書籍

膝を診る目

診断・治療のエッセンス

: 木村雅史
ISBN : 978-4-524-26047-8
発行年月 : 2010年4月
判型 : A4
ページ数 : 234

在庫なし

定価12,960円(本体12,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

膝の診療において的確な診断を得るため、適切な治療方針をたてるために、教科書には書かれていない診察の要点、また見逃してはいけない徴候や画像所見についての見方・考え方のエッセンスを膝臨床の第一線にいる著者のエキスパートオピニオンとして提示。600枚を超えるカラフルなイラスト・写真でビジュアルに解説。

1 膝の診方の基本的知識
 A.膝はなぜ障害を生じやすいか
 B.膝関節の運動と解剖

2 膝の診察
 A.問診に入る前に
 B.問診
 C.自覚的所見
 D.視診
 E.触診と理学検査
 閑話1 膝を治すの?人を治すの?

3 単純X線写真の見方
 A.全体像
 B.側面X線像
 C.正面X線像
 D.膝蓋骨軸射像(スカイライン像)
 E.特殊撮影法
 F.X線写真で注意すべき骨周囲組織の所見
 G.X線写真でみられる異常所見と間違えやすい所見

4 MRIの見方
 A.全体像
 B.半月板断裂の見方
 C.前十字靱帯(ACL)損傷の見方
 D.後十字靱帯(PCL)損傷の見方
 E.内側側副靱帯(MCL)損傷の見方
 F.後外側支持機構(PLC)損傷の見方
 G.膝蓋骨脱臼の見方
 H.離断性骨軟骨炎(OCD)の見方
 I.特発性膝骨壊死(SONK)の見方
 閑話2 誤診を防ぐには?

5 膝のスポーツ障害
 A.スポーツ障害の発症メカニズム
 B.Osgood-Schlatter病
 C.膝蓋靱帯(膝蓋腱)炎
 D.Sinding Larsen-Johansson病
 E.Sleeve fracture
 F.有痛性分裂膝蓋骨
 G.腸脛靱帯炎
 H.鵞足炎
 I.膝窩筋腱炎
 J.疲労骨折
 K.離断性骨軟骨炎(OCD)
 L.原因不明の膝痛(anterior knee pain)
 M.スポーツ障害の予防
 閑話3 スポーツをする膝とお年寄りの膝

6 膝のスポーツ外傷I:膝靱帯損傷
 A.新鮮靱帯損傷の発生頻度
 B.受傷機転
 C.現症診断
 D.徒手不安定性テスト
 E.前十字靱帯(ACL)損傷の診断と治療
 F.後十字靱帯(PCL)損傷の診断と治療
 G.内側側副靱帯(MCL)損傷の診断と治療
 H.後外側支持機構(PLC)損傷の診断と治療
 I.複合靱帯損傷の診断と治療
 J.鑑別診断のポイント
 K.大腿四頭筋および膝屈筋群の張力ベクトルの膝角度による変化
 L.膝靱帯損傷治療成績の評価法
 M.膝靱帯損傷の予防

7 膝のスポーツ外傷II:半月板損傷
 A.半月板損傷の治療の変遷
 B.半月板の解剖と機能
 C.半月板損傷の発生頻度と病態
 D.症状と臨床診断
 E.保存療法
 F.半月板切除術
 G.半月板修復術
 H.半月板治療成績の評価法
 I.半月板治療の今後の展望

8 膝のスポーツ外傷III:膝蓋骨脱臼(膝蓋骨不安定症)
 A.発症原因と分類
 B.易損傷性素因、症状、診断
 C.画像診断
 D.鏡視診断
 E.治療の原則
 F.手術適応と術式
 G.治療成績の評価法
 閑話4 運動器不安定症への個人的な思い

9 変形性膝関節症
 A.成因と病態
 B.分類
 C.症状と診断
 D.保存療法
 E.手術療法
 F.治療成績の評価法
 G.膝の特発性骨壊死(SONK)
 H.膝OAの予防法は?

10 膝の炎症性疾患、代謝性疾患および腫瘍
 A.炎症性疾患、代謝性疾患
  1.化膿性膝関節炎
  2.関節リウマチ(RA)
  3.痛風
  4.偽痛風(CPPD結晶沈着症)
  5.神経病性関節症(Charcot関節)
 B.腫瘍性疾患
  1.外骨腫(骨軟骨腫)
  2.骨巨細胞腫
  3.骨肉腫
  4.滑膜性骨軟骨腫症

11 非外傷性膝関節血症および膝(周辺)骨折
 A.非外傷性膝関節血症
  1.色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS)
  2.特発性出血
  3.その他
 B.膝および膝周辺骨折
  1.脛骨プラトー骨折
  2.脛骨顆間隆起骨折
  3.膝蓋骨骨折
  4.脛骨粗面裂離骨折
 C.その他(内反膝およびBlount病)

