書籍

これでわかる頭痛診療

頭痛外来でのノウハウとコツ

: 鈴木則宏/清水利彦/柴田護
ISBN : 978-4-524-26252-6
発行年月 : 2010年5月
判型 : A5
ページ数 : 160

在庫なし

定価3,024円(本体2,800円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

日本人の多くが悩まされている頭痛について、「頭痛外来」を有する慶應義塾大学病院の担当医が診療の実際をわかりやすく解説。専門外来ならではの経験をもとに、診療におけるコツや他科との連携など、すぐに役立つ情報を盛り込む。口絵に頭痛治療に用いられる主な薬剤の一覧表を写真付きで掲載。また付録では国際頭痛分類より特に重要な項目を抜粋して収載。頭痛患者を診る神経科医・実地医家におすすめの一冊。

I 日常でよくみる慢性頭痛とは
  A 慢性頭痛にはどんな種類があるか
  B なぜ頭痛が起こるのか
  C どのくらいの患者さんがいるか
 
II 頭痛を診るポイント
 1.診断はどのように行うのか
  A 頭痛患者を問診するうえで重要なポイント
  B スクリーナー
  C 頭痛ダイアリー・頭痛日記
  D 支障度・重症度評価のためのスケール
  E 画像検査
 2.危険な頭痛をまず除外する
  A 突発性頭痛を呈する器質性疾患の鑑別
  B 非突発性頭痛を呈する器質性疾患の鑑別
  C 他科への連携
 3.次に考えるポイントは何か
  A 持続時間が4時間以上で発作頻度が1ヵ月の半分未満の頭痛
  B 持続時間が4時間以上で発作頻度が1ヵ月の半分以上の頭痛
  C 持続時間が4時間未満の頭痛
  D これらに該当しない頭痛
 
III 片頭痛に対応する
  A 頭痛の特徴とは
  B 問診のコツ
  C 除外すべき器質性疾患と検査
  D 薬物治療
  E 非薬物治療
  F 生活指導
  G 特殊な片頭痛
 
IV 緊張型頭痛に対応する
  A 臨床病型と診断基準
  B 疫学
  C 病態生理
  D 問診のコツ
  E 症状
  F 身体所見
  G 鑑別診断
  H 治療
 
V 群発頭痛に対応する
  A 群発頭痛の特徴とは
  B 問診のコツ
  C 除外すべき器質性疾患と検査
  D 薬物治療
  E 非薬物治療
  F 生活指導
 
VI その他の頭痛に対応する
 1.薬物乱用頭痛への対応
  A 疫学
  B 病態生理
  C 症状
  D 診断
  E 治療
  F ケーススタディー
  G 予後
 2.小児の繰り返す頭痛への対応
  A 小児頭痛患者を診療するうえでの注意点
  B 小児片頭痛の臨床的特徴
  C 小児片頭痛の治療
 3.妊婦の片頭痛患者への対応
 4.三叉神経痛への対応
  A 疫学
  B 症状
  C 診断
  D 病態生理
  E 画像診断
  F 治療
 
VII 慢性頭痛に使う薬にはどのようなものがあるか
 
VIII よくある質問
 Q 頭痛の原因になりやすい薬はありますか?
 Q 片頭痛はなぜ女性に多いのですか?
 Q 片頭痛は脳卒中とは関係がありますか?
 Q 天気が悪くなると頭痛が起こりやすいですか?
 Q 漢方薬で治せますか?
 Q 頭痛はOTC薬でも治せますか?
 Q 頭痛は遺伝をするのですか?
 Q 高血圧と頭痛は関係がありますか?
 Q 頭痛によい食べ物や悪い食べ物はありますか?
 Q 睡眠と頭痛は関係がありますか?

