書籍

循環器内科臨床マニュアル

監修 : 永井良三/小室一成
編集 : 東京大学循環器内科
ISBN : 978-4-524-26894-8
発行年月 : 2013年4月
判型 : B6
ページ数 : 478

在庫あり

定価5,184円(本体4,800円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

東京大学循環器内科の研修医マニュアルをもとにした、ハンディな診療マニュアル。診察、救急処置、薬剤や治療手技、主要疾患の知識まで、幅広い情報をわかりやすくポイントを押さえた内容。研修医や専門外の内科医が循環器臨床の全体像を把握できるようサポートしてくれる。循環器内科の基本学習用としてはもちろん、現場でのとっさの確認用としてもおすすめの一冊。

巻頭言
I 循環器疾患の症状と問診の仕方
II 身体所見のとり方
III 検査の進め方と所見の解釈
 A 心電図
 B 単純X線写真
 C 心エコー
 D 心臓カテーテル検査
 E コンピュータ断層法
 F 心臓核医学
 G 呼気ガス分析(心肺運動負荷テスト)
 H 脈波伝播速度、血管内皮機能検査
IV 救急外来における初期診断と緊急処置
V 一般的な処置・治療
 A 全身管理
  1. 安静度とその指示の実際
  2. in-out balanceと輸液管理・食事療法
  3. 酸素投与・呼吸管理・血液ガス
  4. 運動療法・心臓リハビリテーション
  5. 患者の不穏、CCU症候群などへの対応
 B 薬物療法
  1. カテコラミン
  2. ジギタリス
  3. PDE阻害薬、その他の強心薬
  4. カルシウム拮抗薬
  5. β遮断薬
  6. ACE阻害薬・ARB
  7. 硝酸薬、その他の血管拡張薬
  8. 利尿薬・hANP
  9. 肺高血圧症治療薬
  10. 抗不整脈薬
  11. 血栓溶解薬
  12. 抗凝固薬、抗血小板薬
  13. 脂質異常症治療薬
  14. 薬物相互作用
  15. 肝障害、腎障害時の薬物療法
  16. 心臓移植後の薬物療法
 C 非薬物療法
  1. PCI
  2. EVT
  3. PTMC
  4. IABP・PCPS
  5. ペースメーカー・ICD・CRT
  6. カテーテルアブレーション
  7. 人工呼吸器
  8. CHDF
  9. LVAD、心臓移植
VI 循環器疾患各論
 A 虚血性心疾患
 B 不整脈
 C 心不全
 D 弁膜疾患
 E 先天性心疾患
 F 心膜疾患
 G 感染性心内膜炎
 H 心筋症
 I 心筋炎
 J 動脈疾患
 K 高血圧
 L 肺循環系
 M 二次性心疾患
VII 患者および家族への説明―インフォームドコンセントの実際と注意点
VIII 臨床研究の進め方
索引

循環器診療は、救急や重症患者への対応から慢性疾患の管理まで、多くの知識と高度な技術、さらに経験を必要とします。そのため、循環器医として自立するためには長い期間のトレーニングが必要です。また循環器医の育成には、個人の努力だけでなく、各分野の専門医、研修医、看護師、コメディカルスタッフなどとのチーム医療が欠かせません。異なる立場の医療スタッフが情報を共有し、役割を分担しつつ連携を図ることによって、医療者は成長することができます。
 一方、従来の大学病院は、できるだけ高度な医療を提供することに努力を払ってきました。先端医療の提供が大学病院の使命であることは今後も変わりませんが、卓越性を求めるあまりに一般診療を軽視したり、医療の質をおろそかにしたりしてはなりません。卓越性を維持しつつ、医療の質のばらつきを少なくし、標準化を進めることが重要です。
 現在、初年度の内科研修の期間はわずか半年間に限られており、研修医にとって循環器臨床の全体像を把握することは困難です。また、これからの内科研修では、診療科の壁を越えて異なる専門分野の医師と協同して診療することが求められています。このため検査や治療の手技・適応などをマニュアル化することによって、医療スタッフの間で情報共有を行うことが必須です。
 このような状況に対応するために本書は企画されました。東京大学医学部附属病院循環器内科で長く用いられてきた研修医マニュアルを基本としていますが、すべての教育研修病院で使用できるよう、わかりやすい記述となるよう工夫されています。本書によって循環器内科の研修が楽しく有益なものとなり、質の高い医療が提供されることを期待しています。

2013年3月
永井良三、小室一成

このたび上梓された『循環器内科臨床マニュアル』は、従来、東京大学循環器内科で用いられてきた研修医マニュアルを基に、よりわかりやすく、明快にまとめあげられた循環器内科医向けの指導書である。これまでは、循環器内科を志す研修医のみならず、循環器診療に従事するすべてのスタッフとのチーム医療実現のための情報共有の手段として、このマニュアルが使用されていたようである。そのため、本書は循環器診療に関わるほぼすべての分野をカバーしつつ、それぞれの項目について医療スタッフが理解しやすいように解説を加えるスタイルがとられている。このスタイルは専門用語とその説明の羅列になりがちであるが、本書では実臨床で必要となる知識や技術をうまくピックアップしてまとめられており記憶に留めやすい。
 本書は8部で構成されている。「問診・診察」に始まり、「検査所見の解釈」、「救急外来での初期対応」、「循環器疾患患者の管理および治療法」、「循環器疾患各論」と進み、最後は「インフォームド・コンセント」、「臨床研究の進め方」についても述べられている。治療法の項目では、最新の補助人工心臓や心臓移植にまで触れられており、東京大学医学部附属病院における先進医療のレベルの高さが垣間見える。特筆すべきは、最後の2項目である「インフォームド・コンセント」および「臨床研究の進め方」である。循環器内科が行う侵襲的検査や治療は時として重篤な合併症を引き起こすことがあり、たとえ診断的検査であっても患者やその家族に対して十分なインフォームド・コンセントを行うことがとても重要である。研修医や他のメディカルスタッフにその意識を徹底させようとする姿勢がこの項目ににじみ出ている。また、臨床研究、統計学的手法およびその解釈が今後ますます盛んになることを見越してであろうか、臨床研究と統計学についての項目もあるのは他にあまり類をみない。
 あえて注文を付けるとすれば、「身体所見のとり方」の項目が6ページと他項に比べやや少ないことである。循環器における身体所見のとり方は、それだけで1冊の本が書けるぐらいの内容があるものである。心エコーのみならず冠動脈CT、心臓MRI、核医学検査など多くのモダリティを容易に利用できるため、研修時の身体所見のとり方がややもすればおろそかになりがちな昨今である。本書が研修医向けであることを考慮すると、今後のアップデートでは、ぜひ身体所見の項目もより充実されることを期待したい。
 循環器内科のカバーする範囲は膨大であるが、すべての項目について要点を押さえ、コンパクトにまとめてあり、疑問に思ったときにすぐに答えにたどり着くことができるポケットブックである。また、持ち運びやすい大きさでもある。本書を通して学ぶ循環器病について、臨床研究に進む動機付けともなろう。循環器内科を志す研修医、あるいは循環器病臨床に関わるメディカルスタッフにはぜひ携えたい好著である。

臨床雑誌内科112巻6号(2013年12月増大号)より転載
評者●金沢大学医薬保健研究域医学系臓器機能制御学・循環器内科教授 山岸正和