書籍

画像診断ヒヤリ・ハット

記憶に残る画像たち

編集 : 放射線診療安全向上研究会
ISBN : 978-4-524-25325-8
発行年月 : 2010年3月
判型 : B5
ページ数 : 290

在庫なし

定価5,400円(本体5,000円 + 税)

正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

画像診断で卵巣嚢腫と思い込んでいたら……手術中に虫垂粘液腫と分かりヒヤリ・ハット!  頭部を始めとした全身から、婦人・小児科、PET検査まで、日常診療でのありとあらゆる画像診断のヒヤリ・ハットを収載した一冊。軽妙な対話やクイズで楽しく読み進めるうちに、画像診断の落とし穴を見抜く目が自然と身につく。「一度知れば、二度と同じ過ちはせずにすむ!」

災害は忘れた頃にやってくる.誤診は慣れた頃にやってしまう.
起こってしまえば後の祭り.起こる前に起こさぬ手だてを.
CHAPTER 1 頭部
 CASE 1 一見正常に見える頭部CT
 CASE 2 頭蓋底に見られる高吸収
 CASE 3 慢性硬膜下血腫一側性?
 CASE 4 脳幹被蓋部の血腫?
 CASE 5 ヘルペス脳炎?
 CASE 6 慢性硬膜下血腫?
 CASE 7 脳溝・脳槽に注意
 CASE 8 骨と脳表に注意
 CASE 9 変形性頸椎症?
CHAPTER 2 頭頸部
 CASE 1 聴神経腫瘍? 転移?
 CASE 2 上咽頭癌ステージング!
 CASE 3 甲状腺癌術前検査
 CASE 4 副鼻腔炎?
 CASE 5 耳下腺腫瘍?
 CASE 6 ハットして以前のCTを見る
 CASE 7 耳下腺癌術後再発なし??
 CASE 8 軟部腫瘍?
CHAPTER 3 肺
 CASE 1 本当に肺動静脈奇形?
 CASE 2 思い込みは禁物!
 CASE 3 肺癌を探せ
 CASE 4 陰影の改善しない肺炎?
 CASE 5 この結節の経過観察は適当か?
 CASE 6 以前の写真では?
 CASE 7 この中心静脈(CV)カテーテルは異常?
 CASE 8 肺水腫?
 CASE 9 市中肺炎?
CHAPTER 4 乳腺
 CASE 1 はじっこまでよく見なさい!
 CASE 2 ちょっと濃度高い??──甘く見てはいけない
 CASE 3 左右対称!でも似て非なるものあり
 CASE 4 こんなの楽勝!誰でも分かるよ!!……?
 CASE 5 失礼(?)ですが、男性にもあるんです
CHAPTER 5 心大血管
 CASE 1 脳卒中なんだけど……
 CASE 2 心拡大を伴わない肺水腫
 CASE 3 腫瘍の処置が遅れて……
 CASE 4 白血病の治療中
CHAPTER 6 肝胆膵
 CASE 1 古典的肝細胞癌を見落としやすい部位
 CASE 2 小さな膵腫瘤
 CASE 3 原因不明の消化管出血
 CASE 4 上腸間膜動脈根部の壁肥厚
 CASE 5 膵癌と決めつけられるか?
 CASE 6 何か変な急性胆炎
 CASE 7 限局した肝表面の早期濃染像
 CASE 8 雲隠れした肝腫瘍
 CASE 9 Focal fat sparing vs.肝腫瘍
 CASE 10 原因不明の腹痛
 CASE 11 消化管穿孔か?
CHAPTER 7 消化管
 CASE 1 結果オーライ
 CASE 2 少量のfree air、10分間待てるか?
 CASE 3 大腸壁を探せ
 CASE 4 バルーン使用例
 CASE 5 胃集検写真の読影
 CASE 6 限局する小腸の拡張
 CASE 7 ノミ?
 CASE 8 イレウスの原因は濃染腫瘤?
 CASE 9 腹部単純X線写真がよいかも?
 CASE 10 消化管異物か?
 CASE 11 急性脳症と腸炎
 CASE 12 腸管の限局性壁肥厚を見たらまず腫瘍を疑うのが定石だが……
 CASE 13 体壁も見よう
 CASE 14 他院のCTは読みにくい
 CASE 15 憩室炎か?
 CASE 16 腸管壊死か?
 CASE 17 難治性潰瘍性大腸炎?
 CASE 18 見逃しやすい癌、膵にはIPMN
 CASE 19 憩室と癌
 CASE 20 残胃のヒダに注目!
 CASE 21 癌と収縮輪
CHAPTER 8 婦人科
 CASE 1 妊娠中の卵巣癌?
 CASE 2 骨盤内の胞性腫瘤
 CASE 3 右卵巣腫でしょうか?
 CASE 4 閉経後女性の増大する骨盤内腫瘤
 CASE 5 腹膜の肥厚を見たら
 CASE 6 T2強調像で高信号を示す卵巣腫瘤
 CASE 7 卵巣腫瘍茎捻転?
 CASE 8 卵巣腫瘍?
 CASE 9 子宮筋腫?
CHAPTER 9 小児
 CASE 1 持続する喘鳴
 CASE 2 肺炎か?
 CASE 3 閉塞原因は腫瘍か?
 CASE 4 腹水の原因は?
 CASE 5 出血の原因は?
CHAPTER 10 造影剤・検査
 CASE 1 直腸異物内にガス多い?
 CASE 2 肝腫瘍の鑑別
 CASE 3 CT造影後の静脈内ガス?
 CASE 4 遠隔読影のピットホール
 CASE 5 目が行くか?
 CASE 6 一見正常な腹部鈍的外傷
 CASE 7 膵に注意! 造影剤が……
 CASE 8 整形外科疾患か?
 CASE 9 脳卒中だろうか?
 CASE 10 女性を見たら……
CHAPTER 11 PET
 CASE 1 乳癌術後:多発性骨転移?
 CASE 2 肺癌術後:再発診断
 CASE 3 悪性リンパ腫化学療法後
 CASE 4 PETドックにて
 CASE 5 猫だまし!
CHAPTER 12 腎
 CASE 1 副腎腫瘍?
 CASE 2 腎胞でいいの?
 CASE 3 検査方法は最適か?
 CASE 4 後腹膜腔の脂肪性腫瘍
 CASE 5 交通外傷後の異常なガス像出現
 CASE 6 水腎症の原因は……
 CASE 7 もっと下を
 CASE 8 腹水とfree air
CHAPTER 13 骨軟部
 CASE 1 高齢者の股関節痛
 CASE 2 横紋筋肉腫、骨転移?
 CASE 3 骨腫瘍?
 CASE 4 肺癌、骨転移?
 CASE 5 cyst mimicker
 CASE 6 頸部小腫瘤、リンパ節腫大で紹介.切除してよいのか?
 CASE 7 氷山の一角?
 CASE 8 血液・尿検査で異常のない仙骨溶骨性腫瘍がある.骨転移?
 CASE 9 子宮頸癌治療後の骨転移?
索引

