教科書

薬学生のためのヒューマニティ・コミュニケーション学習

編集 : 小林静子/江原吉博
ISBN : 978-4-524-40251-9
発行年月 : 2009年7月
判型 : A4
ページ数 : 242

在庫あり

定価3,240円(本体3,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

薬学教育モデルコア・カリキュラムにおいて重視されている、ヒューマニズム、コミュニケーション教育のための教科書。慶應義塾大学薬学部の教育体系・実績に基づいた実践的な構成。グループワーク対応(グループワークなしでも利用可能)。「読んで・ワークして・体得するシステム」を教科書において実現させ、薬学教育における少人数グループワーク等の学習形式をリードする一冊。

第1章 ヒューマニティ・コミュニケーションの学習方法
 1 参加型学習の方法について
   (1)少人数グループ学習とは?
   (2)ワークショップとは?
   (3)問題に基づく学習(PBL)とは?
   (4)症例に基づく学習(CBL)とは?
   (5)その他の授業方法
    a.バズ・グループ
    b.フィッシュ・ボウル
    c.ロールプレイング
 2 情報源と情報の確かさ
   (1)学術情報と非学術情報
   (2)情報の入手
   (3)インターネット上の情報検索
   (4)インターネット上の情報の特徴
   (5)インターネット上で信憑性の高い情報を見極めるために
  
第2章 プレゼンテーション力を高めよう!
 1 プレゼンテーション力とは?
  ◆STEP1 プレアンケート
  ◆STEP2 アイスブレーキング(他己紹介)
  ◆STEP3 スモールグループディスカッションに挑戦
  ◆STEP4 グループ発表
  ◆STEP5 プレゼンテーションで何を学ぶか
   (1)プレゼンテーション(紹介、披露、発表、提示)の語源
   (2)プレゼンテーションを聞き手に対するプレゼントだと仮定してみよう
   (3)他己紹介もプレゼンテーション
   (4)プレゼンテーション力とは?
    a.問題提議力(驚く力)
    b.内容発想力(アイディエーション)
    c.構成力(シナリオ構築力)
    d.伝達力(デリバリー)
 2 自分の大学を高校生に紹介しよう!
  ◆STEP1 KJ法でメッセージをつくる
   (1)KJ法の進め方
   (2)KJ法のメリット
   (3)実際にKJ法を使ってメッセージをつくり上げてみましょう
  ◆STEP2 プレゼンテーションにトライしてみよう!
  ◆STEP3 よいプレゼンテーション、ありがちなプレゼンテーション
  ◆STEP4 構成力と伝達力を考える
   (1)構成力-逆三角形型で構成しよう!
   (2)伝達力-非言語的メッセージを有効に使おう!
 3 プレゼンテーションに挑戦!
  ◆STEP1 ブレインストーミングでアイデアを出し、マインドマップをつくってみよう
   (1)ブレインストーミングとは?
   (2)ブレインストーミングに挑戦してみよう!
   (3)グループディスカッション
   (4)マインドマップとは?
   (5)マインドマップにまとめてみよう
  ◆STEP2 これから取り組むプレゼンテーションのテーマを決定し、論点の討議
  ◆STEP3 中間発表
  ◆STEP4 最終発表準備
  ◆STEP5 最終発表と評価
  ◆STEP6 フィードバック授業(総評)
  ◆STEP7 ポストアンケート
第3章 患者の気持ち、患者の家族の気持ちに配慮する
 1 患者およびその家族の手記を読む
  ◆STEP1 手記を読んで、グループ討論する手記を選択する
    手記:
     会いたかった-代理母出産という選択-(向井亜紀著)
     1リットルの涙-難病と闘い続ける少女亜也の日記-(木藤亜也著)
     神様がくれたHIV(北山翔子著)
     脳死ドナーとなった息子よ
     美しいままで-オランダで安楽死を選んだ日本女性の「心の日記」-(ネーダーコールソン靖子著)
  ◆STEP2 読後レポートをグループ内で発表しよう
  ◆STEP3 グループとしての考えをまとめる
  ◆STEP4 成果の発表
  ◆STEP5 他のグループの発表を聴いて評価してみよう!
 2 患者の気持ちになってみよう
  ◆STEP1 患者の手記から患者心理を学ぶ
   (1)病気による喪失体験
   (2)防衛機制
   (3)死にいたる心理的プロセス
  ◆STEP2 イメージワークの実施
  ◆STEP3 チェックリストの実施と解説
    a.自己抑制型行動特性尺度
    b.自己価値感尺度
    c.情緒的支援認知尺度
    d.問題解決型行動特性尺度
  ◆STEP4 イメージワーク後のグループディスカッション
  ◆STEP5 フィードバック授業
   (1)保健信念モデル
   (2)変化のステージモデル
  
