書籍

今日からできるインクレチン療法DPP-4阻害薬活用マニュアル

: 鈴木大輔
ISBN : 978-4-524-26763-7
発行年月 : 2013年5月
判型 : B5
ページ数 : 132

在庫あり

定価3,780円(本体3,500円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

1,000例を超える症例をもとに、DPP-4阻害薬を用いた治療のコツとノウハウをわかりやすく解説。成分ごとに章立てして、様々な症例を挙げて診療のポイントを具体的に解説。関連するエビデンスも掲載しており知識のアップデートにも役立つ。DPP-4阻害薬を有効に活用するために欠かせない一冊。糖尿病診療に携わるすべての医師・スタッフ必読。

●DPP-4阻害薬一覧
第I章 DPP-4阻害薬を使った糖尿病治療を始めよう
 1 インクレチンとDPP-4阻害薬の関係
 2 DPP-4阻害薬の特徴を知る
 3 ほかの経口糖尿病治療薬の特徴を理解する
第II章 シタグリプチンはどう使うか?
 1 シタグリプチンの特徴
 2 シタグリプチンの効果と使い方
 3 シタグリプチンを活用する!
  Case1:ドラッグ・ナイーブ症例
  Case2:ドラッグ・ナイーブ+SU薬の上乗せ
  Case3:SU薬の減量
  Case4:αグルコシダーゼ阻害薬に上乗せする
  Case5:メトホルミンに上乗せする
  Case6:シタグリプチン50mgから100mgに増量
  Case7:BOTに上乗せする
  Case8:多剤併用のBOTに上乗せする
  Case9:強化インスリン療法に上乗せする〜その1〜
  Case10:強化インスリン療法に上乗せする〜その2〜
第III章 ビルダグリプチンはどう使うか?
 1 ビルダグリプチンの特徴
 2 ビルダグリプチンの効果と使い方
 3 ビルダグリプチンを活用する!
  Case1:ドラッグ・ナイーブ症例〜その1〜
  Case2:ドラッグ・ナイーブ症例〜その2〜
  Case3:SU薬の減量
  Case4:メトホルミンとの併用
  Case5:透析症例
第IV章 アログリプチンはどう使うか?
 1 アログリプチンの特徴
 2 アログリプチンの効果と使い方
 3 アログリプチンを活用する!
  Case1:SU薬の減量
  Case2:3剤併用でもコントロール不良…に上乗せする
  Case3:4剤併用でもコントロール不良…に上乗せする
  Case4:透析症例
第V章 リナグリプチンはどう使うか?
 1 リナグリプチンの特徴
 2 リナグリプチンの効果と使い方
 3 リナグリプチンを活用する!
  Case1:ドラッグ・ナイーブ症例
  Case2:強化インスリン療法からの離脱
  Case3:透析症例
第VI章 テネリグリプチンはどう使うか?
 1 テネリグリプチンの特徴
 2 テネリグリプチンの効果と使い方
第VII章 アナグリプチンはどう使うか?
 1 アナグリプチンの特徴
 2 アナグリプチンの効果と使い方
第VIII章 知っておきたいDPP-4阻害薬のエビデンス
 1 DPP-4阻害薬全体のエビデンス
 2 シタグリプチンのエビデンス
 3 ビルダグリプチンのエビデンス
 4 アログリプチンのエビデンス
 5 リナグリプチンのエビデンス
 6 テネリグリプチンのエビデンス
 7 アナグリプチンのエビデンス
索引

