書籍

Gayet腹腔鏡下肝胆膵手術(DVD付)

ムービーでみる局所解剖

: 石沢武彰/Brice Gayet
ISBN : 978-4-524-26966-2
発行年月 : 2012年10月
判型 : A4
ページ数 : 190

在庫僅少

定価23,760円(本体22,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

世界最高峰の技術を持つGayet教授(パリ大学)の腹腔鏡下肝胆膵手術を、約30術式、5時間のDVDに収録。各術式は細かい手技単位で見たい部分の頭出しが可能であり、加えて術式を横断して手技別に検索する機能も有する。Gayet教授のもとで学んだ著者が、手術のポイントを日本の外科医向けに詳細に書籍で解説する。鮮やかな局所解剖は必見で、すぐに開腹手術に応用可能。鏡視下解剖を熟知し高度な手術技能を会得するための必携書。

準備編
(1)手術適応の決定
  A.適応決定の原則
  B.腹腔鏡手術の禁忌
(2)医療機材とセットアップ
  A.必要な医療材料・医療機器
  B.手術室のセットアップ
(3)基本手技
  A.トロカールの配置
  B.鉗子操作の基本
  C.縫合法
  D.助手、看護師との連携

実践編
1.肝
  ■肝切除のための外科解剖
  ■肝切除の基本的事項
  A.部分切除
   [1]S6の楔状切除
(1.肝切離線の決定、2.肝離断、3.静脈性出血への対応、4.肝離断の終了)
   [2]S8の半球状切除
    ●右肝を授動する場合
(1.肝切離線の設定、2.半球状の肝離断、3.圧迫による止血)
    ●経胸腔アプローチを用いる場合
(1.経胸腔トロカールの挿入、2.切離線の設定、3.肝離断、4.閉創)
  B.左葉(S2+S3)切除
   [1]肝胃間膜を切離する場合
(1.肝胃間膜の切離、2.S3とS4を架橋する肝実質の切離、3.横隔膜面の肝離断、4.左冠状間膜の切離、
5.S3グリソンの剥離、6.S3グリソンの切離、7.S2グリソンの切離、8.LHVの同定、
9.LHVの切離、10.左三角間膜の切離)
   [2]肝胃間膜を温存する場合
(1.S3グリソンの切離、2.S2グリソンの切離、3.LHVの切離)
  C.左肝(S2+S3+S4)切除(尾状葉温存)
(1.左肝の授動、2.肝門剥離、3.肝離断、4.LHVの切離/肝切除の終了、
5.左肝管の小孔の縫合閉鎖、6.胆嚢切除と標本の摘出)
  D.右肝(S5+S6+S7+S8)切除
   [1]前方アプローチ
(1.右肝の授動、2.RPVの同定/切離、3.肝門板の剥離/IOUSによる右肝管同定、4.RHAの切離、
5.右肝管の剥離/切離、6.右冠状間膜の切離、7.肝離断、8.RHVの切離、9.右肝の後腹膜からの剥離)
   [2]後方アプローチ
(1.肝門剥離、2.右肝の授動、3.肝離断、4.RHVの切離)
   [3]右肝管の縫合閉鎖
(1.B1と右外側領域肝管の切離、2.右外側領域肝管とB1の縫合閉鎖)
  E.S1切除
(1.肝胃間膜の切離、2.尾状葉の授動、3.左側下大静脈靱帯の切離、4.LHV/MHV根部の剥離、
5.IVC前面の剥離層の確認、6.S1グリソンの切離、7.V1の切離、8.肝離断、
9.IVC壁の合併切除、10.IVC壁の縫合閉鎖)
  F.S2切除とS3切除
   [1]S2切除
(1.IOUS、2.LHVに沿った肝離断、3.S2グリソンの切離、4.肝左葉の授動、
5.LHVの同定と露出、6.V2の切離、7.標本摘出)
   [2]S3切除
(1.S3グリソン根部の剥離、2.S3グリソンの切離、3.虚血域に沿った肝離断、4.V3の切離)
  G.S4a切除とS4b切除
   [1]S4a切除
(1.肝鎌状間膜に沿った肝離断、2.門脈臍部の基部から分岐するグリソンの切離、3.LHV-MHV合流部の露出、
4.S4a/4b境界の離断、5.S4aグリソンの切離、6.MHV周囲の剥離、7.V4aの切離)
   [2]S4b切除
(1.S4bグリソンの同定、2.S4bグリソンの切離、3.MHV左側の肝離断、4.V4bの切離、
5.S4a/4b境界の肝離断)
  H.S5切除とS6切除
   [1]S5切除
(1.MHV右側に沿った肝離断、2.IOUSを用いた切離線の確認、3.S5/6境界の肝離断、4.肝門板に向かう離断、
5.S5グリソンの切離、6.V5の切離、7.RHV左側の肝離断)
   [2]S6切除
(1.右肝の授動、2.RHVに沿った切離線の設定、3.RHV右側の肝離断、4.S6、S7グリソンの確認、
5.S6グリソンの切離、6.虚血域に沿った肝離断)
  I.S7切除とS8切除
   [1]S7切除
(1.癒着剥離と右肝の授動、2.右副腎の剥離、3.経胸腔トロカールの挿入、4.下大静脈靱帯の切離、