ヒヤリとしたり、ハットしたりする経験は、印象が強く記憶にとどまりやすい。痛い思いをすれば、勉強になり、一皮むけて強くなることが多い。研究会や学会で活躍しておられるベテランの先生方はいろいろな症例を経験され、どのようなピンチでも切りぬけられる知恵と力を持っておられるように感じることがある。ベテランの先生も最初から経験豊富であったわけではなく、成功とともに失敗やヒヤリ・ハットを自分で体験されてたくましくなられたのだと想像する。
 本書は画像診断の‘いろは’を系統立って解説することを目的としていない。画像診断で陥りやすいワナや押さえておきたいポイントを印象深く、記憶に残りやすいかたちで明らかにすることを目的としている。ベテランの先生方が実際に年数をかけて経験されたこと、数多くの勉強会に参加して1つ1つ学習されたポイントを集めて症例集にした。もちろん、ページ数の関係で画像診断のすべてのポイントを記載しきれるものではないが、この症例集に目を通すことで、実際に自分が症例の診断レポートを書いているかのようにヒヤリ・ハットを経験できると思う。年数をかけて体験すること、失敗などで痛い思いをするところを本書で仮想的に経験できる。脚色された初期診断の会話文では、関西弁などのボケとツッコミが見事に成立している部分があり、その後の経過では自然と緊張してしまうところもある。飽きずに興味を持続して、読み進めることができると思う。読み終えられた先生は以前より注意深くたくましくなっている自分に気づかれるでしょう。
 京滋地区で平成9年ごろから甲賀病院の坂本先生や京都市立病院の早川先生らのご指導のもとで、救急画像やヒヤリ・ハット症例の勉強会をしてきた。平成16年からはバイエル薬品(株)との共催で放射線診療安全向上研究会を発足させて、関西地区を中心に画像診断やIVRのヒヤリ・ハット症例とその対応策について学んでいる。いずれも1人のヒヤリ・ハット体験をそれだけで終わらせることなく、多くの人に貴重な経験として学習してもらうことを目的としている。本症例集は放射線診療安全向上研究会の世話人が発案し、編集を担当した。見やすく、分かりやすくを目指し、見開き2ページで1つの症例を解説することを基本にした。執筆の先生には大きな足かせとなったが、おかけで大事なポイントを簡潔に分かりやすく表現できたと考える。
2010年3月
放射線診療安全向上研究会 代表世話人 藤田正人