私が医師になった25年前、糖尿病治療薬は経口薬のスルホニル尿素(SU)薬とビグアナイド薬、そしてインスリンしかなかった。当時、ビグアナイド薬は乳酸アシドーシスの副作用があまりにも有名であり、周りにこの薬を使う医師は誰ひとりおらず、SU薬をどんどん増量し、効かなくなったらインスリン導入という治療しかできなかった。その後、αグルコシダーゼ阻害薬が発売され、ビグアナイド薬の安全性と有効性が再認識された。また、インスリン抵抗性改善薬、速効型インスリン分泌促進薬も開発され、さらには超速効型インスリンや持効型溶解インスリンも使用可能となった。そのような状況下、3年半前に、待ちに待ったDPP-4阻害薬が6種類目の経口薬として発売された。
 DPP-4阻害薬は、作用機序が既存の薬剤とまったく異なり、内因性のGLP-1の分解酵素であるDPP-4を阻害することにより血糖を低下させる薬剤である。低血糖を起こし難く、体重増加も少なく、グルカゴンの分泌を抑制するなどの特徴があり、他剤との併用も可能で効果も良好なことから爆発的に普及している。しかし、どのDPP-4阻害薬でも単剤では目標のHbA1c値を達成できないことが多いのも事実である。別の言い方をすれば、DPP-4阻害薬によりHbA1c値がある程度まで低下したことに満足するのではなく、患者の生活に合わせて、無理なく、目標のHbA1c値を達成することが重要なのである。そのためには他剤の特徴を理解し、適切な併用療法を行う必要がある。また、DPP-4阻害薬を併用しても目標のHbA1c値を達成できなければ、インスリン導入を躊躇なく行うことも忘れてはならない(状況によっては、インスリン導入をしてからDPP-4阻害薬に切り替えるか、あるいは追加する)。
 本書はこのような点にも配慮し、経験し得た1,000例以上の症例の解析に基づき、症例を提示しながら、DPP-4阻害薬の使用方法について私見も交えて解説した。本書が読者の今日からの臨床に役立てば幸甚である。

2013年5月
新緑の風と香りを感じながら 著者記す

2013年5月、日本糖尿病学会は「熊本宣言2013」を発表した。これは、糖尿病患者において基本となる血糖管理目標値を「HbA1c 7%未満」と定め、糖尿病発症予防に尽力するとともに、よりよい血糖管理などを通じて糖尿病の合併症で悩む人々を減らすための努力を惜しまないことを宣言したものである。2型糖尿病患者の予後を改善させるためには、脂質異常、高血圧、肥満など多様なリスクを総合的に管理することが重要とされるが、何といってもその本丸は「血糖」である。しかし、血糖は、その平均値を表すHbA1cだけでなく食後高血糖や低血糖といった「変動」を考える必要があったり、薬物治療によって体重増加を招きやすいなど、誰にでも行える簡便かつ確実な治療手法がいまだ確立されていない。これは、スタチンの登場により安全かつ比較的容易にlower the betterを実現できるようになったLDLコレステロールとの大きな違いである。
 そのような状況のなか、DPP−4阻害薬は、一般内科医から糖尿病専門医まで広く用いることができ、有効性が高く、低血糖や体重増加のリスクが少ない経口血糖降下薬として、大きな期待とともに登場した。そして、またたく間に糖尿病実地診療の場へ浸透し、2009年末の第一剤発売からわずか4年弱の間にわが国における糖尿病治療薬のトップシェアを占めるにいたった。このDPP−4阻害薬の特徴、効果と使い方について、糖尿病の診療と研究で高い実績を誇る鈴木大輔氏が、1,000症例を超える処方経験をベースに、客観的な数値と具体的な処方例を交えて解説したのが本書である。
 DPP−4阻害薬が優れた薬剤であることは今や誰もが認識する一方、その使用経験が増えるにつれ、万能薬ではないこともまた現場で実感されるようになってきた。そのことについて著者は、「どのDPP−4阻害薬でも単剤では目標のHbA1c値を達成できないことが多いのも事実である」と述べている。2型糖尿病が進行性の疾患である以上、DPP−4阻害薬の場合も、単剤よりむしろ併用療法においてこそ真価を発揮する可能性がある。このことから、著者は、DPP−4阻害薬の性質を知ることと同時に、インスリンを含めた他剤の特徴を理解し、より適切な併用療法を実施することの重要性を説いている。
 本書は、sitagliptin、vildagliptin、alogliptin、linagliptin、teneligliptin、anagliptinの6薬剤について、それぞれ数十から数百の処方例の解析に基づき、各薬剤の臨床効果を丁寧に説明している。しかし、それだけに終わらず、国内第III相臨床試験はもとより海外の大規模臨床試験、メタ解析、そしてガイドラインを参照し、現時点において可能な限りの客観的指針を導き出そうとする姿勢がうかがえる。つまり、“experienceに立脚しevidenceをもって補完する”新しいタイプの手引書である。読者は、本書を通じて著者の膨大な症例経験を追体験し、「患者の生活に合わせて、無理なく、目標のHbA1c値を達成する」という著者の掲げる目標に近づくことができるに違いない。

臨床雑誌内科113巻3号(2014年3月号)より転載
評者●千葉大学大学院医学研究院細胞治療内科学講座教授 横手幸太郎