5.RHV根部の剥離、6.IOUS、7.RHV右側の肝離断、8.S7グリソンの切離、9.RHVに沿った肝離断
   [2]S8切除
(1.トロカールの挿入、2.肝十二指腸間膜のテーピング、3.右肝の授動、4.経胸腔トロカールの挿入、
5.RHV根部の剥離、6.下大静脈靱帯の切離、7.IVC前面の剥離、8.RHVのテーピング、
9.IOUS、10.MHVに沿った切離線の設定、11.RHVに沿った肝離断、12.S8グリソンの切離、
13.RHVに流入するV8の切離、14.MHV周囲の剥離、15.MHVに流入するV8の切離、16.切除後の肝離断面)
  J.右外側領域(S6+S7)切除
(1.Rouviere溝の剥離/P6のクリッピング、2.右肝の授動、3.P6の切離、4.肝離断、
5.肝離断の終了、6.肝管断端の縫合閉鎖)
  K.中央二区域(S4+S5+S8)切除
(1.肝門剥離、2.左側、背側の肝離断、3.右傍正中領域グリソンの剥離/切離、4.MHVの切離、
5.RHV根部の剥離/RHVに流入するV8の切離、6.右側の肝離断、7.肝離断の終了)
  補 静脈性出血への対応
(1.切除側のRHVからの出血、2.温存側のMHVからの出血、3.V8-MHV合流部の損傷、
4.短肝静脈からの出血、5.Pringle法)
2.胆道
  ■胆道手術のための外科解剖
  ■胆道手術の基本的事項
  A.胆嚢摘出
(1.Calot三角の剥離/胆嚢底部の剥離、2.IOUS、3.胆道造影用カテーテルの挿入、4.術中胆道造影、
5.IOUSによる再確認/胆嚢管の切離)
  B.総胆管切開切石
(1.IOUS、2.胆嚢管の切開、3.胆道鏡下切石、4.肝内胆管の観察/総胆管結石の再検索、5.総胆管の縫合閉鎖)
  C.拡大左肝(S1+S2+S3+S4)切除
(1.前回手術創とトロカールの配置、2.癒着剥離、3.IOUS、4.肝動脈の剥離、
5.前回の胆管-空腸吻合部の切離、6.LHAの切離、7.尾状葉の授動/左肝の授動、8.LPVの切離、
9.V1の切離/短肝静脈の切離、10.CHD背側のRHA剥離、11.肝離断(1)、12.右肝管の切離、
13.肝離断(2)、14.LHVの切離、15.胆道再建:右肝管の形成、16.胆道再建:肝管-空腸吻合)
  D.拡大右葉(S1+S4+S5+S6+S7+S8)切除
(1.肝十二指腸間膜の剥離、2.#8aリンパ節の郭清、3.S4グリソンの同定、4.肝十二指腸間膜の郭清/RHAの切離、
5.CBDの切離、6.RPVの切離、7.肝離断、8.左肝管の切離、9.肝門板頭側の肝離断/LHV根部の剥離、
10.尾状葉の授動、11.主肝静脈間の剥離、12.MHVの切離、13.右側下大静脈靱帯の切離/RHVの切離、
14.標本切除の完了)
  補 ICGを用いた蛍光胆道造影法
(1.胆嚢摘出術における蛍光胆道造影、2.肝離断面からの胆汁漏の同定)
3.膵
  ■膵切除のための外科解剖
  ■膵手術の基本的事項
  A.膵体尾部切除
   [1]脾動静脈を切離する場合
(1.網嚢の開放と膵下縁の切離、2.LGEVの温存、3.膵後面の剥離、4.SMA左側神経叢の切離、
5.膵背側のトンネリング、6.膵上縁の処理、7.膵離断、8.SVの切離、9.膵上縁尾側の剥離、
10.SAの切離、11.CA左側神経叢の切離、12.Gerota筋膜の剥離、13.膵尾部の授動、
14.主膵管断端の縫縮/膵の魚口型縫合閉鎖、15.ドレーン留置)
   [2]脾動静脈を温存する場合
(1.網嚢の開放/横行結腸脾弯の授動、2.膵下縁(大網後葉)の切離、3.膵後面の剥離、4.膵上縁の処理、
5.膵離断、6.膵の授動、7.膵尾部の剥離/脾動静脈交通枝の切離、8.膵断端の魚口型縫合閉鎖、
9.脾動静脈の血流評価/ドレーン留置)
  B.膵頭十二指腸切除
(1.横行結腸間膜の授動、2.大網の切離/胃結腸静脈幹の同定、3.Kocher授動、4.RGEVの切離、
5.SMA右背側神経叢の剥離、6.IPDAの切離、7.IPDVの切離、8.膵頭神経叢第II部の切離、9.リンパ管の縫合閉鎖、
10.膵背側のトンネリング、11.胃の切離、12.膵離断、13.CHAの同定/#8aリンパ節の郭清、
14.GDAの切離/肝十二指腸間膜のリンパ節郭清、15.空腸の切離、16.膵頭神経叢第I部の切離、
17.#12bリンパ節の郭清/CHDの切離、18.標本切除の完了、19.トロカールの配置、20.肝管-空腸吻合)
  C.膵腫瘍核出
(1.腫瘍縁に沿った膵離断、2.膵離断面の観察、3.膵離断面の縫合閉鎖、4.ドレーン留置)
  D.膵温存十二指腸全切除
(1.大網の剥離、2.Kocher授動、3.十二指腸空腸曲の授動/Treitz靱帯の切離、4.空腸の切離、
5.十二指腸水平部の授動/下行部の授動、6.上十二指腸角の授動、7.小開腹下の標本切除と再建)