索引

膝に痛みを訴え整形外科外来を訪れる患者は腰痛と並んで非常に多い。近年、レクリエーショナルスポーツの愛好者は年齢を問わず増加し、さらに競技スポーツ、プロスポーツの隆盛に伴って膝のスポーツ障害は増加している。一方、高齢化社会を迎えた現在、高齢者にみられる変形性膝関節症(膝OA)の患者は本邦で1、000万人を超えるとも言われており、社会の膝OAに対する予防・台療の需要が高まってきている。
 筆者が1971(昭和46)年、群馬大学整形外科学教室に入局した当時は、臓器疾患別の特殊外来は股関節、手の外科、骨腫瘍、小児整形などに限られ、膝、肩などを称する外来はなく、一般外来の中に少数の患者を見つけるのみであった。また、手術においては“great incision is great surgeon”とも言われており、現在広く行われている関節鏡視下手術を含めた最小侵襲手術の概念などはまったくなかった。1978年、東京逓信病院整形外科部長の故・渡辺正毅博士に師事し、関節鏡学を学ぶ機会を得て以来、筆者は30年間にわたり、ほぼ毎日、膝を診続けてきた。その中で、教科書や医学誌には強調されていない診察の仕方、また見逃してはいけない徴候やX線所見についてまとめてみる必要の思いにかられた。それらを知ることは正確な診断を得るため、また適切な治療方針を得るために十分に参考になると信じる。
 本書は、膝を診る機会の多い若手医師をはじめとする医療に携わる方に一読していただき、今後、膝を診る目として、漠然と診るのではなく、さまざまな角度からフォーカスをおいて楽しく診られるようになることを期待して筆を執ったものである。膝の診方と治療までの考え方のエッセンスをまとめたものと自負している。一方で、やや難解なバイオメカニクスなどを簡潔に解説するために主観に偏っている点、また、エビデンスが得られていない病態の解釈とその治療法に触れている点についてはお許し願いたい。そのようなところは読者が指摘・批判し、そしてご意見を頂くか、その批判のエビデンスを作って頂ければ筆者にとってこのうえない喜びである。
2010年4月
木村 雅史

このたび、善衆会病院理事長・院長の木村雅史先生による本書が南江堂より上梓されました。先生はわが国の膝関節外科、関節鏡手術を長年にわたり牽引してこられたリーダーのお一人であります。序文のように木村先生は、1978年に東京逓信病院で渡辺正毅先生から直接関節鏡学を学ばれています。渡辺先生は関節鏡の父と世界中で称される、日本の代表的な整形外科の先生でいらっしゃいます。当時の東京逓信病院は関節鏡をこれから行おうとする先生方のまさにメッカであったと思われます。渡辺先生に直接師事されましたことは羨ましい経験であり、獲得されました関節鏡技術を木村先生なりに工夫され、先生は半月板の治療において本邦の第一人者であり続けてこられました。それのみでなく前十字靱帯損傷、膝蓋骨脱臼の病態や治療に関しても、優れた多くの論文を発表されております。まさしくcomprehensive knee surgeonの先生が記載された本書は、単著の欠点とされている分野による偏りが少なく、著者独特なリズムと揺らぎの中に一貫した哲学が貫かれており、単著の長所が十分生かされた読みやすい本に仕上がっています。
 本書は、1。膝の診方の基本的知識、2。膝の診察、3。単純X線写真の見方、4。MRIの見方、5。膝のスポーツ障害、6。膝のスポーツ外傷T―膝靱帯損傷、7。膝のスポーツ外傷U―半月板損傷、8。膝のスポーツ外傷V―膝蓋骨脱臼(膝蓋骨不安定症)、9。変形性膝関節症、10。膝の炎症性疾患、代謝性疾患および腫瘍、11。非外傷性膝関節血症および膝(周辺)骨折の11章より構成され、膝に関するほぼすべての分野が記載されています。
 まず、本書をひもといてみると、たいへん色彩豊かな写真と挿図と文字とのバランスがきわめてよくとれており、目に入った瞬間に読書欲をそそる構成の本といえます。そして、特に強調したい部分が黒字ではなく青字のゴチックにされており、読者へのアピールにも十分配慮がなされています。いくら内容が優れていても手にとってもらえなければ著者のメッセージは伝わりません。そしてnoteという見出しで、たとえばHoffa病、膝関節成長痛などがメモとして簡潔にわかりやすく記載されています。それ以外にも閑話として、木村先生の個人的な経験やぜひ後輩に伝えておきたい失敗談を含めた先生の哲学が4話挿入されていますが、いずれも若い先生方には有用なメッセージであると思われます。最初の「膝の診方の基本的知識」には、膝のバイオメカニクスの妙や解剖がわかりやすく記載されています。臨床と結びついた解剖の説明は、今から膝を志そうとする初心者にはきわめて理解しやすい構造になっています。
 次に「膝の診察」でありますが、基本はほぼすべて記載されており、初心者にとって見逃してはいけない点、知っておかなければいけない必要な知識はほぼ網羅されています。単純X線像やMRIの見方もよく記載されています。各論も最低限必要な内容はすべて盛り込まれており、膝に関する基本知識は本書1冊で十分であろうと考えます。
 本書が完成したのも、木村先生が渡辺先生に師事された後、30年間たゆまず膝に携わり続け、後輩に自らの経験と知識を伝えたいという熱い思いの賜物であり、敬意を捧げます。
 ただ本書は百科事典とは異なり、膝に関するすべての疾患が記載されているわけではなく、また文献に関しても十分な量が網羅されてはいないかもしれません。きわめてまれな症例に対する知識が必要なとき、より専門的で高度な治療法の必要に迫られるときは、詳細な専門書を当たるべきでありましょう。ただ本書は膝を志す若い先生やすでに専門家ではあるが、もう一度最新の知識の整理をしたい先生方には購読が強くすすめられる新刊書であります。膝を漫然と診るのではなく、病態を自分なりに考える、また新たな治療法を創造するための足がかりになるべく、本書が活用されることを心より切望いたしております。
評者● 越智光夫
臨床雑誌整形外科61巻11号(2010年10月号)より転載