書籍

骨・関節術後感染対策ハンドブック

予防・診断・治療

編集 : 勝呂徹/里見和彦
ISBN : 978-4-524-25009-7
発行年月 : 2010年5月
判型 : B5
ページ数 : 164

在庫僅少

定価6,480円(本体6,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

整形外科周術期の感染防止対策と感染を起こした場合の早期診断法、治療法について、日整会診療ガイドラインのエビデンスに基づいて術前準備から術中・術後の対策まで詳細に解説。具体的に抗菌薬の選択や投与方法・期間の設定などを紹介。予後や入院期間、医療費にも大きな影響を及ぼす整形外科術後感染症の予防・対策・治療に即応した実践ハンドブック。

第I章 総論
1 SSIの部位別区分と定義
2 SSIの成立とその要因
 A.病原菌
 B.宿主
3 SSIの予防・対策
 A.患者に対する予防対策
 B.医療関係者に対する予防対策

第II章 骨・関節術後感染症の疫学
1 骨折手術
 A.閉鎖骨折のSSI発生率
 B.開放骨折のSSI発生率
 C.創外固定法のSSI発生率(特にpin tract infection)
2 人工関節手術
 A.SSI発生率
 B.頻度の高い起炎菌
 C.易感染性宿主のSSI発生率
3 脊椎手術
 A.SSIの発生頻度
 B.SSIの病因
 C.考察

第III章 抗菌薬の適正使用
1 予防的投与から治療的投与までの考え方
 A.予防的抗菌薬投与の具体的な時期
 B.予防的抗菌薬の選択
 C.予防的抗菌薬の適切な投与経路
 D.抗菌薬使用前の皮内反応検査(皮内テスト)
2 手術時の抗菌薬の使い方
 A.術後SSI予防のための抗菌薬1回投与量
 B.必要とされる抗菌薬投与期間
 C.追加投与のタイミング
 D.術後SSI予防のための駆血帯使用の時期
 E.術野に使用する洗浄液への抗菌薬添加の有効性
 F.術後SSIに対する抗菌薬2剤投与と単剤投与の比較
3 術後感染治療のための抗菌薬の使い方
 A.起炎菌
 B.SSIの診断
 C.起炎菌の同定
 D.抗菌薬の選択
4 耐性菌に対する抗菌薬の選択
 A.術後感染症における耐性菌
 B.薬剤感受性
 C.MRSAに対する抗菌薬の選択
 D.MRSEに対する抗菌薬の選択

第IV章 術前の患者に対する管理
1 生活指導
 A.禁煙の指導
 B.他部位感染の検索と管理
2 基礎疾患の管理
 A.糖尿病
 B.関節リウマチ
 C.その他の術後SSIの危険因子
 D.副腎皮質ホルモン薬(ステロイド)
3 院内感染対策
 A.感染経路の対策
 B.術前入院期間
 C.術前スクリーニング
4 術前準備
 A.除毛
 B.術野の前処置

第V章 術中の感染予防のための管理と対策
1 手術室の条件
 A.バイオクリーン手術室
 B.通常の手術室
2 手洗い
3 術野の消毒
 A.術前処置の有無
 B.術野用消毒液の選択
4 術中管理
5 創閉鎖時の注意
 A.縫合糸
 B.ドレーン

第VI章 手術部位感染予防のための病棟における管理と対策
1 創の管理
 A.創のケア
 B.入浴、シャワー浴
2 早期離床と感染
 A.カテーテル類の管理
 B.ドレーンの管理
3 病棟における管理と対策
 A.CDC標準予防策
 B.多剤耐性菌感染者に対する感染対策
 C.感受性菌感染者に対する感染対策
 D.CDC接触予防策
 E.まとめ
4 その他
 A.輸血
 B.ピン刺入部のケア
5 infection control team(ICT)
 A.院内感染症サーベイランス(院内感染症のリアルタイムでの把握)
 B.院内感染予防、耐性菌対策
 C.病院内感染症対策・予防に関する情報伝達、教育、啓蒙

第VII章 術後感染の早期診断
1 SSIの診断基準・検査法
 A.診 断
 B.臨床所見、検査法と特徴
 C.早期診断
2 SIRSの概念
 A.診断基準
 B.トリガー
 C.病態生理
 D.Compensatory anti-inflammatory response syndrome(CARS)
 E.多臓器不全症候群
 F.Surviving sepsis campaign

第VIII章 術後感染の治療
VIII-1 術後感染に対する抗菌薬治療の基本方針
 A.抗菌薬治療のための検体の採取
 B.主な細菌学的検査方法
 C.Empiric therapy(経験的治療)
 D.投与期間
 E.観血的治療のタイミング
VIII-2 各論
1 骨折手術後の感染症に対する治療
A 急性
 A.骨折手術後の感染の特徴
 B.診断
 C.治療
B 慢性(難治性)骨髄炎
 A.病態と診断
 B.治療
2 人工関節手術後の感染症に対する治療
A 股関節
 A.THA後SSIの特徴と診断
 B.治療方針
B 膝関節
 A.治療法選択として保存療法が可能なのか、手術療法なのか
 B.手術療法の場合は人工関節を温存すべきか、抜去したほうがよいのか
 C.再置換術はどの程度行われているか、その保持率はどの程度か
 D.抜去後の再建術での、切除関節形成術、関節固定術、患肢切断術などの選択
 E.再置換術の場合は一期的または二期的に行うのか
 F.二期的に行われる場合、抜去後に生じた死腔にはどのような材料を使用して待機するのか
 G.二期的再置換術の時期はどうするか
3 脊椎手術後の感染症に対する治療
 A.感染徴候の把握
 B.起炎菌の同定
 C.治療抗菌薬の選択
 D.画像診断
 E.外科的処置
 F.高気圧酸素療法
4 腫瘍手術後の感染症に対する治療
 A.骨・軟部腫瘍手術後に発生する感染症の特徴
 B.診断
 C.治療

