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PK-PDは難しくない!抗菌薬PK-PD実践テクニック

編集 : 渡辺彰/藤村茂
ISBN : 978-4-524-26369-1
発行年月 : 2010年10月
判型 : A5
ページ数 : 174

在庫なし

定価3,456円(本体3,200円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

PK-PD理論は難しくない!近年、抗菌薬適正使用の観点から注目を集める薬物動態学-薬力学(PK-PD)概念をどう臨床に応用するか、その基本的なコツをわかりやすく提示して解説。実症例から、step by stepで実践的な抗菌薬の使用方法がわかる。「PK-PDは難解である」「臨床に応用しにくい」といったこれまでの考えを払拭する恵みの一冊!!

第I章 臨床から生まれてきたPK-PD理論
1 この症例がPK-PDを教えてくれた!
 1 投与量を減らしてでも投与回数を増やすほうが有効だった例
 2 投与回数減少かつ投与量増量が有効だった例
 3 まとめ

2 PK-PDは難しくない!3つのパラメータを覚えるだけ!
 1 PK-PD理論の目的とは?
 2 PK-PDパラメータ・3つの理解
 3 まとめ

3 PK-PD理解のための基礎知識
 PK、PD、MIC、AUC、AUC/MIC、TAM、Cmax/MIC、MPCとMSW

第II章 微生物からみるPK-PD実践テクニック
1 原因菌が不明の場合
 1 アプローチのしかた
  a 抗菌薬の選び方
  b 用法・用量はどう決定する?
  c 治療効果評価にはどのくらい時間を要するか
 2 症例から考えよう
 3 原因菌不明の重症感染症対策のまとめ

2 肺炎球菌に遭遇したら
 1 抗菌薬の選び方
  a 軽症〜中等症の場合
  b 中等症〜重症の場合
  c 肺炎球菌性髄膜炎の場合
 2 肺炎球菌に対する抗菌薬のPK-PD
 3 PK-PDからみた抗菌薬の使い方(内服薬)
  a アモキシシリン
  b ファロペネム
  c レボフロキサシン
  d モキシフロキサシン、ガレノキサシン
  e テリスロマイシン
 4 PK-PDからみた抗菌薬の使い方(注射薬)
  a アンピシリン
  b ピペラシリン
  c セフトリアキソン
  d セフォタキシム
  e パニペネム・ベタミプロン

3 溶血性レンサ球菌に遭遇したら
 1 抗菌薬の選び方
 2 レンサ球菌に対する抗菌薬のPK-PD
 3 PK-PDからみた抗菌薬の使い方
  a 小児のS. pyogenesによる咽頭炎・扁桃炎
  b 新生児・乳児のS. agalactiaeによる感染症
  c 成人におけるS. pyogenes、S. agalactiae、S. equisimilisによる重症感染症

4 MRSAに遭遇したら
 1 抗菌薬の選び方
 2 抗MRSA薬のPK-PD
 3 PK-PDからみた抗菌薬の使い方
  a バンコマイシン
  b テイコプラニン
  c アルベカシン
  d リネゾリド

5 髄膜炎菌に遭遇したら
 1 髄膜炎菌の特徴
 2 抗菌薬の選び方
  a 耐性菌に注意する
  b 起因菌が髄膜炎菌と判明している場合
  c 起因菌が同定されていない場合
  d ステロイド前投薬について
 3 髄膜炎菌に対する抗菌薬のPK-PD
 4 PK-PDからみた抗菌薬の使い方
  a セフォタキシム
  b セフトリアキソン
 5 感染拡大防止に留意する

6 インフルエンザ菌に遭遇したら
 1 インフルエンザ菌の特徴
 2 抗菌薬の選び方
 3 インフルエンザ菌に対する抗菌薬のPK-PD
 4 PK-PDからみた抗菌薬の使い方
  a ピペラシリン
  b セフトリアキソン
  c アジスロマイシン
  d モキシフロキサシン

7 腸内細菌に遭遇したら
 1 抗菌薬の選び方
 2 大腸菌・肺炎桿菌に対する抗菌薬のPK-PD
 3 PK-PDからみた抗菌薬の使い方
  a キノロン系薬
  b セフェム系薬
  c カルバペネム系薬
  d ESBL産生菌に対する抗菌薬
 4 日常診療における抗菌薬のPK-PDブレイクポイント

8 緑膿菌に遭遇したら
 1 抗菌薬の選び方
 2 緑膿菌に対する抗菌薬のPK-PD
 3 PK-PDからみた抗菌薬の使い方
  a ドリペネム
  b パズフロキサシン