付録:国際頭痛分類表
索引

なぜ、頭痛を訴える患者さんは増えているのか
 かつて鎮痛薬と酒石酸エルゴタミンしかなかった片頭痛治療は、21世紀とともに登場したトリプタンにより大きく変貌し、片頭痛患者の生活支障度が軽減しQOLも向上しました。また、同時に頭痛全体に注目が集まるようになり、片頭痛を含む「慢性頭痛」が日常生活や社会生産性に及ぼしている深刻な実態が明らかにされるようになりました。一方、このような頭痛医療の進歩に伴って、トリプタン無効の片頭痛発作やトリプタンの内服指導の難しさ、あるいは鎮痛薬やトリプタン自体による薬物乱用頭痛への変容など、現場では新たな疑問や問題点が出てきていることも事実です。また、学際的な領域では、片頭痛の発症機序の考え方に中枢神経性の要素を考慮することがすでに近年の研究の主流になってきており、片頭痛の予防の考え方も中枢神経の興奮性の抑制に変化しつつあり、予防治療の戦略も変化しつつあります、さらに、急性期治療にはポスト・トリプタンとしてCGRP(calcitoningene‐related peptide)受容体桔抗薬であるゲパント(gepant)系薬が、また発作予防薬としてトピラマートやガバペンチン、プレガバリンなどが臨床の現場に登場しつつあります。
 このようなダイナミックな動きの頭痛診療現場において、実際の頭痛診療はどうあるべきか、あるいは多様化している頭痛患者のニーズに、どのように応えることがベストなのかを考える時期に来ているように思われます。現在、慶應義塾大学病院の神経内科では一般の初診・再診外来のほかに専門外来としていくつかの疾患専門の特殊外来を設けています。「頭痛外来」はその中のひとつで週3枠設置して私を含めた3名の日本頭痛学会専門医が担当運営しています。開設後数年が経過し、その運営も順調に軌道に乗り始め、直接頭痛外来を受診される患者の方たちのみならず、多くの主治医からの紹介状を携えて受診される患者の方々も受診されています。
 頭痛外来を設けている医療施設の数は年々増えているようです。それは、慢性頭痛の患者数が増えており、その受け皿としての外来のニーズが高まっていることを示していると思われます。患者数が増加している理由には、複雑化する現代社会の身体的・精神的ストレスが強く作用していることは想像に難くありませんが、他方、冒頭で述べましたように片頭痛の治療法にトリプタンをはじめとする画期的な進歩がもたらされ、それが一般に広く普及したこともあげられると思います。しかし、頭痛の患者は、ただ一人として同じ症状を呈する方はいません。片頭痛の特効薬であるトリプタンも使い方が適切でないと、折角の強力な作用も発揮されることなく「効かない薬剤」として捨てられてしまう可能性もあります。そのためにも当頭痛外来では、担当のスタッフによる「頭痛症例検討カンファレンス」を定期的に行い、症状の分析、診断の是非、治療法の工夫など医師一人では得られないような数多くの新たな発見と診察治療のコツが見出され、情報が交換されます。
 このたび、需要が高まっている慢性頭痛に対応する外来のためのマニュアル作成の機会をいただきました。そこで、慶應義塾大学病院神経内科における私どもが運営している専門外来「頭痛外来」のこれまでの経験を基にした、実践に役立つ情報をできるだけ盛り込んだ内容を担当医により執筆する企画を立てました。したがって、本書は頭痛に関する最新の知識はもちろん、当外来で実際行っている難治性頭痛の治療上の裏技的なコツや他科との連携なども内容として考慮しました。
 慢性頭痛は生命的予後には直接影響を及ばしませんが、患者個人の日常生活および周囲・社会に及ぼす被害・影響は計り知れないものがあります。慢性頭痛診療は、神経学的検査でも補助検査と呼ばれるCT、MRI、脳波、そして血液検査でも異常がみられないのが大きな特徴です。したがって、客観的な異常データの分析を主な診断技術としている非頭痛専門医にとっては極めてアプローチしにくい診療といえると思います。頭痛診療は、患者の訴えをじっくり聞くことから始まります。これは最も重要なことであり、確定診断に至る一番の近道といえます。このような意味では、頭痛診療は医師‐患者の信頼関係と良好なコミュニケーションが最も必要とされる診療形態といえるかもしれません。
 本書により、頭痛診療の基礎と基本をマスターし、そのうえに最新情報を知っていただき、アプローチしにくい頭痛診療を明日からでも是非始めてみようと思われる読者の先生がひとりでも増え、多くのまだ頭痛外来を受診されていない患者の方々の一助となれば、著者一同これに優る喜びはありません。
 多くの頭痛患者さんが訴えるような、「長年頭痛で悩んでいたけれどもようやく決心して病院を受診したところ、『検査に異常がな<、命に別条ありませんよ。よかったですね。痛み止めを処方しておきますよ。』」で、おしまいになってしまう頭痛診療がなくなる日が近いことを祈ってやみません。
2010年4月
鈴木則宏