 補 壊死性膵炎に対するnecrosectomy
(1.術前CT、2.膿瘍腔へのトロカール挿入、3.膿瘍腔の観察/2nd トロカールの挿入、
4.壊死物質の除去、5.ドレーン留置)

参考文献
謝辞
索引

2009年の米国内視鏡外科学会で、世界各国の優れた手術ビデオを「オリンピック」のように競わせて議論する企画セッションがありました。当時筆者は、「鏡視下に肝静脈を離断面に出すことは不可能だろう、したがって系統的切除が根付いている日本では腹腔鏡下肝切除は標準治療になりえない」と信じていたのですが、そこで金メダルを獲得したビデオこそ、本書で紹介している系統的肝区域切除だったのです。強い衝撃を受けた筆者は、早々に退席する長身のフランス人(実はまだ名前も知らなかったのですが)を追いかけ、その場で指導を仰ぎたいとお願いしました。これがBrice Gayet教授との出会いでした。
 Gayet教授は解剖学の学位を取得しているだけでなく、日本はもちろん世界中の手術法に精通しており、パリのInstitut Mutualiste Montsouris(IMM)での研修は毎日が驚きの連続でした。実をいうと当初は、ビザを獲得して渡仏するまでの道のりがまさに筆舌に尽くしがたい困難なものであったこともあり、Gayet教授から教わったすべてのことは「虎の巻」に記して自分だけのために役立てよう、と考えていたことを告白します。しかし、毎日のように世界中からやってくる見学者に親切に応じ、惜しみなく自分の技術を紹介するだけでなく、さらなる高みを目指して積極的に議論を促すGayet教授の真摯な姿勢を目の当たりにするにつれて、この当初の思惑が何と小さなものであるかということに気づかされました。
 折しも、インターネットから流れる東日本大震災の惨状に、異国にいる自分の無力を痛感させられる日々でした。せっかくの留学で得られた貴重な知識を、広く日本の、いや世界の外科医に紹介するための方策がないものかと構想し、Gayet教授の全面的な賛同を得て、このビデオテキストは完成しました。
 Gayet教授の腹腔鏡手術が注目されるべき点は、脈管と膜の解剖を明らかにすることにより、開腹と同等かそれ以上の精度を目指していることです。この特徴を十分に伝えるために、本書では筆者が実際に経験した手術のビデオを主に用い、Gayet教授の生のコメントを反映して、実際の手術がなるべく忠実に再現されるように配慮して編集しました。たとえば「左肝切除」を参照すると、肝門部の脈管を個別に処理し、背側から中肝静脈を同定・露出して肝離断を進める、という彼の腹腔鏡下肝切除の特徴を理解することができると思います。
 また、胆管切除・再建を伴う拡大肝切除や膵温存十二指腸全切除などの高難度腹腔鏡手術も豊富に紹介しました。実際にこれらの術式が行われる機会は非常に少ないと認識していますが、手術手順の一つ一つを取り出せば他の一般的な腹腔鏡手術に応用できるものですし、開腹手術のための局所解剖の把握にも十分に役立つのではないかと考えたからです。さらに、出血に対する対処法には別項を設けて詳細に解説を試みたほか、東京大学医学部附属病院で開発しIMMに導入した蛍光胆道造影法の実際についても、将来の発展を期待して紹介しました。
 すでに述べたように、本書は一般的とはいえない高難度の肝胆膵手術を数多く取り上げていますが、筆者はこれらの術式に対して腹腔鏡手術の適応がむやみに拡大することを期待しているわけでは決してありません。むしろ、腹腔鏡手術の性急な適応拡大は、手術の安全性と正確性を損うことになると危惧しています。
 本書のビデオを、腹腔鏡下肝切除のもう一人の権威であるDaniel Cherqui教授(米国Prebysterian病院)に見ていただく機会がありましたが、もちろん敬意を込めて「天才によるクレージーな手術で、誰も追随できない」と述べていました。一方で、筆者がGayet教授に一番叱責されたのは、同じ感想を彼に伝えたときでした。「私にできることが、若い世代の君たちにできないはずはない!」と。
 腹腔鏡手術の適応が妥当であるか否かは、「その国、その施設で求められる開腹手術の精度」に、「腹腔鏡手術の技術」が応えているか、によって決まると筆者は考えます。IMMでは、この両者が高いレベルで一致していました。
 本邦でも、腹腔鏡手術の技術が向上した結果として、安全性を確保しながら適応術式が緩やかに拡大していく……、そのためにこのビデオテキストが少しでも貢献できるとしたら、筆者の喜びこれに優るものはありません。

