書籍

TPNレクチャー

処方・手技・管理のフォトブリーフィング

: 井上善文
ISBN : 978-4-524-23632-9
発行年月 : 2004年4月
判型 : B5
ページ数 : 212

在庫僅少

定価4,536円(本体4,200円 + 税)

  • 商品説明
  • 序文
  • 書評

中心静脈栄養(TPN)の手技と管理のテクニックを図解する実際書。TPNはカテーテル敗血症などの感染率が10%以上といわれ、とくに感染防止のテクニックについては詳しく紹介。科学技術庁発行のガイドラインをベースに、教科書的な解説は省き、ポイントを押さえた文章と多数のカラー写真・イラストでわかりやすい解説に徹した実用本位のマニュアル。

栄養療法に関しては、現在、数多くのテキストやマニュアル、特集が組まれた雑誌が数多く出版されており。熱心にそれらを読んで勉強すれば、確実によい栄養療法が実施できる時代になっています。しかし、これらは難解で、内容が硬く。せっかくりっぱな本を高いお金を払って購入しても、最初から最後まで読み通すことはかなり困難です。私が実際に体験していることですので間違いはありません。最初の数ページにだけ赤鉛筆で線が引かれている本が、たくさん本棚に静かに眠っております。昔の(?)言葉で表現すれば、「まことに、もったいない」話です。飽食の時代と言われていますが、無駄を省くことは重要です。
 なぜこのような話から始めたかと申しますと、このマニュアルは、最後まで読み通すことができる内容にしようと努力した、ということを言いたいからです。むずかしい内容をいかにやさしく説明するか、実は、これが一番重要です。
 この本は、私が数多くの先輩から指導していただいた内容、自分で勉強した内容を。私なりの解釈でわかりやすく伝えたい、という気持ちで書かせていただきました。
 さて、栄養療法は、実にさまざまな症例に対して施行する必要があります。といいますか、一人一人の患者さんは、それぞれ少しずつ病態が異なっており、一人一人に対して、手作りの栄養療法を実施する必要があります。栄養療法の基本となる方法はそれほど多くはありません。しかし、それを一冊の本に著すとなると、カテーテルの選択、挿入方法、管理方法、輸液組成、輸液投与量等々、実に多くのページが必要となります。それらを全部一度に勉強して理解しなさいというのはどだい無理な話です。そういう意識で本を書くと、膨大な量になります。私が知っている範囲内で、自分が経験した範囲内で、これだけを理解していれば必要十分な栄養療法が実施できますよ、という範囲を決めて、それを説明するようにしました。この本を見れば、今すぐにでも静脈栄養法が実施できるような内容としました。
 現在、カテーテル管理においても、エビデンスがあるかないかで、その実施方法が正しいか、適切であるか、という評価がなされつつあります。もちろんエビデンスのあるものについては、そのエビデンスを評価しながら考えればよいと思います。しかし、栄養療法に関するエビデンスは非常に少なく、細かい点になると、ほとんどエビデンスのない領域もたくさんあります。この本では、エビデンスのないものに関しては、私の独断で、「私はこうやっている」、「私はこう考えている」、そういう表現をしております。私が実践している、栄養管理の「コツ」といったものが表現できていればと思っております。ご批判もたくさんあると思いますが、それは甘んじてお受けし、私が今後もこの領域で仕事を続けていくための参考にしたいと考えております。
 文章の体裁としては、話し口調としました。今までの医学書と少し趣きが異なるかもしれませんが、著者である私と読者であるあなたが、会話をしているという雰囲気で勉強できたらと思ったからです。また、多数のカラー写真・図版を用いて解説をしました。病棟で実際に行っている手技・管理の写真、患者さんにモデルとなっていただいて撮影したものもあり、理解を助けてくれると思います。本書の書名を『TPNレクチャー』とし、こんな言葉あるのかいと云われるかもしれませんが、副題を『フォトブリーフィング』〔photo(写真)+briefing(概況説明)〕としたのも、この本の特徴をお分かりいただきたかったからです、しかし、代謝管理、代謝合併症および病態別栄養管理の項目は、本来は代謝マップを書くべきなのですが。その辺りは専門書できっちり勉強していただいたほうがよいので省略し、私が考えている内容だけを書かせていただきました。参考文献もできるだけ少なくしました、エビデンスに基づいた、という内容であれば、数多くの文献を引用しなければならないのですが、私の経験を基礎として書いておりますので、最小限度のものに留めました。まあ、現在はインターネットで論文を検索することは容易ですし、私よりこの点ではすぐれている方のほうが多いと思いますので、どうぞ自分で必要な文献は検索してください。また、私がこれまで臨床の場で経験した事柄を、「診療室こぼれ話」として記載しましたので、読み物として読んでいただきながら、静脈栄養法に関する知識を深め、実践に役立つ内容を理解していただけたらと思います。
 本書が、読者の方々に、栄養管理について楽しく勉強できるものとして受け入れていただければ、私はたいへんうれしく思います。
 最後に、モデルとして快く写真撮影を許可していただいた患者さん達、日々の診療にエネルギッシュに取り組んでくれている日生病院外科の将来有望な青年外科医達、「手タレ」として輸液調製やカテーテル管理を行っている時の美しい手の写真を撮らせていただいた病棟と手術場の看護師さん達、いやがらずに私の回診についてきてくれている3階病棟と4階東病棟の看護師さん達、栄養アセスメントの章で実際の場面を再現するに際して名前を使わせていただいた外科外来の看護師さん達、これまでの私を指導していただいた諸先輩や仕事仲間の方々、そして、仕事に専念することを許してくれている私の家族に…ありがとう。
2004年3月
井上善文
(一部改変)

