書籍

これでわかる高血圧外来診療

はじめて外来に出る前に読む本

監修 : 増山理
: 辻野健
ISBN : 978-4-524-25394-4
発行年月 : 2010年3月
判型 : A5
ページ数 : 148

在庫僅少

定価3,024円(本体2,800円 + 税)

  • 商品説明
  • 序文
  • 書評

初めて外来診療を行う若手医師や、循環器を専門としない内科医・開業医のために、経験豊富な著者が高血圧診療のコツをわかりやすく解説。専門用語には用語解説を付し、ちょっとした知識を「memo」としてまとめた。また、具体的な処方例も数多く掲載。気楽に読める上、患者に合った薬物選択がわかるようになり、高血圧外来診療の枠組みが簡単に把握できる。

医学部の学生さんにとって高血圧患者さんとはどんなイメージでしょうか。おそらく「腎血管性高血圧」であり、「褐色細胞腫」であり、「原発性アルドステロン症」なのではないでしょうか。なにしろ国家試験に出てくる高血圧の症例といえば二次性高血圧のものが圧倒的に多いのですから。研修医になってもしばらくはそんなに高血圧のイメージは変わらないかもしれません。心筋梗塞や脳卒中で入院される患者さんには高血圧を合併されている方が当然たくさんおられますが、それらに対する急性期治療からリハビリテーションにいたるまで、高血圧の治療はどちらかというと脇役です。高血圧を主なproblemとして入院してくる方はやはり二次性高血圧の鑑別を必要としたり、重症な臓器合併症に苦しんでいることが多いでしょう。それがしばらく経験を積んで外来に出てみるとどうでしょう。ほとんどの高血圧患者さんは本態性高血圧であり、自覚症状は何もなく、臓器障害や心血管系合併症を持たない方も少なくありません。そこで、それまで自分が持っていた高血圧患者さんとのイメージのギャップに戸惑うことになります。本態性高血圧とは「二次性高血圧ではないこと」ですが、いったいどこまで検査しなければならないのでしょうか。また、薬を処方する場合、山ほどある薬の中からどれにすればよいのでしょうか。そもそもその患者さんが一生飲むかもしれない薬を自分が決めてしまってよいのだろうか・・・
 高血圧に関する本は、私よりもずっと偉い先生方の書かれたものがたくさんあります。血圧上昇の機序から大規模臨床試験の成績まで詳細に書かれた大部なものから、マニュアル本やQ&A集のようなコンパクトにまとまった本までバラエティに富んでいます。ただ、生活習慣病の外来診療に取り組み始めた若い先生方が忙しい研修生活の中でも気楽に読めて高血圧外来診療の枠組みがすっと頭に入ってくるような本があると役に立つのではないかと考えておりました。また、そのような本は循環器以外のサブスペシャリティを専門にしてこられた内科の先生方、もしくは内科以外の専門でやってこられたけれども開業したら高血圧のコントロールもしなくてはならないという先生方にも役立つはずです。
 そこで今回、若手研修医および一般開業医を対象にした「これでわかる高血圧外来診療」と題した書籍を南江堂と企画し、浅学非才を省みず本書を執筆した次第です。本書は2009年に改訂された日本高血圧学会の『高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)』になるべく準拠して書きました。しかし、睡眠不足の研修医が読んでも眠くならないようなるべく平易に書こうと考え、正確さよりもわかりやすさを優先して自分の意見を前面に出したところもあります。高血圧外来診療の入門編としてご一読いただき、高血圧の管理に興味を持っていただければ幸いです。
2010年2月
辻野健

高血圧は、肥満、糖尿病、脂質異常症などと密接に関係する生活習慣病であり、虚血性心疾患や脳卒中、CKD(chronic kidney disease)などの臓器障害を引き起こすことからも、ライフスタイルの改善を行いつつ、降圧薬を用いて血圧のコントロールを進めていくことが重要である。
 私事で恐縮だが、著者の辻野健教授は神戸大学医学部で同期であり、当時の神戸大学第一内科(現・循環器内科)から薬理学教室の大学院を修了し、その後も高血圧の基礎研究、臨床研究および診療に従事してきた、高血圧に関するエキスパートである。さらに、辻野氏は学生や研修医に対しても重要なポイントを非常にわかりやすく講義をすることで定評がある。このような豊富な経験から、本書には高血圧の診療にあたって、非常に多くの大切なポイントが理解しやすくまとめられている。
 本書の特徴の一つは、全体がQ&Aやキーワードの形式でまとめられており、高血圧の病態から考えた降圧薬の使い方が見事に整理されていることである。現在臨床の現場では多くの降圧薬が使われており、さらには、同じような薬効の薬剤が数多くある。そうした点が、専門家以外の医師や研修医にとって、薬剤の使い分けを困難にしている。これらの点に関して、この本は、最新の情報である「高血圧治療ガイドライン2009」に基づき、高血圧診療のポイントをきわめてわかりやすく解説している。実際、サブタイトルに「はじめて外来に出る前に読む本」とあるように、研修医はもちろんのこと外来診療や実地診療で高血圧症の治療にあたっている医師たち、コメディカルたちにとっても非常に使いやすい本であり、診療の傍らご一読されることを推奨する。
 項目ごとに「POINT」や「用語解説」、「MEMO」といった囲み記事が各所にちりばめられていることで、最近話題となっている重要な事項を理解しやすくしている。とくに、最近注目されるインスリン抵抗性について項を設けて記述していることも、読者にとってはありがたい点である。
 また最近、心血管系の異常との関係が問題として取り上げられている糖尿病のこと、さらにメタボリックシンドロームや治療抵抗性高血圧、24時間にわたる血圧コントロールを項目に入れたことも適切な配慮といえるであろう。高血圧に関するさまざまな病態を理解し、検査や薬剤の選択を考えるうえで非常に役に立つ、推奨に値する良書である。
評者● 平田健一
臨床雑誌内科106巻6号(2010年12月増大号)より転載