2012年8月
石沢武彰


FOREWORD

Laparoscopic liver surgery is a new and revolutionary technique that will have to prove its equivalence to open surgery. Is it? - Maybe not anymore.

Since 1991, when the first laparoscopic liver resection was published by Reich et al. for benign liver disease, laparoscopic liver surgery has dramatically progressed and can now be considered a safe alternative to open liver surgery in the hands of a surgeon who is competent in advanced laparoscopic surgical techniques. Therefore, today, laparoscopic surgery is undergoing an evolution - moving past the revolution of its birth - as it is now viewed in the context of a 20-year history. More importantly, there is good evidence from retrospective case control and cohort studies that in comparison to open surgery, laparoscopic liver surgery leads to a lower incidence of complications, less blood loss, lower perioperative moribidity and a shorter duration of hospital stay. Recent pooled meta-analysis have confirmed that laparoscopic hepatic resection for malignant tumors is associated with a long-term survival that is at least comparable, if not superior, to open surgery with no difference in disease recurrence. The use of laparoscopy for benign and malignant tumors of the liver is a safe alternative to open surgery with operative and postoperative benefits.

The ingenuity and creativity that has led to developing devices that enable laparoscopic liver surgery, especially for parenchymal transsection, have also led to improvements in open surgery as well. On the other hand, some techniques that were considered to be specific to open surgery, such as the hanging technique, have proven to be useful in the hands of some laparoscopic liver surgeons. However, it is our experience that differences between laparoscopic and open liver surgery cannot be reduced to the use of longer instruments and a camera. As we have been closely involved in the field since its inception, we have learned that laparoscopic liver surgery requires an entirely different approach to open surgery to ensure safety. An example of this the so called “posterior approach” for hemihepatectomies that identifies the middle hepatic vein close to the portal pedicle from posterior to anterior and allows the middle hepatic vein to guide the parenchymal transsection. We have also reached the conclusion that certain lesions that were considered to be inaccessible to a laparoscopic approach such as lesions in segments, IVa, VIII, VII, lesions invading the diaphragm or the inferior vena cava might be laparoscopically accessible after all, while preserving the perioperative benefits of minimal access surgery. We believe in the benefits of minimal access hepatic surgery for our patients and hope that the multimedia format of this publication will help surgeons to become adept at laparoscopic liver surgery and acquire these techniques that are different from open surgery.

