書籍

パーキンソン病治療薬の選び方と使い方

編集 : 水野美邦
ISBN : 978-4-524-23639-8
発行年月 : 2004年5月
判型 : A5
ページ数 : 134

在庫なし

定価2,700円(本体2,500円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本神経学会の「パーキンソン病の治療ガイドライン」に沿って、治療薬の選び方と使い方を解説。多くの治療薬から何を選択するか、どの時点で何を使用するかなどを詳細に、わかりやすく解説。一般臨床医を読者対象に、パーキンソン病と診断された患者のみでなくパーキンソン病症状を呈する患者についての治療薬の使い方についても記載。

1 初期パーキンソン病治療のノウハウ
 (1)患者との信頼関係
 (2)初診時
  a.病歴聴取
  b.現在何に困っているか
  c.パーキンソン病を疑診した場合
 (3)楽観的な態度で接する
 (4)副作用を極端にいやがる患者には
 (5)薬物治療をはじめるタイミング
 (6)ドパミンアゴニストの使用について
  a.はじめて使うときの注意
  b.ドパミンアゴニストはどこまで増やすか
  c.他のドパミンアゴニストに切り替える場合
 (7)L-ドーパの使用について
  a.開始時期
  b.L-ドーパのはじめ方
  c.L-ドーパの食前投与
  d.L-ドーパの均等分割投与
  e.L-ドーパの維持量
 (8)ジスキネジア合併者
 (9)2つのすくみ足
 (10)幻覚・妄想がでたら
 (11)うつの検出法
 (12)睡眠の重要性
 (13)痴呆を合併したら
 (14)起立性低血圧
 
2 パーキンソン病治療薬の種類、特徴、副作用、いつ使うか
 (1)L-ドーパ
 (2)ドパミンアゴニスト
  a.ブロモクリプチン
  b.ペルゴリド
  c.タリペキソール
  d.カベルゴリン
  e.プラミペキソール
 f.ロピニロール
 g.その他開発中のドパミンアゴニスト
 (3)塩酸セレギリン(MAOB阻害薬)
 (4)塩酸アマンタジン
 (5)抗コリン薬
 (6)COMT阻害薬
 (7)ドロキシドパ
 (8)開発中、もしくは臨床試験中の薬物
 (9)EBMからみた治療薬の選び方
 
3 パーキンソン病治療の実際
A.未治療パーキンソン病の治療
 (1)基本的治療薬
 (2)補助的治療薬
 (3)ドパミンアゴニストの維持量
 (4)L-ドーパの開始時期
 (5)L-ドーパは変性を助長するか
 (6)まとめ
B.進行期パーキンソン病の治療:運動系障害
 (1)wearing off現象
  a.Wearing off現象とは
  b.Wearing off現象の発症機序
  c.Wearing off現象に対する薬物療法
 (2)no-on/delayed on現象
  a.No-on/delayed on現象とは
  b.No-on/delayed on現象の発症機序
  c.No-on/delayed on現象の対策
  d.No-on/delayed on現象に対する薬物療法
 (3)on-off現象
  a.On-off現象とは
  b.On-off現象の発症機序
  c.On-off現象の対策
  d.On-off現象に対する薬物療法
 (4)ジスキネジア
  a.ジスキネジアとは
  b.ジスキネジアの発症機序
  c.ジスキネジアの対策
  d.ジスキネジアに対する薬物療法
 (5)すくみ足
  a.すくみ足とは
  b.すくみ足の発症機序
  c.すくみ足の対策
  d.すくみ足に対する薬物療法
  e.他のパーキンソン症候群で認めるすくみ足に対する薬物療法
C.進行期パーキンソン病の治療:非運動系障害
 (1)幻覚・妄想
 (2)うつ状態
  a.大うつ病
  b.うつ状態
 (3)知的機能障害
 (4)睡眠障害
  a.入眠障害
  b.覚醒障害
 (5)起立性低血圧
 (6)排尿障害
 (7)消化管運動障害
  a.上部消化管運動障害
  b.便秘(下部消化管運動障害)
  c.イレウス
 (8)発汗障害
 (9)性機能障害
  a.勃起機能不全
  b.性欲亢進
 (10)悪性症候群
 
4 パーキンソン病の非薬物治療
 (1)外科療法
  a.脳深部刺激療法の装置と利点、欠点
  b.外科治療の適応と考え方
  c.臨床効果
 (2)遺伝子治療
 (3)移植
 (3)リハビリテーション
  a.運動療法
  b.作業療法
  c.その他の療法

