書籍

メモリークリニック診療マニュアル

精神科・神経内科から認知症を診る

監修 : 鹿島晴雄/鈴木則宏
編集 : 田渕肇/伊東大介
ISBN : 978-4-524-26328-8
発行年月 : 2011年4月
判型 : B6
ページ数 : 242

在庫なし

定価4,860円(本体4,500円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

平成20年に新設された慶應義塾大学病院「メモリークリニック」スタッフによる実践マニュアル。物忘れなど認知症の中核症状を主訴とする患者を、精神・神経科、神経内科それぞれの立場から診察を行う同クリニックならではの、多面的なアプローチで解説。精神科医、神経科医、さらには実地で認知症診療にあたるかかりつけ医におすすめのハンディな一冊。

I章 認知症とは

II章 メモリークリニックでの診療の実際
初診時の診療内容一覧表
1 診察前の評価
2 診療室において(1):診療の留意点
3 診療室において(2):評価スケール
   MEMO 認知症の評価

III章 神経学的評価
1 錐体外路の診かた
2 歩行の診かた
3 前頭葉徴候の診かた
4 失語、失行、失認

IV章 神経心理検査

V章 その他の検査
1 血液検査
2 髄液検査
3 脳波検査
4 画像検査

VI章 認知症の症候
1 中核症状
2 周辺症状とその治療

VII章 各論
1 Alzheimer病(AD)
    MEMO AIzheimer病の遺伝学
2 軽度認知障害(MCI)
3 脳血管性認知症(VD)
4 Lewy小体型認知症(DLB)
    MEMO Charles Bonnet症候群
5 前頭側頭葉変性症(FTLD)
6 進行性核上性麻痺(PSP)
7 大脳皮質基底核変性症(CBD)
8 第17染色体関連前頭側頭性認知症およびパーキンソン症候群(FTDP-17)
9 嗜銀顆粒性認知症(AGD)
10 Huntington病
11 正常圧水頭症(NPH)
12 プリオン病
    MEMO 感染症マニュアル:感染防止と介護
13 神経梅毒
14 HIV脳症
15 辺縁系脳炎
16 Behcet病
17 甲状腺機能低下症
18 代謝性疾患:神経内科の立場から
19 Korsakoff症候群
20 薬剤による障害
21 うつ病

VIII章 認知症の予防と進行防止

IX章 認知症のケア(介護)

付録 認知症にかかわる書類・手続きおよび相談窓口について
1 介護保険について
2 成年後見制度
3 自動車運転免許証について
4 困ったときの相談窓口

索引

かつてない急速な人口の高齢化に伴ってわが国の疾患分布もかなり変化し、急激に増加傾向を示している疾患がいくつかある。その中の最も代表的な疾患が「認知症」であろう。30年ほど前にはわが国にはAlzheimer病は極めて少なく、血管性認知症がその大多数を占めるといわれていたが、現在はわが国の認知症の大部分をAlzheimer病が占めている。それに伴って、認知症を診断・治療する専門医療施設および長期にケアする認知症専門施設の必要性が高まっている。この状況は全国一律に進んでおり、慶應義塾大学病院のある東京首都圏でも例外ではない。
 通常、健忘症状や行動異常症状が顕在化すると、軽症例は神経内科、重症例は精神・神経科で診察・治療する、という図式が、患者サイドにも、また医療サイドにもあり、重症度によって初期担当が変わるという不自然な役割分担が続いていた。しかしながら認知症の進行は連続的であり、いつ、どこからが重症なのか、という線引きは極めて困難である。かねてより認知症患者のスムーズな包括的医療の道を探索していたわれわれは、かなり以前から大学病院に対して、診療科を越えた診療体制の提案と申請を行っていたが、ようやく2008年1月、精神・神経科と神経内科2科合同運営による認知症外来「メモリークリニック」を開設するにいたった。すなわち初診患者は、頭部MRIや脳血流SPECT検査はもちろんのこと、両科の医師の診察を受けることにより神経学的な巣症状の有無と初期に見逃されやすい精神症状をスクリーニングすることが可能になるという画期的なシステムである。しかも、認知症外来では必須の各種神経心理検査を専属の技師を配置し、詳細かつ定期的に認知機能を評価するシステムを導入した。また、診察には患者本人のみではなく、生活をともにしている随伴者(家族)をも重要な情報資源として、初診時は2名の医師により患者と家族を別々に医療面接し、両方の立場からの独立した情報を得ることにしている。
 幸いなことに本専門外来「メモリークリニック」は開設後、患者サイドのみでなく医療サイドからも好評をもって受け人れられ今日にいたっている。運営が軌道に乗り患者数の伸びも一定のレベルに達したため、これを機会に本外来の運営内容を「メモリークリニック診療マニュアル」と題して、精神・神経科、神経内科、双方の担当者が中心になり。その内容をまとめて出来上がったのが本書である。
 本マニュアルは、当初、慶慮義塾大学病院にて精神・神経科あるいは神経内科を研修する初期あるいは後期研修医(専修医)のために実地マニュアルとして企画され配布されたものを骨格として作成された。したがって、認知症が疑われる患者が初診患者として受診して・スムーズに確定診断にいたるように、ある程度時系列的に方法・手段を記載した。さらにそれにとどまらず、認知症の予防と進行防止のポイントや、認知症のケア(介護)についても現場に即して示した。そして、実務上、医療関係者が逡巡することの多い、認知症にかかわる介護保険、成年後見人制度、自動車運転免許に関する書類や手続きについても項目として独立させ参照しやすくして、医療現場への便宜を図った。
 本書が、現在すでに「認知症外来」で活躍されている医療関係者のみでなく、これから専門外来を立ち上げようとなさっている方々にとっても、使いやすいマニュアルとして広く活用されることを期待したい。
2011年3月
慶應義塾大学精神・神経科 鹿島晴雄
慶應義塾大学神経内科 鈴木則宏