破綻が危惧されています.高齢化の要因の一つに医療技術の進歩,革新がありますが,平均寿命のみならず健康寿命の延伸が重要です.つまり,支援や介護を必要とせず今まで以上に現役で活躍できる期間を延ばし,活動的で元気な高齢者が長く経済活動を行い,未来の日本を支えるしくみをつくらなくてはいけません.
要支援・要介護となってしまう原因のうち,関節疾患を中心とする整形外科疾患が重要であることは言うまでもありません.特に加齢を基盤として発症する変形性関節症(OA)は高齢者の運動器疼痛や機能障害をもたらし,患者の日常生活動作(ADL)を障害するとともに生活の質(QOL)を著しく低下させる,整形外科の日常診療でもっとも一般的な疾患です.OAを有する患者さんのQOLを維持・増進するためには,OAの正確な病態の把握,早期診断,適切な治療選択が必要であり,これらの研究を推進することはわれわれ整形外科医の使命でもあります.
OAに対する基礎研究,臨床研究は日々すすんでおりますが,その範囲は広く,全体像を把握することは容易ではありません.基礎研究ではOAの疫学,疼痛のメカニズム,原因遺伝子研究,分子メカニズム研究やバイオマーカー研究,OA関節のバイオメカニズム研究などが精力的に行われています.治療においては,保存的治療,骨切りなどの関節温存手術,人工関節から再生医療まで行われますが,適切な時期に各部位別のOAに関する知識をアップデートし,日常診療に還元する必要があります.
本特集「変形性関節症の診断と治療―保存的治療から再生医療まで」では,OAの疫学,痛みの発生機序,原因遺伝子や分子メカニズムなどの基礎研究から脊椎や各関節の部位別,病態別にOAに関する診断,治療における最新の研究成果まで,各領域のエキスパートの先生方に解説いただきました.OAの病態から再生医療を含めた治療まで広く網羅する内容となっております.すべての執筆者の先生方に厚く御礼を申しあげるとともに,本書が読者の皆様の明日からの診療の一助になることを強く祈念しております.ぜひご一読ください.
広島大学整形外科教授 安達伸生