パーキンソン病に限らず、近年エビデンスに基づいた治療の実践の重要性が認識されている。医者の匙加減が威力を発揮する場合もないわけではないが、まずはエビデンスに従った治療を行い、それがうまくいかない場合にはじめて標準からずれた治療を工夫することが大切だと思う。すべての患者がそれぞれの専門家の診療を受けられるわけではない。そのとき、しっかりした治療ガイドラインを記した本があれば、専門家でなくてもそれに従って最善の治療法を選択できる可能性があり、患者の側からみれば、どこに住んでいてもその時代の最善の治療を受けられる可能性がある。これが治療の標準化のコンセプトで、現代の医療にとって忘れてはならない重要な点であると思う。
 パーキンソン病については、幸い海外でも国内でも、エビデンスに基づいて科学的に各治療法の効果、安全性を評価して作成した治療ガイドラインが発表されている。特にわが国では、日本神経学会の事業として他の疾患とともに、パーキンソン病の治療ガイドラインが作成され、2002年、2003年に発表されている。これは、1963年以来の文献の系統的レビューに基づいて、各抗パーキンソン病薬の有効性・安全性を検討したばかりでなく、それらに基づいて治療のガイドラインを細かく記載したものである。本書は、そのガイドライン作成に携わったメンバーに加えて、何人かのパーキンソン病の第一線の臨床家・研究者を擁して作成したものである。
 パーキンソン病患者の治療過程では、実にさまざまな問題にぶつかる。運動障害だけでなく、知能障害、精神症状、感情障害、感覚障害、自律神経障害、睡眠障害と、これだけ多彩な症状が起き得る疾患はあまりないと思う程である。しかも、それぞれの問題点に対する解決方法がある程度あり、これらの問題を丹念に治療していくことにより、パーキンソン病患者の症状、QOLは大幅に改善できる可能性がある。本書がパーキンソン病の治療に携わる臨床家の役に立つことを心より願う次第である。
2004年4月
水野美邦

パーキンソン病は、神経変性疾患としてはアルツハイマー病に続いて2番目に多く、年齢とともに発症率が上昇するために、この高齢化社会においてますます増加し、重要になってきている疾患である。しかも、神経変性疾患としては唯一、治療薬が多数開発されている。患者数の増加に伴い内科の日常診療でパーキンソン病患者に遭遇する機会も多くなっているが、パーキンソン病の治療効果は見た目にもわかりやすく、治療が不十分であるとADL(activities of daily living)の障害は明らかに増大する。したがって、日常診療の中でパーキンソン病治療薬の使い方に精通することは、きわめて重要になってきている。

 本書を編集されている水野美邦教授は、パーキンソン病の病因解明および治療の分野で、わが国のみならず、世界的にも高い評価を得ている第一人者である。日本神経学会では水野教授を中心にパーキンソン病治療ガイドラインを作ったが、そこではEBMに基づくということで、専門家の経験に基づくエビデンスレベルの低い意見はやや盛り込みにくい状況があった。

 本書はそのガイドラインに、水野教授をはじめとする専門家の経験に基づく意見も加わり、よりハンディで使いやすいパーキンソン病治療のガイドブックとなっている。著者は水野教授のほか、ガイドライン作成委員であった4人で、いずれも豊富な経験をもち、わが国のパーキンソン病治療をリードするパーキンソン病専門家である。ガイドラインで示した正確なエビデンスの紹介とともに、実際の症例の提示や処方例が随所に織り込まれ、きわめて使いやすくなっている。また、ドパミンアゴニスト同士の切り替え方法のように、経験的なものであるがゆえに教科書などには書かれにくいが実際にはぜひ知りたい情報が、パーキンソン病治療の初期治療から進行期の問題点まで含め、さらには薬物治療のみならず、初診時からの患者さんとの接し方、病歴のとり方から外科治療やリハビリテーションまでが、A5判、138頁にコンパクトにまとめられている。

 パーキンソン病患者に遭遇する医師にはぜひ手元に置いて、できれば通読を、無理であれば患者さんに向かうたびに数頁ずつでも目を通されることをお勧めしたい。その数頁に必ず知りたいことが書いてあるでしょう。

評者● 村田美穂(国立精神・神経センター武蔵病院神経内科医長)
臨床雑誌内科94巻5号(2004年11月号)より転載