9 マイコプラズマに遭遇したら
 1 抗菌薬の選び方
 2 マイコプラズマに対する抗菌薬のPK-PD
 3 PK-PDからみた抗菌薬の使い方
  a エリスロマイシン
  b クラリスロマイシン
  c アジスロマイシン
  d アジスロマイシン徐放剤
  e ミノサイクリン
  f ニューキノロン系薬
  g ケトライド系薬

10 クラミジアに遭遇したら
 1 クラミジアの特徴
 2 抗菌薬の選び方
 3 クラミジアに対する抗菌薬のPK-PD
 4 PK-PDからみた抗菌薬の使い方
  a テトラサイクリン系薬
  b マクロライド系薬およびケトライド系薬
  c キノロン系薬

11 レジオネラ属に遭遇にしたら
 1 抗菌薬の選び方
  a レジオネラの検出方法
  b 各抗菌薬のレジオネラに対する抗菌活性
  c 抗菌薬の選び方
 2 レジオネラに対する抗菌薬のPK-PD
 3 PK-PDからみた抗菌薬の使い方
  a シプロフロキサシン
  b パズフロキサシン
  c シプロフロキサシンとパズフロキサシンとの比較

第III章 抗菌薬からみるPK-PD実践テクニック
1 time above MICが重要な薬剤
 a.β-ラクタム系薬を使いこなす
  1 症例からみる実践テクニック
  2 PK-PD理論から使いこなす
   ステップ1 PK-PDの特徴を把握する
   ステップ2 投与量、投与間隔は何を指標にすべきか
   ステップ3 PK-PDパラメータからより高い効果を得る!
 b.グリコペプチド系薬を使いこなす
  1 PK-PD理論からバンコマイシンを使いこなす
   ステップ1 TDM実施のタイミングを把握する
   ステップ2 PK-PDパラメータの目標値は何か?
   ステップ3 実際の投与計画をたてる
  2 PK-PD理論からテイコプラニンを使いこなす
   ステップ1 TDM実施のタイミングを把握する
   ステップ2 PK-PDパラメータの目標値は何か?
   ステップ3 実際の投与計画をたてる

2 AUC/MICが重要な薬剤
 a.マクロライド系薬を使いこなす
  1 症例からみる実践テクニック
  2 PK-PD理論から使いこなす
   ステップ1 マクロライド系薬の体内動態を把握する
   ステップ2 PK-PDの特徴を把握する
   ステップ3 アジスロマイシンをPK-PDに基づいて使いこなす
 b.ケトライド系薬を使いこなす
  1 ケトライド系薬を使いこなす前に…
   ステップ1 薬剤の特徴を把握する
   ステップ2 作用機序を把握する
   ステップ3 忘れてはいけない副作用
  2 PK-PD理論から使いこなす
   ステップ1 PK-PDの特徴を把握する
   ステップ2 PK-PDパラメータの目標値は何か?
  ステップ3 組織移行性を考慮した投与を行う

3 Cmaxが重要な薬剤
 a.アミノグリコシド系薬を使いこなす
  1 症例からみる実践テクニック
  2 PK-PD理論から使いこなす
   ステップ1 PK-PDの特徴を把握する
   ステップ2 投与量、投与間隔は何を指標にすべきか
   ステップ3 PK-PDパラメータの目標値は何か?
 b.キノロン系薬を使いこなす
  1 症例からみる実践テクニック
  2 PK-PD理論から使いこなす
   ステップ1 PK-PDの特徴を把握する
   ステップ2 耐性菌の出現を考慮する
   ステップ3 MPC低値かつMSWが狭い薬剤を選択する

4 抗真菌薬を使いこなす
  1 症例からみる実践テクニック
  2 PK-PD理論から使いこなす
   ステップ1 PK-PDの特徴を把握する
   ステップ2 投与量、投与法を設定する
   ステップ3 抗真菌薬におけるPK-PDの限界を認識する

