臨床雑誌外科≪月刊≫
消化器外科手術 術中・術後トラブルシューティング(Vol.87 No.5)2025年4月増刊号
私ならこうする!

- 主要目次
- 序文

特集 消化器外科手術術中・術後トラブルシューティング 私ならこうする!
●編集にあたって 山下裕玄
T.食 道
1.右胃大網動静脈を誤認によって切離した場合のリカバリー 橋本貴史
2.反回神経損傷時に対する術中・術後のリカバリーショット 森 和彦
3.胃切除後食道癌の術中・術後トラブルシューティング 八木浩一
4.気管・気管支を損傷した場合,どのようにリカバリーする? 石山廣志朗
5.下肺静脈への浸潤が疑われる症例―どのように攻める? 損傷した場合のリカバリーは? 大塚耕司
6.再建胃管壊死,診断と再手術のタイミング―その後のリカバリーは? 小柳和夫
7.術後膜様部穿孔をどのようにリカバリーするか? 木村和恵
U.食道胃接合部癌
1.食道にも胃にも広く浸潤する腫瘍であった場合,胃管再建? 食道亜全摘胃全摘? 坊岡英祐
V.胃
1.門脈・脾静脈からの出血―どのようにリカバリーする? 胃癌手術:門脈・脾静脈からの出血に対するリカバリーと注意点 木下敬弘
2.食道空腸吻合の際に食道粘膜下層にステープラが誤挿入―どうリカバリーする? 稲木紀幸
3.中下縦隔での安全な食道切離・吻合 奥村慎太郎
4.十二指腸断端が迅速診断で陽性―どこまで追加切除を行う? 山下裕玄
5.デルタ吻合で吻合径が小さくなってしまった―どのようにリカバリーする? 江原 玄
6.膵体尾部合併切除時の幽門側胃切除―蛍光イメージングで確実な極小残胃温存を 伊藤 直
W.病的肥満症
1.腹腔鏡下スリーブ状胃切除―術中の想定外の事象とそのリカバリー 網木 学
X.大 腸
1.尿路系への浸潤があった場合の準備と対応 諏訪宏和
2.骨盤内操作中の不測の出血(動脈・静脈)―どうリカバリーする? 横山康行
3.予定していた腸管吻合.いざ吻合しようと思ったが,腸管が届かない.どうリカバリーする? 鏡 哲
4.直腸癌術後の縫合不全―腟瘻,尿道瘻を合併した場合,どうリカバリーする? 小練研司
Y.急性虫垂炎
1.妊婦の急性虫垂炎に対する手術の留意点 宮成信友
Z.肝 臓
1.肝静脈・下大静脈からの出血―開腹肝切除における対処法の基本と応用 林 洋光
2.腹腔鏡下肝切除での不測の出血―どう考えどう対応するか? 浅野大輔
3.門脈圧亢進症を伴う場合の肝切除―準備と出血時の対応 湯川恭平
4.下大静脈に進展する肝癌に対する外科治療―肝切除およびtotal hepatic vascular exclusionを用いた下大静脈アプローチ 桐谷 翔
5.ロボット肝切除における術中出血および胆汁漏のマネジメント 贄 裕亮
6.肝切除術中の門脈血流低下,門脈屈曲に対してどう考えどう対応するか? 木村七菜
7.肝切除後の門脈血栓―その診断と対応 山本葉一
8.術後胆汁漏―次の一手は? 有田淳一
[.胆 道
1.術中迅速診断で胆管断端が陽性―どう対応するか? 藤澤将大
2.肝門部胆管癌の切除後に再建すべき胆管が多数―どう対応するか? 渡辺伸元
3.右胃大網動脈グラフトによる冠動脈バイパス後の開腹手術―術前準備と術中対策 酒井健司
4.腹腔鏡下胆摘時の胆管損傷―どのようにリカバリーする? 川本裕介
5.高度炎症でcritical view of safetyの成立がむずかしい症例の安全な攻め方と回避手術への移行の判断 梅澤昭子
\.膵 臓
1.低侵襲膵切除での不測の出血―どう考えどう対応するか? 池永直樹
2.重度膵液漏の予測と至適対策 渡邉元己
3.ロボット支援膵切除でのトラブルシューティング 末松友樹
4.変異右肝動脈を有する患者での膵頭十二指腸切除―安全な攻め方と術中対策 加藤宏之
5.膵切離断端が術中迅速診断で陽性の場合の対応 百瀬博一
6.外傷性膵損傷―どう考えどう対応するか 安藤恭久
].脾 臓
1.腹腔鏡下脾臓摘出時の不測の出血―予防法と対処法 三澤健之
編集にあたって
以前は,外科研修を専攻した医師は手術の手ほどきをアッペ,ヘルニア,ヘモで受け,胆囊摘出,エルステマーゲン(はじめての胃切除術),大腸手術と幅広い領域に手を広げていく流れであった.鏡視下手術,ロボット支援下手術が普及している昨今はこの流れと異なり,アッペも交叉切開ではなく初回から腹腔鏡下手術ということも増えてきた.しかし,初期に経験できる手術手技が変化しても,手術経験を積み重ねて習熟していくという過程は昔も今も共通しているかと思う.
一方で,ある程度手技に慣れて,おおよそその手技ができる自信が得られつつある時期に,外科医の意欲を削いでしまうような大きな合併症を経験し,気持ちが挫けて弱気になってしまう症例もあるのではないか.術後合併症だけでなく,術中に想定外の事態となって“ヒヤっとする”シーンもある.そういった時にどのように対応するか.未然にトラブルを回避できるようにするためのポイントがあるのか.本特集号は,多くのトラブルシューティングをエキスパートの先生方の経験をもとにわかりやすくまとめた解説書になっている.
是非知っておきたい要点,実際の手技やその選択背景を含めて,外科研修プログラムで研鑽を積まれている先生だけでなく,多くのベテラン外科医にとっても読みごたえのある一冊になっているかと思う.本特集号が多くの先生方にとって参考となり,ひいては患者へ最適な医療を提供する一助となることを心より願っている.
日本大学消化器外科教授
山下裕玄