臨床医にとっては診療科に関係なく、己の担当する診療領域の画像診断には、相当に精通しなければならないと思っている。筆者は呼吸器外科を専門としているが、その手始めは肺の画像診断であった。左右肺の5葉を一つ一つモールで気管支・肺動脈・肺静脈と色分けしてその立体構造をつくり、それを基本に胸部X線写真、断層写真、CTを読影させられた。はじめのうちは断層写真やCTの読影が嫌で嫌で仕方がなかったが、そのうちにスラスラと異常陰影と肺の構造物との関係を説明できるようになり、またそれを切除した肺で証明できるようになると、さらに自信がもてるようになったのを覚えている。
 しかし、時にその自信を吹き飛ばされてしまうような事態に遭遇することがある。良性疾患と考えていた病変が、ある日突然悪性所見を呈し、それも治療も容易ならざる状況で発見されたりすると、患者へ申し訳ないと思うと同時に、これまで培ってきた己の診断能力の未熟さを痛感させられる。きわめてまれな疾患であったり、今まで確立されてきた診断基準では測りきれないものであれば言い訳もなりたつかもしれないが、こと患者の診断においては、常に例外があると思って日ごろからその目でみなければと戒めるようにしている。
 本書は放射線診断の専門の先生方が放射線科の卵たちに向かって、画像診断で陥りやすいワナや抑えておくべきポイントを、過去にヒヤリとしたり、ハットした画像を示しながら説明している、いわば「画像診断版医療安全のために」である。この場合の医療安全とは通常のものと若干意を異にするが、限られた時間や診療環境の中でいかに「誤診」の少ない医療を行うかのノウハウがぎっしり詰まっている。そして内容的には、「こんな画像を呈することもあるんだよ」といった浅薄なものではなく、ヒヤリとしたりハットした原因、その克服方法、さらには示されたようなケースについての最近の文献も掲載され、論理的に納得できるようになっている。したがって、若手の放射線診断医にとっては、先輩の先生方から送られた愛のこもった教育書になっていると思われる。
 一方、筆者のような自分の専門領域しかわからない臨床医には、再度日常診療の戒めのために、関係する領域だけでも目を通すに値する内容と思われる。肺の領域では肺癌の診断に関し、(1)写真全体をくまなくみる、(2)みる順番を自分なりに決める、(3)見落としやすい領域を注意深く読影する、(4)比較読影の重要性など、若いころから耳にたこができるほど先輩方からいわれたことがまた改めて指摘され、それを綺麗な画像でチェックできるよう工夫されている。また現代の解像力のアップしたCTで発見される小結節の経過観察や取り扱いについても言及されるなど、日常臨床でもっとも遭遇する難問にも対応しており、呼吸器疾患の専門医にとっても十分に読み応えのあるものと思われる。
 また多くの救急疾患の画像が掲載されているため、初期研修医から後期研修医にいたる救急の初期診断医にとっても、きわめて有用な教科書といえるのではないだろうか。かつて自分も若いころ救急の場にいたが、実際患者をみるにあたって本で得た知識だけでは的確な診断・治療は往々にしてむずかしいものであった。CTが容易にいつでも撮れるようなった現在、救急で取り扱われる疾患のCTを多くみておくことは、正確な診断に繋がるとともに早く自信をもって診療にあたれるようになると思われる。
 久しぶりに自分の専門領域外の画像所見をたくさんみさせていただいたが、本書は先輩の先生方の記憶に残る画像だけではなく、これから医療を担っていく若い先生方から専門医として活躍されている先生方の明日からの診療に役立つ画像が満載されており、幅広く読まれることを期待するとともに、少なくとも誰もがいつでも手にとれるように病院の図書に加えてよい教科書と考える。
評者● 横井香平
胸部外科63巻7号(2010年7月号)より転載