すばらしい本である。安全で効果的な栄養管理の実施を願う井上先生の思いが、この一冊にこめられている。

「免疫は栄養だ」とよくいわれる。栄養が十分なら、疫病に対する抵抗力が出る。かつて猛威をふるった結核の治療は、安静と栄養であった。この基本は現在もかわらない。手術が2極化して、低侵襲手術とともにpoor risk患者や高齢者でも手術適応があれば侵襲の大きい手術が施行されている。このため栄養管理がますます重要になっている。

本書の著者の講演を一度でも聞かれた人ならわかるように、本書の内容は明解で、きわめてわかりやすい。読者は頁を繰るにしたがって、耳もとに著者のささやきが聞こえ、あるいは直接手をとって教えられているように感じるであろう。柔らかい大阪弁の混じった口調で。たとえば、どこに目をつけるか、計算方法は、計算式は、どういう手順で行うべきかなど、レベルはきわめて高いが、語りかけは平易で具体的である。

本書の後半1/3は、カテーテル挿入中や留置期間中の種々の合併症とその予防対策に割かれている。フォトブリーフィングという副題の通り、鮮明な写真を中心に、わかりやすい図、シェーマ、チェックリスト、フローチャートで構成され、合併症を防いで安全な栄養管理を行おうという著者の意気に圧倒される。

EBMが金科玉条のごとく叫ばれている。しかし、現在のEBMの定義は「集団を対象とし、疫学的手法によって得られた証拠(エビデンス)に基づく医療」である。つまり集団が生き延びるための医療で、そこでは個は抹殺される。EBMでもっとも信頼性の低いレベルに分類されるのが「明確な批判的吟味をもたない専門家の意見」である。本書の中にはエビデンスの示されていない記載もあるが、著者の豊富な経験に基づいた意見は、EBMで信頼性のもっとも高いレベルに分類される「RCTのシステマティックレビュー」より、実地臨床でははるかに評価が高いと思う。

本書には、著者の臨床の場での経験も「診察室こぼれ話」として随所に掲載されている。著者の助言であるが、このコラムは読みものとしてもとても面白い。たとえば、「アミノ酸パターンの判定をできる医師は、日本全体でみても数えるほどしかいないのではないでしょうか。私は、アミノ酸値の絶対量、分岐鎖アミノ酸の量、Fischer比程度しか理解できておりません」などと著者にいわれると、われわれの肩の荷もとれ、ほっとした気持ちになる。本当に大切なことは何かがわかっている方の言葉である。

現在入手しうる最高のTPNの実践書として、医師をはじめTPNに携わるすべての職種の人が、本書をボロボロになるまで繰り返し読まれることを願う。

〔小川道雄〕
臨床雑誌外科66巻10号(2004年10月号)より転載