巻末資料
 1.感染関連ガイドライン・参考書籍
 2.インフェクションコントロールドクター(ICD)制度規則施行細則

索引

整形外科領域における手術的治療法の進歩には著しいものがあり、かつインプラント手術の増加は優れた臨床成績の向上をもたらしています。また、高齢化社会を迎え、生体防御機能の低下傾向をきたした症例に対する手術的治療の必要性が増していることから、術後の合併症が問題となっています。特に手術部位感染は、最も多くみられる術後合併症であり、手術成績を大きく左右するといっても過言ではありません。また、術後感染の発症は入院期間の延長や経費増大など患者さんへの負担を強いる結果をもたらし、その対策は重要です。よって、これをいかにコントロールするかが極めて重要な問題となります。術後感染症は、いったん発症すると、慢性化することが多く、治癒を得るためには多大な努力と苦労が伴うことが知られています。これは、患者さんにとっても長期の入院が強いられ、たとえ治癒しても何らかの機能障害をきたす可能性が高いことから、適切な感染制御なくして満足のゆく治療結果を得ることはできません。
 そこで、整形外科周術期の感染防止対策法と、感染を起こした場合の早期診断法、治療法について、日本整形外科学会診療ガイドラインのエビデンスに基づいた解説による実際書を企画しました。本書は、術前準備、術中の対策、術後の対策についてさまざまな視点から解説し、また抗菌薬に関しては、薬剤の選択、投与方法・期間の設定など、広く考え方を紹介しています。整形外科領域で多く行われる手術の代表は、骨折手術、人工関節手術、脊椎手術であることから、本書では感染予防に主眼を置き、抗菌薬の適正使用、術前準備から、手術室および手術時の管理、術後の管理まで必要な内容を盛り込み、実際の場で役立つように構成されています。さらに、骨折手術後の感染症に対する治療、人工関節手術後の感染症に対する治療、および脊椎手術後の感染症に対する治療は、発症後早期に対応する一つの指針となるものと思います。さらに、欧米の感染制御に向けた取り組みも紹介するなど、最新情報をフォローするのに役立つ内容であると考えています。
 これ一冊で術後感染症の予防・対策・治療に対応できるup to dateな内容となっています。診療に役立つ実践ハンドブックとして用いていただければと思います。
2010年4月
編者

このたび南江堂より本書が出版された。1973年、人工関節のパイオニアであったCharnley教授のライチントン病院を訪ねたときに、「人工関節置換術における最大の問題は術後感染症である」と話されたことが耳に残っている。その予防のためにクリーンルーム、ヘルメットと呼気排気システムなど、ありとあらゆる工夫がされていることに深い感銘を覚えたのを昨日のように思い起こした。整形外科領域においても人工関節をはじめ、髄内釘、プレートなど優れたインプラントが多量に、日常的に使用されているが、ひとたび感染を起こすと患者の苦痛、経済的・社会的負担はたいへんなものになり、慢性化すると訴訟問題に発展するなど術後感染症の問題は今なお大きな課題であることにかわりはない。本書は整形外科周術期の感染防止対策と、感染を起こした場合の早期診断法、治療法などについて、日整会診療ガイドラインのエビデンスに基づいた解説による実践的な企画である。総論では手術部位感染(surgical site infection:SSI)の定義、要因、起炎菌、バイオフィルムなどについて平易に述べ、実際の予防対策について、除毛、術野の消毒、術前の抗菌薬の投与法、手洗い法、ドレーンの置き方にいたるまで懇切丁寧に最新のガイドラインに基づいて記載している。疫学の項目では閉鎖骨折、開放骨折、創外固定法のSSIについて発生率が記載されており、自分の病院の感染率を振り返る機会にもなる。
 もっとも問題の多い人工関節では、初回人工股関節全置換術(THA)および人工膝関節全置換術(TKA)における深部SSIの発生率およびその起炎菌の種類と発生率が述べられているので、自院における発生率、起炎菌分布を再度チェックする機会を与えてくれる。
 脊椎手術はインストゥルメンテーションの進歩により変形の矯正と強固な固定が可能になったが、術後感染は重篤な合併症の一つになっている。この項目ではSSIの発生頻度、宿主側の特性、術中対策、施設環境、術前術後対策など、日整会学術プロジェクト研究の成果が詳細にわたって報告されている。他施設の報告がないと分析できない問題を、このようなプロジェクトで明らかにできたのは大きな進歩であり、貴重な指針を与えてくれる。
 抗菌薬の項目では予防的抗菌薬の選択、投与方法、投与経路、手術時の使い方、術後の投与期間についてもきめ細かに実践的に記述している。術後感染のための抗菌薬の使い方も具体的であり、耐性菌に対する抗菌薬の選択についてもわかりやすく記載されている。特に増加しているメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する抗菌薬も、詳細にわたって最新の情報が盛られている。
 術前の患者に対する管理の項目では、生活指導、基礎疾患の管理、院内感染対策、手術部位の管理、バイオクリーン手術室などが詳細にわたって述べられている。
 病棟における管理と対策の項目では創のケア、入浴、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)標準予防対策、インフェクションコントロールチーム、職員教育についてもいたれり尽くせりの内容で、最新情報を実践的に記載している。
 治療法も骨折術後感染、慢性骨髄炎、人工関節術後感染、腫瘍術後感染など診療に即、役に立つ内容が記載されており、実践ハンドブックとして大いに利用できると思われる。
評者● 川嶌眞人
臨床雑誌整形外科62巻1号(2011年1月号)より転載