索引

近年、「適正抗菌薬療法」という言葉をよく耳にします。その目的は何でしょうか? 大きく3つあります。(1)最大限の治療効果を発揮させる、(2)副作用発現を最小に抑える、(3)薬剤耐性菌出現を抑える、の3つです。抗菌薬の用法・用量の調節でこれを達成することが可能になるわけですが、従来は経験的に用法・用量を決めていました。以前から、ペニシリン系薬は何回にも分けて投与する、逆にアミノグリコシド系薬はまとめて投与するとそれぞれ効果の上がることが知られていました。一方、投与された薬物の体内での動態を解析する薬物動態学(PK)と効果発現を解析する薬力学(PD)も進歩してきました。これらを1つの理論にして抗菌化学療法に応用したのが、Craig博士です。現在では、PK-PD理論はCraig理論ともいわれていますが、これにより抗菌薬の効果を最大限に発揮することが可能になりました。さらに近年では、臨床試験に入る前の新規開発抗菌薬であっても、そのPK-PDの成績がわかれば臨床効果・有効率を高い確度で予測することができるようになり、既存の抗菌薬の改善・改良にも役立っています。近年の日本に登場してきた抗菌薬は、確かにこのような薬が多いのです。必要最小限の投与で最大限の効果を生むことが可能になりますから、限りある医療資源の節減にもつながります。PK-PDは「エコ」でもあるのです。
 この理論、難解なものではありません。基本的なコツさえつかめばよいのです。本書ではそのコツをわかりやすく提示していますから、初心者でもPK-PD理論を容易に理解することができるようになります。しかも、実際の経験例を示しながらそのコツを示しているので、理解はさらに容易です。PK-PD理論を身に付けることで、医師、特に研修医や第一線の臨床医の治療成績を向上させるだけでなく、薬剤師や感染制御に携わる方々が理想的な診療アドバイスを示すことも可能になります。また、製薬企業のMRの方々がこの理論を習得するうえでも最適の学習書となります。本書が広く使われることを望みます。
2010年8月
渡辺彰、藤村茂

1990年代、ウィスコンシン大学のWilliam A。Craigらの精力的な研究の結果、PK-PD(薬物動態学−薬力学)理論が臨床に導入されるようになった。本書の序文にあるように、このPK-PD理論を実践することによって、(1)最大限の治療効果を発揮させ、(2)薬剤耐性菌の出現が抑えられ、(3)同時に副作用の発現を最小に抑えることが可能になり、(4)必要最小限の投与で最大限の効果を生むため医療資源の節約につながる、などの利点がもたらされる。従来の経験に基づいた「医者のさじ加減」の医療に対して、反省を促すこととなった画期的な概念といえる。実際、治療効果には差が認められており、抗菌薬療法にPK-PD解析を取り入れた場合とそうでない場合の効果の違いの報告では、入院期間は11日対16日、治療失敗率は17.5%対31.9%、死亡率4.9%対10.1%であったという(Int J Antimicrob Agents 19:349−353、2002)。
 しかしながら、これまでのPK-PD理論は以下のような記述で解説されてきたため、多くの医療関係者にとってわかりにくかった点は否めない。すなわち、PKとは、薬剤の用法・用量と体内薬物濃度の時間推移との関係を表す薬物動態で、生物学的利用度、分布容積、クリアランスなどの薬物動態を想定するパラメータが、年齢、体重、肝臓や腎臓の機能、遺伝的要因、環境的要因などによって変動し、薬物血中濃度が決定される。一方、PDとは、体内での薬物濃度と薬理効果の関係を表す薬力学で、作用発現に関与する生理的環境の違い、受容体などの濃度、受容体と薬物の結合強度の違いなどにより、作用・副作用の強さが決定される、というものである。わかったような、わからないような…。
 簡単にいえば、「PKとは薬と濃度の関係、PDとは作用部位における濃度と効果の関係」であり、本書では第1章においてこのようにやさしい用語解説を通してPK-PD理論を解説している。続いて第2章では起炎菌別にPK-PD理論に基づき、実際の抗菌薬の使用法を解説しており、日常臨床に直結した内容となっている。さらに第3章ではPK-PDにおける3つのパラメータ「Cmax(最大血中濃度)/MIC(最小発育阻止濃度)、% time above MIC、AUC(曲線下面積)/MIC」を中心に、PK-PD理論から各種の抗菌薬の使い方を解説している。一見すれば、本書が良本であると賛同できる。
 Craig理論があてはまりにくいことがありうることは、マクロライド系薬剤やニューキノロン系薬剤では十分推定できる。それは両者とも細胞内への移行がよく、またpostantibiotic effect(PAE)を有するためであろうか。実際、マクロライド系薬剤ではAUC/MIC、% time above MICの両者が関与するとされ、エリスロマイシンでは% time above MIC、クラリスロマイシンではAUC/MICがもっとも重要であることが判明した。最近ではアジスロマイシン(AZM)治療効果がAUC/MICのみで説明できないことがわかってきた。すなわち、AZMを1日1回、3日間投与した場合とAZM−SR(アジスロマイシン単回投与製剤)の単回投与の場合では、本書128頁に記載されているようにほぼ同じAUCであるにもかかわらず、後者の耐性菌に対する効果が高い。今後のPK-PD理論の深化が期待される。
 本書を通読することでPK-PD理論の概要がみえてくる。ただしPK-PDを考えるときには、個々の薬剤間の変動と個人間での変動を分けて考える必要があることを付記しておきたい。
評者 ●千田金吾
臨床雑誌内科107巻4号(2011年4月号)より転載