書籍

脂質異常症薬物治療テクニック

編集 : 吉田雅幸
ISBN : 978-4-524-26259-5
発行年月 : 2010年7月
判型 : A5
ページ数 : 178

在庫なし

定価3,240円(本体3,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

脂質異常症の薬物治療に関する実際書。初級編では薬剤特性を活かした治療テクニックを、中級編では病態からみた治療テクニックを、また応用編では糖尿病や高血圧、メタボリックシンドロームなど合併症を有する場合における最新の薬物療法の実践法を分かりやすく解説。薬剤選択の方法や処方パターン、効果判定のしかたや効果不十分な場合の対応など、明日からすぐに始められる脂質異常症の薬物療法テクニックを満載した。

●薬剤選択のフローチャート

I.薬物治療のための基礎知識
 A.脂質異常症とは
 B.脂質異常症の診断・分類
 C.治療薬の種類と特徴
  1.スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)
  2.フィブラート系薬
  3.EPA製剤
  4.小腸コレステロールトランスポーター阻害薬
  5.陰イオン交換樹脂
  6.その他
 D.効果的な薬物治療とは

II.レベルアップのための薬物治療テクニック
 初級編:薬剤特性を活かした薬物治療テクニック
  1.スタチンの薬物治療テクニック
  2.フィブラート系薬の薬物治療テクニック
  3.EPA製剤の薬物治療テクニック
  4.小腸コレステロールトランスポーター阻害薬の薬物治療テクニック
  5.陰イオン交換樹脂の薬物治療テクニック
 中級編:病態からみた薬物治療テクニック
 応用編:他疾患合併時・その他特別な場合の薬物治療テクニック
  1.メタボリックシンドローム合併の場合
  2.糖尿病合併の場合
  3.高血圧症合併の場合
  4.心疾患合併の場合
  5.肝機能障害がある場合
  6.腎機能障害がある場合
  7.家族性高コレステロール血症の場合
  8.家族性複合型高脂血症の場合
  9.高齢者での注意ポイント
  10.女性患者での注意ポイント

付録 薬剤一覧表

索引

コラム:大規模臨床試験
 ●4S
 ●JELIS
 ●CARE
 ●FIELD
 ●LIPID
 ●JUPITER
 ●ASCOT-LLA
 ●HPS
 ●PROSPER
 ●MEGA

脂質異常症は、冠動脈疾患の危険因子として重要であることは認知されていても、その治療についてはなかなか十分とはいえない状況であった。1997年に「高脂血症診療ガイドライン」が発表され、新知見の蓄積をもとに改訂され、2002年に「動脈硬化性疾患診療ガイドライン」が、また2007年には「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」が発表されている。2007年の新しいガイドラインでは、疾患名も「高脂血症」から「脂質異常症」と変化し、HDLコレステロールの低値がリスクであることも含めた血清脂質のバランスが重要であることが強調されている。また2008年から始まった特定健診でも総コレステロールに代わってLDLコレステロールが脂質項目に取り入れられ、動脈硬化を進展させるリポ蛋白(LDL)と退縮させるリポ蛋白(HDL)という概念が生まれてきている。
 2007年版ガイドラインにおける脂質管理目標値は、数値自体は2002年版と同様であるため、実地診療における混乱は少なく、わかりやすく受け入れられている。しかし、具体的に診療室の患者に対しどの薬剤がよいのかという選択には、患者のリスクや薬剤特性など種々の要因を加味しながら決めていく必要があり、多忙な臨床業務に反映させることは、実は容易ではない。特に近年、コレステロール合成阻害薬も多数登場し、作用機序の異なる薬物も開発されている。このような新しい治療薬の使い方や従来薬との併用療法など新たな治療戦略が提示され、脂質異常症の薬物治療を行う際にはいかに最適な薬剤を選択し、どのように組み合わせて処方するかという実際的なノウハウが必要となってきている。
 本書は、動脈硬化性疾患の最重要疾患である脂質異常症の治療について、特に薬物治療の組み立て方を理解していただくために企画した。執筆者の先生方は皆さん脂質異常症の研究者として第一人者であるだけでなく、豊富な臨床経験の持ち主である。本書が実地臨床で脂質異常症に取り組んでおられる全国の臨床医の方々に少しでもお役に立てれば望外の喜びである。
2010年7月
吉田雅幸

本書を読む機会を得た。編者の吉田雅幸氏は、旧来の知人であり、筆者のもっとも信頼する研究者の一人である。基礎研究に没頭している吉田氏がどのようなスタンスで、本書のような実践書を著したのか興味を感じた次第である。予想通り、きわめて緻密で、臨床家が識るべき内容を予見して著した書という印象であり、彼の研究のスタンスをよく表している。
 たとえば、最初のフローチャートである。一見単純にみえるフローチャートであるが、ここには、心血管リスクを念頭に置いて治療していただきたいというメッセージが色濃く出ており、おそらく、実地医療をされている先生方の期待を見事に射抜いている感がある。小気味のよい編集である。
 脂質異常症の治療目標は、あくまで動脈硬化性疾患の予防である。そこに視点をおいた患者管理が重要である。したがって、患者個人を診るときに患者の全体像を考えて治療に当たる必要がある。とくに、合併している可能性の高い生活習慣病である高血圧、糖尿病、喫煙を認識し治療することは重要である。脂質異常症の治療は、その中の一つなのだという認識がなくてはならない。したがって、実地医療をされている先生方にとってみると、動脈硬化性疾患予防のために、それぞれの疾患を管理しなくてはならず、それぞれのガイドラインの詳細な検討という大変な努力を要求される。そのときに必要とされる治療指針はシンプルであるに越したことはない。
 一方、それぞれの治療原則については、一度は通読されることが必要であろう。その意味で、本書には基礎知識としてまとめられているのである。ここでは脂質異常症の基本的知識とともに、治療薬の基本的な知識が簡略にまとめられている。そして、ここに取り上げられたコラムとして、4Sという大規模臨床試験が取り上げられているのも、筆者としても「わが意を得たり」の感がある。というのは、4Sという試験は、現在のスタチン治療の正当性を示すランドマーク的な試験だからである。
 最近、日本脂質栄養学会という「学会」からLDL−コレステロール値は高いほうがよいとするような「ガイドライン」が発表され、一般医家の間でも混乱が生じているさなかだからでもある。米国でこの問題が取り上げられ、まったく同様の議論がなされたことがある。1989年のことである。約20年遅れて、わが国で同様の議論が生じていることは、わが国の後進性を示すものともいえるが、一般臨床の場では看過できない問題でもある。4Sという試験を最初に取り上げたのは、このような問題にも応えるという意図を読み取れるように思う。
 そして、さらに重要なことは、本書ではレベルアップのためのテクニックとして、合併疾患のある場合の対応についても触れられており、ここに多くの情報が盛り込まれている点である。ここは、おそらく辞書のように各ケースに合わせて、参考にすればよいのではないだろうか。まさに診察室における座右の書としての位置を占めてもおかしくない書籍である。
 欲をいえば、脂質異常症治療の基本は生活習慣の改善であり、そのうえで、薬物療法にフォーカスしたというようなメッセージを読み取っていただけるようなひと工夫を織り込んでいただけたらという思いはある。これは、老婆心ながら、ガイドラインを作成したものの一人としての希望である。もちろん、本書はあえて、薬物療法にフォーカスした書であることは十分認識しているつもりではあるが。
評者● 寺本民生
臨床雑誌内科107巻5号(2011年5月号)より転載