教科書

ネッター運動器疾患と解剖アトラス

総監修 : 菊地臣一
監訳 : 長谷川徹
ISBN : 978-4-524-26089-8
発行年月 : 2010年4月
判型 : B5
ページ数 : 342

在庫僅少

定価6,156円(本体5,700円 + 税)

正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

運動器の障害の評価・治療に必要な解剖・疾患の知識を、400点以上の美しいイラストと、要点をまとめた表で構成したビジュアルノート。部位別の基本的な解剖はもちろん、外傷・疾患の所見・病期分類など、臨床の場で必要な情報、確認したい事項をすばやく参照することができる。イラストによる視覚的な情報と、表とのコンビネーションで理解する、ユニークなアトラス。

Netter's Concise Atlas of Orthopaedic Anatomy

1章 脊椎 Spine
2章 肩 Shoulder
3章 上肢 Arm
4章 前腕 Forearm
5章 手 Hand
6章 骨盤 Pelvis
7章 大腿/股関節 Thigh/Hip
8章 下腿/膝関節 Leg/Knee
9章 足部/足関節 Foot/Ankle
10章 基礎科学 Basic Science

索引

われわれ整形外科医に限らず、解剖学的知識を糧とする外科医にとってネッターの解剖図は以前から傍用として用いられています。その背景には、ネッター独特のポイントを押さえた高精彩のイラストが実際のイメージをわれわれに与えてくれることにあります。
 今回、翻訳の機会をいただいたNetter’s Concise Atlas of Orthopaedic Anatomy は、そうしたネッターの長所を最大限生かしながら、一般整形外科診療で頻繁に遭遇する疾患に沿って臨床解剖を呈示してくれています。そして本書の最大の特徴は、基礎知識から診察、診断、治療に至る段階で重要となる情報が図と対比しながら表にまとめられていることです。これによって一般的知識に始まり、見落としてはいけないポイントが明確に理解できる構成になっています。
 本書の最大の利点となっているのが外傷を中心とした診断・治療に関する内容です。特に手術アプローチについては、手術専門書に匹敵する情報がわかりやすく簡潔に記載されています。これによって、本書は整形外科を学ぶ学生はもちろん臨床医にとって、臨床解剖を理解する上で非常に有益な指導書となっています。残念ながら、わが国の基礎医学教育においては、あまり臨床解剖に重点が置かれておらず、整形外科初期研修における専門的臨床知識の獲得には、基本的教科書から始まり専門的手術手技書に至るまで、多くの指導書を傍らに置いておく必要がありました。この点に関しても、本書は必要な情報をこの一冊の中でコンパクトに提供してくれており、これまでこれに匹敵する指導書はわが国にはありませんでした。
 本書は、整形外科疾患を扱う臨床医はもとより、整形外科学を学ぶ全研修医にとって必携の指導書となっています。さらに本書が理学療法士をはじめとするセラピストの方にも有用であるばかりでなく、整形外科専門医にとっても臨床解剖の整理に関して非常に有益な内容を提供してくれています。ぜひ本書をお手元に置き、教育から日常の診療業務においての参考にしていただければ幸いです。
2010年3月
長谷川 徹

本書はネッターシリーズの中でも特に運動器疾患にテーマを絞ったもので、2002年刊行Jon C. Thompson著の『Netter's Concise Atlas of Orthopaedic Anatomy』の日本語訳本である。総監修を菊地臣一先生が、監訳を長谷川徹先生がそれぞれ担当されている。2010年4月に出版されたばかりで、B5判、厚さがちょうど20mmの本書は、conciseとはいっても総数330ページの充実した内容である。
 ネッターの医学図譜集としては、『The CIBA Collection of Medical Illustration』(全13巻)や『Atlas of Human Anatomy』が有名であるが、本書ではそれらの中から運動器疾患に関連した450以上の図が厳選され、みやすく配置されている。ただそれのみにとどまらず、それぞれのイラストに関連した解剖学的あるいは臨床的な情報がすべて表形式で各ページに効率よく配置され、日常診療上必要十分な情報を提供している。やや小さめの活字ではあるが、十分みやすいレイアウトである。ネッターという名前を冠するが、むしろ著者らによるこれらの記述こそ本書の特筆すべき内容であろう。脊椎から足部/足関節までを各部位別に、それぞれが局所解剖、骨学、外傷、関節、靱帯、病歴と理学所見、筋、神経、動脈、疾患、手術アプローチの項目ごとに詳細かつコンパクトにまとめられている。また、「もしそれを見落とした場合、患者に大きな不利益を与えるか、致命的な結果となるもの」は赤字で示されており、この点、親切このうえない。たとえば、上腕骨近位端骨折では腋窩神経損傷、上腕骨骨幹部骨折では橈骨神経麻痺など、初学者が押さえなければならない必須ポイントが、それぞれ赤字で示されている。一方、今まで一般に「Finkelsteinテスト」と呼ばれていた診察手技が、本書では「Eichhoffテスト」と改められている。これは訳者の先生のご配慮であるかもしれないが、この一点をみてもup-to-dateな内容であることが推しはかられる。
 Netterはその生涯で一体何枚のイラストを描き残したのであろうか。われわれにとって、それらは幾度となくお目にかかる慣れ親しんできたイメージであろう。彼の豊富な解剖学的知識と医学全般に関する深い博学的見識はある意味、驚嘆に値する。その1枚1枚に込められたメッセージは、医学にたずさわる者の心をとらえて離さない。たとえば学生時代に大学の図書館で目にした『The CIBA Collection of Medical Illustration』には、どのページを開いても彼の独特な世界が隅々まで広がっていた。私個人の思い出としては、たとえば狭心症発作の誘因を一枚の図で表したイラストが印象深く、今でも脳裏に焼き付いている。この機会にgoogleで検索単語を工夫し、この1枚と久しぶりの再会を遂げることができた。肉付きよい中年男性がレストランで至福の時間を過ごした後、1人雪道に出て、寒い木枯らしに吹かれた途端に狭心症発作に見舞われた一瞬の場面を切り取った印象的な構図である。右手で左胸を押さえ、また左手に抱えた重い鞄を今にも落とそうとしているその顔には、突然の出来事に対する得体の知れない不安感と、誰かに助けを求める苦悩の表情がうかがわれる。レストランの中でドアの窓越しに談笑する男女の客には路上の出来事を知る由もない。学生当時、循環器の試験ではこのイラスト1枚に描かれた情景を思い起こすことによって、狭心症発作の誘因すべてを思い出すことができた。彼の遊び心と医学生に対する細やかな心遣いとが身にしみて感じられた。
 臨床医学、特に整形外科学においては、診断から治療方針の決定、手術の成功にいたるまで、十分な解剖学的知識は必須である。本書は運動器に関する解剖学的解説を網羅するとともに、それらに臨床に関する最新の知識と解説を織り交ぜた、ほかでは得がたい教科書である。整形外科学初学者にとっては当面の座右の書たりうるであろうし、またたとえば外来の診察室におかれれば、日々の知識の確認や患者への説明といった場面で活躍するに違いない良書である。
評者● 弦本敏行
臨床雑誌整形外科61巻11号(2010年10月号)より転載