第4章 コミュニケーション力を高めよう!
 1 薬剤師に求められるコミュニケーションとは?
  ◆STEP1 患者・薬剤師のそれぞれの立場に立ってみる
  ◆STEP2 患者役と薬剤師役を体験する
  ◆STEP3 グループで理想の対応を考える
  ◆STEP4 理想の対応について発表する
  ◆STEP5 模擬患者さんに薬剤師として対応してみる
 2 コミュニケーションの基礎を学ぶ
  ◆STEP1 患者と薬剤師の病気の捉え方の違いを考える
   (1)痛くても「痛い」といわない“がん”患者
   (2)薬を飲み残す理由
   (3)情報収集・提供の視点
  ◆STEP2 コミュニケーションの阻害要因
   (1)コミュニケーションの構成要素
   (2)コミュニケーションを阻むもの
  ◆STEP3 患者が安心して自分の病と向き合えるコミュニケーションとは?
   (1)患者が安心して自分の病と向き合えるコミュニケーションとは?
   (2)沈黙のゲーム
  ◆STEP4 質問方法を学ぶ
   (1)閉じた質問
   (2)開いた質問
   (3)閉じた質問と開いた質問の長所と短所
   (4)相手の理解度を確認する質問
  ◆STEP5 相手の話を受け止める聴き方-傾聴とは?
   (1)人は相手が話すようには、相手の話を受け取れない
   (2)傾聴とは?
   (3)傾聴のメリット
   (4)傾聴にトライしてみよう!
  ◆STEP6 ビデオを観て学んだことを復習しよう
 3 相手も尊重した自己主張の仕方-アサーション-
  ◆STEP1 アサーションとは?
   (1)「がまんする」vs.「攻撃する」 あなたはどっち?
    a.攻撃的な対応
    b.非主張的な対応
    c.アサーティブな対応
  ◆STEP2 アサーションにトライ!
  ◆STEP3 アサーションのポイント
 4 集団の中で多様な価値観に触れてみる-ワールドワークにトライ!
  ◆STEP1 課題シートを読んで、自分なりの選択肢とその選択理由を考える
  ◆STEP2 ワールドワークの実施
  ◆STEP3 自分の考えの変遷を見つめる
  
第5章 「生と死」について考える
 1 患者や医療者の話を聞く
  ◆STEP1 「生と死」に関するVTRをみて、感想文を書く
  ◆STEP2 「生と死」に関する医療者の体験に基づく講演を聞いて、感想文を書く
 2 「生と死」に関わる問題を学ぶ
  [1] 生殖医療における諸問題について学習する
  [2] 妊娠中絶(出生前診断と選択的中絶)について学習する
   (1)法律上の問題
   (2)出生前診断と選択的中絶
  [3] 難病告知について学習する
   (1)難病告知の問題
   (2)難病告知の問題-末期と難病
   (3)末期患者の心の揺れ(死へのプロセス)
  [4] 終末期医療・緩和ケアについて学習する
   (1)終末期の定義
   (2)終末期医療の問題
   (3)安楽死の問題
   (4)安楽死の判例
   (5)終末期医療の法制化・指針・事前指示
   (6)緩和ケア・ホスピスケア
  ◆STEP5 脳死と臓器移植について学習する
   (1)脳死と臓器移植
   (2)臓器提供の条件
   (3)臓器移植の問題点-将来の移植iPS細胞
 3 「生と死」に関わる課題について討論する
  ◆STEP1 「生と死」に関わるテーマの選択
  ◆STEP2 選択したテーマの論点を考える
  ◆STEP3 選んだテーマの論点について討議する
  ◆STEP4 論点の中間発表・まとめ
  ◆STEP5 成果の最終発表と評価
   (1)成果の発表
   (2)他のグループの発表を聞いて評価をしよう!
  ◆STEP6 フィードバック講義
  ◆STEP7 「生と死」に関わる問題に対する自分の考えをレポートとしてまとめよう
  