What are the challenges for the future? We think that there is more work to be done in prospective study to confirm the perioperative benefits of laparoscopic liver surgery. Further, the physiologic effects of laparoscopic liver surgery and patients have to be elucidated in more detail. As we are moving beyond demonstrating that certain oncologic liver surgeries are safe and feasible to be done laparoscopically, we need to prove its oncologic equivalence beyond any doubt.
We hope that this publication will help to improve skills of surgeons already performing minimal access liver surgery, attract surgeons that would like to acquire these skills and lead to a growing number of surgeons who can offer laparoscopic liver surgery to the benefit of their patients.

Paris, 2012
Professor Brice Gayet

世界最高峰の匠の技「Gayet肝胆膵手術」
 本書は、石沢武彰氏がパリのInstitut Mutualiste Montsourisへ留学中にGayet教授のもとで、膨大な腹腔鏡下肝胆膵手術のビデオを元の画像を保ちつつ約5時間にまとめたDVDと、キーフィルムを静止画で書籍用に抜き出して手術のポイントを解説したビデオテキストである。Gayet教授の「私にできることが、若い世代の外科医たちにできないはずがない」という信念を生かすために、世界最高峰の匠の技、コツが惜しみなく織り込まれている。
 本書の構成は、準備編、実践編からなっている。準備編は、手術適応の決定(原則と禁忌)、医療機器とセットアップ、基本手技(助手・看護師との連携など)について細かく紹介されている。特に、魔法の鉗子ともいえるGayet型バイポーラ鉗子のこと(わが国で購入可能な代替品の紹介など)や硬性鏡把持ロボット(AESOP:Intuitive Surgical社)などの記載が興味深い。実践編では、各術式のポイントの描写と解説のみならず、動画での局所解剖や剥離の方向など、解剖に忠実で合理的な手術の真髄がつぶさにみてとれる。動画に関しては、特に学会などでカットされがちな癒着剥離や肝離断、縫合結紮などについてできるだけノーカットで収載されており、また一つの術式中の小項目単位で頭出しできるようにし、必要な部分のみをみたい場合に対応できるよう工夫されている。
 日本の肝臓外科医がもっとも得意とし、腹腔鏡下肝切除では到達しえないと考えられる場所に存在する腫瘍に対しても対応できる技術が見事に供覧されている。特に、S8の系統的亜区域切除では、従来の開腹手術のコンセプトとまったく異なるアプローチをとることによって、腹腔鏡下手術の利点を最大限に生かしている。すなわち、肝静脈の根部の剥離を先行させ、根部から末梢に肝の離断を行うことにより肝静脈の枝が裂け出血するのを防止するという、きわめて合理的な方法を開発している。Gayet教授は現職の前は解剖学の教授でもあったという履歴があり、彼の手術は脈管と膜の解剖を明らかにすることによって開腹手術と同等もしくはそれ以上の精度をめざし、局所解剖に忠実にきわめて合理的に行われている。
 さらに注目すべきは、高難度の腹腔鏡下手術の際にもっとも問題となる出血の対処法には、別項(静脈性出血への対応)を設けて詳細に解説(17分)されていることである。このことも本書がただの手術テクニックの紹介ではなく、肝胆膵手術を腹腔鏡下に安全・確実に行うためのエッセンスを盛り込んだ書籍として素晴らしいと考えるゆえんである。本書では高難度の手術が多く掲載されている。これらがわが国の実地臨床で行われる機会は非常に少ないと考えられるものの、高難度手術の手術手順の一つ一つを取り出せば、ほかの一般的な腹腔鏡下手術に応用でき、また従来の開腹手術のための局所解剖の把握にも大いに役立つと考える。内容とは別になるが、本書にはエッフェル塔をモチーフにした写真がところどころに織り交ぜられており、Gayetマジックなのか読んでいると時にまるでパリの街並みの中にいるような錯覚さえ覚え、読む楽しさを倍増させる。
 Gayet教授も「本書がすでに腹腔鏡下肝切除を行っている外科医の技術向上に役立ち、腹腔鏡下肝切除の技術を身につけたいと思う外科医にとって魅力的なものとなり、ひいては患者の利益のために本術式を行う外科医の数の増加につながることを願っている」と締めくくっているが、是非とも肝胆膵外科のエキスパートからビギナー、そして一般腹腔鏡下手術を行っている外科医にも一読してもらいたいものである。

評者●島田光生
外科75巻1号(2013年1月号)より転載