書籍

肺がん薬物療法Q&A

臨床現場での考えかた

編集 : 中西洋一
ISBN : 978-4-524-26003-4
発行年月 : 2009年10月
判型 : B5
ページ数 : 182

在庫なし

定価5,076円(本体4,700円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

肺がん薬物療法における標準的治療から、ガイドライン通りにならないケースの対処法と考えかたまでを第一線の医師がQ&A形式でわかりやすく解説。化学療法における疑問、分子標的治療薬の使い方、合併症がある場合の治療の実際、副作用対策などについて、臨床現場で実際に困る内容が満載されていて現場ですぐに役立つ頼りになる一冊。

I章 肺がん薬物療法の基礎知識
1.細胞障害性治療薬の作用機序
2.分子標的治療薬の作用機序
3.抗がん剤の薬物動態
4.主な副作用とその対策

II章 ガイドラインに基づいた肺がん薬物療法
1.非小細胞肺がん
2.小細胞肺がん

III章 肺がん薬物療法の実際
1.化学療法の実際
 Q1 抗がん剤治療において効果が持続する場合、どこまで治療を続けたらよいですか
 Q2 抗がん剤治療で原発巣は縮小しているが、新たな転移巣が出現した場合はどうしたらよいですか
 Q3 まれな組織型の肺がんの薬物療法はどのようにしたらよいですか
 Q4 抗がん剤使用時に重い副作用が出た場合、次の治療はどのように進めたらよいですか〜減量やスキップをどのように考えたらよいですか〜
 Q5 小細胞肺がんの2nd line以降のレジメンはどうしますか
 Q6 初回化学療法後はどのようにフォローしたらよいですか〜画像検査や2nd lineのタイミングはどのように考えるか〜
 Q7 初回化学療法後の維持療法は有効ですか
 Q8 患者が入院治療から外来治療への移行を希望した場合、どのような点に注意して治療を継続したらよいですか
 Q9 化学放射線療法の適応には年齢や腫瘍の大きさなどに制限がありますか
 Q10 化学放射線療法の抗がん剤は何を選択し、どのくらいの期間使用したらよいですか
 Q11 化学放射線療法中に抗がん剤の副作用が強く現れた場合、その後の化学療法はどのようにしたらよいですか
2.分子標的治療薬の実際
 Q12 EGFR-TKIのなかでイレッサとタルセバはどのように使い分けをしたらよいですか.また、これらを初期治療で用いてもよいですか
 Q13 EGFR-TKI使用時に下痢や肝障害が生じた場合、治療をどのようにしたらよいですか〜減量すべきか、中止すべきか〜
 Q14 EGFR-TKI使用中は、どのような検査をどのようなタイミングで行ったらよいですか
 Q15 EGFR-TKIをやめるタイミングはどのように考えたらよいですか〜EGFR-TKIが効かなくなった場合はどうするか〜
3.手術関連
 Q16 術前化学療法や術前放射線療法の適応はどのように考えたらよいですか
 Q17 術後補助化学療法はいつごろから始めたらよいですか〜適応条件と施行するタイミングについて〜
 Q18 術後補助化学療法のレジメンは日本人の場合、何を用いたらよいですか
4.合併症のある患者の薬物療法
 Q19 透析中や腎機能がわるい患者の薬物療法はどうしたらよいですか
 Q20 肝機能がわるい患者の薬物療法はどうしたらよいですか
 Q21 心機能がわるい患者の薬物療法はどうしたらよいですか
 Q22 間質性肺炎合併の患者の薬物療法はどうしたらよいですか
 Q23 全身状態がわるい患者が薬物療法を希望した場合、どうしたらよいですか
 Q24 重複がんが存在する際の治療方針はどのように立てたらよいですか
 Q25 超高齢者に対して薬物療法を行ってもよいですか
 Q26 発熱している患者に対して薬物療法を行ってよいですか
5.がんに随伴する症状の治療
 Q27 がん性心膜炎の治療はどのようにしたらよいですか
 Q28 がん性髄膜炎の治療はどのようにしたらよいですか
 Q29 がん性胸膜炎の治療はどのようにしたらよいですか
 Q30 オピオイド抵抗性のがん性疼痛はどうしたらよいですか
6.副作用対策の実際
 Q31 薬物療法による末梢神経障害はどのように治療したらよいですか
 Q32 脱毛の対策はどのようにしたらよいですか.また脱毛の少ないレジメンがありますか
 Q33 分子標的治療薬による皮疹や爪囲炎はどのように対処したらよいですか
 Q34 薬物療法による「しゃっくり」をどのように治療したらよいですか
 Q35 薬物療法時の貧血に対してはどのように対処したらよいですか
7.その他の治療法
 Q36 「免疫療法を受けたいのですが…」と尋ねられた際にどう答えたらよいですか
 Q37 代替療法にはどのようなものがありますか
8.患者指導の実際
 Q38 薬物療法中の食事指導はどのようにしたらよいですか
 Q39 薬物療法を患者に説明する際にどのような点に注意して話をしたらよいですか
 Q40 薬物療法を行っている患者に禁煙や禁酒は勧めたほうがよいですか