第6章 医療の担い手としてのこころ構え
I 医療者の倫理的義務を知ろう
 1 医療の目的と倫理
  [1] 医療の目的
    a.予防とは
    b.治療とは
    c.QOLとは
    d.延命
  [2] 医療と倫理の関係
 ◆補習授業 倫理学の理論
  [1] 倫理的判断の根拠とは
  [2] 3つの倫理理論とその原理
    a.帰結主義
    b.義務論
    c.徳倫論
  [3] 倫理理論、医療現場のルール、現場の判断と行動
 2 医療者の倫理規範と義務
  [1] 医療の担い手
  [2] 薬剤師の法的義務
  [3] 医療の担い手の倫理規範と義務
    a.臨床において守らなければならないルール
    b.研究において守らなければならないルール
 3 インフォームド・コンセント
  [1] インフォームド・コンセントの定義と歴史
    a.第1期:同意取得義務
    b.第2期:説明義務
    c.第3期:説明義務の範囲
  [2] インフォームド・コンセントの要件とその免除
  [3] インフォームド・コンセントの倫理的根拠
  [4] 薬剤師とインフォームド・コンセント
    a.医薬品の情報提供
    b.治療におけるインフォームド・コンセント
 4 守秘義務
  [1] 守秘義務とは
  [2] 現代医療と守秘義務
  [3] 自己情報コントロール権
 5 ディスカッション1:HIV感染者のパートナーへの通知
  フォローアップ:パートナーへの通知の条件
 6 スキル・アップ:倫理的問題に対処するための道具と使い方を学ぼう
  [1] 倫理的問題に対処するための2つの道具
    a.道具1 医療倫理の4原則
    b.道具2 臨床倫理検討法
  [2] 道具の使い方
    a.道具1 医療倫理の4原則
    b.道具2 臨床倫理検討法
II 倫理的問題に対処する方法を身につけよう
 1 がん告知をめぐる倫理的問題
  ●考えるために必要な知識
  [1] 真実告知に対する伝統的な考え方
  [2] 患者に真実を告知する根拠
  [3] 真実告知の例外
  [4] フォローアップ:家族への説明
 2 生活習慣病をめぐる倫理的問題
  ●考えるために必要な知識
  [1] コンプライアンスとは?
  [2] 医師・患者関係のモデル
    a.パターナリズム・モデル
    b.審議モデル
    c.解釈モデル
    d.情報提供モデル
  [3] 薬剤師とコンプライアンス
    a.解釈モデルによる説明(例)
    b.審議モデルによる説明(例)
 3 出生前診断をめぐる倫理的問題
  ●考えるために必要な知識
  [1] 出生前診断とは?
  [2] 出生前診断の倫理的問題
  [3] 選択的中絶について
  [4] 優生学について
 4 治療の不開始と中止をめぐる倫理的問題
  ●考えるために必要な知識
  [1] 延命治療の不開始や中止をめぐる問題
  [2] 治療の不開始・中止の法的要件
  [3] 治療の不開始・中止の倫理的要件
  [4] 治療の不開始・中止についてのガイドライン
  [5] 患者の意思が確認できない場合
 5 ディスカッション2:未成年者の宗教上の理由による輸血拒否
  
付録
ヒポクラテスの誓い
世界保健機構(WHO)憲章
ヘルシンキ宣言
WHO緩和ケアの定義
  
あとがき
索引

皆さんは「薬学教育モデル・コアカリキュラム」という6年制薬剤師養成教育のためのカリキュラムをご存知でしょうか?(名称が長いので本書では「コアカリ」と記述します)。皆さんが実際にこれから学ぶ、あるいは、すでに学んでいる教育の70%がこのコアカリに沿って行われています。コアカリは薬剤師養成教育のスタンダードを示したもので、日本中、どこの薬科大学・薬学部の学生も学習するためのカリキュラムということになります。
 コアカリのトップに挙げられている科目が「A 全学年を通して:ヒューマニズムについて学ぶ」です。このカリキュラムは、社会のニーズに応えた、患者さんを中心にした医療に必須なもので、6年制薬剤師養成教育の根幹をなすものとして、掲げられています。その一般目標(GIO)は、              
 「生命に関わる職業人となることを自覚し、それにふさわしい行動・態度をとることができるようになるために、人との共感的態度を身につけ、信頼関係を醸成し、さらに生涯にわたってそれらを向上させる習慣を身につける」
 とあります。その内容は、(1)生と死(2)医療の担い手としてのこころ構え、(3)信頼関係の確立を目指して、の3つに分類された40項目の到達目標(SBOs)からなっています。6年間を通してコミュニケーション、生命倫理、医療倫理についての40項目の到達目標(表1)を学習します。1つひとつの到達目標をみるとその多くは知識ではなく、たとえば「患者の心理状態を把握し、配慮する」のように態度を身につける学習が多くなっています。このような態度を身につける学習は、今までの4年制の薬学教育にはなかったものです。
 これらの答えのない、自ら考えて、それを習慣にするような内容の学習は、従来の知識詰め込み型の学習方法では身につかず、少人数グループ学習を基本とした、能動型・参加型学習方法がよいとされています。それではどのような方法でグループ学習を展開したらよいでしょうか。本書では、私たちが3年間にわたって実施した学習方法をもとに、さらに内容をブラッシュアップして展開しています。授業構成もITスキル,プレゼンテーション、コミュニケーション、生命倫理、医療倫理などのコアカリと実務実習の事前学習(D)に掲載されている内容を統合した形で、立体的、効果的に学習できるように工夫しました。授業は、少人数グループ学習を基本としていますが、グループの人数が多くても対応できるようにしました。
 本書では、皆さんがグループワークによって「人のいのち」に関わる倫理的知識・態度について、人としての常識のレベルから徐々に医療人へと流れをもって学べるようになっています。本書の目指すところは、皆さんが習得した知識・態度を4年次以降で学ぶ臨床の場に生かすことにあります。私たちは、皆さんが、患者さんに優しい、患者さんの役に立つ薬剤師になるための教科書であることを願って、作成しました。
2009年5月
慶應義塾大学薬学部
SGL委員会 小林静子