本書は若き放射線画像診断医を対象とした著書であることは明らかなのであるが、それでも筆者が本書を外科医のみなさまにおすすめする理由が三つある。一つ目は一般外科としての項目(頭頸部、肺、乳腺、心大血管、肝胆膵、消化管)で日頃われわれが遭遇するかもしれない疾患が多く記載されていること、二つ目はその画像診断が鑑別診断にとどまることなく、次なる検査計画や治療方針、さらには外科治療における解剖学的注意点まで記載されていること、三つ目はその他の項目(頭部、婦人科、小児、その他)に関してもたいへん興味深く読み通すことができ、そこから画像診断における基本的な知識や心構えまで学べることである。一つ目の例としては、耳下腺腫瘍の診断に際して撮像されたMRIの所見から、顎下腺の萎縮と耳下腺の信号不均一も指摘し「Sjgren症候群に合併した悪性リンパ腫(MALToma)」と診断、すなわち随伴する疾患から腫瘍の鑑別診断を行った症例が提示されている。また二つ目の好例として、甲状腺癌の術前造影CTから「aberrant right subclavian arteryとNRILNは合併する率が高い」ので「手術時、反回神経の走行に留意ください」とレポートしている症例が記載されている。三つ目の例としては、腹痛・嘔気を主訴とした40歳代の女性に問診で妊娠の可能性がないことを確認した後CTを撮影し…、これ以上書くとネタバレになってしまうので差し控える。
 画像所見を羅列するのみならず、疾患に関する知識、さらにはその治療法に関する知識など広範な知識をもとに、各臨床医に対して診断・治療に関する適切なsuggestionを与えてくれる放射線科画像診断医を尊敬の念を込めて“doctor’s doctor”と呼ぶ。しかし一方で「診断」には「誤診」がつきものであり、医療訴訟の問題などを考えてか、可能性のある診断の羅列や「〜も否定できない」なるあいまいな記載もよく目にする。ある高名な放射線画像診断医は「誤診をしないもっとも確実な方法は、“診断しないこと”である」と皮肉をこめて発言している。これは当然額面どおりにとらえるべきではない。その先生は大学で臨床医・病理医との合同カンファレンスを率先して行い、フィードバックを繰り返しながら現在の名声を得た方であり、上記の発言は「診断しない放射線画像診断などありえないのと同様、誤診は必然であり、そこから“よく”学ぶことが重要」ということであると理解している。本書のような診断困難症例集はわれわれ臨床外科医にとってもたいへん役に立つ。さらに突っ込んだ「誤診集」があれば、とも思うがそれはむずかしいだろう。たとえば外科医サイドから「合併症症例集」や「手術失敗事例集」などが編纂されないのと同様に。
 本書は約10年間関西地区を中心として開催されている勉強会の内容を編集したものである。このような会が全国各地で行われ、多くの優秀な放射線画像診断医が育ってくれることを望むとともに、さらに内容豊富な第2集が続刊されることを期待する。
評者● 佐野圭二
臨床雑誌外科72巻10号(2010年10月号)より転載