書籍

薬剤性消化管傷害

NSAIDs・アスピリンをめぐるエビデンスとプラクティス

編集 : 坂本長逸
ISBN : 978-4-524-25384-5
発行年月 : 2009年8月
判型 : B5
ページ数 : 176

在庫なし

定価4,860円(本体4,500円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)やアスピリン製剤により引き起こされる消化管傷害について、発症メカニズム、発症頻度から、診断・予防・治療の実際までを、本領域のエキスパートがエビデンスを基にわかりやすく解説。人口の高齢化が進み、NSAIDs、アスピリン製剤を服用する患者が増加する中、日常診療の指針としてぜひとも読んでおきたい一冊。

総論
I 今なぜNSAIDs、アスピリン消化管傷害が問題となるのか
II NSAIDs、アスピリンによる粘膜傷害発症機序
 1.上部消化管傷害発症メカニズム
 2.下部消化管傷害発症メカニズム

エビデンス編
III NSAIDsをめぐるエビデンス
 1.NSAIDs潰瘍発症頻度
 2.NSAIDs出血潰瘍リスクと頻度
 3.COX-2阻害薬の潰瘍発症頻度
 4.選択的COX-2阻害薬の出血潰瘍リスクと頻度
 5.NSAIDs、COX-2阻害薬による下部消化管傷害のエビデンス
IV アスピリンをめぐるエビデンス
 1.アスピリン服用に伴う出血潰瘍の頻度
 2.アスピリンの剤型と出血リスク
V 本邦におけるNSAIDs、アスピリン消化管傷害のエビデンス
 1.1991年の日本リウマチ財団の調査と今日のNSAIDs潰瘍 ─東京女子医科大学から
 2.今日のNSAIDs潰瘍─日本医科大学リウマチ科と消化器内科から
 3.今日のNSAIDs潰瘍─奈良県立医科大学から
 4.アスピリンによる消化管粘膜傷害─アスピリンによる消化管傷害の病院コホート調査から
 5.アスピリンによる消化管粘膜傷害─虎の門病院から
 6.アスピリンによる下部消化管傷害のリスク─順天堂大学から
VI NSAIDs、アスピリン潰瘍、出血潰瘍予防のエビデンス
 1.NSAIDs潰瘍予防法に関するエビデンス
 2.アスピリン潰瘍、出血潰瘍予防のエビデンス
 3.Helicobacter pylori陽性者におけるNSAIDs潰瘍予防戦略とエビデンス
 4.NSAIDs下部病変予防のエビデンス

プラクティス編
VII NSAIDs、アスピリンによる上部消化管傷害の臨床的特徴と診断
VIII NSAIDs、アスピリン消化管傷害─その基礎疾患との関係
 1.リウマチ疾患診療の立場から
 2.循環器内科診療の立場から
 3.神経内科診療の立場から
IX NSAIDs、アスピリン潰瘍、出血潰瘍の治療
X NSAIDsとアスピリン─実地臨床の問題点とプラクティス
 1.心血管リスクのある患者へのNSAIDs投与─celecoxibは安全か?
 2.Helicobacter pylori感染者におけるNSAIDs服用者の潰瘍診断─本当にNSAIDs潰瘍?
 3.NSAIDsに加えてアスピリンを服用すればさらにリスクは増加する?
 4.これまで胃に病気がないのにNSAIDsを服用する場合、予防は必要か?
 5.NSAIDs、アスピリンの下部消化管病変をどう予防する?

索引

本書は、日本消化器病学会による「消化性潰瘍診療ガイドライン」の作成作業の最中に企画され編集されました。その結果、時宜を得た内容となっています。ご存知のようにH.pylori関連消化性潰瘍についてはエビデンスが蓄積され、治療についても異論が少ない領域といえます。しかし、薬剤性消化管傷害については、欧米のエビデンスは十分とはいえないまでも、潰瘍発症率、出血リスク、出血頻度やその予防に関して多数報告されていますが、本邦のエビデンスは極端に少ないのが現状です。さらに、薬剤性消化管傷害は基本的に予防が重要ですが、本邦の保険診療では予防はままならず、さらにアウトカムとして観察される傷害に関しては、内視鏡で観察される潰瘍とその合併症である出血イベントの主に2種類の研究報告があり、どちらのアウトカムを標的として予防戦略を立てるかについていまだ議論が十分ではないため、薬剤性消化管傷害をいかに予防するかについては統一された見解が得られていません。
 したがって本書ではNSAIDsとアスピリンを分け、さらにアウトカムを内視鏡観察された潰瘍発症頻度、疫学研究で得られた出血リスク、および大規模研究で得られた出血などの潰瘍合併症頻度に分けて、この領域のエキスパートの先生方にエビデンスを紹介していただきました。NSAIDsとアスピリンの消化管傷害のみに焦点を当て、これほど多くのエキスパートの先生方から本邦のデータを含むエビデンスを紹介していただいた書物は、おそらくこれまでにはないものと思われます。その意味で、ガイドラインでの記述を越えた多くのエビデンスが紹介された参考書といえるでしょう。しかし、議論の多い領域であることには違いがなく、実地臨床のプラクティス部分では若干の消化不良は否めません。この点は欧米でもそうですが、たとえば心血管イベント予防のために投与されているアスピリンによって惹起された消化管病変の治療やその後の再発予防などについては、各領域の専門家集団によるコンセンサス作りが重要になってくるものと思われます。
 いずれにせよ、議論の多いこの領域で、本書が消化器内科領域だけではなく、診療領域を越えた議論の一助となることを願って序文の締めくくりとしたいと思います。
2009年7月
坂本長逸