索引

肺がんの診断と治療は、エビデンスに基づいて実施されなくてはならない。日本肺癌学会は、世界中のエビデンスをもとに「EBM の手法による肺癌診療ガイドライン」を発刊した。わが国の肺がん診療に際して広く活用されており、がん診療の均てん化にも一定の寄与をしているものと思われる。
 しかし、それで十分でないことは肺がん診療に従事している医療者なら十分に認識しているはずである。それには多くの理由がある。第1に、新しくない。最新版は2005年版で現在更新作業が進められている。年々更新されるエビデンスを逐一フォローすることは容易でない。第2にアジア人のデータに乏しい。臨床試験におけるアジア発のエビデンスは14%にすぎない。EGFR‐TKIの薬効を含めて人種差の重要性が認識されつつあるが、アジア人を対象としたエビデンス不足は、日本のガイドラインとして十分か疑問が残る。第3に、大半のエビデンスが全身状態と臓器機能が良好な患者のものである。肺がん患者の多くは高齢で臓器機能に何らかの問題を抱えている。発信されるエビデンスに、実地医療でなし得る最適医療が完備されているわけではない。
 ガイドラインは正確かつ精緻に作成されているものではあるが、ガイドラインにも一定の限界があることは当然のことである。エビデンスもまた然りである。本書は、ガイドラインとエビデンスに軸足を置きながらも、これらが答えきれない実地医療からの疑問をあえて取り上げ、各方面のエキスパートに回答をいただいたものである。著者たちからは、執筆に苦労したという苦情をたくさんお寄せいただいた。著者の苦情は編者の思うつぼである。読者の方々に本書で実感していただきたいことは、エビデンス構築に実績を残しているエキスパートであっても、実地医療のなかでは悩み、考え、かつ一定の結論を出して肺がん診療にあたっているということである。しかし、ここに記されている「個人的な見解」もやはりエビデンスと科学的知見をベースに構築されたものであり、疑問のいくつかはいずれは科学的に解決されるべきものと考えられる。
 著者の皆さんには、編者自身が困っている、あるいはこれでよいのか迷っている疑問にお答えいただいた。したがって、一部重複した内容もあり、また一部矛盾した内容も含まれている。しかし、実地医療で生じる悩ましいことをできるだけ集積したつもりである。掲げた疑問のいくつかが診療上の参考になれば幸いである。ただし、できることなら、内容を盲信することなく、結論にいたる道程を読み取っていただければ本書の価値がより高まるものと思っている。
2009年10月
九州大学大学院医学研究院臨床医学分野内科学講座呼吸器内科学分野
中西洋一